HEAVENS HEARTS

HI-ROCKS

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SPEED 01 加速の別離

SPEED 01-02

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「カル兄ぃもヤラレたんか」

遅まきながら追いついたエルナの顔は満面の笑みが支配。

「何ニヤニヤしとんねんウットウシイのぉ!」

「抜かれたんがアタシだけやったらカッコ悪いやんか?それに何より、あんなスゴイ奴等に会えたんが嬉しくてさ」

「ああ、世のナカ広いでぇ。ああもレベルが違うと腹も立たんわ」

たった数分間の出来事に高揚するカルナとエルナは、クールダウンを得る為、山頂付近の駐車場に滑り込んだ。




「カル兄ぃ……さっきの四輪(コルベット)や」

「丁度ええわ、どんな奴が転がしとったんかツラ拝みに行こか」

「負けた腹癒せにってのは勘弁してや」

「何でそんなカッコ悪いマネせなアカンねん」

「ホンマかいなぁ、目ぇ笑ってへんでぇ」

二人はコルベットから距離を取った場を陣取り、視線を対象に向けた。

「六十九年型コルベット・スティングレーか。人のこと言えんが今時シブイの転がしとんな」

「違うんは車体の色ぐらいで二台とも同じ改造(イジ)り方みたいや。あっ!」

赤(レッド)コルベットと同色のロングコートを羽織る男が、ドアを開き車外に。

「スティングレー使いの割にゃえらいヤサ男やな」

「また負けたなカル兄ぃ。男前や」

「何がや!お前シバクぞ!」

「そんな本気で怒ったら認めたも同然やで」

次いで開かれる黒(ブラック)コルベットのドア。

「おっ!ホラ、カル兄ぃ」

「本命の登場や、後(ケツ)に付きながらもリードしとったんは黒って感じやったからな。どんなゴツイ野郎が出て……!お……お、女ぁ!?」

「あんなゴッツイ運転しとったんがオンナのヒトやったなんて……スゴイなぁ、カッコええなぁ……なぁ、カル兄ぃ、カル兄ぃ?オイ!」

無反応を見せていたカルナの顔が突如エルナに回送、満面の笑みを浮かべた。

「完敗やエルナ、お前の完璧な敗北や。髪の色だけは似たようなボルドー系やけどお前ではあの女の足元にも及ばん。ベッピンさんや」

「ナメとんかっ!さっきの仕返しのつもりか?カル兄ぃと違って心が広いから綺麗なもんはキレイって素直に認めるっちゅうねん。やのにその言い草は何や、ムカつくっちゅうねん!大体カル兄ぃは昔から…」

「わかった、わかったってや。それよりオンナがコッチ来よったで」

エルナのいつ終わるともない愚痴を止め、カルナは目線を女へと振った。

「何の用やろ?」

「さあな、何かオモロなりそうやな」

黒いロングコートを翻すオンナの視線が二人に。

「さっきの強引な抜き方(パス)、ゴメンなさいね」

「強引なことあらへん、呆気に取られる程スムーズやったで姉チャン」

「そうや!感動で鳥肌が立ったもん!」

女の瞳に敵意がないのを感じ取り、二人は讃美を送った。

「私の名前は月華、ヨロシクね」

「ゲッカ?」

「珍しい名前でしょ?」

「そうか?昔、近所に同じ名前の奴が居(お)ったからな」

「へぇ、どんな人?」

興味深げに身を乗り出す月華と名乗る女。

「それがスッゴイ!乱暴で荒っぽくて……どんな形容詞も生温くするような奴で、アンタとは似ても似つかんタイプやった。なぁ?」

「確かに……男相手でも負けたトコ見たことなかったなぁ……」

「どうした?苦虫噛み潰したような顔して」

女の表情の曇りを見て取りカルナは問うた。

「え!?うん……別に。ただ、自分と同じ名前の人がそう言われると……チョットね……」

「気に病むことないで、名が一緒でも歩む人生は別やからな。とは言え、初めて逢ったような気がせぇへんな。これが俗にいう前世で一緒やったって感じか?」

「出た出た、出たでぇ!妹の居(お)る前で堂々とナンパってかぁ?よくもまぁヌケヌケと」

「おいおいエルナ君、何か刺があるね。産まれてこのかた一度たりともナンパの覚えがないこの僕に」

「何やその人を喰った気味悪い喋り方は!」

「英雄色を好むってのがあるやろ?アレ俺が思うに、英雄は敵が多く常に生命危機に晒されとるから、子孫を残そうとする本能が働くんちゃうかと……どうやろ?」

「アホや……」

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