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〜初等部
進級と罠
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3年生になりました、紫之宮 春です。
5年生になった兄はもちろん、私も前年度成績優秀者に選ばれました。
「さすが僕の妹だね。すごいよ春」
「そんなことありません。お兄様が私の勉強を見てくださったからですよ」
「2人とも良く頑張ったな」
「えぇ、奏も春ちゃんもすごいわ!」
両親と兄に誉めてもらえてすごく嬉しい。その一方で紫之宮の名に恥じない成績で良かったとホッとする。
兄と家庭教師に勉強を習って随分先の学習範囲まで習っていたとしても、やっぱり不安だったから。
「今年は奏を正式な跡取りとして発表するパーティーを開く。奏はもちろん春にも出席してもらうから、忘れないように」
「はい、お父様」
「春ちゃんは私と新しいドレスを用意しましょうね」
「楽しみですわ、お母様」
父に返事をする兄の隣で母に頷く。
私としてはドレスは使い回しで別に良いのだが、マナー的に同じドレスを着るのは好ましくないらしい。
前世を思い出してもう何年も経つが、いまだにお金持ちの常識や生活には慣れないところがあるなぁ。
「春のエスコートは僕がするからね!」
「えぇ、お兄様。よろしくお願いします」
私の手を握り笑う兄に微笑む。めちゃくちゃ喜んでいるね、兄よ。
さて、パーティー頑張ろう。
***
「奏様、春様。ごきげんよう」
兄のエスコートでパーティー会場に入ると、桜ちゃんが挨拶に来てくれた。後ろには千華ちゃんと國近くんもいる。
「桜嬢、千華嬢と國近くんも久しぶりだね」
「ごきげんよう、桜さん。千華さんと國近さんも来ていただけて嬉しいわ」
兄と2人、微笑んで挨拶する。
桜ちゃんと千華ちゃんは可愛いドレス姿で、國近くんもスーツが良く似合っている。
「奏様、春お姉様。ご招待いただきありがとうございます。お2人が並ぶと、よりいっそうお美しいですわ・・・」
「お久しぶりです、奏様。ご招待ありがとうございます、お姉様。お2人共とてもお綺麗です・・・」
千華ちゃんと國近くんがキラキラした瞳で私と兄を見ている。そんな2人に私と兄は苦笑した。桜ちゃんも生暖かい目で2人を見ていた。
「僕は色々挨拶に回らないといけないから、春の事を頼んだよ」
「お兄様、私はもう子供ではありませんのよ!1人でも大丈夫ですのに・・・」
「春が"そう"だから僕は心配なんだよ。皆よろしくね」
兄の発言にムッとするが兄は私の頬を優しく撫で、微笑みを浮かべる。
そして兄は私の手を引いて3人の前へと移動し、私を桜ちゃんに託す。桜ちゃんも神妙な顔で兄に頷き返すと私の手を握った。
皆、私を心配しすぎだ。私は中身25歳の大人だから子供じゃないのに・・・。
***
「お似合いですね、千華さんと國近さん。見つめあって頬を染めて、とても可愛らしいわ」
「どなたが見ても両想いですのに、お互い全然気付かないのは何故なんでしょう」
あれから兄は両親と挨拶回りに行き、今もまだ挨拶している。
そして私は桜ちゃんと壁際に並んでダンスを踊る千華ちゃんと國近くんを見守っていた。
最初は私に遠慮していた2人だったが、今は楽しそうに踊っている。お互いに見惚れて頬を染めながら踊る初々しい両想いカップルを周りの大人達も優しく見ていた。
「久しぶりだな、春。小早川嬢も」
げ、この声は・・・!
勢いよく振り向きたいのを抑え、ゆっくりと声の方へ体を向ける。そこに居たのは兄の友人で攻略対象者の一人である青柳 悠真だった。
「ごきげんよう、青柳様」
「・・・ごきげんよう。青柳様」
桜ちゃんに遅れて彼に挨拶する。
会うはずがない、と完璧に油断していたから逃げられなかった・・・!!
私の精一杯の抵抗である挨拶を気にすることなく、青柳は私達へ近付いて来る。さりげなく桜ちゃんが自分の背中に私を庇ってくれた。桜ちゃん、格好いい。
しかし青柳は桜ちゃんを軽くかわすと、私の目の前で立ち止まる。
「俺と踊ってくれますか?紫之宮家のお姫様」
そして優しく微笑み、私に手を差し出した。
最近はあまり見かけなかったからてっきり私に飽きたと思っていたのに・・・!
兄は傍にいないし、桜ちゃんは止めようとしてくれているが家柄的に難しいだろう。周りの大人達も私達を見ている。
この状況で私が世界的に有名な財閥の子息である彼の誘いを断れるはずがない。決して断れない。
「・・・えぇ、喜んで。青柳様」
私が微笑みながらも渋々と手を乗せれば、青柳は笑みを深めた。その時、私は彼に嵌められたことに気付く。
このっ、確信犯が・・・!!
