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二章~アシル・クローシャー編~
16 ロベール家へのトラウマ③
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クレールのベッドで並んで横になる。
一つのシーツを分け合って体を寄せた。
元々はぼくの部屋だったのを、エリアス様が子供用に誂えてくれたから、今では雰囲気が大分違う。
ベッドはそのまま同じものを使っているが、シーツはクレールにピッタリの淡いブルーに変わっている。
沢山並べられたクッションに顔を埋め、顔が付きそうなほど寄せ合って話をした。
「クレール、エリアス様だってアンナ様を憎んでいた。もしクララ様が同じような性格なら、たとえお父様の頼みであっても引き受けるはずなはないでしょう?」
そのお父様であっても、階段から突き落とされたあの現場に駆けつけ、アンナ様の断罪を執行した。公爵様とエリアス様、二人が安心だというなら、それを信じてみてもいいんじゃないかと、提案してみる。
「それは分かってます。アシルお母様が、側にいてくれますか?」
「勿論だよ。今度はぼくが君を守る番だから」
「……エリアスお父様の前で、わがままを言わないで良かったです」
「そんな、クレールはまだ六歳だ。もっとぼくたちを困らせたっていいんだ」
見た目は子供とはいえ、中はコーキ。ぼくとエリアス様への気の使い方を良く知っているし、喜ばせるのも誰よりも上手だ。
しかし、折角僕たちの子供になったのだから、もっと“今”を楽しんで欲しいとも思ってしまう。
コーキの過去は散々だったと聞いた。
それで今、赤ちゃんからの人生を歩んでいるということは、最初からやり直すためなのではないかと、クレールに伝える。
「そう……でしょうか……」
「きっと、そうだよ。コーキの性格が残ってるから、ずっとは無理かもしれないけど、たまには羽目を外すのだって大切だと思うよ」
「じゃあ、パーティーの日は楽しみます」
「そうしよう。ぼくもクララ様と話すのは初めてだから緊張してる。人見知りって、大人になっても直らないものだね」
「その時は、僕が助けます」
「むぅ……ぼくだって、クレールのママになったんだから、やれば出来るってところを見せたいの! きっと上手に振る舞ってみせるから、見ててよね」
二人で顔を見合わせて笑った。
あの頃から、こんなふうに話したかった。
「ねぇ、ありがとうね。生まれてきれくれて」
クレール越しにコーキを抱きしめた。
その時、ドアをノックする音が聞こえ、二人して驚いた。
こんな夜更けに誰かと思いきや、それはエリアス様だったのだ。
一つのシーツを分け合って体を寄せた。
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沢山並べられたクッションに顔を埋め、顔が付きそうなほど寄せ合って話をした。
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それで今、赤ちゃんからの人生を歩んでいるということは、最初からやり直すためなのではないかと、クレールに伝える。
「そう……でしょうか……」
「きっと、そうだよ。コーキの性格が残ってるから、ずっとは無理かもしれないけど、たまには羽目を外すのだって大切だと思うよ」
「じゃあ、パーティーの日は楽しみます」
「そうしよう。ぼくもクララ様と話すのは初めてだから緊張してる。人見知りって、大人になっても直らないものだね」
「その時は、僕が助けます」
「むぅ……ぼくだって、クレールのママになったんだから、やれば出来るってところを見せたいの! きっと上手に振る舞ってみせるから、見ててよね」
二人で顔を見合わせて笑った。
あの頃から、こんなふうに話したかった。
「ねぇ、ありがとうね。生まれてきれくれて」
クレール越しにコーキを抱きしめた。
その時、ドアをノックする音が聞こえ、二人して驚いた。
こんな夜更けに誰かと思いきや、それはエリアス様だったのだ。
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