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本編
裏切り ★R-18
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「や、あぁっ。はぁぁ、ん……もっと……きて……」
モリスを組み敷いて腰を揺らしているのは、紛れもない綜馬だった。
月亜が図書室で過ごしている間、ずっと交わっていたのか、ベッドのシーツは乱れていて、二人の服は辺りに散らばって落ちている。
荒々しい二人の息がこちらにまで聞こえてくる。
離れたいのに足が動かない。目を逸らすこともできず、ただ二人が重なり、求め合い、繋がる一部始終を見ているしかできなかった。
待てど暮らせどモリスの部屋に来ない綜馬を求め、一人の時を狙って来たのだろう。
協力すると言っておきながら、綜馬をモリスの部屋へと誘導しなかった月亜に腹を立てているかもしれない。
(自分が悪い)
そう分かっていても、この光景はかなりショックだった。
先に裏切ったのは月亜だ。自分を責めてももう遅い。言い聞かせようとしても、頭がぐちゃぐちゃで何も考えられない。
モリスが果てても、綜馬が果てても、また直ぐに求め合う。
「もっと、もっと……」と、喘ぐモリスからはどんな甘い香りがしているのだろうか。
月亜からは漂うことない香りは、まるで想像ができない。
明らかに正気を失っている綜馬の獣化した姿が悲しかった。
これが発情期と淫紋が同時に発動したオメガの姿なのだ。抗えるはずもない。
それでも月亜への気持ちを、僅かにでも思い出して欲しかった。
溢れた涙を拭うこともできずに立ち尽くす。
こんな状況になっても、発情をする気配もない自分を腹立たしく思った。
「ねぇ、ソウマ。僕と番になってくれる? そしたら、この国ごと全てソウマにあげる」
(嫌だ。番にならないで)
そう願っていても、この気持ちは誰にも届かない。
「……なる。番になるからもっとモリスを抱きたい」
「うん。僕も、もっとソウマが欲しい」
「モリスのナカ、気持ちいい」
「あん、んん……はぁぁ! そんな奥ばっかり……ああっ!」
心臓が擦り減るほど痛い。しかし立ち去ることもできず、ついにその瞬間を見届けてしまった。
綜馬とモリスが番になる瞬間を……。
「噛んで。ソウマ!! 噛んで!!」
モリスが叫ぶとほぼ同時に、綜馬の顔がモリスの首元に埋まった。
「痛っ!! はぁ、ん……」
(あぁ、終わった)この世界での自分の存在意義が、消えた瞬間だ。
膝から崩れ落ちてへたり込む。
綺麗な模様が施された絨毯に、こぼれ落ちた雫が次々と染み込んでいく。
声も出せず、呼吸すらまともにできなかった。
ほんの数時間前、綜馬は確かに月亜のものだった。月亜だけの存在だった。
人の気持ちなど、呆気なく変わる。自分がそうだったように。
モリスの味方でいると言ったのに、綜馬の好意を断れなかった罰だ。
(もう、ここではいられない)
誰にも見つからないうちに城から抜け出そうと、ようやく立ち上がった。
番になっても尚、モリスの甘い声は廊下にまで響いている。その声から逃げるように、二人に背を向け歩き出した。
誰にも見つからないよう警戒しながら城の裏口を探し回る。城内は広すぎて迷路のようだ。歩いているうちに自分がどの方向に向かっているのか分からなくなるほどに。
城の敷地内にいろと言われているが、月亜に現れたものは淫紋どころかタトゥーかどうかも分からない。
ハワード国王も、期待しているのは綜馬であって自分ではないはずだ。
その上、国王の息子と番になったのだ。
遅かれ早かれ自分は追い出されるだろう。
(あ、扉……)
ここに着くまで二十分以上は要したように思う。
鍵の掛かっていないその扉をソっと開けると、外に出る扉であった。直ぐその先に高い塀に作られた更なる扉へと続いている。
辺りに人がいないのを確認すると、その扉まで走り寄る。
