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〜初等部

兄と友の邂逅2

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 私の目の前で兄と國近くんが固く握手をしている。

「君なら春の近くにいても安心だよ。これからもよろしくね」
「勿体無いお言葉です。こちらこそよろしくお願い致します」

 にこやかに会話をする兄と國近くんを、桜ちゃんと千華ちゃんが安心した様子で見守っていた。

「國近さんが認めて頂けて安心しましたわ」
「私は大丈夫だと思っていましたよ?國近さんは春様を敬愛しているのであって、恋愛対象は別の方ですからね・・・」
「え、・・・國近さんは、どなたか好きなお方がいらっしゃるのですか?」

 そう言って俯く千華ちゃんを桜ちゃんが微笑ましく見ている。千華ちゃん、國近くんが好きなのは千華ちゃんだからそんな悲しそうな顔をしないで・・・!

 私はそんな4人を見てため息をつく。何でこうなったんだっけ?

***

 学園から帰る車の中。
 以前から私と友人達3人の予定が空いていたら授業後にお茶会をしようと桜ちゃん達と約束していた。
 今日確認したら明日は私に予定はないし、桜ちゃん達も予定が空いていたので明日はお茶会をすることになったのだ。
 なので明日は兄に先に家へ帰ってもらおう。

「お兄様、明日は先にお帰りください。私は桜さん達とお茶会をしますので帰りが遅くなってしまうので」
「・・・桜嬢"達"?」
「はい!私と桜さんと千華さんに國近さんの四人です。お友達とのお茶会なのですよ」

 私の言葉に兄は口元へ手を当てると何かを考え込む様子を見せる。何を悩む事があるんだろうか、兄の思考は独特で私にはよくわからない。

「僕も参加していいかな?用事があるから途中参加になるとは思うんだけど、春の新しい友達を紹介してほしいな・・・」

 口元から手を離し、兄が不安げにこちらを見つめる。・・・うぅ、私が兄の悲しそうなその顔に弱いと知ってやっている確信犯なのか?
   瞳を潤ませてる兄に私が勝てる筈もなく、私は首を縦に振る事しか出来なかった。
 桜ちゃん達、事後承諾になっちゃうけど許してくれるかな・・・

 朝、学園に着いてすぐ3人に確認をすると、

「歓迎致しますわ!私も奏様にお話したいことがありましたので、丁度良かったです」
「私、春お姉様のお兄様にご挨拶したかったのです!こちらからお願いしないといけないくらいですわ」
「僕も歓迎致しますよ、お姉様。僕は認めていただかないといけませんので・・・」

 何か引っ掛かるが、皆快く許可してくれた。
 兄に友人達から許可を貰ったことと、お茶会を開催する談話ルームの番号を教えると兄は嬉しそうに笑っていた。

***

 授業後、予定通りにお茶会を開催している。授業でわからなかったところの話やそれぞれの休日の出来事の話、私達は沢山の話をした。

「お姉様のお兄様はどのような方なのですか?」
「お兄様ですか?そうですね、私のお兄様は・・・」

 國近くんの質問に答えようと、私が口を開いてすぐに扉をノックする音に遮られた。

「春、待たせてごめんね。入っても大丈夫かな?」

 扉の向こうから兄の声が聞こえる。動こうとした桜ちゃんを止め、私が扉を開けた。

「大丈夫ですわ、お兄様。お入り下さい」
「ありがとう。僕の可愛い春」

 そう言うと兄は私の手を取り、席までエスコートしてくれた。・・・私達を優しく見守る3人の視線が恥ずかしい。

「ごきげんよう、奏様」
「やぁ、桜嬢。この子達は大丈夫なのかい?」
「えぇ、もちろんです」

 私の隣に座った兄が、千華ちゃんと國近くんを見つめる。兄の瞳が鋭く光った気がした。

「お兄様、こちら新しいお友達の山代 國近さんと佐々木 千華さんですわ。國近さんと千華さん、こちらが私のお兄様の紫之宮 奏です」
「初めまして、紫之宮様。佐々木 千華と申します。春お姉様にはいつもお世話になっていますの」
「山代 國近と申します。紫之宮様とお会い出来て光栄です。お姉様には以前僕と千華嬢を救っていただき、それ以来仲良くさせていただいています」

 兄を前に緊張した様子で話す2人。

「2人ともよろしくね。・・・山代くん、少しいいかな?」

  にっこりと笑う兄が、國近くんをつれて部屋の隅へ歩いていく。突然の出来事に目を白黒させる私と千華ちゃんに、桜ちゃんは優しく笑う。

「國近さんなら大丈夫ですわ。私達はこのままお2人をお待ちしましょう?」

***

 そして兄と國近くんの話が終わり、2人で席に帰ってきたと思ったらこうなっていた。

「良い友達だね、春」
「!・・・えぇ、私には勿体無いくらい素晴らしいお友達なのです!」

 目の前の光景に首を傾げていた私に、兄が微笑んで言った言葉が嬉しくてつい力説してしまった。


「僕はお姉様を敬愛しています。聖母の様に美しく、お優しいお姉様に僕と千華嬢は救われたのです」
「・・・春に、恋愛感情はないと?」
「はい。お姉様に近づく悪い虫は処分しますが・・・僕は、その、千華嬢が・・・」
「!・・・本当に敬愛しかないみたいだね。僕の春をしっかり守ってね」
「もちろんです!認めて頂いてありがとうございます!」

 そんな会話が2人の間にあった事を私がこの先知ることはなかった。
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