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一章~伊角光希編~
71 エリアス様の意外な一面
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異世界に転生して、ようやく平穏な生活を送れるようになった。
臨月に入り、屋敷中がソワソワし始めている。
エリアス様は頻繁に医師を呼びつけては、お腹の様子を見させる。
「どうだ? 産まれそうか?」
数日おきに言われて、医師も困り顔。
「まだお腹が降りてきてないからねぇ。まだ一週間は様子を見た方がいいなぁ」
「こんなに腹が大きくなったのにか? 昨日も早く出たいと腹を蹴っていた」
「あぁ、動いているならまだまだだね」
医師は付き合いも長いため、失笑も堂々とする。
僕も流石に今日は呼びつけなくても良いのでは? と言ったのだが、エリアス様は「念には念を」で来させたのだ。
「毎回すみません」と謝ると、医師は「良いんだよ。こんな落ち着きのない坊ちゃんを見るのは初めてだから、新鮮で面白い」と笑っている。
確かに、いつもクールで計算高いエリアス様がじっとしていられないのは、意外な一面ではある。
父親になるのが楽しみで仕方ないようだ。
僕としては、ちゃんと男の子を産めるのか。そっちの方が心配だ。
きっと、こういう世界は後継者を産まなければ意味がない。
前世の日本までは医学も発展していないため、結果が分かるのが産まれてからなんて……。
勿論、早く会いたいけれど、今はプレッシャーの方が大きい。
ベルクール邸は、先日の一件以来、とても明るくなった。
いろんな侍女が僕のお腹を触りに来てくれるし、体調を気遣ってくれる。
アンナ様からの柵が、如何に強烈だったかを思い知らされた。
キリアン様追放の後から、アンナ様は部屋から出てくる姿を誰も見ていないと言う。
エリアス様から悪事の全てを暴かれ、その上、実家からは妹の結婚を知らされなかった。
しかも自分は婚約破棄をされたのに、妹は隣国の第三王子の元に嫁ぐのだ。
「クララはΩでね、健気で良い子だ。アシルも会ったことはあるが、きっと忘れてしまっているだろう」
アンナ様は、クララさんに対しても横柄な態度で接していたのだろうと思っていると、察したようにエリアス様がそのようなことを口にした。
「アンナは自分がαなのが誇りなのだ。しかしだからといってΩを馬鹿にするのは筋違いだ。クララには、どうか幸せになって欲しい」
結局、悪者はアンナ様だけだったような気もする。
キリアン様は、パーティーの後からアンナ様と体の関係を持っていたそうだが、特に手を組むようになったのは僕が階段から突き落とされたあたりから出そうだ。
これはルシィの証言で明らかになったものだ。
やはりキリアン様は。パーティーの日の事件には関係がなかった。階段から落とされたのも、キリアン様は加担していなかったということか。
ルシィとライリーはまた一緒に働けるようになったのを喜んでいた。
ルシィの腿の鞭打ちの痕は、治療が施され、もう痛みもないとのことだった。
ライリーは逃げるように仕事を辞めたものの、毎日毎日悪夢を見ていたという。
アシルを突き落とし、下手をすれば人を殺めるところだったと、後から後から恐怖と後悔に襲われる。ここを去ってから、一晩もぐっすりと眠れた日はなかった言った。
僕はライリーにお腹を触ってもらった。
「この辺をね、元気に蹴ってくれるんだ」
よく赤ちゃんに蹴られる辺りに手を添えされると、話を聞いていたように足の形が飛び出した。
「わぁ!!」と表情が明るくなったライリー。
「もう、心配いらないからね。僕は絶対にこの子を元気に産んでみせるから」
そういうと、ライリーは泣き出した。泣きながら何度も「ごめんなさい」と謝った。
ライリーは脅されてやったのだ。立場を利用して、断れなく仕向けていく。
その非道な手口に、憤りを覚える。
クララさんの結婚がいつなのか、聞いても良いのだろうか。
しかしエリアス様なら、僕がアンナ様に早く出ていって欲しいと思っているのがバレそうで、聞けないでいる。
実家に帰ったら、アンナ様はどうなるのだろう。
フッと疑問に思ってそれはエリアス様に尋ねた。
