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三章〜クレール・ベルクール編〜
34 双子との再会
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「クレールお兄様……お久しぶりです」
一年ぶりに会ったノアとノランはグッと背が伸びて、大人っぽくなっていた。成長期のアルファは色々と並外れている。もうすっかり見上げなければいけなくなっている。
この一年、会えなかった事が悔やまれる。彼らの成長を間近で見届けたかった。
二人とも学校で目立っているらしいと、アシルお母様から聞いていたが、なるほどそれも頷けると思った。二人でいるから余計に周りの目を引くだろう。
「二人とも、そんな改まった挨拶はやめましょう。折角、会えたのですから」
「お兄ちゃま、今日はいつもの香りがする」
「そう、もうノアとノランの前であの新薬は飲まないって決めました。だって、折角僕の匂いを覚えてくれているのに、忘れられたくありませんから」
「私も、クレールお兄様の匂いを忘れたくありません」
ノランはまだ玄関先だというのに、僕を抱きしめた。
「この匂い。幼い頃から嗅いできたこの匂いが、私の一番好きな香りです」
「僕も、そう言ってくれるのが嬉しいから、沢山嗅いでください」
ノアが横から割り入って「ノアも!!」とアピールする。
こんな感じも一年ぶりだと、じゃれ合っていた頃が随分昔に感じられる。
「そろそろ、エリアスお父様とアシルお母様も到着する頃だから、ここで待とうか」
いつもエリアスお父様が来る時間帯になっている。
ノアは、早めにこの屋敷に来ておいて良かったと言った。早く家族で揃いたいとワクワクしている。
それは僕も同感だ。自分が原因で一年間も家族水入らずな時間が取れなかった。誰よりもこの日を楽しみにしていたのは、きっとこの僕だ。
みんなに振る舞う焼き菓子も、早く食べて欲しい。
この日のために、ハーブティーの茶葉も料理長オススメのものを取り寄せてもらった。
喜んで貰えるといいけど……。
「あ! エリアスお父様とアシルお母様の馬車だ!」
ノアがこっちに向かって来る馬車に向かって大きく手を振る。その隣でノランはピシッと背筋を伸ばした。緊張しているのではなく、エリアスお父様への憧れが人一倍強いが故なのだ。
馬車から降りたエリアスお父様に、ノランは開口一番、謝罪した。一年前の自分は未熟だったと。
エリアスお父様は「気にするな」と、ノランの肩に手をやる。「大人になることを急がないでいい。もっと子供でいてくれ」と肩を抱いたまま室内へと促した。
ノアとノランはまだ十四歳だ。僕の頃を振り返ってみても、特にノランはしっかりし過ぎている。一方ノアは、久しぶりに会えたアシルお母様に抱きついている、大型犬のようだ。
「ノアは、もっと早く会いたかったんだけど……ノランってば、クレールお兄様に会わせる顔がないなんて言うから……」
「そっか。ノアもノランもクレールが大好きだもんね」
「アシルお母様も大好き!!」
「ぼくも家族が大好きですよ」
ノアとアシルお母様のやり取りを見ていると、なんだかホッとする。
とは言え、真面目過ぎるノランが決してマイナス思考という訳ではなく、向上心が強過ぎるのだと感じている。
なにもかも、エリアスお父様の素質を譲り受けている。
顔は同じなのに性格は正反対の双子。ずっと見ていても発見がいっぱいだ。
リビングに入るなり、エリアスお父様が口を開く。
「実は今日、マルティネス王子とクララが屋敷に顔を出す。ノアとノランに、あの日のことを謝罪したいと、前々から仰っていてね。ヴィクトール様がラット状態だったとは言え、二人を突き飛ばし軽傷を負わせた。どうしても直接会いたいと、頼まれていたんだ」
その言葉を聞いて、ノアとノランは顔が強ばった。エリアスお父様は、そんな二人を見て「ヴィクトール様は来ない」と付け加えた。
