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第二話「破滅の壊音」音壊怪獣アポカリオン登場
終末の音を聞け!
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「なんだよこの音は...課長の屁よりもデカいぞ」
薬の町とも呼ばれる道修町に建つ某超有名製薬会社の本社上空ではいま、ラッパのような奇妙な音が鳴り響いている。
この怪現象に、社員やもちろん周囲人々は困惑の色を隠せずざわめき立っていた。
「何かの本で読んだぞ、天使たちがラッパを吹いたら大災難が人類を襲ったんだ!」
「まさか、そんなのは被害妄想甚だしい精神の弱い人間が生み出したフィクションに過ぎないさ」
リクルートスーツ姿の若者が、本社ビル前に設置された自販機で缶コーヒーを購入しながら頭上から聴こえてくる音について話している。
「あんた達、この街に来たのは今日が初めてかい?
買い物袋をぶら下げた中年女性が若者同士の会話に入ってきた、真っ昼間の太陽に照らされながら歩いたからか汗だくだ。
「えっ、あっはい、出張で来たんですよ」
「どおりで知らないわけだ、実は昨日もあの音はこの街全体に鳴り響いていたのよ、でも何も起きてないじゃない?」
「だったら心配無用ですかな~」
笑いあう三人だったが彼女達の考えは甘かった、前回が大丈夫だからといって今回も安全だとは限らない、飽くまでまだ何も起きていないだけだ・・・実際それから数秒もしないうちに、ラッパのような音は、まるで巨大な獣の遠吠えのような不気味で攻撃的なものへと変貌したのだから。
その音は製薬会社ビルの周囲どころか、道修町に住む生き物全ての耳を侵した。
なんだこの不快な音は!ふざけんな!」
「パチンコ三昧でやられた俺の耳にすら、こんなにハッキリ聞こえてくるとはなあ、こりゃあ母ちゃんのいびきと良い勝負だぜ」
「鼓膜がやぶれる!!」
呑気に冗談を吐く者や苦しむ者、または怒りを露にする者...この町に住む様々な人間に対して、特大の悲劇が襲いかかった。
あまりにも大きな音に耐えきれず、ついには道修町に存在する建造物が崩壊したのだ。
この破壊音波は生物に対しても直接的な被害を出した、鼓膜を破られた者もいれば脳に深刻な影響を受けた者もいる。人間でこうなのだから聴力の優れた動物達の末路については語る間でも無いだろう。
「町一つが壊滅する程の破壊音波なんて、そりゃ調べさせられるわよね~」
「お姉さま嬉しそうだね」
「そりゃあ編集長に珍しく褒められて、これまた珍しく、久々にボーナス出たんだから…」
怪獣同士の対決や猫鈴猫とMINTの活躍についての記事を書いた結果、良い思いをすることができた香燐の気持ちは晴れやかだった...のだが。
「貴方も誰か、お子さんか、飼い猫でも亡くしてみれば、そんな楽しそうには居られないでしょうに」
瓦礫の山と小動物の死骸を嫌というほど目にし、住宅を、ペットや我が子を失い、沈痛なをした人々に幾度となく出会した事により、香燐の浮わついた気分は泥水の底へと沈められていった。
「そりゃ地元が壊滅なんてしたら、あんな風にもなるわよね...」
「だからってお姉さまに強くあたらなくても良いのに」
「まっ、まあ、慣れっこよ、怪獣災害の被災地に取材行くなんて年に何回あることかわからないし、被害者から見たら、私たちの様に自分たちの悲劇で稼いでる人間なんてのは気に入らないのも当然だわ」
ふうん。猫鈴猫は適当に返したが、内蔵された特殊集音装置に今まで刻まれていた香燐の心臓の鼓動音が僅かに小さくなったので気付いてしまう、強がりだと言うことに。
「だったら表面上だけでも暗い顔しとけば良いじゃん、私はお姉さま以外の人間がどうなろうと関係ないけど、恨みのあまり刺されたりしたら困るもん」