「恥晒しの娘を、これ以上外に出すわけにはいかないと仰っていてね、二度とロベール邸から出さないそうだよ」
それって、軟禁では……とは返さなかった。
臨月に入り、屋敷中がソワソワし始めている。
エリアス様は頻繁に医師を呼びつけては、お腹の様子を見させる。
「どうだ? 産まれそうか?」
数日おきに言われて、医師も困り顔。
「まだお腹が降りてきてないからねぇ。まだ一週間は様子を見た方がいいなぁ」
「こんなに腹が大きくなったのにか? 昨日も早く出たいと腹を蹴っていた」
「あぁ、動いているならまだまだだね」
医師は付き合いも長いため、失笑も堂々とする。
僕も流石に今日は呼びつけなくても良いのでは? と言ったのだが、エリアス様は「念には念を」で来させたのだ。
「毎回すみません」と謝ると、医師は「良いんだよ。こんな落ち着きのない坊ちゃんを見るのは初めてだから、新鮮で面白い」と笑っている。
確かに、いつもクールで計算高いエリアス様がじっとしていられないのは、意外な一面ではある。
父親になるのが楽しみで仕方ないようだ。
僕としては、ちゃんと男の子を産めるのか。そっちの方が心配だ。
きっと、こういう世界は後継者を産まなければ意味がない。
前世の日本までは医学も発展していないため、結果が分かるのが産まれてからなんて……。
勿論、早く会いたいけれど、今はプレッシャーの方が大きい。
ベルクール邸は、先日の一件以来、とても明るくなった。
いろんな侍女が僕のお腹を触りに来てくれるし、体調を気遣ってくれる。
アンナ様からの柵が、如何に強烈だったかを思い知らされた。
キリアン様追放の後から、アンナ様は部屋から出てくる姿を誰も見ていないと言う。
エリアス様から悪事の全てを暴かれ、その上、実家からは妹の結婚を知らされなかった。
しかも自分は婚約破棄をされたのに、妹は隣国の第三王子の元に嫁ぐのだ。
「クララはΩでね、健気で良い子だ。アシルも会ったことはあるが、きっと忘れてしまっているだろう」
アンナ様は、クララさんに対しても横柄な態度で接していたのだろうと思っていると、察したようにエリアス様がそのようなことを口にした。
「アンナは自分がαなのが誇りなのだ。しかしだからといってΩを馬鹿にするのは筋違いだ。クララには、どうか幸せになって欲しい」
結局、悪者はアンナ様だけだったような気もする。
キリアン様は、パーティーの後からアンナ様と体の関係を持っていたそうだが、特に手を組むようになったのは僕が階段から突き落とされたあたりから出そうだ。
これはルシィの証言で明らかになったものだ。
やはりキリアン様は。パーティーの日の事件には関係がなかった。階段から落とされたのも、キリアン様は加担していなかったということか。
ルシィとライリーはまた一緒に働けるようになったのを喜んでいた。
ルシィの腿の鞭打ちの痕は、治療が施され、もう痛みもないとのことだった。
ライリーは逃げるように仕事を辞めたものの、毎日毎日悪夢を見ていたという。
アシルを突き落とし、下手をすれば人を殺めるところだったと、後から後から恐怖と後悔に襲われる。ここを去ってから、一晩もぐっすりと眠れた日はなかった言った。
僕はライリーにお腹を触ってもらった。
「この辺をね、元気に蹴ってくれるんだ」
よく赤ちゃんに蹴られる辺りに手を添えされると、話を聞いていたように足の形が飛び出した。
「わぁ!!」と表情が明るくなったライリー。
「もう、心配いらないからね。僕は絶対にこの子を元気に産んでみせるから」
そういうと、ライリーは泣き出した。泣きながら何度も「ごめんなさい」と謝った。
ライリーは脅されてやったのだ。立場を利用して、断れなく仕向けていく。
その非道な手口に、憤りを覚える。
クララさんの結婚がいつなのか、聞いても良いのだろうか。
しかしエリアス様なら、僕がアンナ様に早く出ていって欲しいと思っているのがバレそうで、聞けないでいる。
実家に帰ったら、アンナ様はどうなるのだろう。
フッと疑問に思ってそれはエリアス様に尋ねた。
「恥晒しの娘を、これ以上外に出すわけにはいかないと仰っていてね、二度とロベール邸から出さないそうだよ」
それって、軟禁では……とは返さなかった。
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