ノアとノランはそれを聞いてホッと胸を撫で下ろしたが、今度は僕が残念だと思ってしまった。
一年ぶりに会ったノアとノランはグッと背が伸びて、大人っぽくなっていた。成長期のアルファは色々と並外れている。もうすっかり見上げなければいけなくなっている。
この一年、会えなかった事が悔やまれる。彼らの成長を間近で見届けたかった。
二人とも学校で目立っているらしいと、アシルお母様から聞いていたが、なるほどそれも頷けると思った。二人でいるから余計に周りの目を引くだろう。
「二人とも、そんな改まった挨拶はやめましょう。折角、会えたのですから」
「お兄ちゃま、今日はいつもの香りがする」
「そう、もうノアとノランの前であの新薬は飲まないって決めました。だって、折角僕の匂いを覚えてくれているのに、忘れられたくありませんから」
「私も、クレールお兄様の匂いを忘れたくありません」
ノランはまだ玄関先だというのに、僕を抱きしめた。
「この匂い。幼い頃から嗅いできたこの匂いが、私の一番好きな香りです」
「僕も、そう言ってくれるのが嬉しいから、沢山嗅いでください」
ノアが横から割り入って「ノアも!!」とアピールする。
こんな感じも一年ぶりだと、じゃれ合っていた頃が随分昔に感じられる。
「そろそろ、エリアスお父様とアシルお母様も到着する頃だから、ここで待とうか」
いつもエリアスお父様が来る時間帯になっている。
ノアは、早めにこの屋敷に来ておいて良かったと言った。早く家族で揃いたいとワクワクしている。
それは僕も同感だ。自分が原因で一年間も家族水入らずな時間が取れなかった。誰よりもこの日を楽しみにしていたのは、きっとこの僕だ。
みんなに振る舞う焼き菓子も、早く食べて欲しい。
この日のために、ハーブティーの茶葉も料理長オススメのものを取り寄せてもらった。
喜んで貰えるといいけど……。
「あ! エリアスお父様とアシルお母様の馬車だ!」
ノアがこっちに向かって来る馬車に向かって大きく手を振る。その隣でノランはピシッと背筋を伸ばした。緊張しているのではなく、エリアスお父様への憧れが人一倍強いが故なのだ。
馬車から降りたエリアスお父様に、ノランは開口一番、謝罪した。一年前の自分は未熟だったと。
エリアスお父様は「気にするな」と、ノランの肩に手をやる。「大人になることを急がないでいい。もっと子供でいてくれ」と肩を抱いたまま室内へと促した。
ノアとノランはまだ十四歳だ。僕の頃を振り返ってみても、特にノランはしっかりし過ぎている。一方ノアは、久しぶりに会えたアシルお母様に抱きついている、大型犬のようだ。
「ノアは、もっと早く会いたかったんだけど……ノランってば、クレールお兄様に会わせる顔がないなんて言うから……」
「そっか。ノアもノランもクレールが大好きだもんね」
「アシルお母様も大好き!!」
「ぼくも家族が大好きですよ」
ノアとアシルお母様のやり取りを見ていると、なんだかホッとする。
とは言え、真面目過ぎるノランが決してマイナス思考という訳ではなく、向上心が強過ぎるのだと感じている。
なにもかも、エリアスお父様の素質を譲り受けている。
顔は同じなのに性格は正反対の双子。ずっと見ていても発見がいっぱいだ。
リビングに入るなり、エリアスお父様が口を開く。
「実は今日、マルティネス王子とクララが屋敷に顔を出す。ノアとノランに、あの日のことを謝罪したいと、前々から仰っていてね。ヴィクトール様がラット状態だったとは言え、二人を突き飛ばし軽傷を負わせた。どうしても直接会いたいと、頼まれていたんだ」
その言葉を聞いて、ノアとノランは顔が強ばった。エリアスお父様は、そんな二人を見て「ヴィクトール様は来ない」と付け加えた。
ノアとノランはそれを聞いてホッと胸を撫で下ろしたが、今度は僕が残念だと思ってしまった。
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