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本編
今できること
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モリスが王位継承を狙っているのは猫神の話から確定された。
しかし、悪魔になったからといってすぐに国王の座を奪えるわけではない。ハワード国王が現役でいる限り、そしてカマルがこの世に生存している限りモリスの目論みはただの戯言でしかない。
「悪魔になっていたとして、どうやってモリスさんがカマルさんの代わりになれるんでしょうか?」
「私の記憶のモリスは優しい子だった。まさか両親を殺すなんて真似はしないと信じたい。しかし……」
『その二人の力が如何なるものかにもよる……と言いたいのであろう?』
「そうだ……モリスの蜘蛛の紋は通常よりも大きい。毒を持った時、それ相当の力を手に入れることとなる」
どうやら、紋の大きさは召喚獣のパワーと比例するようだ。
「それなら! 綜馬の蛇の紋もかなり大きいです! 大きさだけなら、カマルさんの龍と大差ないかもしれません」
『確かに、あやつの紋もなかなかのものだった』
「モリスたちは、私を殺しに来るかもしれない」
静かにカマルが呟いた。
手っ取り早くカマルが死んでくれれば、次男であるモリスが次期国王となる。
森で綜馬に会ったのは、もしかするとカマルの生存確認のためなのかもしれない。
「そんなことはさせません!! また次の満月がきます!! そに日まで何事もなければ、俺とカマルさんは番になれるじゃないですか!」
次の満月まであと半月といったところだ。
あと半月、モリスたちに見つからずに過ごせれば、番になって城に帰れる。
見つからないようにするには、なるべくあの結界から出なければいいだけの話じゃないか。
月亜は万事解決! と自信満々に言った。
しかし、猫神はその前にまだやらなくてはいけないことがあると言う。
『カマルの闇が完全に祓えていないまま、龍を召喚するのは危険だ。闇堕ちした龍が出てきてしまえば、それこそ取り返しの付かぬこととなる』
「そうだな。私もそれを考えていた」
「あと半月でカマルさんの闇を浄化しなければ、番えないということなんですか?」
『番にはなれる。ただ、闇を完全に払わなければ、貴様にも召喚獣である龍にも闇を分け与えることとなると言っておるのだ』
「そんな……」
番になれば、全て浄化できるのでは……なんて考えは甘かった。
カマルの症状は回復に向かっているとはいっても、まだ声は掠れたまま。それに、火傷痕のようになった皮膚も少し薄くなった程度だ。
これをあと半月で浄化など、そんなことが可能なのか?
『なあに、気に病むでない』
猫神があっけらかんと言う。
「何か、いい方法があるんですか?」
月亜が食い気味で身を乗り出した。
『何を言っておる。貴様らが必要なのは、お互いの体液であろう。あとの半月で浄化できるまで体液を吸収しあえば済む話ではないか』
「はっ? ちょっ!! 猫神さま!?」
月亜は顔から火が出るほど赤面した。猫神はもっと抱き合えと面と向かって言ってきたのだ。
恥ずかしげもなく、よく言えるものだと感心している場合ではない。
『それが一番の得策ではないか』
猫神の猫目がキラリと光った……気がした。
「……もっと違う方法があるのかと思っていました」
不貞腐れるように言うと、今度はカマルが口を開く。
「ルアはもう私から抱かれるのは嫌か?」
「そんなわけありません!! その……嬉しいです、けど……こんな恥ずかしいこと平然と言わないでくださいって言いたいんです!!」
猫神が盛大に笑っていた。
『愉快、愉快。貴様はワシを飽きさせん。ほら、解決策が分かったなら、さっさと食って体力をつけて励まんか!』
「猫神さまっ!!!」
他人に“セックスをしろ”なんて言う神さまなど、他にはいないだろう。
それに当然の如く答えるカマルにも驚いた。
さっきまで殆ど何も口にせず猫神と話し込んでいたのに、立ち上がったと思いきや果物を手に取り食べ始めたのだ。
嬉しいはずなのに、恥ずかしい気持ちの方が上回っている。こうして腹一杯食べて、屋敷に帰った後はカマルに抱かれると宣言されているようなもの。
月亜はさっきまでとは打って変わって急に食欲がなくなった。猫神はそんな月亜を茶化すように食べろ食べろと煽ってくる。
