【番外編スタート】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

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一章~伊角光希編~

82 何気ない一言

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「ゆっくり温まったら、改めて挨拶に行こう」
「それが良さそうです。他の人達へも、早く報告したいですね」
「体は、本当に平気なのか?」
「はい。ヒートが治まって、むしろスッキリしています」
「それなら良かったが、まだ発情期に入ったばかりだ。決して無理だけはしないで」

 エリアス様が髪を撫でる。淡いラベンダー色の髪が濡れて、毛先から雫が落ちた。僕からもエリアス様をじっと見つめると、お互いが引き寄せられるように口付けた。
 首から感じる痛みが、番になったのだと実感させてくれる。

 その後、全身を綺麗に洗ってくれ、部屋へと戻った。

 エリアス様はまじまじと、首の噛み跡を見つめている。
 そこには、痛々しいほど赤く染まった歯型が刻まれていた。

「この噛み跡を、私が……痛い思いをさせてしまったね」
「大丈夫です。まだヒリヒリと痛みますけど、でも、Ωにとって大好きな人に噛まれるのは一つの夢ですから」
 エリアス様が背後から抱きしめ、頸にキスをした。

 二人で話し合い、番になった報告は明日の朝にすると決めた。
「今夜はゆっくりと休もう」
「僕も、流石に動きたくないです」
 自嘲しながら言う。

「あぁ、本当にここまで長かった……」
 エリアス様が、フッと言葉を漏らした。
「何がですか?」
「好きなαに噛まれるのがΩの夢だと言ったね? それはαとて同じだ。好きなΩと番になるのがαの夢だ。やっと……やっと、私の夢が叶ったのだ」

 エリアス様の言葉に、違和感を覚えた。
 アシルとの番が叶い、喜んでくれている。
 何も不思議じゃない。しかし、頭の中で何かが引っかかる。

 脳内で、転生してからこれまでの出来事が走馬灯のように流れ出す。

 そこで、僕は一つの答えに辿り着いた。

 どうして思い付かなかったのだろう。
 全ての状況を把握出来て、計画通りに動ける人物は、一人しかいないじゃないか。

 パズルのピースがパチパチと頭の中で組み立てられていく。
 最後のピースがハマった時、僕は真っ直ぐに彼を見つめて言った。

「パーティーの日、僕に発情誘発剤を飲ませたのは、エリアス様ですね?」
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