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あれから半年。
鬼猫鎮神社は新たなパワースポットになっていた。
同じ場所に九尾の狐を祀る狐九理稲荷神社、龍を祀る龍神社があり願いが叶うという評判になっていた。コクリは自分の名前をどうしても稲荷神社の名前につけたかったらしい。特に意味はない。単なる当て字だ。龍のほうは住まいができただけで喜んでいるようだ。徹の家族も近くに引っ越してきている。コクリを信仰していた家族ももちろん回復して近くに住んでいる。
鎮石のほうは割れたままだが、鬼猫、コクリ、龍がしっかりと結界を張って邪気からは守っているようだ。
そうそう、大黒様もいることは忘れてはいけない。鬼猫の隣で手を振っているだろう。
大和はそんな様子を愛莉とともに見守っていた。
「ふたりとも仲人は我と弁天がしてやるからな」
えっ、それは……。
『大黒様、それはまだ』
大和は心の中でそう告げた。
愛莉は照れ臭そうにして脇腹を小突いてきた。
結婚の話はまだ早過ぎるけど、今は一緒にいたい。それだけだ。
「ニャ」
「ネオン、おまえもいたよな。ごめん」
鬼猫が宿っていた赤茶トラ猫のネオンはもとの普通の猫に戻っている。
それにしても、ここは空気が澄んでいて心地いい。
素戔嗚尊の力は大黒様にお願いして剣に封印してもらった。愛莉もまた櫛に力を封印してもらっている。霊感が強いことには変わりないが、余計な力はないほうがいい。災厄を呼んでしまう恐れがあるから。
そのほうが幸せになれるだろう。鬼猫のその言葉に従ったまでだ。
「さてと、そろそろ僕は帰るよ」
「ええ、もう帰っちゃうの。残念だな。じゃあさ、また来週来てよね」
「もちろん、僕にはおしゃべりな大黒様がついているから来ようと思えばすぐに来られるよ」
あっ、また参拝者が来た。
「愛莉、社務所に戻ったほうがいいんじゃないか」
「そうだね。じゃ、またね」
愛莉は学校が休みの日に巫女をやっている。新たに社務所も立ててお守りも売っていた。愛莉の祖父が御朱印も書いてくれている。
「参拝者がこんなに来る神社になるなんてな。大和のおかげだ。我らも嬉しいぞ」
鬼猫が社からそう声をかけてきた。コクリも龍も頷いている。
参拝者には見えないだろうけど。
『いやいや、僕はたいしたことしていないよ。すごいのはこのSNSだよ』
スマホを取り出して鬼猫鎮神社の投稿の『いいね』の数を見せた。十五万を超えていた。
「大和、本当にありがとう。また何かあったら頼むぞ」
『えっ、何かって。もう勘弁してほしいよ。あっ、帰らなきゃ。みんな、また来るからさ』
「じゃな、また来い」
鬼猫の言葉に微笑み手を振った。
鳥居のところまで来たところで振り返り社のほうへ目を向けると、鬼猫、コクリ、龍が手を振り見送ってくれていた。大黒様は社の屋根に乗って手を振っていた。
また何かあったらか。
あるのかもしれない。嫉妬、いじめ、怨みとかってなくならないだろうから。
「こんにちは」
「あっ、どうも」
えっ、あれ、今のは……。
振り返るとそこには誰もいなかった。確か、自分のことを好きになった幽霊じゃなかっただろうか。なぜ、ここに。まだ諦めていないのだろうか。大和は思わずブルッと身体を震わせた。
*****
(完)
鬼猫鎮神社は新たなパワースポットになっていた。
同じ場所に九尾の狐を祀る狐九理稲荷神社、龍を祀る龍神社があり願いが叶うという評判になっていた。コクリは自分の名前をどうしても稲荷神社の名前につけたかったらしい。特に意味はない。単なる当て字だ。龍のほうは住まいができただけで喜んでいるようだ。徹の家族も近くに引っ越してきている。コクリを信仰していた家族ももちろん回復して近くに住んでいる。
鎮石のほうは割れたままだが、鬼猫、コクリ、龍がしっかりと結界を張って邪気からは守っているようだ。
そうそう、大黒様もいることは忘れてはいけない。鬼猫の隣で手を振っているだろう。
大和はそんな様子を愛莉とともに見守っていた。
