【番外編スタート】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

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二章~アシル・クローシャー編~

32 仲良しさん①

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 パーティー以来、ヴィクトール様と会えていないクレールだったが、今日はマルティネス王子がりんご園の視察に来る日。
「お仕事で来るんだよ」と何度も言い聞かせているが、クレールはそうもいかない。
 ヴィクトール様を連れてくると約束したのを覚えているだろうか、と何度もエリアス様に尋ねる始末。
「きっと来てくれるだろう。あの後、本当に連れてきてくださいと頼んでおいたからね」
「じゃあ、今日は久しぶりにヴィクトール様と遊べますね」
「クレール、エリアス様もマルティネス様もお仕事で……」
「まぁ、アシル。今日は構わない。クララも誘っておいたからティータイムを楽しんで」
「ありがとうございます」

 視察とはいえ、そんなに畏まった仕事ではないとエリアス様は言う。
「私たちもその後はシャンパーニュで乾杯をしようと話している。交流の一つだと捉えてもらって構わない」
「エリアスお父様、馬車が入って来ましたよ」
「では出迎えに行こうか」

 馬車が停まるや否や、ヴィクトール様が飛び出してきて、その勢いのままクレールに抱きついた。
「クレールお兄ちゃん!!」
「ヴィクトール様、やっと会えましたね」
「早く、遊びたい」
「今日はりんご園に連れて行ってくれるそうですよ」
「早く行こう?」

 ヴィクトール様はまん丸の瞳を輝かせてクレールと腕を組む。
 そりゃ、これがずっとなら、弟が欲しいと言うのも頷ける。
「到着したばかりで疲れているだろう。先にティータイムにしては如何かな?」
 エリアス様からガゼボへ誘ったが、ヴィクトール様は今すぐにクレールとりんご園に行きたいと言う。

「私も今すぐで構いませんよ」
 後から降りてきたマルティネス王子も、爽やかな笑顔で馬車から降り立った。

「今日は本当に息子もクララも連れて来てしまいました」
「是非、そうして頂けて、みんな喜んでおりますよ。では、ウチの馬車に乗り換えてりんご園へ向かいましょう」

 エリアス様も苦笑いをしながら、楽しそうな子供たちの気持ちを優先した。

「今日は沢山りんごを採りましょうね」
「りんご、食べられる?」
「今、とっても甘くて美味しいですよ」
「じゃあヴィクトールが、クレールお兄ちゃんのりんご採ってあげるね」
「それは楽しみです」

 クララ様と並んで二人の様子を伺う。
「クレールがパーティーの日以来、弟が欲しいと思うようになったのですよ」
「本当ですか? それは嬉しいです。ご予定は?」
「ぼくは発情期じゃないと妊娠できないので」
「ふふ、焦らずに……ですね」

 あれだけ懸念していたクララ様とも、あの日以来、とても仲良くなった。
 話すテンポも話題も、彼女はぼくのオメガ性も理解してくれる。
 知らないまま、心を閉ざさないでよかった。

 おかげで、今日という日がとても楽しくなりそうだ。
 クレールも……。
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