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第二話「破滅の壊音」音壊怪獣アポカリオン登場
空飛ぶお姉様
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「お姉さま、"ド"の次は"レ"だよね、そんな歌が地球にはあるでしょ」
オンボロアパートの蒸し暑い部屋に、ラフというよりはだらしない、シャツと短パン姿で団扇を扇いでいる香燐の傍にラムネを手に接近しながら猫鈴猫は問う。
「確かにあるわね、今まで考えていたのって、その歌なんだっけなあってこと?」
「近いね、私の人工知能に搭載された地球上に存在する楽曲や創作物の中で記されたワードからヒントになるものを探していたんだよ、この破壊についての」
「子供の時にイヤイヤながら学校でよく歌わされたわ、なんて中身ない歌なのかしら!って思いながら」
「それが今じゃ、お姉さまが中身の無い大人になっちゃったわけだ!」
「ぎぎぎぎっ」
真実という名の鋭いナイフで心を突き刺されたことで、香燐は猫鈴猫をぶん殴りたくなったがグッと堪えて続きを聞くことにした。
「そ・れ・で!な・ん・で!...あっ、道修町とレインボーブリッジか!!」
「さすがお姉さま、理解が早い、頭の中までは空っぽじゃないんだね!」
褒めながら貶しつつ、猫鈴猫は香燐の腰に抱きついた。
「喧嘩売ってる...わ...け...?」
ここで思い出してみよう、猫鈴猫はロボット金属製のボディ、それが暑い部屋で熱された状態で人肌に密着してしまうと、どうなるかな?!
「...あっぢぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
あ...やべ...と小声を漏らす猫鈴猫を時折睨みながらビール缶やらグラビアアイドルの水着写真集やらが散らかった部屋の中を転がり回る香燐であった。
「と、いうことなんですよアオイさん、次に狙われるのはミが頭文字につく場所かもしれません」
落ち着きを取り戻した香燐は正座して反省している...というか無理やりさせられている猫鈴猫を背にMINTの受付へ連絡、アオイ隊員へと代わってもらい通話中だ。
「ありがとう、御協力感謝いたしますね」
それくらいの見当は私たちMINTもつけてるけど...とは、無粋なので言わないでおく気遣いのできる大人・ヨシイガワ・アオイ(二十五歳)。
「あと!情報提供の御礼としてなにかMINTについての情ほ」
ガチャッ…!!!香燐が欲を丸出しにした瞬間に、すぐさま電話は切られた。
「あーあ、やっちゃったね~」
「慣れっこよぉ!」
桃井 香燐記者、ただいま涙声。
「とにかく怪獣を音そのものの状態から実体化させる必要があるわけです...」
「その為に私が作ったのが真空発生ドーム拡散装置だよ」
「真空中ならば、振動を伝える為に必要な分子が存在しないから怪獣の破壊音波も無意味になり、音を維持できなくなり怪獣として実体化します」
時計とホワイトボード、長机と椅子以外は置かれていない、高度な科学力を持つ組織の基地内にしては殺風景な作戦会議室に集合したMINTメンバー。
彼女達はいま、ユキヒラ隊長と対怪獣用兵器開発者・サルビア博士から怪獣撃退についての作戦内容を聞かされていた。
「そこを攻撃するわけですね、実体があれば倒せる、へへへ、地球防衛軍ならぬ地球防音軍ってわけだわ」
汚名返上の機会到来に高揚したアオイ隊員は、夏にはちょうど良いかもしれない寒いギャグを吐きつつ、左手の掌に右手の拳を軽く叩きつけて握り込む。
「ですが...場所はどこに... ... ...」
「怪獣は迂闊です、わざわざ破壊の前日にも警告か嘲笑か、あるいは福音のつもりかラッパを吹く」
「...その音は既に録音されているのですね...」
まだ僅かに震えるリンドウ隊員の言葉に、ユキヒラが深く頷く・・・MINT出動だ!!