「ふたりとも仲人は我と弁天がしてやるからな」
えっ、それは……。
『大黒様、それはまだ』
大和は心の中でそう告げた。
愛莉は照れ臭そうにして脇腹を小突いてきた。
結婚の話はまだ早過ぎるけど、今は一緒にいたい。それだけだ。
「ニャ」
「ネオン、おまえもいたよな。ごめん」
鬼猫が宿っていた赤茶トラ猫のネオンはもとの普通の猫に戻っている。
それにしても、ここは空気が澄んでいて心地いい。
素戔嗚尊の力は大黒様にお願いして剣に封印してもらった。愛莉もまた櫛に力を封印してもらっている。霊感が強いことには変わりないが、余計な力はないほうがいい。災厄を呼んでしまう恐れがあるから。
そのほうが幸せになれるだろう。鬼猫のその言葉に従ったまでだ。
「さてと、そろそろ僕は帰るよ」
「ええ、もう帰っちゃうの。残念だな。じゃあさ、また来週来てよね」
「もちろん、僕にはおしゃべりな大黒様がついているから来ようと思えばすぐに来られるよ」
あっ、また参拝者が来た。
「愛莉、社務所に戻ったほうがいいんじゃないか」
「そうだね。じゃ、またね」
愛莉は学校が休みの日に巫女をやっている。新たに社務所も立ててお守りも売っていた。愛莉の祖父が御朱印も書いてくれている。
「参拝者がこんなに来る神社になるなんてな。大和のおかげだ。我らも嬉しいぞ」
鬼猫が社からそう声をかけてきた。コクリも龍も頷いている。
参拝者には見えないだろうけど。
『いやいや、僕はたいしたことしていないよ。すごいのはこのSNSだよ』
スマホを取り出して鬼猫鎮神社の投稿の『いいね』の数を見せた。十五万を超えていた。
「大和、本当にありがとう。また何かあったら頼むぞ」
『えっ、何かって。もう勘弁してほしいよ。あっ、帰らなきゃ。みんな、また来るからさ』
「じゃな、また来い」
鬼猫の言葉に微笑み手を振った。
鳥居のところまで来たところで振り返り社のほうへ目を向けると、鬼猫、コクリ、龍が手を振り見送ってくれていた。大黒様は社の屋根に乗って手を振っていた。
また何かあったらか。
あるのかもしれない。嫉妬、いじめ、怨みとかってなくならないだろうから。
「こんにちは」
「あっ、どうも」
えっ、あれ、今のは……。
振り返るとそこには誰もいなかった。確か、自分のことを好きになった幽霊じゃなかっただろうか。なぜ、ここに。まだ諦めていないのだろうか。大和は思わずブルッと身体を震わせた。
*****
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最後まで読ませて頂きました^^
キャスティングが凄いですね
悔しいのは鬼猫が最後まで分からなかった事かな?
ですが楽しく読ませて頂きました
しかし、かなり読み手のハードルが高いのが惜しい
例えば剣の名前もあえてメジャーな呼び方を避けましたね^^;
ですが、あえて調べて貰う事で日本神道の流れを解ってもらうという方法なら
いいアイデアですね
読んでいただきありがとうございます。
貴重なご意見嬉しいです。
剣はメジャーな呼び方にしたくはなかったのはありますね。
鬼について私自身にわか仕込みの知識だったのでまだまだなところもありましたからね。
資料として読んだ本も読み終えていない状態でしたし、自分なりに創作してみたものです。
読み手にはハードたでしたかね、やっぱり。
書き手としてもハードでしたけど。(^^ゞ
みさごさんの感想、参考にさせていただきます。
(*^^*)
完結、おめでとうございます。楽しく読ませて頂きました。最後に女の人の幽霊が再登場したので、続編があるんじゃないかと期待してしまいました。
ありがとうございます♪(*^^*)
続編ですか。どうでしょうね。
書きたい気持ちはありますが、今のところなんのアイデアも浮かんでいないので未定です。
いつも感想ありがとうございました。(*^^*)
コクリがもどってきてほっとしています。
ネオンが普通の猫に戻ってよかったです。
はい、よかったです。
いつも感想ありがとうございました。(*^^*)
励みになりましたよ。感謝です♪