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〜初等部
胸に抱えて
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なんとか頭の中をすっきりさせて皆の元へ帰ってきたのだが何やら様子がおかしい。
千華ちゃんと國近くんは2人で楽しそうに話しているが、桜ちゃんと黒崎くんの間には重い空気が漂っている。
「黒崎様、どうかなさいましたか?」
顔を俯かせている黒崎くんに声をかける。気分でも悪くなったのかな?
私の声に弾かれたように黒崎くんは振り向く。私を見たその瞳はゆらゆら揺れて・・・?
「何でもないよ・・・紫之宮嬢の友達は、凄いね」
彼はにっこり笑う。あの瞳は笑みの中へ消えていく。一瞬でいつもの表情を見せる彼の様子に少し寂しい気持ちが浮き上がった。これは突き放された、のかな・・・。
「私の自慢のお友達です。もちろん、黒崎様もですよ?」
「・・・ありがとう」
少しの寂しさを隠し、黒崎くんにそう言う。彼は私の言葉に目を伏せて力なく笑った。
「春様が私を自慢のお友達と・・・」
「お姉様・・・嬉しいです~」
「光栄です、春お姉様」
桜ちゃんは頬を赤く染め、千華ちゃんは涙目で喜び、國近くんは幸せそうな笑顔で笑った。・・・大袈裟な気がするけど、3人が喜んでくれるならいっか。
「友達、か・・・」
「黒崎様?何かおっしゃいましたか?」
「ううん、何でもないよ」
ポツリと黒崎くんが呟く。あまりにも小さい呟きに思わず聞き返すがはぐらかされる。
黒崎くんは椅子から立ち上がると、私を見つめた。
「紫之宮嬢、今日はありがとう。そろそろ私はお暇させてもらうよ」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
そう言って黒崎くんは私達に一礼する。私も黒崎くんに一礼すると、彼はこちらに背を向けて歩き出す。・・・ちょっと待って、黒崎くん歩くの速いな!
図書館を出てしまった黒崎くんを慌てて追いかけ、引き留める。黒崎くんは引き留めた私を不思議そうに見つめている。
「あの、無理しないでくださいね」
私はそう言ってそっと黒崎くんの頭を撫でる。先程私に見せた力ない笑顔が気になったから、私でよければ力になるよ。と伝えるために。
「では、またお会いしましょうね。黒崎様」
私は黒崎くんに微笑むと、桜ちゃん達の元へ踵を返す。
「貴女は、私をどうしたいんだろうね・・・」
ギュッと前髪を握りしめ、苦しそうに笑う黒崎くんが呟いた言葉は私に届かず、静かな廊下に溶けていった。
***
「春様!何もありませんでしたか!?」
「大丈夫ですよ、桜さん」
図書館に戻ってきた私に桜ちゃんが駆け寄ってきた。心配そうな顔をしている桜ちゃんに笑いかける。
ホッと胸を撫で下ろした彼女を疑問に思う。別に心配するような事なんて何も無いのに。
「それよりも私の、あの、ファンクラブ?のことを詳しく教えて頂けますか?」
羞恥で熱くなっていく頬を押さえながら桜ちゃんに聞く。 自分のファンクラブがあるなんて今でも信じられないし、恥ずかしいけどしっかり聞いておかないと後で絶対に困るから聞いておかないと。
「もちろんです!ちゃんとお教え致しますね」
桜ちゃんは嬉しそうに笑うとファンクラブのことを細かく、詳しく私に教えてくれた。
千華ちゃんと國近くんの補足も入れながら聞いた私のファンクラブはこの宝玉学園初等部に存在するファンクラブの中でも上位に入る規模らしい。
所属しているのは大体が同学年で、しかし低学年と上級生もなかなかの人数がいるらしい。総人数は怖くて聞けなかった。男女比率は半々らしい。
「揉め事や面倒事をおこすような者は所属していませんのでご安心下さいませ。私と國近さんで選別したのです。お姉様に迷惑はお掛けしませんわ!」
「会員の素性は全て調べて、奏様にもご確認して頂いています。春お姉様を危険に晒すことは億が一もありません」
「・・・ありがとうございます。千華さん、國近さん」
誇らしげに胸をはる千華ちゃんと國近くんの頭を撫でる。喜んでいる2人は可愛いんだけど、話の内容が可愛くないんだよね・・・。一体どうやって会員全員の素性調査をしたの?
「私達、紫之宮 春様のファンクラブは、奏様や青柳様のファンクラブよりも小さいですが春様の安全と幸せを守る為に全力を尽くします。機会がありましたら、幹部のご紹介も致しますね」
桜ちゃんは自信に満ちた笑顔で私を見つめる。その瞳は優しさを乗せてキラキラと輝く。そっか、兄や青柳のファンクラブもあるんだね。
「・・・でしたら、私もファンクラブの皆様の安全と幸せをお守り致します。私に好意をもってくださる皆様を危険な目にあわせることも、皆様が危険な目にあうことも許せませんから」
桜ちゃんの頭を撫でて、意思を固める。
未だに私のファンクラブの存在何て信じられないし、要らないとも思うけど無くなることは無いんだろう。兄が了承している時点でそれは確定している。
だったら私は腹を括って、全てを受け入れる。そして小さく幼いこの子達を守るんだ。
「皆さん、これからもよろしくお願い致しますね」
私の言葉に頷き笑顔を浮かべる3人に優しく笑いかけた。
出来たものは仕方ないです。グダグダ言わずに受け入れないと格好悪いですからね!