「もう!! こんな神さま知らない!!」
半泣きで月亜が叫んでも、猫神は楽しそうに笑っているだけだ。
「ルア、また屋敷に果物を持って帰ろう」
「……そうします」
数種類の果物を取ると、屋敷へと向かった。月亜の心臓は大袈裟なほど大きく伸縮している。
自分でもここまで緊張しなくてもいいのに、とは思っている。今回のは猫神が悪い。
一歩前を歩く猫神の後頭部を睨みつけた。
『そう怖い顔をするな。綺麗な顔が台無しだぞ』
神さまには背後からの視線もお見通しらしい。完全に月亜を揶揄っている。
「猫神であってもルアに色目を使うのは許さない」
カマルはカマルで要らぬ嫉妬心を猫神に向け始めた。この二人、月亜では収集がつかないと諦めた。
「では、逆に聞きますけど猫神さまは結婚とかはしないんですか?」
自分とカマルの話題を逸らせるために言っただけなのに、猫神は意外な反応を見せた。
『けっ! 結婚!? まぁ、そうだな。神同士で結婚しているやつもおるけどな』
突然動揺し始めた。月亜は心が湧き立つ感覚を味わう。
「猫神さまも、結婚したい人がいるんですか?」
もう一踏ん張り突っ込んでみる。
さっきまで楽しそうに月亜を揶揄っていた猫神が、しどろもどろになってきた。これはきっと恋の相手がいるのだろうと、月亜は睨んだ。
『例えおったとしても、貴様には関係ないであろうが!!』
分かり易く照れ隠しをした猫神だったが、別れ際に好きな雌猫がいるとだけ教えてくれた。
もっと詳しく聞きたいのに、猫神はそれだけ言うと姿をくらましてしまった。
「逃げられた」
今度会ったら質問攻めにしようと、月亜は企む。
「ルアは逃さないよ」
カマルがルアを捕まえて抱き上げた。
「カマルさん! 歩けますって!!」
「こうした方が早い。一秒も無駄にしたくない」
至って真剣なカマルをどんな顔で見ればいいのか分からず、月亜はまた顔を熱くさせた。
しかし、悪魔になったからといってすぐに国王の座を奪えるわけではない。ハワード国王が現役でいる限り、そしてカマルがこの世に生存している限りモリスの目論みはただの戯言でしかない。
「悪魔になっていたとして、どうやってモリスさんがカマルさんの代わりになれるんでしょうか?」
「私の記憶のモリスは優しい子だった。まさか両親を殺すなんて真似はしないと信じたい。しかし……」
『その二人の力が如何なるものかにもよる……と言いたいのであろう?』
「そうだ……モリスの蜘蛛の紋は通常よりも大きい。毒を持った時、それ相当の力を手に入れることとなる」
どうやら、紋の大きさは召喚獣のパワーと比例するようだ。
「それなら! 綜馬の蛇の紋もかなり大きいです! 大きさだけなら、カマルさんの龍と大差ないかもしれません」
『確かに、あやつの紋もなかなかのものだった』
「モリスたちは、私を殺しに来るかもしれない」
静かにカマルが呟いた。
手っ取り早くカマルが死んでくれれば、次男であるモリスが次期国王となる。
森で綜馬に会ったのは、もしかするとカマルの生存確認のためなのかもしれない。
「そんなことはさせません!! また次の満月がきます!! そに日まで何事もなければ、俺とカマルさんは番になれるじゃないですか!」
次の満月まであと半月といったところだ。
あと半月、モリスたちに見つからずに過ごせれば、番になって城に帰れる。
見つからないようにするには、なるべくあの結界から出なければいいだけの話じゃないか。
月亜は万事解決! と自信満々に言った。
しかし、猫神はその前にまだやらなくてはいけないことがあると言う。
『カマルの闇が完全に祓えていないまま、龍を召喚するのは危険だ。闇堕ちした龍が出てきてしまえば、それこそ取り返しの付かぬこととなる』
「そうだな。私もそれを考えていた」
「あと半月でカマルさんの闇を浄化しなければ、番えないということなんですか?」
『番にはなれる。ただ、闇を完全に払わなければ、貴様にも召喚獣である龍にも闇を分け与えることとなると言っておるのだ』
「そんな……」
番になれば、全て浄化できるのでは……なんて考えは甘かった。
カマルの症状は回復に向かっているとはいっても、まだ声は掠れたまま。それに、火傷痕のようになった皮膚も少し薄くなった程度だ。
これをあと半月で浄化など、そんなことが可能なのか?
