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本編
モリスと綜馬
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夜は直ぐそこまで来ているというのに、こんなにも時間の経過が遅く感じる日はない。
結界の中は安心とは言え、地響きは鳴り続けている。
さっきまで、鳥や動物たちが逃げ惑うのを目の当たりにしていたが、逃げ切れたのか毒にやられたのか、地鳴りの他は何も聞こえなくなった。
毒はどこまで広がっているのだろうか。
猫神が今、毒蛇と毒蜘蛛と戦っているだろう。
モリスと綜馬の動きが結界からは何も分からない。これが一番のストレスの根源だ。
月亜のストレスを少しでも和らげようと、カマルはずっと月亜を抱きしめている。
「ルア、もう少しの辛抱だ。猫神はそんな簡単にはやられない。番いになったら、すぐに龍を召喚させよう」
「はい。分かってます。分かってるんですけど……何もできないのが悔しくて……」
「もう夜は直ぐそこだ。もう、私たちも番う準備に入ろう」
カマルが月亜のフェロモンを促す。月亜の下腹の淫紋に手を添えると、腹の奥が熱を帯びて疼き始めた。
「今は、猫神を信じるしかない。それに、これだけのことを起こしておいて、国王が動かないはずがない。大丈夫だ。我々は負けない」
カマルが口付けた。
月亜も目の前のカマルに集中した。カマルの言うとおり、今は番うことに集中するべきだ。
外が薄暗くなると、二人はベッドへ沈んだ。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
対してモリスと綜馬はカマルを炙り出そうと、森の奥へと進んでいた。
「兄さん。カマル兄さん、どこ? 早く出てきてよ」
召喚させた巨大な蜘蛛の腹にあぐらを組んで、森を進んでいるのはモリスだ。
毒蜘蛛となった召喚獣は、森中の木に毒のついた糸を張り巡らせていく。この糸に絡まれば、身体中に毒が回る。
既に虫や鳥がその餌食に掛かっていた。
「こんな虫けらが欲しいんじゃないのに……カマル兄さんは一体どこに隠れてるの? 早く、僕の毒を味わってくれないかな。ふふ……」
「モリス、俺は向こうのほうから森の奥を目指す!」
毒蜘蛛の隣に大蛇が現れた。綜馬の召喚獣だ。器用にモリスの蜘蛛の糸を避けながら近寄ってきた。
「本当に、この森にカマル兄さんはいるんだよね?」
綜馬はニヤリと笑った。
「ああ、間違いない。それを証拠に上を見てみろ?」
二人が見上げた先に、人化した猫神が二人にその姿を見せた。
「この森の守り神か……無謀なことを……」
「あいつが次期国王とルアを匿っているんだろうな」
『お前ら、ワシの森を穢しよってからに!! 許さぬ!!』
猫神がまた変化し、三本の尻尾を持つ妖の姿になった。そしてモリスたちと対面する木々に蔓を張り巡らせていく。
「ここで足止めしようって魂胆かよ」
綜馬が馬鹿にするような口ぶりで吐き捨てた。
「神様は僕の味方になってくれないの? 大人しくカマル兄さんを差し出してくれれば、僕たちは直ぐにこの森から立ち去ってあげるのに」
『馬鹿を言うでない。お前らの行動は常に監視しておった。この先には行かせぬ』
蔓はみるみる三人の周りを囲んでいく。
「神には申し訳ないが、こっちもこんな所で止まってるワケにはいかないんだよね。ハワード国王に見つかる前に、カマルとルアを仕留めないといけないから」
「ごめんね。猫神ちゃん」
