BL短編集④

華愁

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だって、さよならじゃないから

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二〇三〇年初秋。

数年前から
ささやかれていた地球滅亡説。

あれから十年。

その時が来たようだ。

『大丈夫だよ、僕がいるからね』

隣にいる恋人とソファーに
座って手を繋いでいる。

『心配していませんよ(๑^ ^๑)

あなたがいてくだされば
怖くありませんから』

僕に対する絶対的信頼は
こんな時にも揺るがないらしい(苦笑)

『隕石が落ちてくるんだよ?』
 
そう、地球滅亡が囁かれた理由《わけ》は
隕石が落下するということからだ。

恐竜を絶滅させたのと同じ彗星が……

『あなたがいるならば
それだけでいいんですよ』

本当に同い年なのかと
言いたくなる程、彼は時々、男前だ。

『僕も君がいてくれるならそれだけでいい』

出逢って二五年。

幼なじみとして二十年。

恋人として五年。

共に過ごした時間は長い。

本当に好きな人と結ばれる
確率は非常低いが僕は恵まれていた。

テレビに映っているワールドクロックが
機械的音声でカウントダウンを始める。

大丈夫、大丈夫。

痛みはないだろう。

隣には最愛の彼がいる。

そして、“この時代”と
さよならするまで“後5分”

最後を最愛の人の隣で……

きっと、生まれ変わっても
僕達は出会えると信じている……

だから、さよならじゃない。

手を繋いで僕達は目を瞑った。
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