44 / 221
一章~伊角光希編~
44 部屋割り
しおりを挟む
もうすぐエリアス様とずっと一緒にいられると思うと、心が弾む。
このまま悪阻も治まれば、庭を散歩したり、街に出掛けたりしたい。
赤ちゃんの準備も、ある程度は進めてあると言った時は驚いた。あれだけ忙しい毎日を送っているのに、そんな時間がいつあったのだと瞠目としてしまう。
というのも、この世界では家具などはオーダーメイドが主流のようなのだ。
貴族に限った話なのかもしれないが、この屋敷の物は全てがそうだった。
エリアス様は、今の僕の部屋を子供用にしてはどうかと言う。
「他にも空いている部屋はあるが、ここから離れすぎている。アシルの部屋は私も気に入っているし、行き来しやすいからね」
「僕の部屋は庭の花壇も眺められる良い部屋です。それは賛成です」
僕の部屋に赤ちゃんのベッドを置くなら、手っ取り早いのもあるのだろうと思った。
僕は母と子は、ある程度大きくなるまで(十歳くらいまで?)は、同じ部屋で過ごすのだとばかり思っていたから。
けれども、そうにしてはさっきからエリアス様の話が噛み合わない。
エリアス様は赤ちゃん専用の部屋……というニュアンスで話を進めているように感じる。
「あの……すみません。聞きたいのですが、僕の部屋を赤ちゃんの部屋にすると……」
「ああ、さっきからそのように説明しているが……」
「えぇっと……その場合、僕が住む部屋は……どうなるのかなって……思いまして……」
エリアス様が何を言ってるんだ? という顔をしている。
『コーキ、エリアス様はきっと……』
「ここに決まっているだろう?」
アシルが喋るのとほぼ同時に、エリアス様が喋った。
ずっと、この部屋にいて良いってこと……だよね?
「ここ……?」
「嫌か?」
「嫌じゃないです!! ここにいたいです!!」
「突然、何を言い出すのかと思ったじゃないか」
「ごめんなさい。悪阻が治まれば、別々の部屋に戻ると思い込んでいました」
「そんなことを考えていたのか。それで? 本当は自分の部屋に帰りたくない?」
「悪阻が酷い時に、エリアス様の匂いに助けられていたのは本当です。でも、一人の時間も、ここなら気分が違うというか……エリアス様の香りに包まれていて、ずっと心地いいんです。それで……んっ?」
喋っている途中で手を引かれ、口付けられた。
「ふ、ん……エリアス、さま……?」
「アシルも、何時だって甘いいい香りがしている。私は仕事を終え、この部屋に入るのが楽しみで仕方なかった。ドアを開けた瞬間から、君の香りが充満しているからね。悪阻で苦しんでいるから言えなかったけど、本当は毎日抱きたいのを我慢していたんだ」
エリアス様の言葉に、嬉しくてまたΩのフェロモンを撒いてしまったようだった。
唇を求めるエリアス様が、ぐっと僕を抱きしめ、キスに集中する。
何ヶ月も我慢させていた。
僕だって本当は触れて欲しい。
性的なキスは避けていたとエリアス様が言う。自分を抑えられなくなるから。
「エリアス様、僕はもう大丈夫です。この香りに包まれていると、もう悪阻の気持ち悪さを感じません」
「アシル、今夜は少し触れさせてくれ。決して無理はさせない」
エリアス様と寝室へと移動した。
二人とも、気持ちが高揚していて既に息が荒い。寝室への移動さえも時間を惜しむようにキスを続けた。
このまま悪阻も治まれば、庭を散歩したり、街に出掛けたりしたい。
赤ちゃんの準備も、ある程度は進めてあると言った時は驚いた。あれだけ忙しい毎日を送っているのに、そんな時間がいつあったのだと瞠目としてしまう。
というのも、この世界では家具などはオーダーメイドが主流のようなのだ。
貴族に限った話なのかもしれないが、この屋敷の物は全てがそうだった。
エリアス様は、今の僕の部屋を子供用にしてはどうかと言う。
「他にも空いている部屋はあるが、ここから離れすぎている。アシルの部屋は私も気に入っているし、行き来しやすいからね」
「僕の部屋は庭の花壇も眺められる良い部屋です。それは賛成です」