「音波、温度、違和感を検知、場所は三浦半島...か」
うっかり香燐を熱したお詫びとして、猫鈴猫は例の音が鳴った場所を特定した。
「三浦半島かあ、そういや、あんた飛べば旅費とかいらないでしょ!」
「私のエネルギー源は太陽光だからね、いま快晴だし、充填率はかなり高いし余裕だよ」
いきなり香燐の目の前に現れてから同じアパートで暮らし始めた人型戦闘ロボットは、毎日毎日、猫のように日向ぼっこをするのだが、その理由はいざという時に主人を守って戦う為のエネルギーを溜めておく必要があるからなのだ。
「危ない目に遭うから連れて行きたくないけどね」
「主人を守る使命を持つ私が主人を危険な場所に連れて行く矛盾はわかる、でもそこで特ダネ写真を撮影しなきゃ、未来永劫死と隣り合わせな貧乏生活を送る羽目に!」
「うわああああああ!わかった、わかったよお!!」
鬼気迫る表情で猫鈴猫の肩をガシッと掴むと、香燐は彼女の体をぶんぶん揺さぶって余裕の無さを訴える、冷却システムが作動して体温が低めにされていなければ香燐の掌は焼け爛れていただろう。
斯くして香燐は三浦半島へ向かう、小さな体の猫鈴猫の背中に乗って...が、スタイルもいいスラリとした長身の香燐が小学生サイズの背中にしがみついている訳だから、長い脚は空へ飛び出しており、全身は強風に晒されている。こわい。
「いや向かうって、巨大化して掌に乗る的な奴じゃないの?」
「目立つし...お姉さまと密着してる体積が減るし」
「いや怖いんですけど、落ちたら死ぬんですけど、あなた私を守る気本当にある!?」
「これでも絶対に落ちないよう計算してる、落ちても私の飛行速度ならお姉さまが地面に叩きつけられて挽き肉になるより先にキャッチできるし」
「挽き肉とかいうんじゃないわよ、余計な不安を煽ってどうすんのよぉぉぉぉぉ…!」
あれはなんだ?鳶か?宇宙船か?いや、フライング・ヒューマノイドだ!!
「いいや私のお嫁さんだ~~~~~っ!」
「これじゃ私自身がスクープになっちゃうじゃないのぉぉぉぉぉ!」
猫鈴猫はステルス機能作動中で姿が見えないためフライング・ヒューマノイドみたいになった香燐は、民衆たちの好奇の眼差しを一身に受ける羽目になった。
オンボロアパートの蒸し暑い部屋に、ラフというよりはだらしない、シャツと短パン姿で団扇を扇いでいる香燐の傍にラムネを手に接近しながら猫鈴猫は問う。
「確かにあるわね、今まで考えていたのって、その歌なんだっけなあってこと?」
「近いね、私の人工知能に搭載された地球上に存在する楽曲や創作物の中で記されたワードからヒントになるものを探していたんだよ、この破壊についての」
「子供の時にイヤイヤながら学校でよく歌わされたわ、なんて中身ない歌なのかしら!って思いながら」
「それが今じゃ、お姉さまが中身の無い大人になっちゃったわけだ!」
「ぎぎぎぎっ」
真実という名の鋭いナイフで心を突き刺されたことで、香燐は猫鈴猫をぶん殴りたくなったがグッと堪えて続きを聞くことにした。
「そ・れ・で!な・ん・で!...あっ、道修町とレインボーブリッジか!!」
「さすがお姉さま、理解が早い、頭の中までは空っぽじゃないんだね!」
褒めながら貶しつつ、猫鈴猫は香燐の腰に抱きついた。
「喧嘩売ってる...わ...け...?」
ここで思い出してみよう、猫鈴猫はロボット金属製のボディ、それが暑い部屋で熱された状態で人肌に密着してしまうと、どうなるかな?!
