HEAVENS HEARTS

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SPEED 01 加速の別離

SPEED 01-01

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HEAVENS HEARTS

lock back upon the past

LIVE 1987




―ん?ヨツワ(四輪)?-

革ジャンに身を包みZⅠ(バイク)を駆るカルナは、背後から徐々に迫り来る赤と黒の二台の四輪を、バックミラーの世界にて捉えた。

―俺達を煽ってるつもりなんか?-

「エルナ!お前のケツにうるさいハエが集ってんぞ!」

エルナと呼ばれた少女がハーレーダビッドソンを疾走させつつ、後ろを振り返る。

二つの瞳に大写しとされる追撃者の造形(かたち)ー

「コイツ等……引き離したろうやカル兄ぃ!」

「どうでもええけどカル兄ぃって呼び方ハズいからヤメろや」

「ホンマどうでもええ話やな……で、どうすんのやコイツ等?」

「勿論チギル!乗り替えたばっかのハーレーでついてこられるか?」

「大丈夫や問題ナイ!こんなワインディング(峠道)でヨツワ(四輪)に抜かれたらシャレにならんしな」

「オッシャ!シッカリ喰い付いてこいや!」

「カル兄ぃこそコケ(転倒)んなや!」

カルナとエルナはスロットルを同時に全開(フルオープン)。重なる(ダブる)排気音(エキゾーストノート)にて辺りの風景を切り裂いた。

すると、後方の二台も大気揺さぶる四輪特有の排気音を絞り出し、後衛を務めるエルナに急接近、牙を剥いた。




ーは……速い!こんなにオチョクられたん初めてや……アカン……アタシの腕(テク)じゃ……ー

エルナが悟ったその瞬間、二台の四輪が仕掛け、凄まじい勢いでハーレーを置き去る。

ー……次元(スピードレンジ)が違う……これ程アッサリ抜かれたら巻き返す気も起こらん……カル兄ぃ笑ってんのやろうなぁ……ー

二台の四輪は、エルナを追い越(パス)した速度を殺すことなく、次なる標的(ターゲット)を探求。




「ギャァハハッ!エラソーなこと言うとって何チャッカリ抜かれとんねんアイツは」

ーしかしや……ハーレーを乗り熟せてへんいうてもアイツをアレ程アッサリ……奴等、結構な腕(テク)の持ち主や。しかも二台とも全く同じラインで走っとる……ー

バックミラー越しに覗く間のも、削られるカルナの持つ差(アドバンテージ)と慢心。

「上等!俺のZⅠはそう簡単にいかんで!」

縮まった差を広げる為、一層スロットルを締め上げるカルナ。

が、その差は広がるどころか、意に反し更なる接近までをも許してしまう。

ーコイツ等……一体何者や!?直線(ストレート)ならともかくこんな鋭角(キツイ)コーナーで……ヤバイ……なー

一抹のネガティブ思考をカルナが抱えた途端、ZⅠの後輪(リアタイヤ)が滑り外へと流動、車体全体までもが遠心力に巻き込まれ、ガードレールの点在する外側(アウト)へー

ー!?シクった!ー

間隙を縫いカルナの内側(イン)を差す赤。

ーくっ!ヤラレたぁっ!ー

外へ外へと流れてゆく車体を咄嗟の逆ハンで立て直すカルナは、せめて残る一台はと、コーナーの内側(イン)をブロック。

しかし、一連の動向を見越す黒の動作(うごき)に失速(ロス)したZⅠの戦闘力が通用する訳もなく、外側(アウト)からの先行を容易に果たせてしまう。

ーカッコ悪ぅ……こんなん初めてや、最悪やー

あまりのシンプルさに茫然自失のカルナは、スロットルを握る右手から力を抜かれた上、張本人達の影が縮小してゆく様をボゥッと見送らされた。
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