『なあに、気に病むでない』
猫神があっけらかんと言う。
「何か、いい方法があるんですか?」
月亜が食い気味で身を乗り出した。
『何を言っておる。貴様らが必要なのは、お互いの体液であろう。あとの半月で浄化できるまで体液を吸収しあえば済む話ではないか』
「はっ? ちょっ!! 猫神さま!?」
月亜は顔から火が出るほど赤面した。猫神はもっと抱き合えと面と向かって言ってきたのだ。
恥ずかしげもなく、よく言えるものだと感心している場合ではない。
『それが一番の得策ではないか』
猫神の猫目がキラリと光った……気がした。
「……もっと違う方法があるのかと思っていました」
不貞腐れるように言うと、今度はカマルが口を開く。
「ルアはもう私から抱かれるのは嫌か?」
「そんなわけありません!! その……嬉しいです、けど……こんな恥ずかしいこと平然と言わないでくださいって言いたいんです!!」
猫神が盛大に笑っていた。
『愉快、愉快。貴様はワシを飽きさせん。ほら、解決策が分かったなら、さっさと食って体力をつけて励まんか!』
「猫神さまっ!!!」
他人に“セックスをしろ”なんて言う神さまなど、他にはいないだろう。
それに当然の如く答えるカマルにも驚いた。
さっきまで殆ど何も口にせず猫神と話し込んでいたのに、立ち上がったと思いきや果物を手に取り食べ始めたのだ。
嬉しいはずなのに、恥ずかしい気持ちの方が上回っている。こうして腹一杯食べて、屋敷に帰った後はカマルに抱かれると宣言されているようなもの。
月亜はさっきまでとは打って変わって急に食欲がなくなった。猫神はそんな月亜を茶化すように食べろ食べろと煽ってくる。
「もう!! こんな神さま知らない!!」
半泣きで月亜が叫んでも、猫神は楽しそうに笑っているだけだ。
「ルア、また屋敷に果物を持って帰ろう」
「……そうします」
数種類の果物を取ると、屋敷へと向かった。月亜の心臓は大袈裟なほど大きく伸縮している。
自分でもここまで緊張しなくてもいいのに、とは思っている。今回のは猫神が悪い。
一歩前を歩く猫神の後頭部を睨みつけた。
『そう怖い顔をするな。綺麗な顔が台無しだぞ』
神さまには背後からの視線もお見通しらしい。完全に月亜を揶揄っている。
「猫神であってもルアに色目を使うのは許さない」
カマルはカマルで要らぬ嫉妬心を猫神に向け始めた。この二人、月亜では収集がつかないと諦めた。
「では、逆に聞きますけど猫神さまは結婚とかはしないんですか?」
自分とカマルの話題を逸らせるために言っただけなのに、猫神は意外な反応を見せた。
『けっ! 結婚!? まぁ、そうだな。神同士で結婚しているやつもおるけどな』
突然動揺し始めた。月亜は心が湧き立つ感覚を味わう。
「猫神さまも、結婚したい人がいるんですか?」
もう一踏ん張り突っ込んでみる。
さっきまで楽しそうに月亜を揶揄っていた猫神が、しどろもどろになってきた。これはきっと恋の相手がいるのだろうと、月亜は睨んだ。
『例えおったとしても、貴様には関係ないであろうが!!』
分かり易く照れ隠しをした猫神だったが、別れ際に好きな雌猫がいるとだけ教えてくれた。
もっと詳しく聞きたいのに、猫神はそれだけ言うと姿をくらましてしまった。
「逃げられた」
今度会ったら質問攻めにしようと、月亜は企む。
「ルアは逃さないよ」
カマルがルアを捕まえて抱き上げた。
「カマルさん! 歩けますって!!」
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至って真剣なカマルをどんな顔で見ればいいのか分からず、月亜はまた顔を熱くさせた。
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