5年生になった兄はもちろん、私も前年度成績優秀者に選ばれました。
「さすが僕の妹だね。すごいよ春」
「そんなことありません。お兄様が私の勉強を見てくださったからですよ」
「2人とも良く頑張ったな」
「えぇ、奏も春ちゃんもすごいわ!」
両親と兄に誉めてもらえてすごく嬉しい。その一方で紫之宮の名に恥じない成績で良かったとホッとする。
兄と家庭教師に勉強を習って随分先の学習範囲まで習っていたとしても、やっぱり不安だったから。
「今年は奏を正式な跡取りとして発表するパーティーを開く。奏はもちろん春にも出席してもらうから、忘れないように」
「はい、お父様」
「春ちゃんは私と新しいドレスを用意しましょうね」
「楽しみですわ、お母様」
父に返事をする兄の隣で母に頷く。
私としてはドレスは使い回しで別に良いのだが、マナー的に同じドレスを着るのは好ましくないらしい。
前世を思い出してもう何年も経つが、いまだにお金持ちの常識や生活には慣れないところがあるなぁ。
「春のエスコートは僕がするからね!」
「えぇ、お兄様。よろしくお願いします」
私の手を握り笑う兄に微笑む。めちゃくちゃ喜んでいるね、兄よ。
さて、パーティー頑張ろう。
***
「奏様、春様。ごきげんよう」
兄のエスコートでパーティー会場に入ると、桜ちゃんが挨拶に来てくれた。後ろには千華ちゃんと國近くんもいる。
「桜嬢、千華嬢と國近くんも久しぶりだね」
「ごきげんよう、桜さん。千華さんと國近さんも来ていただけて嬉しいわ」
兄と2人、微笑んで挨拶する。
桜ちゃんと千華ちゃんは可愛いドレス姿で、國近くんもスーツが良く似合っている。
「奏様、春お姉様。ご招待いただきありがとうございます。お2人が並ぶと、よりいっそうお美しいですわ・・・」
「お久しぶりです、奏様。ご招待ありがとうございます、お姉様。お2人共とてもお綺麗です・・・」
千華ちゃんと國近くんがキラキラした瞳で私と兄を見ている。そんな2人に私と兄は苦笑した。桜ちゃんも生暖かい目で2人を見ていた。
「僕は色々挨拶に回らないといけないから、春の事を頼んだよ」
「お兄様、私はもう子供ではありませんのよ!1人でも大丈夫ですのに・・・」
「春が"そう"だから僕は心配なんだよ。皆よろしくね」
兄の発言にムッとするが兄は私の頬を優しく撫で、微笑みを浮かべる。
そして兄は私の手を引いて3人の前へと移動し、私を桜ちゃんに託す。桜ちゃんも神妙な顔で兄に頷き返すと私の手を握った。
皆、私を心配しすぎだ。私は中身25歳の大人だから子供じゃないのに・・・。
***
「お似合いですね、千華さんと國近さん。見つめあって頬を染めて、とても可愛らしいわ」
「どなたが見ても両想いですのに、お互い全然気付かないのは何故なんでしょう」
あれから兄は両親と挨拶回りに行き、今もまだ挨拶している。
そして私は桜ちゃんと壁際に並んでダンスを踊る千華ちゃんと國近くんを見守っていた。
最初は私に遠慮していた2人だったが、今は楽しそうに踊っている。お互いに見惚れて頬を染めながら踊る初々しい両想いカップルを周りの大人達も優しく見ていた。
「久しぶりだな、春。小早川嬢も」
げ、この声は・・・!
勢いよく振り向きたいのを抑え、ゆっくりと声の方へ体を向ける。そこに居たのは兄の友人で攻略対象者の一人である青柳 悠真だった。
「ごきげんよう、青柳様」
「・・・ごきげんよう。青柳様」
桜ちゃんに遅れて彼に挨拶する。
会うはずがない、と完璧に油断していたから逃げられなかった・・・!!
私の精一杯の抵抗である挨拶を気にすることなく、青柳は私達へ近付いて来る。さりげなく桜ちゃんが自分の背中に私を庇ってくれた。桜ちゃん、格好いい。
しかし青柳は桜ちゃんを軽くかわすと、私の目の前で立ち止まる。
「俺と踊ってくれますか?紫之宮家のお姫様」
そして優しく微笑み、私に手を差し出した。
最近はあまり見かけなかったからてっきり私に飽きたと思っていたのに・・・!
兄は傍にいないし、桜ちゃんは止めようとしてくれているが家柄的に難しいだろう。周りの大人達も私達を見ている。
この状況で私が世界的に有名な財閥の子息である彼の誘いを断れるはずがない。決して断れない。
「・・・えぇ、喜んで。青柳様」
私が微笑みながらも渋々と手を乗せれば、青柳は笑みを深めた。その時、私は彼に嵌められたことに気付く。
このっ、確信犯が・・・!!
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