モリスがウインクを投げると、巨大な毒蜘蛛の尻から数え切れない数の小さな毒蜘蛛を飛ばした。その蜘蛛は蔓を這い、よじ登って行く。
「まあ、こんな植物、毒にかかれば直ぐに枯れるしね。ご苦労さん、猫神」
綜馬の毒蛇が、蔓を目がけて毒を含んだ粘膜を吐き飛ばした。
毒が付着した場所からジュワリと蔓が溶けていく。
「どけ、猫神。次はお前に毒を飛ばすぞ」
綜馬が猫神を睨みつける。
「こらこら、ソウマ。そんな怖い喋り方しないで? もう僕の蜘蛛たちが広がって行ったよ。兄さんのところまで、たどり着いてね。僕の蜘蛛たち」
色気のある笑みを浮かべるモリスは、また追加で蜘蛛を放った。
「ま、俺もぼちぼち行きますか」
大蛇に跨った綜馬も、計画通りにモリスとは別ルートからカマルたちを目指して進むと言って、この場を離れた。
放たれた蜘蛛も毒糸を張り巡らせながら、森の奥へと進んでいく。
その上空を一羽の白鳥が飛んだ。そして旋回すると、また飛んできた方角へと戻って行った。
「チッ。お母様ったら、もう気づいちゃったの?」
モリスが舌打ちをする。
『お前らの計画は無駄に終わりそうだな』
妖の姿のまま、猫神が威嚇した。
「は? 何を言ってるの、状況わかってる? 既にこの森には僕の蜘蛛たちが毒糸を張り巡らせているんだよ?」
『さあ、その蜘蛛がどこまで行けるかな? そして、お前の父親が既に動き出したようだがな。気付いていないのか?』
猫神に言われて、モリスは初めて後ろを振り返った。
後ろを見上げた先には、ハワードの召喚獣である象が地に足を下ろした瞬間であった。
「なっ!———お父様が、象を召喚なさるなんて……」
『それだけではないだろう。周りももっとよく見るがいい』
ハワード国王の召喚したぞうの脇からは、虎に狼、豹、熊、そして空からは鷹や鷲、梟の召喚獣が放たれた。
「なんで……こいつら一体どこから……」
『いきなりの窮地だな。そんなのでカマルの元へ辿り着けるのか?』
猫神がニヤリと笑った。
結界の中は安心とは言え、地響きは鳴り続けている。
さっきまで、鳥や動物たちが逃げ惑うのを目の当たりにしていたが、逃げ切れたのか毒にやられたのか、地鳴りの他は何も聞こえなくなった。
毒はどこまで広がっているのだろうか。
猫神が今、毒蛇と毒蜘蛛と戦っているだろう。
モリスと綜馬の動きが結界からは何も分からない。これが一番のストレスの根源だ。
月亜のストレスを少しでも和らげようと、カマルはずっと月亜を抱きしめている。
「ルア、もう少しの辛抱だ。猫神はそんな簡単にはやられない。番いになったら、すぐに龍を召喚させよう」
「はい。分かってます。分かってるんですけど……何もできないのが悔しくて……」
「もう夜は直ぐそこだ。もう、私たちも番う準備に入ろう」
カマルが月亜のフェロモンを促す。月亜の下腹の淫紋に手を添えると、腹の奥が熱を帯びて疼き始めた。
「今は、猫神を信じるしかない。それに、これだけのことを起こしておいて、国王が動かないはずがない。大丈夫だ。我々は負けない」
カマルが口付けた。
月亜も目の前のカマルに集中した。カマルの言うとおり、今は番うことに集中するべきだ。
外が薄暗くなると、二人はベッドへ沈んだ。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
対してモリスと綜馬はカマルを炙り出そうと、森の奥へと進んでいた。
「兄さん。カマル兄さん、どこ? 早く出てきてよ」
召喚させた巨大な蜘蛛の腹にあぐらを組んで、森を進んでいるのはモリスだ。
毒蜘蛛となった召喚獣は、森中の木に毒のついた糸を張り巡らせていく。この糸に絡まれば、身体中に毒が回る。