僕の部屋に赤ちゃんのベッドを置くなら、手っ取り早いのもあるのだろうと思った。
僕は母と子は、ある程度大きくなるまで(十歳くらいまで?)は、同じ部屋で過ごすのだとばかり思っていたから。
けれども、そうにしてはさっきからエリアス様の話が噛み合わない。
エリアス様は赤ちゃん専用の部屋……というニュアンスで話を進めているように感じる。
「あの……すみません。聞きたいのですが、僕の部屋を赤ちゃんの部屋にすると……」
「ああ、さっきからそのように説明しているが……」
「えぇっと……その場合、僕が住む部屋は……どうなるのかなって……思いまして……」
エリアス様が何を言ってるんだ? という顔をしている。
『コーキ、エリアス様はきっと……』
「ここに決まっているだろう?」
アシルが喋るのとほぼ同時に、エリアス様が喋った。
ずっと、この部屋にいて良いってこと……だよね?
「ここ……?」
「嫌か?」
「嫌じゃないです!! ここにいたいです!!」
「突然、何を言い出すのかと思ったじゃないか」
「ごめんなさい。悪阻が治まれば、別々の部屋に戻ると思い込んでいました」
「そんなことを考えていたのか。それで? 本当は自分の部屋に帰りたくない?」
「悪阻が酷い時に、エリアス様の匂いに助けられていたのは本当です。でも、一人の時間も、ここなら気分が違うというか……エリアス様の香りに包まれていて、ずっと心地いいんです。それで……んっ?」
喋っている途中で手を引かれ、口付けられた。
「ふ、ん……エリアス、さま……?」
「アシルも、何時だって甘いいい香りがしている。私は仕事を終え、この部屋に入るのが楽しみで仕方なかった。ドアを開けた瞬間から、君の香りが充満しているからね。悪阻で苦しんでいるから言えなかったけど、本当は毎日抱きたいのを我慢していたんだ」
エリアス様の言葉に、嬉しくてまたΩのフェロモンを撒いてしまったようだった。
唇を求めるエリアス様が、ぐっと僕を抱きしめ、キスに集中する。
何ヶ月も我慢させていた。
僕だって本当は触れて欲しい。
性的なキスは避けていたとエリアス様が言う。自分を抑えられなくなるから。
「エリアス様、僕はもう大丈夫です。この香りに包まれていると、もう悪阻の気持ち悪さを感じません」
「アシル、今夜は少し触れさせてくれ。決して無理はさせない」
エリアス様と寝室へと移動した。
二人とも、気持ちが高揚していて既に息が荒い。寝室への移動さえも時間を惜しむようにキスを続けた。
40
お気に入りに追加
1,683
あなたにおすすめの小説
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れているのを見たニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆明けましておめでとうございます。昨年度は色々ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。あまりめでたくない暗い話を書いていますがそのうち明るくなる予定です。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約破棄される悪役令嬢ですが実はワタクシ…男なんだわ
秋空花林
BL
「ヴィラトリア嬢、僕はこの場で君との婚約破棄を宣言する!」
ワタクシ、フラれてしまいました。
でも、これで良かったのです。
どのみち、結婚は無理でしたもの。
だってー。
実はワタクシ…男なんだわ。
だからオレは逃げ出した。
貴族令嬢の名を捨てて、1人の平民の男として生きると決めた。
なのにー。
「ずっと、君の事が好きだったんだ」
数年後。何故かオレは元婚約者に執着され、溺愛されていた…!?
この物語は、乙女ゲームの不憫な悪役令嬢(男)が元婚約者(もちろん男)に一途に追いかけられ、最後に幸せになる物語です。
幼少期からスタートするので、R 18まで長めです。
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる