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〜初等部
ダンスの授業
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この学園のダンスの授業ではダンスだけでなくパーティー会場でのマナーも学ぶため、一般的なパーティーと同じ様にセットされた広間で授業をする。
ダンスの誘い方や断り方、もちろんダンスのステップ等様々なことを学ぶことができる。
「それでは皆さん、ペアをつくって下さい」
講師の号令で学年関係なくペアをつくる。私の前には3年生の男の子。老舗旅館の息子、芹沢君だ。素朴な優しい笑顔が安心感を与えてくれる。
「よろしくね、紫之宮嬢」
「よろしくお願い致します、芹沢様」
差し出された彼の手に、手を重ねる。
音楽が流れ出すのに合わせて彼の方に引き寄せられ、腰に手が当てられた。そのまま音楽に乗って優しくリードされる。
流石3年生、クラスの男の子達よりもリードが上手い。さらに女性に無理をさせないように気を配りながら踊っている。
「紫之宮嬢、さすがだね。すごく上手だ」
「リードしてくださる方がお上手だからですわ」
躍りながら芹沢君と会話をする。先輩すごいな、本当に踊りやすいぞ。
紫之宮家の令嬢なのでダンスも勿論沢山練習させられた。なので先輩の上手さが良く分かる。
「ありがとう、紫之宮嬢。とても楽しかったよ」
「芹沢様、こちらこそありがとうございました。私も楽しかったですわ」
音楽が止み、芹沢君とお互いに一礼して別れる。講師の指示に従い相手を変え、目の前に現れた次の相手に頬笑む。
まだまだ授業は始まったばかりだ。
***
何回か相手を変えダンスを終えた。流石に少し疲れたので広間の端によって休憩する。
広間を見渡せば桜ちゃんがダンスをしているのが見えた。小さな体で優雅に踊る姿のなんて可愛らしいこと。桜ちゃんが可愛すぎて胸がキュンキュンする。
可愛い私の親友に夢中になっていると、ガチャンッと大きな音が広間に響く。
音の方に目を向けるとどうやらダンスしていた2組が接触してしまい、片方のペアがテーブルにぶつかってしまったようだ。距離は離れているがテーブルの上にあるグラスが倒れているのが見えた。
「大丈夫ですか?私は新しいテーブルクロスを取って来るので、皆さん静かに待っておくように」
講師はそう言うと広間を出ていってしまった。講師が居なくなった途端、ざわつき始める広間に言い争う声が響く。
「山代様がちゃんとエスコートしてくださらないから!」
「佐々木嬢が僕の足を踏んだからいけないんだ!」
言い争っているのはどうやらテーブルに接触してしまったペアらしい。お互いに責任を擦り付けようとしているのが分かる。
「それは、あの・・・申し訳ありません。でも、」
「このままだと貴女のせいで成績が落ちてしまう!誰か、ペアを変えてくれないか?」
山代君が言ったことに対し申し訳なさを感じているのか、先程の様子とは一転しおらしく謝る佐々木さん。その後に続く彼女の言葉を遮り、彼が周りに呼び掛けた。
きっと彼は冗談で口にしたその言葉。
しかし佐々木さんは彼の口から出たその言葉に一瞬呆然とし、ポロポロと泣き出してしまう。
彼女のそんな姿に山代君は狼狽える。
「佐々木嬢、何で泣くんだ?泣かないでくれ・・・」
自分のハンカチを差し出しなんとか彼女を泣き止ませようとする彼に気付いてないのか、彼女はずっと声を上げて泣いている。
周りの生徒達はどうすることも出来ず、見守るだけだった。
***
混沌とした広間の様子に私は1人溜め息をつく。周りを見回すも先輩である3年生達も、どうしたら良いのかと困惑している様子だ。
「どうしたら良いのでしょう・・・」
いつの間にか私の近くに来ていた桜ちゃんが呟いた。
さっきまで彼女は離れた場所にいたはずでは、と思いながらも不安げな様子の桜ちゃんを見ていたくない。
「大丈夫ですよ、桜さん」
そう言って桜ちゃんに微笑み、私は一歩足を踏み出す。
さぁ、私の可愛い親友のために問題解決しましょうか!
