【完結】プシュケの彼方ー死ぬことが許されなくなった未来社会。仮の肉体を継いでなお、生きる理由はあるのだろうか?ー

上杉裕泉

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3章 欲

5  温もり ※

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 ――死ぬ方法を知っているだって?
 霧島は驚き、ほおに添えられた手を払いのけようとするも、それは簡単に捕まれ優しく頭の上で押さえられてしまう。
 抵抗できない無防備な状態で寝台に横たえられた霧島は、目の前の男――千逸ちはやを見上げた。
 その表情は柔らかく、大切なものを見守るような優しい笑みを浮かべるので、霧島はこれからすることを思い出して恥ずかしくなった。
 そもそも、霧島にとって性行為は久方ぶりのことであるし、よく考えれば男とするのは今日が初めてである。何をしたらいいかもよくわかっていなかった。ただ、確実にこの男のされるがままになり、自分がこの男を受け入れることだけは明らかであった。
 ――
 そう意識した途端、身体にすっかり覆い被さる千逸ちはやの重みと温もりを強く感じ、霧島はいたたまれなくなる。視線をそらしそっぽを向くと、千逸ちはやは、
「――大丈夫。悪いようにはしない」
 と諭すように言い、霧島の顔を優しく撫ではじめた。
 その手はまるで自分の肌を溶かしているのではと思うほど、心地よく馴染んだ。
 大きなてのひらが顔を包み、頬をさすり、首筋に触れ、そして頭を撫でる。そのたび霧島は、その手にすべてをゆだねてしまいたい感覚に襲われた。まるで自分の肌が、千逸のそれに触れることを待ちわびているかのように。
 ――この男は、この手がどれだけ心地いいのかを知っているんだ。
 なんてずるい、そう思いながらも霧島の頭はそれ以上のことはなにも考えられない。千逸ちはやの軽やかな手は、すでに顔だけでなく身体のうえを動き回り、すこしずつ衣服を取り払いはじめた。
 指は優しく、ときに直に触れてひやりとするので、そのたび霧島の身体はぴくりと反応してしまう。同時に腰にずくりとした刺激が襲い、あの青い薬の存在が頭をよぎる。
 ――まだあれが身体に残っているのだ。
 そうでなければ、絶対におかしい。
 霧島が朦朧もうろうとする視界のなかで快感の襲い続ける下腹部を見ると、すでにそこは下着一枚にされ、あられもない姿をさらしていた。薄い灰の布地に覆われた自身は、快楽に喜ぶように大きく勃ち上がり、その先端は蜜を垂れ流して大きなしみを作っている。
 霧島がそれに気づくも、千逸ちはやはそれを隠すことを許しはしなかった。
 大きく開かれた足のあいだに身体をねじ込むと、霧島のそそり立つものに下着の上から触れたではないか。
「……っあ」
 手でさすりあげられた瞬間、電流のような快感が走り霧島は思わず声をあげてしまう。反射的に身体はのけぞり快楽にもだえるも、突如千逸ちはやの手は霧島の頭に添えられ、気づけば唇が迫っていた。
 千逸の舌は容易く霧島の口内に入り込み、内側をなぞるように舐め回す。同時に、下腹部を翻弄していたもう片方の手が下着のなかに入り込み、霧島のものを優しくしごく。
「――――んっ……ぁ――……」
 霧島の口から声にならない音が漏れる。しかしそれ以上に部屋に響き渡っていたのは、淫猥いんわいな水音であった。霧島は、もはやそれがどこから響いているものなのかもわからず、千逸ちはやのもたらす快感に身を委ねる以外できなかった。
 口内を犯す舌も陰茎をしごく手も絶えず動かされ、霧島は激しい快楽と酸欠とで朦朧とする。揺れる視界のなか、突然、快感の鋭い波が霧島の下半身を襲い、
 ――出る。
 そう思った瞬間であった。まるで見計らっていたかのように、千逸ちはやは手を止めてしまったのである。
「……はぁっはぁ……」
 口淫からも解放され、霧島は息を乱す。
 ただ、全身のいたるところまで及んだ熱はすぐには収まらない。霧島のそそり立つものは、すでに天を向いて震え涙を流している。
 ――早く、出したい。
 そう思うまま自分の手を伸ばそうとするも、それはなぜか千逸ちはやに止められてしまう。腕を掴んだまま、なぜか穏やかにこちらを見る千逸ちはやを霧島は潤む目で睨みつける。
「は、早く……」
 すると、千逸ちはやは表情を少しも変えず、
「焦ってもいいことない」
 と穏やかに言い、仰向けだった霧島の身体を優しく返し背中を取った。
「え?――あっ」
 つい先程まで口内を犯していた温かい舌が、霧島の背をい回る。同時に背中を抱えられたまま男根をしごかれ、その快楽に霧島は再び身体をよじった。甘美な刺激の連続に耐えられず、腰は勝手に動き出す有り様で、そのとき尻を探るものがあることに少しも気づいていなかった。
 霧島が違和感を覚えたときにはそれはずぶりと中に入り込み、内側を掻き回していたのである。
 なぜそこに指を入れられているのかよくわからなかったが、本来は出すものであるはずのそこが、侵入を少しずつ受け入れ、広がっているではないか。
 最初に感じた圧迫感はもはやなくなり、次第にそこをもっと太いもので満たしてほしいと思いはじめていることに霧島は気づいた。
 ――ありえない。
 しかしそう思いながらも、期待している自分が確実にいた。
 不意に千逸ちはやの温もりが背から離れ、霧島は息も絶え絶えになりながら、視線を後ろに向ける。
 そこには、そそり立つ男根をたぎらせ、霧島の濡れそぼった秘孔に視線を送る千逸ちはやの姿があった。
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