・・・皆が私の事を考えてくれたのは、嬉しいから。
千華ちゃんと國近くんは2人で楽しそうに話しているが、桜ちゃんと黒崎くんの間には重い空気が漂っている。
「黒崎様、どうかなさいましたか?」
顔を俯かせている黒崎くんに声をかける。気分でも悪くなったのかな?
私の声に弾かれたように黒崎くんは振り向く。私を見たその瞳はゆらゆら揺れて・・・?
「何でもないよ・・・紫之宮嬢の友達は、凄いね」
彼はにっこり笑う。あの瞳は笑みの中へ消えていく。一瞬でいつもの表情を見せる彼の様子に少し寂しい気持ちが浮き上がった。これは突き放された、のかな・・・。
「私の自慢のお友達です。もちろん、黒崎様もですよ?」
「・・・ありがとう」
少しの寂しさを隠し、黒崎くんにそう言う。彼は私の言葉に目を伏せて力なく笑った。
「春様が私を自慢のお友達と・・・」
「お姉様・・・嬉しいです~」
「光栄です、春お姉様」
桜ちゃんは頬を赤く染め、千華ちゃんは涙目で喜び、國近くんは幸せそうな笑顔で笑った。・・・大袈裟な気がするけど、3人が喜んでくれるならいっか。
「友達、か・・・」
「黒崎様?何かおっしゃいましたか?」
「ううん、何でもないよ」
ポツリと黒崎くんが呟く。あまりにも小さい呟きに思わず聞き返すがはぐらかされる。
黒崎くんは椅子から立ち上がると、私を見つめた。
「紫之宮嬢、今日はありがとう。そろそろ私はお暇させてもらうよ」
「いえ、こちらこそありがとうございました」
そう言って黒崎くんは私達に一礼する。私も黒崎くんに一礼すると、彼はこちらに背を向けて歩き出す。・・・ちょっと待って、黒崎くん歩くの速いな!
図書館を出てしまった黒崎くんを慌てて追いかけ、引き留める。黒崎くんは引き留めた私を不思議そうに見つめている。
「あの、無理しないでくださいね」
私はそう言ってそっと黒崎くんの頭を撫でる。先程私に見せた力ない笑顔が気になったから、私でよければ力になるよ。と伝えるために。
「では、またお会いしましょうね。黒崎様」
私は黒崎くんに微笑むと、桜ちゃん達の元へ踵を返す。
「貴女は、私をどうしたいんだろうね・・・」
ギュッと前髪を握りしめ、苦しそうに笑う黒崎くんが呟いた言葉は私に届かず、静かな廊下に溶けていった。
***
「春様!何もありませんでしたか!?」
「大丈夫ですよ、桜さん」
図書館に戻ってきた私に桜ちゃんが駆け寄ってきた。心配そうな顔をしている桜ちゃんに笑いかける。
ホッと胸を撫で下ろした彼女を疑問に思う。別に心配するような事なんて何も無いのに。
「それよりも私の、あの、ファンクラブ?のことを詳しく教えて頂けますか?」
羞恥で熱くなっていく頬を押さえながら桜ちゃんに聞く。 自分のファンクラブがあるなんて今でも信じられないし、恥ずかしいけどしっかり聞いておかないと後で絶対に困るから聞いておかないと。
「もちろんです!ちゃんとお教え致しますね」
桜ちゃんは嬉しそうに笑うとファンクラブのことを細かく、詳しく私に教えてくれた。
千華ちゃんと國近くんの補足も入れながら聞いた私のファンクラブはこの宝玉学園初等部に存在するファンクラブの中でも上位に入る規模らしい。
所属しているのは大体が同学年で、しかし低学年と上級生もなかなかの人数がいるらしい。総人数は怖くて聞けなかった。男女比率は半々らしい。
「揉め事や面倒事をおこすような者は所属していませんのでご安心下さいませ。私と國近さんで選別したのです。お姉様に迷惑はお掛けしませんわ!」
「会員の素性は全て調べて、奏様にもご確認して頂いています。春お姉様を危険に晒すことは億が一もありません」
「・・・ありがとうございます。千華さん、國近さん」
誇らしげに胸をはる千華ちゃんと國近くんの頭を撫でる。喜んでいる2人は可愛いんだけど、話の内容が可愛くないんだよね・・・。一体どうやって会員全員の素性調査をしたの?
「私達、紫之宮 春様のファンクラブは、奏様や青柳様のファンクラブよりも小さいですが春様の安全と幸せを守る為に全力を尽くします。機会がありましたら、幹部のご紹介も致しますね」
桜ちゃんは自信に満ちた笑顔で私を見つめる。その瞳は優しさを乗せてキラキラと輝く。そっか、兄や青柳のファンクラブもあるんだね。
「・・・でしたら、私もファンクラブの皆様の安全と幸せをお守り致します。私に好意をもってくださる皆様を危険な目にあわせることも、皆様が危険な目にあうことも許せませんから」
桜ちゃんの頭を撫でて、意思を固める。
未だに私のファンクラブの存在何て信じられないし、要らないとも思うけど無くなることは無いんだろう。兄が了承している時点でそれは確定している。
だったら私は腹を括って、全てを受け入れる。そして小さく幼いこの子達を守るんだ。
「皆さん、これからもよろしくお願い致しますね」
私の言葉に頷き笑顔を浮かべる3人に優しく笑いかけた。
出来たものは仕方ないです。グダグダ言わずに受け入れないと格好悪いですからね!
・・・皆が私の事を考えてくれたのは、嬉しいから。
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