「今は貴方が守ってくれるんでしょ?まあ最初はそうしてたけどね、それはそれで怒られたりしたし、上からは笑顔で取材しろって言われて今は無理矢理元気にやってんのよ!!その結果!悲劇に見舞われた人々を嬉しそうに取材するマスコミ許さない!って動画をあげられて炎上したけど!!」
出世に関わる上司たちに怒られるか、数多の無関係な人間に嫌われるかの選択を迫られた過去を...香燐はハンカチを噛みつつ涙ながらに語る。
近くで話を聞いていた被災者も、流石にほんのちょ~っとだけ同情してしまった。
「...この仕事、やめたくない?」
どんな答えが返ってくるか分かりきった質問だ、八割くらいの人間が同じ答えを返すだろう。
「辞めたくならない仕事なんてないに決まってんでしょ!!!!酒にギャンブル女遊びでもしてないと、とてもやってらんないわ!」
案の定即答である。大多数の人は働きたくないけれど生きるために仕方なく働いているものでそれは香燐として同様なのだが特に人一倍といった感じだ、猫鈴猫は彼女がおんぼろアパートで貧乏暮らしをしている理由を察した。
「おやおや、貴方たちもお仕事ですか!」
怪獣災害ある場所にマスコミとMINTあり!調査に訪れていたアオイ隊員が、元気に香燐たちへ話しかけてきた。
「私は防衛軍には入らないからね!ってちょっ、何するのお姉さま!!」
先日の怪獣退治での活躍を買って自分を組織内に引き入れに来たのかと疑い、しゃ~っとアオイ隊員を威嚇する猫鈴猫の首根っこを香燐は摘まみあげてみた。
「失礼な態度は辞めなさい、御世話になった方なんだから」
「まあまあ、ブルガアルを倒してくれたんだし、多目にみてあげてよ」
「人ができてますね~アオイさん、その優しさに期待して是非とも調査で得た情報を!」
「残念ながら一般人に教える事は出来ないな、それこそ防衛軍に入って貰わないとね」
そう言うとアオイ隊員は二人に背を向け、手を振りながら調査へと戻っていった、被災者たちに事件について訊ねる際にはシリアスな面持ちになっていたが。
同時刻、レインボーブリッジの上空・・・これまたラッパを吹くような音が不気味に鳴り響いていた。
薬の町とも呼ばれる道修町に建つ某超有名製薬会社の本社上空ではいま、ラッパのような奇妙な音が鳴り響いている。
この怪現象に、社員やもちろん周囲人々は困惑の色を隠せずざわめき立っていた。
「何かの本で読んだぞ、天使たちがラッパを吹いたら大災難が人類を襲ったんだ!」
「まさか、そんなのは被害妄想甚だしい精神の弱い人間が生み出したフィクションに過ぎないさ」
リクルートスーツ姿の若者が、本社ビル前に設置された自販機で缶コーヒーを購入しながら頭上から聴こえてくる音について話している。
「あんた達、この街に来たのは今日が初めてかい?
買い物袋をぶら下げた中年女性が若者同士の会話に入ってきた、真っ昼間の太陽に照らされながら歩いたからか汗だくだ。
「えっ、あっはい、出張で来たんですよ」
「どおりで知らないわけだ、実は昨日もあの音はこの街全体に鳴り響いていたのよ、でも何も起きてないじゃない?」
「だったら心配無用ですかな~」
笑いあう三人だったが彼女達の考えは甘かった、前回が大丈夫だからといって今回も安全だとは限らない、飽くまでまだ何も起きていないだけだ・・・実際それから数秒もしないうちに、ラッパのような音は、まるで巨大な獣の遠吠えのような不気味で攻撃的なものへと変貌したのだから。
その音は製薬会社ビルの周囲どころか、道修町に住む生き物全ての耳を侵した。
なんだこの不快な音は!ふざけんな!」
「パチンコ三昧でやられた俺の耳にすら、こんなにハッキリ聞こえてくるとはなあ、こりゃあ母ちゃんのいびきと良い勝負だぜ」
「鼓膜がやぶれる!!」
呑気に冗談を吐く者や苦しむ者、または怒りを露にする者...この町に住む様々な人間に対して、特大の悲劇が襲いかかった。
あまりにも大きな音に耐えきれず、ついには道修町に存在する建造物が崩壊したのだ。
