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7 夏祭り
7-4
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「はい、いいわよ」
着付け完了の合図に、後ろから母に帯を叩かれる。
「どう、苦しく無い?」
「うん、大丈夫、ありがとう」
姿見に映しながら、くるくると回り全身を確認する。
おかしな所は無く、しっかりと着付けられている浴衣を見ると、やはり持つべきものは、趣味で着付け教室なんぞに通っていた母だなぁ、としみじみ思う。
手前味噌で申し訳無いが、浴衣や着物と行った和服の類は、我ながら良く似合っていると思う。これだけは姉に負けないのだが、どうして上手く着こなせるのかには触れないで頂きたい。
「ほら、お父さんにも見せてらっしゃい」
「は~い」
テンションの上がったまま二つ返事で、居間で食事をしている父を直撃する。
「お父さん、見て見て~」
父は鮭に向かおうとしていた箸を置いて、こちらに目線を向けてくれた。
「どう? 似合うでしょ?」
私の言葉に、父の頬が緩む。
「おう、よく似合ってるよ。可愛いぞ」
「うふふふふふ」
お褒めの言葉を頂いて、いつに無く上品な笑いが出る。
「気持ち悪い笑い方しないの」
母に一蹴される。
あまりにも随分だ……。
「気持ち悪いは酷くない? ねぇ、お父さん、可愛いもんね?」
「駄目よ、お父さんは娘の晴れ姿だったら何でもいいんだから、当てになんないわよ」
カラカラと笑いながらあっけらかんと話す母。
こう言う所は、母と姉は本当にそっくりだ。
「いや、でも、本当に似合ってるぞ。和葉は和服が似合うな。ほら、母さん、七五三の時、覚えてるか?」
「はいはい、覚えてますよ」
母に軽く流されても、父はめげずに私の思い出を回顧している。
「和葉も大きくなったなぁ。あんなに小さかったのに、早いもんだ」
休めていた箸を再び動かし、鮭を細かく切り分けながら、父はしみじみと私を見て呟いた。
「和葉も、あっと言う間に成人式かなぁ」
「何言ってんの、まだ気が早いわよ」
少しだけしんみりとしながら、鮭を口に運び、ビールを啜る父に、母の容赦の無いツッコミが飛ぶ。
「和葉、あんた髪どうする? 時間あるの?」
時計を見ると、時刻は7時少し前。
待ち合わせの時間は8時半だが、少し早めに向かって、縁日の雰囲気を一足早く味わうのも悪く無いと思っていた。だが、折角の浴衣に対し、その他がいつも通りでは、浴衣に失礼かもしれない。
「ちょっとやって」
「はいはい、そこ座ってなさい。櫛持ってくるから」
母の指示に大人しく従い、居間のソファに腰を掛ける。
「それにしても、お父さん、あんたの和服姿よっぽど気に入ってるのね」
櫛を手に戻って来た母が、小声で呟く。
「そう?」
「あんた分かんないの?」
「いや、喜んでるのは分かるけど、割といつも通りじゃない?」
「あんたは本当にそういう所鈍いわよね。お父さんもそう。全っ然人の変化に気付かないの。本当、あんたそっくり」
母が実に楽しそうに、私達の残念な共通点を語る。
言いたい事は分かるが、父が私にそっくりでは、順序があべこべだろう。
母の手と櫛が、私の髪を梳いていく。
小さい頃はお風呂上がり等に、よく母にこうして髪を梳いて貰ったものだ。
幼心にも、髪を梳いて貰っている時間が好きな自分を、根っからの女の子だなと実感したものだ。
着付け完了の合図に、後ろから母に帯を叩かれる。
「どう、苦しく無い?」
「うん、大丈夫、ありがとう」
姿見に映しながら、くるくると回り全身を確認する。
おかしな所は無く、しっかりと着付けられている浴衣を見ると、やはり持つべきものは、趣味で着付け教室なんぞに通っていた母だなぁ、としみじみ思う。
手前味噌で申し訳無いが、浴衣や着物と行った和服の類は、我ながら良く似合っていると思う。これだけは姉に負けないのだが、どうして上手く着こなせるのかには触れないで頂きたい。
「ほら、お父さんにも見せてらっしゃい」
「は~い」
テンションの上がったまま二つ返事で、居間で食事をしている父を直撃する。
「お父さん、見て見て~」
父は鮭に向かおうとしていた箸を置いて、こちらに目線を向けてくれた。
「どう? 似合うでしょ?」
私の言葉に、父の頬が緩む。
「おう、よく似合ってるよ。可愛いぞ」
「うふふふふふ」
お褒めの言葉を頂いて、いつに無く上品な笑いが出る。
「気持ち悪い笑い方しないの」
母に一蹴される。
あまりにも随分だ……。
「気持ち悪いは酷くない? ねぇ、お父さん、可愛いもんね?」
「駄目よ、お父さんは娘の晴れ姿だったら何でもいいんだから、当てになんないわよ」
カラカラと笑いながらあっけらかんと話す母。
こう言う所は、母と姉は本当にそっくりだ。
「いや、でも、本当に似合ってるぞ。和葉は和服が似合うな。ほら、母さん、七五三の時、覚えてるか?」
「はいはい、覚えてますよ」
母に軽く流されても、父はめげずに私の思い出を回顧している。
「和葉も大きくなったなぁ。あんなに小さかったのに、早いもんだ」
休めていた箸を再び動かし、鮭を細かく切り分けながら、父はしみじみと私を見て呟いた。
「和葉も、あっと言う間に成人式かなぁ」
「何言ってんの、まだ気が早いわよ」
少しだけしんみりとしながら、鮭を口に運び、ビールを啜る父に、母の容赦の無いツッコミが飛ぶ。
「和葉、あんた髪どうする? 時間あるの?」
時計を見ると、時刻は7時少し前。
待ち合わせの時間は8時半だが、少し早めに向かって、縁日の雰囲気を一足早く味わうのも悪く無いと思っていた。だが、折角の浴衣に対し、その他がいつも通りでは、浴衣に失礼かもしれない。
「ちょっとやって」
「はいはい、そこ座ってなさい。櫛持ってくるから」
母の指示に大人しく従い、居間のソファに腰を掛ける。
「それにしても、お父さん、あんたの和服姿よっぽど気に入ってるのね」
櫛を手に戻って来た母が、小声で呟く。
「そう?」
「あんた分かんないの?」
「いや、喜んでるのは分かるけど、割といつも通りじゃない?」
「あんたは本当にそういう所鈍いわよね。お父さんもそう。全っ然人の変化に気付かないの。本当、あんたそっくり」
母が実に楽しそうに、私達の残念な共通点を語る。
言いたい事は分かるが、父が私にそっくりでは、順序があべこべだろう。
母の手と櫛が、私の髪を梳いていく。
小さい頃はお風呂上がり等に、よく母にこうして髪を梳いて貰ったものだ。
幼心にも、髪を梳いて貰っている時間が好きな自分を、根っからの女の子だなと実感したものだ。
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