ダンスの誘い方や断り方、もちろんダンスのステップ等様々なことを学ぶことができる。
「それでは皆さん、ペアをつくって下さい」
講師の号令で学年関係なくペアをつくる。私の前には3年生の男の子。老舗旅館の息子、芹沢君だ。素朴な優しい笑顔が安心感を与えてくれる。
「よろしくね、紫之宮嬢」
「よろしくお願い致します、芹沢様」
差し出された彼の手に、手を重ねる。
音楽が流れ出すのに合わせて彼の方に引き寄せられ、腰に手が当てられた。そのまま音楽に乗って優しくリードされる。
流石3年生、クラスの男の子達よりもリードが上手い。さらに女性に無理をさせないように気を配りながら踊っている。
「紫之宮嬢、さすがだね。すごく上手だ」
「リードしてくださる方がお上手だからですわ」
躍りながら芹沢君と会話をする。先輩すごいな、本当に踊りやすいぞ。
紫之宮家の令嬢なのでダンスも勿論沢山練習させられた。なので先輩の上手さが良く分かる。
「ありがとう、紫之宮嬢。とても楽しかったよ」
「芹沢様、こちらこそありがとうございました。私も楽しかったですわ」
音楽が止み、芹沢君とお互いに一礼して別れる。講師の指示に従い相手を変え、目の前に現れた次の相手に頬笑む。
まだまだ授業は始まったばかりだ。
***
何回か相手を変えダンスを終えた。流石に少し疲れたので広間の端によって休憩する。
広間を見渡せば桜ちゃんがダンスをしているのが見えた。小さな体で優雅に踊る姿のなんて可愛らしいこと。桜ちゃんが可愛すぎて胸がキュンキュンする。
可愛い私の親友に夢中になっていると、ガチャンッと大きな音が広間に響く。
音の方に目を向けるとどうやらダンスしていた2組が接触してしまい、片方のペアがテーブルにぶつかってしまったようだ。距離は離れているがテーブルの上にあるグラスが倒れているのが見えた。
「大丈夫ですか?私は新しいテーブルクロスを取って来るので、皆さん静かに待っておくように」
講師はそう言うと広間を出ていってしまった。講師が居なくなった途端、ざわつき始める広間に言い争う声が響く。
「山代様がちゃんとエスコートしてくださらないから!」
「佐々木嬢が僕の足を踏んだからいけないんだ!」
言い争っているのはどうやらテーブルに接触してしまったペアらしい。お互いに責任を擦り付けようとしているのが分かる。
「それは、あの・・・申し訳ありません。でも、」
「このままだと貴女のせいで成績が落ちてしまう!誰か、ペアを変えてくれないか?」
山代君が言ったことに対し申し訳なさを感じているのか、先程の様子とは一転しおらしく謝る佐々木さん。その後に続く彼女の言葉を遮り、彼が周りに呼び掛けた。
きっと彼は冗談で口にしたその言葉。
しかし佐々木さんは彼の口から出たその言葉に一瞬呆然とし、ポロポロと泣き出してしまう。
彼女のそんな姿に山代君は狼狽える。
「佐々木嬢、何で泣くんだ?泣かないでくれ・・・」
自分のハンカチを差し出しなんとか彼女を泣き止ませようとする彼に気付いてないのか、彼女はずっと声を上げて泣いている。
周りの生徒達はどうすることも出来ず、見守るだけだった。
***
混沌とした広間の様子に私は1人溜め息をつく。周りを見回すも先輩である3年生達も、どうしたら良いのかと困惑している様子だ。
「どうしたら良いのでしょう・・・」
いつの間にか私の近くに来ていた桜ちゃんが呟いた。
さっきまで彼女は離れた場所にいたはずでは、と思いながらも不安げな様子の桜ちゃんを見ていたくない。
「大丈夫ですよ、桜さん」
そう言って桜ちゃんに微笑み、私は一歩足を踏み出す。
さぁ、私の可愛い親友のために問題解決しましょうか!
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