ガールズ・ロボット・ラブ

キマシラス

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第三話「灼熱地獄!人が融ける夏」火煙怪獣ヒサン登場

いい湯だね

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 「あ~疲れが取れていく~!!」
「気持ちいい」

 今までの暑さと違う心地よい熱さを味わって満足そうなリンドウとアオイの二人だが、どうやらユキヒラは落ち着かない様子である。

「この村の上空に怪獣がいるのです、今襲われたら一巻の終わりですよ、お母さまってば」
「大丈夫ですよ~この宿には、あの子も泊まってるんですから」 
「あ、香燐さん!」

  焦りを見せるユキヒラを宥めたのは、実はMINTが宿屋に来てか、ずっと湯に浸かっていた香燐だった。

「髪を束ねているしタオルで目を覆っていたから、わからなかったよ」
「また違った美しさがありますよね、私の!」
「うんうん、温泉に入らない間でも、のぼせてしまいそうな程に美人ですよ、あなたは」
「えっ...?」 
  
 軽い冗談(八割くらい本気)で言ったのに、まさかの本気な雰囲気を醸し出して手を取り、キザな台詞を吐いてきたアオイ隊員に香燐はドキドキ。

「アオイ隊員~一応勤務中ですからね?」
「おお怖い怖い」

 笑顔のまま隊長から送られてきた怒りのオーラを感じ取ったアオイは、香燐の手をパッと離す。

「こらーっ、お姉様を口説くなぁ~!!!」

 香燐の体に他人の体が接触したのを感知した猫鈴猫が、浴場に突撃してきた!

「げっ、良い湯だった...!さてと、そろそろMINT出撃しましょう!!!」 
「珍しく仕事熱心ですね~」

 ふたりも敵に回しては分が悪いとわアオイ隊員は逃げるように湯船からあがり、脱衣所へ戻るのだった。




「あっつ!!自動冷却装置作動していて、この暑さか!!」
「早急に終わらさなければ...熱中症で倒れてしまいます...」
「あれがこの暑さを、さっきまで何処に隠れていたのやら、とにかく太陽は一つで良いですよ!」

  十分に汗を流し、体を休めて温泉から出たMINTメンバーはワンピースではなく隊員服に着替えて、それぞれの専用機に乗り込んでいた。 

そして陽都玉村の上空に浮かぶ四十メートル程の小型太陽を発見、本部からの連絡通りミニ太陽からは強い生物反応が検知されている。

「"冷却レーザー、発射"」

 イキシア一号による冷凍攻撃を受けた小型太陽は瞬時に凍りつき、神社付近へ落下していった。



一方その頃、とある市街地の上空にも、三十メートル程度の小型太陽が浮かんでいた。    

「なんだありゃ、太陽の子供か?」
「...うわっ、まぶし!」

 小型太陽が眩い光を放つと、熱波が発生し街全体に広がった。

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熱波にあてられたビルは蝋燭の様にドロドロ溶けて、小さな一軒家などは次々に発火、更にその火は木や電線にも燃え移る。

「うぎゃあああああああ!!」
「あっあああああ!!」

 屋内に居た者は火事や崩落により死亡したりもしたが、辛うじて助かった者も少なくはなかった。

だが熱波発生の際に屋外に居た八割の人間の肉体は、一瞬にして溶解してしまったのである。

「ひ、ひ、人がとけた!!」
   
  屋内から外の様子を見ていた人間から、耳を疑いたくなる通報が次々に送られてきた防衛軍は直ちに戦闘航空部隊を出撃させた。
 


「"撃て撃て撃て撃て撃ち落とせぇ!"」
「"了解!暑苦しいのは我らの隊長だけで十分何だよぉ!!"」

  戦闘機の編隊は、ミサイルを嵐のように小型太陽へ撃ち込む。

「"うああああああっ"」
 
  ミサイルを浴びた小型太陽は、お返しとばかりに火炎弾を連射する。

次々と灼熱に包まれ撃墜されていく戦闘機たち、それでも諦めずに航空部隊が小型太陽と交戦し続けること数分。

「"やったぞ!!"」

 遂に小型太陽は小規模な爆発を起こし、無数の人型の焦げ跡が浮かぶ交差点の上に墜落した。

その直後だった。墜落した衝撃で木っ端微塵になって飛散した小型太陽が赤い光となって、空の彼方へ飛び去ったのは。

... ... ...話の舞台は陽都玉村に戻る。

「"これでまた、元の暑さに戻りますね"」
「"ん...いや、まだだ、隊長!気温がまた異様に上昇しています!!"」
「"そんな...先程よりも..."」
 
   イキシアのコックピットに備わる気温を示すメーターは八十二を記録していた、あまりの暑さにやられたか、飛んでいた鳶や雀などの鳥たちも次々と田畑のうえに落ちていく。

「"この機械の鳥も墜落は時間の問題っすね"」
「"ん...あれは!"」

  赤い光が空の彼方からやってきて、鳥居付近に落ちている凍結された小型太陽に注ぎ込まれていくではないか。 

そうすると赤い光は巨大な生物のシルエットを作り出し、そのまま実体化して怪獣の姿になった!

「"あいつが火陽様の正体ですか..."」

  祠が破壊されたことで蘇った火陽様として扱われていたのは、世にも恐ろしい大怪獣ヒサンであった!!

ヒサンは金切り声を発すると二つある頭の両側についた口から光熱火炎を吐き出し、民家や公民館、郵便局を焼き尽くす。

「駄目だ、頭がくらくらする"」

  あまりの暑さに脳の機能が低下している状態でエースパイロットの乗るイキシア三号など、怪獣ヒサンから見れば小蝿と変わらぬ脅威だ。

ヒサンは迂闊にも接近してきたイキシア三号を、ハサミ状の腕ではたき落とした。

「"アオイ隊員!よくもっ...きゃっ!!"」
   
  同じく暑さで体が限界を迎えていたリンドウが乗るイキシア二号も長い尻尾で叩きつけられ、不時着を余儀なくされる。

「"脱出します!"」

  リンドウがイキシアから脱出した、これで残ったのはユキヒラが乗る一号機のみである。

「あのときを思い出す、人間がたくさん死んでいくのをただ見てるだけだった」

  怪獣ヒサンと墜落するイキシアを見て、フユは戦時中に味わった忌まわしい記憶が蘇ってくる。

「今度は責めて娘だけでも助けられたなら!」

  無謀にもフユは薙刀を持って宿から飛び出そうとした。

「大丈夫ですフユさん、この娘がいれば...!」

 流石に薙刀では怪獣に敵いっこない、香燐は慌ててフユを止めた。

「うん、大気圏突入にも耐える様に設計されている私の体なら、こんな気温は秋に等しい」
「おやまあ...なら安心...だねえ」

 力強い猫鈴猫の言葉を聞いて安堵したフユはふらっと倒れてしまった、比較的涼しい宿の中とはいえ、あまりに暑いのは変わりない。

「フユさん、しっ...か...り...うう」

 ついさっきまで冷却スプレーにアイスドカ食い、水がぶ飲みすることで暑さに耐えて平然なふりをしていた香燐も遂に限界を迎え気絶してしまう。

「...お姉さま、こんなタイミングで!」

 はあ~っと、猫鈴猫は機械の癖に妙に人間臭い動作で溜め息を吐く。

まあ、その匂いは機械らしく少し油臭いが。
  
「まるでこの惑星の御伽噺に出てくる口付けのシーンみたいだね」

 猫鈴猫はグルグル目を回している意識の無い香燐の鼻に自分の鼻をくっつけるなり、宿を出た。
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