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第三話「灼熱地獄!人が融ける夏」火煙怪獣ヒサン登場

怪獣特攻作戦!

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 宿を出て巨大化すりなり猫鈴猫は大地を蹴って、その反動で七百メートルほど跳躍し、五回も宙返りして勢いを増してからヒサンの背中目掛けて急降下キックを浴びせた。


グギャアッ。数万トンにも及ぶ衝撃を後頭部に受けたヒサンは脳震盪を起こしたか前のめりに倒れ、更に寺の鐘に頭頂部をぶつけてしまった。

「"戦ってくれるんですね、猫鈴猫さん...!"」

 猫鈴猫はうつ伏せに倒れるヒサンの背中に飛び乗り、連続チョップを撃ち込んで確実にダメージを与えてゆく。

思い痛みを感じたヒサンは、たまらず起き上がるついでに猫鈴猫を背中から払い落とし、長い尻尾をムチのように振るうことで追撃を狙う。

「うにゃ...!」

 ヒサンの背中から落とされながらも後転で尻尾ムチを躱す猫鈴猫の首を目標に定め、ヒサンは両腕のハサミを切り離して向かわせた。

「にゃあああああ!」

 猫鈴猫は迫りくるハサミを、両肘から発生させた光の刃で華麗に切り刻んでみせた。

自分の両手無くなるのを目の当たりにしたヒサンは、悔しさからかその場に座り込み、ハサミのなくなった腕を地面にバタバタと叩きつけて子供のように悔しがった。 

「...充電完了、アルギュロ・スペシャル発射!!」

 猫鈴猫の腕先がパカッと開いて露出した発射口から、銀色の粒子の集合した強力な破壊光線が発射される!!!

ファオオオオンッ。命の危機を感じ取ったヒサンは、双頭の口から火炎を吐き出し、それを身に纏いながら高速回転し始めた。

「"あの巨体を駒のように!"」

 やがて炎の竜巻と化したヒサンは、アルギュロ・スペシャルを弾き飛ばした。

「...にゃ?!」

 ぐぉん。灼熱竜巻となって猫鈴猫の必殺技を防いだまでは良かったが、ヒサンは高速回転したことが原因で、すっかり目を回してしまっていた。

(間抜けなやつ!!)
  
 その隙を逃さず猫鈴猫はタックルでヒサンをぐったりさせ、投げ飛ばす為に表面温度七千度の巨体を持ち上げて天に掲げる。


「"あっ...あれは!?"」

 猫鈴猫に持ち上げられているヒサンの背鰭が発光した直後、赤と橙色の入り混じる全身から黒い煙が噴出しはじめた。

「にゃ、ああ...あ!」

 黒煙に包まれた猫鈴猫のあちこちから小さな爆発が発生する、この煙こそ、二十万度の温度を誇る、ヒサンが追い詰められた際に発生させる最後の切り札である。

猫鈴猫の腕から力が抜けてヒサンは地面に落下、右側から生える頭を岩石に強打した、これで頭部へのダメージは三回目だ。

「に...ふぎゃ!!」

 頭を欠損した両腕で抑えながらも立ち直ったヒサンは、蹲る猫鈴猫の髪に噛みつくと、そのまま乱暴に投げ飛ばした。

猫鈴猫の体はバス停を潰しながら地面へ叩きつけられ、機能を著しく低下させる。

「"猫鈴猫さん...!」

 このままでは猫鈴猫がやられてしまう、しかし助けようにも暑さにやられイキシアの機能も低下しているいま飛行がやっとである。

「"一か八かですね..."」

  ヒサンは倒れたまま動かない猫鈴猫の胸を長い尾で何度も叩きつける、猫鈴猫危うし・・・!そのときだった、イキシア一号がヒサン目掛けて突っ込んでゆく!!

「"脱出!"」
  
  ユキヒラが脱出した直後、イキシア一号はヒサンの後頭部に激突して大爆発を起こした。

「きゃっ!?結局助からないのでしょうか」

 パラシュートが爆風に煽られた事により、ユキヒラは空中でバランスを崩し、真っ逆さまに!

「故郷で死ねるならまだ良しとしましょうか...」
「ふにゃ!」

 落ち行くユキヒラを、ヒサンの攻撃から逃れて立ち上がった猫鈴猫が地面に叩きつけられるギリギリのところでキャッチ成功!

「助かりました、ありがとうございます...」

 掌の上で礼をするユキヒラをそっと木陰に下ろすと、猫鈴猫は右腕を槍に変形させた。

「にゃああああああん!」

 猫鈴猫は槍と化した右腕を左手で引っこ抜き、イキシアの爆発を受けて満身創痍のヒサンへ投擲した。

     ギャッ!!

 シルバーの槍にて心臓を貫かれたヒサンは遂に爆発四散、同時に異様な暑さも嘘のように消え去り、油断はできないが水分と塩分補給にさえ気を付けていれば問題ない程度の気温へ戻るのだった。
    






「もう暫く泊まっていきなさいな、怪獣は倒したんだから。記者の方と付き添いのお嬢さんは用事があるとかで帰ってしまいましたが」   

 仕事を終えたMINTは三人仲良く肩を組み、ボロボロの体で再び宿屋へ戻ってきていた。帰還前にフユの安否を確かめる事と、また別れの挨拶のために。

「そうは行きませんよ、お母様、怪我をした部下ふたりを、病院に連れて行かないといけませんから」

 ユキヒラがそう言うと、擦り傷だらけのアオイ隊員が、苦笑いで面目ないと頭を掻いた、リンドウ隊員も、すみませんと真剣な顔で頭を下げる。

「なるほど、長としての仕事を見事に全うなさっているようね」

  娘がMINTの隊長という責任重大な仕事を任されたことをずっと心配していたフユも安堵の笑顔を見せ、ユキヒラもまた満足気な笑顔で返した。

「いいですね...親子っていうのは... ... ...」
「意外と無茶する娘さんですけどね」
「アオイ隊員~?」
「あ、やば、いけねえ~」
「うふふふ、まったく、誰に似たのかしらね?」
「もう!お母様ったら!」

  平和が戻った故郷で、仲間や母親と久しぶりに心の底から笑いあうユキヒラの心の中は暖かった。

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