【完結】満月に導かれし龍の淫紋 〜運命の番は闇落ち王子〜

亜沙美多郎

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続編 カマルとルアの子育て編

悩み

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 城に帰ってからも上機嫌で遊んでいるシオン。
 猫神と遊んだ後は、いつも機嫌がいい。きっと、自己肯定感を高めるのが上手いのだと月亜は尊敬している。

 自分も猫神のように、気持ちの余裕が欲しいと会う度感じる。

 自分は恵まれていると思う。お父様もお母様もシオンを溺愛してくれているし、カマルも子育てに積極的だ。

 お母様のミッチェルがオメガということもあり、発情期への理解もある。
 それでも、たまに自分がちゃんと子育てできているのか、不安で仕方ないサイクルに入ってしまう。

 最近ではシオンの『イヤイヤ攻撃』も少なくなってきたが、それでも楽になったかと聞かれれば……どうだろう……。自分が考えすぎなのかもしれないし……。

「ルア、疲れた?」
「カマルさん。ボーっとしてしまいました。全然、疲れたりしてないですよ」
「まだ完全に発情期が終わったわけじゃない。夕食まで休むといい」
「ありがとうございます。そうしようかな」

 一人、寝室へと向かった。
 母親なのに、子供を預けて寝てもいいのだろうか。

 この三年間、周りを頼りすぎていないかと、ずっと思っている。
 素直に甘えていればいいのかもしれないが、割り切るのがなかなか難しい。

「カマルさんに話を聞いてもらおう」

 こういう時は、話を聞いてもらうのが一番だ。
 シオンが産まれてから、ことある毎に月亜の不安を拭ってくれていた。
 何度も同じような悩みを打ち明けては励ましてくれた。

 今回もまた同じような悩みなのだが、それでも吐き出したい。
 ベッドに横になると、シオンが好きな絵本に手を伸ばす。
「片付けるの、忘れてる」
 
 シオンは男の子だけど、優しい話の絵本が好きだ。
 何度も読み聞かせているお気に入りの絵本。
 『好きな人には好きって伝えようね』
 という内容のお話だ。

 きっと月亜に好意を伝えているのも、この絵本の影響なのだ。

 そういえばカマルも毎日のように月亜に好きだと伝えてくれる。
 もう結婚して三年になるのに、よく飽きないものだ。それでもやはり、嬉しく思う。

(俺からも、好きって言ってみようかな。……いやいや、そんなの言ったらカマルさんの方が発情しかねない)

「ふふ……」

 もしも月亜から「好きだ」と伝えたらカマルはどうなるか……。容易く想像できてしまう。
 そのくらいに、自分が愛されている。

「そうだ。月亜の誕生日に、カマルさんにもプレゼントを贈ろう。初めてパパになった記念日だ」

 シオンとお揃いの何かがいいだろう。街に行く許可をもらわなければ。
 プレゼントは自分で探したい。

 目を閉じて一人作戦会議。どうせならサプライズで渡したいじゃないか。

 バレずに買えるのか、そこから不安になるが……。

「ルア、寝ているかい?」
「あわわ、カマルさん。起きてますよ」

 一先ずは保留だ。とはいえ時間はない。
 喜んでもらえるにはどうするのが最善だろう。
 
 カマルは月亜がシオンのことで悩んでいると思ったようだ。

「また何か悩んでる?」
「実は……はい。自分が子育てを楽しすぎじゃないかって、不安で……」
「そんなことはない。その証拠にシオンはルアが大好きだろう?」
 
 隣に座り、抱きしめてくれる。
 これだけで安心できるのだから、自分って単純細胞なんだろうと自虐的に思った。

「カマルさんがそう言ってくれると、救われます」
 やっぱり自分はカマルが好きだと思ったが、今日のところは言えなかった。

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