【番外編スタート】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
82 / 221
一章~伊角光希編~

82 何気ない一言

しおりを挟む
「ゆっくり温まったら、改めて挨拶に行こう」
「それが良さそうです。他の人達へも、早く報告したいですね」
「体は、本当に平気なのか?」
「はい。ヒートが治まって、むしろスッキリしています」
「それなら良かったが、まだ発情期に入ったばかりだ。決して無理だけはしないで」

 エリアス様が髪を撫でる。淡いラベンダー色の髪が濡れて、毛先から雫が落ちた。僕からもエリアス様をじっと見つめると、お互いが引き寄せられるように口付けた。
 首から感じる痛みが、番になったのだと実感させてくれる。

 その後、全身を綺麗に洗ってくれ、部屋へと戻った。

 エリアス様はまじまじと、首の噛み跡を見つめている。
 そこには、痛々しいほど赤く染まった歯型が刻まれていた。

「この噛み跡を、私が……痛い思いをさせてしまったね」
「大丈夫です。まだヒリヒリと痛みますけど、でも、Ωにとって大好きな人に噛まれるのは一つの夢ですから」
 エリアス様が背後から抱きしめ、頸にキスをした。

 二人で話し合い、番になった報告は明日の朝にすると決めた。
「今夜はゆっくりと休もう」
「僕も、流石に動きたくないです」
 自嘲しながら言う。

「あぁ、本当にここまで長かった……」
 エリアス様が、フッと言葉を漏らした。
「何がですか?」
「好きなαに噛まれるのがΩの夢だと言ったね? それはαとて同じだ。好きなΩと番になるのがαの夢だ。やっと……やっと、私の夢が叶ったのだ」

 エリアス様の言葉に、違和感を覚えた。
 アシルとの番が叶い、喜んでくれている。
 何も不思議じゃない。しかし、頭の中で何かが引っかかる。

 脳内で、転生してからこれまでの出来事が走馬灯のように流れ出す。

 そこで、僕は一つの答えに辿り着いた。

 どうして思い付かなかったのだろう。
 全ての状況を把握出来て、計画通りに動ける人物は、一人しかいないじゃないか。

 パズルのピースがパチパチと頭の中で組み立てられていく。
 最後のピースがハマった時、僕は真っ直ぐに彼を見つめて言った。

「パーティーの日、僕に発情誘発剤を飲ませたのは、エリアス様ですね?」
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...