既に虫や鳥がその餌食に掛かっていた。
「こんな虫けらが欲しいんじゃないのに……カマル兄さんは一体どこに隠れてるの? 早く、僕の毒を味わってくれないかな。ふふ……」
「モリス、俺は向こうのほうから森の奥を目指す!」
毒蜘蛛の隣に大蛇が現れた。綜馬の召喚獣だ。器用にモリスの蜘蛛の糸を避けながら近寄ってきた。
「本当に、この森にカマル兄さんはいるんだよね?」
綜馬はニヤリと笑った。
「ああ、間違いない。それを証拠に上を見てみろ?」
二人が見上げた先に、人化した猫神が二人にその姿を見せた。
「この森の守り神か……無謀なことを……」
「あいつが次期国王とルアを匿っているんだろうな」
『お前ら、ワシの森を穢しよってからに!! 許さぬ!!』
猫神がまた変化し、三本の尻尾を持つ妖の姿になった。そしてモリスたちと対面する木々に蔓を張り巡らせていく。
「ここで足止めしようって魂胆かよ」
綜馬が馬鹿にするような口ぶりで吐き捨てた。
「神様は僕の味方になってくれないの? 大人しくカマル兄さんを差し出してくれれば、僕たちは直ぐにこの森から立ち去ってあげるのに」
『馬鹿を言うでない。お前らの行動は常に監視しておった。この先には行かせぬ』
蔓はみるみる三人の周りを囲んでいく。
「神には申し訳ないが、こっちもこんな所で止まってるワケにはいかないんだよね。ハワード国王に見つかる前に、カマルとルアを仕留めないといけないから」
「ごめんね。猫神ちゃん」
モリスがウインクを投げると、巨大な毒蜘蛛の尻から数え切れない数の小さな毒蜘蛛を飛ばした。その蜘蛛は蔓を這い、よじ登って行く。
「まあ、こんな植物、毒にかかれば直ぐに枯れるしね。ご苦労さん、猫神」
綜馬の毒蛇が、蔓を目がけて毒を含んだ粘膜を吐き飛ばした。
毒が付着した場所からジュワリと蔓が溶けていく。
「どけ、猫神。次はお前に毒を飛ばすぞ」
綜馬が猫神を睨みつける。
「こらこら、ソウマ。そんな怖い喋り方しないで? もう僕の蜘蛛たちが広がって行ったよ。兄さんのところまで、たどり着いてね。僕の蜘蛛たち」
色気のある笑みを浮かべるモリスは、また追加で蜘蛛を放った。
「ま、俺もぼちぼち行きますか」
大蛇に跨った綜馬も、計画通りにモリスとは別ルートからカマルたちを目指して進むと言って、この場を離れた。
放たれた蜘蛛も毒糸を張り巡らせながら、森の奥へと進んでいく。
その上空を一羽の白鳥が飛んだ。そして旋回すると、また飛んできた方角へと戻って行った。
「チッ。お母様ったら、もう気づいちゃったの?」
モリスが舌打ちをする。
『お前らの計画は無駄に終わりそうだな』
妖の姿のまま、猫神が威嚇した。
「は? 何を言ってるの、状況わかってる? 既にこの森には僕の蜘蛛たちが毒糸を張り巡らせているんだよ?」
『さあ、その蜘蛛がどこまで行けるかな? そして、お前の父親が既に動き出したようだがな。気付いていないのか?』
猫神に言われて、モリスは初めて後ろを振り返った。
後ろを見上げた先には、ハワードの召喚獣である象が地に足を下ろした瞬間であった。
「なっ!———お父様が、象を召喚なさるなんて……」
『それだけではないだろう。周りももっとよく見るがいい』
ハワード国王の召喚したぞうの脇からは、虎に狼、豹、熊、そして空からは鷹や鷲、梟の召喚獣が放たれた。
「なんで……こいつら一体どこから……」
『いきなりの窮地だな。そんなのでカマルの元へ辿り着けるのか?』
猫神がニヤリと笑った。
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