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フォーリア8歳、アシェル18歳 ——出会い——

気づいてしまった感情 ーsideaアシェル

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 フォーリアが飲ませてくれたハーブティーのお陰なのか、それともフォーリアが側に居てくれたお陰なのかは分からない。自然と呼吸が整い、眠ることが出来た。

 久しぶりにいい夢を見た。日差しがキラキラと降り注ぐ草原で、俺とフォーリアが遊んでいる夢だった。夢の中のフォーリアは大人になっていて、振り返ると愛らしさは残したまま、雪豹らしい聡明な顔立ちをしていた。それでもふわふわの耳と尻尾は相変わらずで、抱きしめて耳を弄ると笑いながら叱られる。そんな夢だった。

 目が覚めると、頭元から入る日差しは薄らとオレンジ色に変わっていた。フォーリアが布団を掛けてくれたようだ。お陰で体を冷やさずに済んだ。
 どのくらい眠っていたのだろう。熟睡出来たからか、体がスッキリしている。ヒートもようやく治ったようだ。

 フォーリアは帰っただろうか。見られたくない姿を晒してしまった。幻滅してもう来ないかもしれない。
 ゆっくりと起き上がり、サイドテーブルに置いてある水を飲む。今までで一番酷い症状だった。身体中が汗と精液でベタベタになっている。

(シャワー浴びたい……)
 気怠さがまだ抜けきっていない。まだ動きたくないな。
 せっかく起き上がれたのに、また横になってしまった。

 シーツも替えないと夜寝られないな。仰向けになったまま、するべき事を整理するが肝心の体が動かない。

 ヒートを起こした時を思い出してみた。俺がフォーリアの額に口付けた後、直ぐにヒートが始まった。フォーリアを抱きしめていると自然とキスしたくなった。幼い頃の弟と重ね合わせているだけだと思っていたが、弟を抱きしめてもキスをしたいなんて思った記憶はない。

 いくらフォーリアが可愛いからと言っても、自分の子供でもあるまいし。フォーリアに対する気持ちが自分でもよく分からなくなってきた。

 でもフォーリアがアルファかもしれないと言ったのは本音である。フォーリアを抱きしめていると、何となくそう感じた。オメガではないオーラを感じでもしたのか。

 フォーリアが俺に抱かれていると気持ちがふわふわすると言っていたが、俺も本当に同じになるのだ。頭がボーッとするような、安心できるような……。とにかく一時も離れず触れていたいと言う気持ちになる。それに……。

(もしもフォーリアがアルファだったら、番になれる)

 なんて考えが突然生まれた。万が一フォーリアと番になるとすれば、十年は先の話になるだろう。この苦悩が後十年も続くと考えただけでうんざりしてしまう。かといって、番になりたい誰かがいるわけではないし……。
 
 って!! これじゃあまるで、俺がフォーリアを恋愛対象として見ているみたいじゃないか。俺はいつから変態になったんだ。

 フォーリアと一緒に居たいとか、抱きしめたいとは思うが、それはまた別の種類のものだ。そう自分に言い聞かせ、今度こそ本当に立ち上がった。


「アシェルさん、起きられました?」
 部屋を出ると、シャワールームからフォーリアが出てきた。まだ居てくれたのか!!

「まだ、帰らなくて大丈夫なのか?」
大人ぶって心にもないことを言う。本当は帰ってなんて欲しくない。

「はい、今勝手にお風呂を沸かしたので、入ってください。アシェルさんがお風呂に入っている間にシーツを交換しておきますね」
「そんなの、しなくていい! いつも自分でしてるから、シャワーの後でやるから」

 ヒート後のシーツ交換なんて毎回自分でやっている。俺の汗と精液に塗れたシーツをフォーリアに交換させるなんて、させたくない。

 それでもフォーリアは「体調が悪い時くらいは頼ってください」と言って、新しいシーツの場所を尋ねてきた。使用人のように扱いたくはなかったが、仕方なくシーツの場所を教えた。洗濯は自分でするから置いておくようにと、くれぐれも頼んでバスルームに入った。

 シャワーを浴びながら、フォーリアが今も部屋に居てくれていると思うだけで気持ちがソワソワして落ち着かない。
 ヒートも治ったし、フォーリアが帰ってしまう前にもう一度抱きしめたいと言う想いが溢れている。

 とにかく今、一人じゃないのが本当に嬉しい。
 三日間一人きりだったからか、余計にそう感じた。やはり弱っている時は心細い。

 それに今回は下半身の疼くのが抜いても抜いても治らず、味わったことのないほどの熱に魘された。フォーリアがそばに居たいと言ったが、流石に自慰行為を見せるわけにはいかない。これさえなければ隣にいてもらえたのに。

 そういえば、借りたベストはもう持って帰るのだろうか。もう少し借りておきたい。フォーリアの香りを本能で求めているのだ。何ならもっと他にも何か借りたいくらいだ。

 シャワーから出ると、フォーリアが帰る準備をしていた。駆け寄って濡れた髪のまま抱きしめる。
「もう、帰るんだな」
 どうしよう。帰らせたくない。でも遅くなっても危険だ。ほんの少しだけでも……
(一緒に居たい)
 そんなふうにフォーリアを困らせたくはなくて、グッと堪えた。

「すっかり落ち着きましたね。明日も来ますね!」
 私を抱きしめたまま、フォーリアが言った。
 
「あぁ、明日も待ってる。気をつけて帰るんだぞ」
 抱きしめた腕を解いた。本当はまた額にキスをしたかったが、これが原因でヒートを起こせばまた苦しい時間に戻ってしまう。これからはスキンシップも好き勝手には出来ないと思うと、とても残念に思っている自分がいた。

 部屋へ戻るとベッドの上にフォーリアのベストが畳んで置かれていた。俺が落ち着くと言ったから、気を遣ってくれたのか。本当に、俺を喜ばせるのが上手い子だ。ベッドサイドに座ってベストの匂いを嗅いだ。

 フォーリアの匂いを確認した途端、まだ下半身が疼いた。心臓が激しく伸縮する。後孔の奥から濡れてきたのが分かった。
(まただ……)
 フォーリアにキスをした時、フォーリアの匂いを嗅いだ時、予定外のヒートを起こしたのは全てフォーリアに触れた時なのだ。

 考えてみれば、初めてフォーリアに会った時もヒートを起こした時だった。あれはもしかすると、俺とフォーリアが出会う前触れだったのか。それならば、フォーリアは俺の【運命の番】と言うことなのか……?


 折角フォーリアが整えてくれたベッドメイキングを汚したくはない。急いでシャワールームに飛び込み、自分で昂りを扱いた。こんなにも求めてしまうなんて……もうこれ以上は逃れられないと悟った。フォーリアへの感情、そしてフォーリアが運命の番だと気付かないフリはもう出来ない。

 バース性の検査前の子供相手でもこんなに反応するとは知らなかったが、ヒートの原因が他に思い当たらない。

 フォーリアはオメガになりたいと言っていたが、俺と同じような苦しみを味わせたくはない。それに、あの時フォーリアはアルファだと思うとポロリと言ってしまったのは、本能的に番として求めたからかもしれない。

 子供相手に本気の恋愛感情を抱くなんて、考えてもみなかった。でも自分で認めてしまうと思いの他、気持ちは楽になった。


 ただ、フォーリアにはこの気持ちは打ち明けられない。せめてバース性の検査が終わるまでは……。

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