その扉にも鍵は付いていない。
主に召使いが出入りする為の扉のようであった。
重みのある鉄製の扉に体重をかけて開けると、塀の向こう側は森だった。この森を抜けると街へ行けるだろうか。
躊躇わず、城の外へと一歩踏み出した。
木々の間をすり抜けるように小道が続いている。ひんやりとした風が、流した涙を乾かしてくれた。
もうこの先はどうなっても構わない。一度は捨てた命。そして、城の誰も月亜がいなくなったのを悲しまないであろう。
もし街に出られたら、住み込みで働かせてもらるところを探そうと思っていた。
しかし、進めども進めども森は深くなるばかり。そのうち、道らしい道もなくなってきた。
「本当に、この方向で良かったのか……」
扉から続いているのは確かにこの道だけだ。しかし、この先に街があるとは到底思えない。
とうとう道がなくなった所で立ち止まった。後ろを振り返っても、横を見渡しても、同じような風景が広がっているだけ。
「完全に迷っちゃったな」
この先に進むべきか少しの間悩んでいると、先の方から何かコチラへと向かってくる影が見えた。
しなやかに草や倒れた木を飛び越えてくる。
「……猫?」
……にしては体が大きい。大型犬くらいの大きさの猫であった。
その猫が目の前にまで走り寄ってきた。食べられるかと身構えたが、月亜の顔をマジマジと眺め、「ニャアン」と鳴いた。
どうやら危害は加えないようだ。とても大人しい性格のようでもあった。
「オオヤマネコみたい」
森だからヤマネコなハズはないと思いながらも、月亜からもマジマジと眺める。どこか見覚えのある感覚がした。
「もしかして、あの時の猫?」
トラックに撥ねられた時に、助けようとした猫の毛並みにそっくりなことを思い出す。
猫はまた「ニャアン」と鳴いて、来た道を引き返して行く。
少し進むとコチラを振り返り、ついて来いと言っているように「ニャアン」と鳴く。見た目に反して可愛らしい声だと思った。
月亜はここにいても仕方ないと思い、この猫について行くことにした。
深い森の、さらに深い所へと足を進めた。
モリスを組み敷いて腰を揺らしているのは、紛れもない綜馬だった。
月亜が図書室で過ごしている間、ずっと交わっていたのか、ベッドのシーツは乱れていて、二人の服は辺りに散らばって落ちている。
荒々しい二人の息がこちらにまで聞こえてくる。
離れたいのに足が動かない。目を逸らすこともできず、ただ二人が重なり、求め合い、繋がる一部始終を見ているしかできなかった。
待てど暮らせどモリスの部屋に来ない綜馬を求め、一人の時を狙って来たのだろう。
協力すると言っておきながら、綜馬をモリスの部屋へと誘導しなかった月亜に腹を立てているかもしれない。
(自分が悪い)
そう分かっていても、この光景はかなりショックだった。
先に裏切ったのは月亜だ。自分を責めてももう遅い。言い聞かせようとしても、頭がぐちゃぐちゃで何も考えられない。
モリスが果てても、綜馬が果てても、また直ぐに求め合う。
「もっと、もっと……」と、喘ぐモリスからはどんな甘い香りがしているのだろうか。
月亜からは漂うことない香りは、まるで想像ができない。
明らかに正気を失っている綜馬の獣化した姿が悲しかった。
これが発情期と淫紋が同時に発動したオメガの姿なのだ。抗えるはずもない。
それでも月亜への気持ちを、僅かにでも思い出して欲しかった。
溢れた涙を拭うこともできずに立ち尽くす。
こんな状況になっても、発情をする気配もない自分を腹立たしく思った。
「ねぇ、ソウマ。僕と番になってくれる? そしたら、この国ごと全てソウマにあげる」
(嫌だ。番にならないで)
そう願っていても、この気持ちは誰にも届かない。
「……なる。番になるからもっとモリスを抱きたい」
「うん。僕も、もっとソウマが欲しい」
「モリスのナカ、気持ちいい」
「あん、んん……はぁぁ! そんな奥ばっかり……ああっ!」
