【番外編スタート】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

文字の大きさ
上 下
81 / 221
一章~伊角光希編~

81 泣き崩れたロラ

しおりを挟む
 二人とも気を失ったまま眠っていたものだから、その後は大変だった。

 夕食の時間になっても顔を見せない僕とエリアス様を心配して、ロラが部屋を訪ねた時、確かに気配は感じるのに姿が見えない。

 普段は掃除の時にしか入らない寝室であるが、万が一の事を考え部屋を覗くと、ベッドで真っ裸の二人が熟睡しているではないか。

 ロラはエリアス様を叩き起し、妊婦になんて事をしているのかと、説教をしたそうだ。
 そして暖かいシーツを手早く準備し、僕をぐるぐる巻きにした。じんわりと暖かくなった時、僕はようやく目を覚ました訳だが、目の前には勿論、ご立腹のロラが立ちはだかっていた。

 エリアス様を見ると、申し訳なさそうに僕を見ている。
 言い訳をする暇もなくロラは湯浴みの準備をし、僕たちを入浴させた。
 ここまでの手際の良さに感心している場合ではないが、とにかく話を聞いてくれとエリアス様と二人でロラを説得し、番になったことを告げると、今度は号泣し始めた。

「ロ、ロラ?」
「私もアシルも、突然の発情期にこうする他なかった。元々、次の発情期に番になると約束していたし、アシルは強いヒートに意識を失っていた。助けるためにも、最善の策が番になることだったのだ」
「僕も、エリアス様がこうしてくれないと、きっと赤ちゃん共々命を落としたかもしれません。このタイミングで番になれたことは本望です」

 どんなにロラに言い訳を重ねても、しばらくの間、ロラは泣きすぎて喋れない状態が続いた。

 広いバスタブの隣で、タオルに顔を押し当て泣いているロラに何度も謝る。
 僕もエリアス様も、ロラに悲しい思いをさせたくない。前触れもなく番になり、驚かせてしまった事には変わりない。

 赤ちゃんは今もお腹を蹴って元気そうです……と、誰に対しての励ましなのかも分からない言葉を掛けた時、ロラは泣きながら「おめでとうございます」と言ってくれた。

「怒ってるんじゃないのか?」
「そりゃ、裸出て寝ていたのは怒りましたけれども、番になられただなんて……私が一番に知ってしまい、申し訳ないですが、本当に嬉しいです」
「ロラ……僕は、ロラに一番に伝えられて良かったと思ってます」
「その通りだ。アシルが記憶を失ってから、ずっとロラが支えてくれていた。私も、感謝している」

 ロラはさらに泣いて「とんでもないお言葉……」と言ったきり、喋れ無くなってしまった。
 お辞儀だけしてバスルームを後にした。
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

処理中です...