この破壊音波は生物に対しても直接的な被害を出した、鼓膜を破られた者もいれば脳に深刻な影響を受けた者もいる。人間でこうなのだから聴力の優れた動物達の末路については語る間でも無いだろう。
「町一つが壊滅する程の破壊音波なんて、そりゃ調べさせられるわよね~」
「お姉さま嬉しそうだね」
「そりゃあ編集長に珍しく褒められて、これまた珍しく、久々にボーナス出たんだから…」
怪獣同士の対決や猫鈴猫とMINTの活躍についての記事を書いた結果、良い思いをすることができた香燐の気持ちは晴れやかだった...のだが。
「貴方も誰か、お子さんか、飼い猫でも亡くしてみれば、そんな楽しそうには居られないでしょうに」
瓦礫の山と小動物の死骸を嫌というほど目にし、住宅を、ペットや我が子を失い、沈痛なをした人々に幾度となく出会した事により、香燐の浮わついた気分は泥水の底へと沈められていった。
「そりゃ地元が壊滅なんてしたら、あんな風にもなるわよね...」
「だからってお姉さまに強くあたらなくても良いのに」
「まっ、まあ、慣れっこよ、怪獣災害の被災地に取材行くなんて年に何回あることかわからないし、被害者から見たら、私たちの様に自分たちの悲劇で稼いでる人間なんてのは気に入らないのも当然だわ」
ふうん。猫鈴猫は適当に返したが、内蔵された特殊集音装置に今まで刻まれていた香燐の心臓の鼓動音が僅かに小さくなったので気付いてしまう、強がりだと言うことに。
「だったら表面上だけでも暗い顔しとけば良いじゃん、私はお姉さま以外の人間がどうなろうと関係ないけど、恨みのあまり刺されたりしたら困るもん」
「今は貴方が守ってくれるんでしょ?まあ最初はそうしてたけどね、それはそれで怒られたりしたし、上からは笑顔で取材しろって言われて今は無理矢理元気にやってんのよ!!その結果!悲劇に見舞われた人々を嬉しそうに取材するマスコミ許さない!って動画をあげられて炎上したけど!!」
出世に関わる上司たちに怒られるか、数多の無関係な人間に嫌われるかの選択を迫られた過去を...香燐はハンカチを噛みつつ涙ながらに語る。
近くで話を聞いていた被災者も、流石にほんのちょ~っとだけ同情してしまった。
「...この仕事、やめたくない?」
どんな答えが返ってくるか分かりきった質問だ、八割くらいの人間が同じ答えを返すだろう。
「辞めたくならない仕事なんてないに決まってんでしょ!!!!酒にギャンブル女遊びでもしてないと、とてもやってらんないわ!」
案の定即答である。大多数の人は働きたくないけれど生きるために仕方なく働いているものでそれは香燐として同様なのだが特に人一倍といった感じだ、猫鈴猫は彼女がおんぼろアパートで貧乏暮らしをしている理由を察した。
「おやおや、貴方たちもお仕事ですか!」
怪獣災害ある場所にマスコミとMINTあり!調査に訪れていたアオイ隊員が、元気に香燐たちへ話しかけてきた。
「私は防衛軍には入らないからね!ってちょっ、何するのお姉さま!!」
先日の怪獣退治での活躍を買って自分を組織内に引き入れに来たのかと疑い、しゃ~っとアオイ隊員を威嚇する猫鈴猫の首根っこを香燐は摘まみあげてみた。
「失礼な態度は辞めなさい、御世話になった方なんだから」
「まあまあ、ブルガアルを倒してくれたんだし、多目にみてあげてよ」
「人ができてますね~アオイさん、その優しさに期待して是非とも調査で得た情報を!」
「残念ながら一般人に教える事は出来ないな、それこそ防衛軍に入って貰わないとね」
そう言うとアオイ隊員は二人に背を向け、手を振りながら調査へと戻っていった、被災者たちに事件について訊ねる際にはシリアスな面持ちになっていたが。
同時刻、レインボーブリッジの上空・・・これまたラッパを吹くような音が不気味に鳴り響いていた。
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