心臓が擦り減るほど痛い。しかし立ち去ることもできず、ついにその瞬間を見届けてしまった。
綜馬とモリスが番になる瞬間を……。
「噛んで。ソウマ!! 噛んで!!」
モリスが叫ぶとほぼ同時に、綜馬の顔がモリスの首元に埋まった。
「痛っ!! はぁ、ん……」
(あぁ、終わった)この世界での自分の存在意義が、消えた瞬間だ。
膝から崩れ落ちてへたり込む。
綺麗な模様が施された絨毯に、こぼれ落ちた雫が次々と染み込んでいく。
声も出せず、呼吸すらまともにできなかった。
ほんの数時間前、綜馬は確かに月亜のものだった。月亜だけの存在だった。
人の気持ちなど、呆気なく変わる。自分がそうだったように。
モリスの味方でいると言ったのに、綜馬の好意を断れなかった罰だ。
(もう、ここではいられない)
誰にも見つからないうちに城から抜け出そうと、ようやく立ち上がった。
番になっても尚、モリスの甘い声は廊下にまで響いている。その声から逃げるように、二人に背を向け歩き出した。
誰にも見つからないよう警戒しながら城の裏口を探し回る。城内は広すぎて迷路のようだ。歩いているうちに自分がどの方向に向かっているのか分からなくなるほどに。
城の敷地内にいろと言われているが、月亜に現れたものは淫紋どころかタトゥーかどうかも分からない。
ハワード国王も、期待しているのは綜馬であって自分ではないはずだ。
その上、国王の息子と番になったのだ。
遅かれ早かれ自分は追い出されるだろう。
(あ、扉……)
ここに着くまで二十分以上は要したように思う。
鍵の掛かっていないその扉をソっと開けると、外に出る扉であった。直ぐその先に高い塀に作られた更なる扉へと続いている。
辺りに人がいないのを確認すると、その扉まで走り寄る。
その扉にも鍵は付いていない。
主に召使いが出入りする為の扉のようであった。
重みのある鉄製の扉に体重をかけて開けると、塀の向こう側は森だった。この森を抜けると街へ行けるだろうか。
躊躇わず、城の外へと一歩踏み出した。
木々の間をすり抜けるように小道が続いている。ひんやりとした風が、流した涙を乾かしてくれた。
もうこの先はどうなっても構わない。一度は捨てた命。そして、城の誰も月亜がいなくなったのを悲しまないであろう。
もし街に出られたら、住み込みで働かせてもらるところを探そうと思っていた。
しかし、進めども進めども森は深くなるばかり。そのうち、道らしい道もなくなってきた。
「本当に、この方向で良かったのか……」
扉から続いているのは確かにこの道だけだ。しかし、この先に街があるとは到底思えない。
とうとう道がなくなった所で立ち止まった。後ろを振り返っても、横を見渡しても、同じような風景が広がっているだけ。
「完全に迷っちゃったな」
この先に進むべきか少しの間悩んでいると、先の方から何かコチラへと向かってくる影が見えた。
しなやかに草や倒れた木を飛び越えてくる。
「……猫?」
……にしては体が大きい。大型犬くらいの大きさの猫であった。
その猫が目の前にまで走り寄ってきた。食べられるかと身構えたが、月亜の顔をマジマジと眺め、「ニャアン」と鳴いた。
どうやら危害は加えないようだ。とても大人しい性格のようでもあった。
「オオヤマネコみたい」
森だからヤマネコなハズはないと思いながらも、月亜からもマジマジと眺める。どこか見覚えのある感覚がした。
「もしかして、あの時の猫?」
トラックに撥ねられた時に、助けようとした猫の毛並みにそっくりなことを思い出す。
猫はまた「ニャアン」と鳴いて、来た道を引き返して行く。
少し進むとコチラを振り返り、ついて来いと言っているように「ニャアン」と鳴く。見た目に反して可愛らしい声だと思った。
月亜はここにいても仕方ないと思い、この猫について行くことにした。
深い森の、さらに深い所へと足を進めた。
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