「...あっぢぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
あ...やべ...と小声を漏らす猫鈴猫を時折睨みながらビール缶やらグラビアアイドルの水着写真集やらが散らかった部屋の中を転がり回る香燐であった。
「と、いうことなんですよアオイさん、次に狙われるのはミが頭文字につく場所かもしれません」
落ち着きを取り戻した香燐は正座して反省している...というか無理やりさせられている猫鈴猫を背にMINTの受付へ連絡、アオイ隊員へと代わってもらい通話中だ。
「ありがとう、御協力感謝いたしますね」
それくらいの見当は私たちMINTもつけてるけど...とは、無粋なので言わないでおく気遣いのできる大人・ヨシイガワ・アオイ(二十五歳)。
「あと!情報提供の御礼としてなにかMINTについての情ほ」
ガチャッ…!!!香燐が欲を丸出しにした瞬間に、すぐさま電話は切られた。
「あーあ、やっちゃったね~」
「慣れっこよぉ!」
桃井 香燐記者、ただいま涙声。
「とにかく怪獣を音そのものの状態から実体化させる必要があるわけです...」
「その為に私が作ったのが真空発生ドーム拡散装置だよ」
「真空中ならば、振動を伝える為に必要な分子が存在しないから怪獣の破壊音波も無意味になり、音を維持できなくなり怪獣として実体化します」
時計とホワイトボード、長机と椅子以外は置かれていない、高度な科学力を持つ組織の基地内にしては殺風景な作戦会議室に集合したMINTメンバー。
彼女達はいま、ユキヒラ隊長と対怪獣用兵器開発者・サルビア博士から怪獣撃退についての作戦内容を聞かされていた。
「そこを攻撃するわけですね、実体があれば倒せる、へへへ、地球防衛軍ならぬ地球防音軍ってわけだわ」
汚名返上の機会到来に高揚したアオイ隊員は、夏にはちょうど良いかもしれない寒いギャグを吐きつつ、左手の掌に右手の拳を軽く叩きつけて握り込む。
「ですが...場所はどこに... ... ...」
「怪獣は迂闊です、わざわざ破壊の前日にも警告か嘲笑か、あるいは福音のつもりかラッパを吹く」
「...その音は既に録音されているのですね...」
まだ僅かに震えるリンドウ隊員の言葉に、ユキヒラが深く頷く・・・MINT出動だ!!
「音波、温度、違和感を検知、場所は三浦半島...か」
うっかり香燐を熱したお詫びとして、猫鈴猫は例の音が鳴った場所を特定した。
「三浦半島かあ、そういや、あんた飛べば旅費とかいらないでしょ!」
「私のエネルギー源は太陽光だからね、いま快晴だし、充填率はかなり高いし余裕だよ」
いきなり香燐の目の前に現れてから同じアパートで暮らし始めた人型戦闘ロボットは、毎日毎日、猫のように日向ぼっこをするのだが、その理由はいざという時に主人を守って戦う為のエネルギーを溜めておく必要があるからなのだ。
「危ない目に遭うから連れて行きたくないけどね」
「主人を守る使命を持つ私が主人を危険な場所に連れて行く矛盾はわかる、でもそこで特ダネ写真を撮影しなきゃ、未来永劫死と隣り合わせな貧乏生活を送る羽目に!」
「うわああああああ!わかった、わかったよお!!」
鬼気迫る表情で猫鈴猫の肩をガシッと掴むと、香燐は彼女の体をぶんぶん揺さぶって余裕の無さを訴える、冷却システムが作動して体温が低めにされていなければ香燐の掌は焼け爛れていただろう。
斯くして香燐は三浦半島へ向かう、小さな体の猫鈴猫の背中に乗って...が、スタイルもいいスラリとした長身の香燐が小学生サイズの背中にしがみついている訳だから、長い脚は空へ飛び出しており、全身は強風に晒されている。こわい。
「いや向かうって、巨大化して掌に乗る的な奴じゃないの?」
「目立つし...お姉さまと密着してる体積が減るし」
「いや怖いんですけど、落ちたら死ぬんですけど、あなた私を守る気本当にある!?」
「これでも絶対に落ちないよう計算してる、落ちても私の飛行速度ならお姉さまが地面に叩きつけられて挽き肉になるより先にキャッチできるし」
「挽き肉とかいうんじゃないわよ、余計な不安を煽ってどうすんのよぉぉぉぉぉ…!」
あれはなんだ?鳶か?宇宙船か?いや、フライング・ヒューマノイドだ!!
「いいや私のお嫁さんだ~~~~~っ!」
「これじゃ私自身がスクープになっちゃうじゃないのぉぉぉぉぉ!」
猫鈴猫はステルス機能作動中で姿が見えないためフライング・ヒューマノイドみたいになった香燐は、民衆たちの好奇の眼差しを一身に受ける羽目になった。
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