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第4章 意趣返し
1 終わってはいなかった
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徹はなぜか自分の姿を目にしていた。
これって幽体離脱ってやつだろうか。死んじゃったのだろうか。病院に搬送されていく自分がそこにいる。パパとママもいる。
「大丈夫だ、まだ死んではいない。必ず救ってやる」
徹は微かにそんな声を耳にした。あたりを見回すと搬送される自分と並走する小さな蛇をみつけた。いや、蛇ではない。足がある。龍みたいだ。龍って本当にいたのか。けど、なんであんなに小さいのだろう。
「龍神様だ。あのお方のいた社はもう崩れてなくなってしまったというのに、いまだに荒巻家をお守りしてくださっている。感謝しなくてはいけないよ」
「誰なの」
「おまえの祖父さんの祖父さんのそのまた祖父さんだ」
「えっ、なにそれ。よくわかんないよ」
「まあよい。龍神様に感謝することを忘れるでないぞ」
そんな言葉を残しておじいさんは消えてしまった。
徹は首を傾げて搬送される自分に再び目を向けた。その瞬間、自分の身体の中へと引き戻されていき痛みが襲ってきた。
「パパ、ママ」
徹は痛みに耐えられずにそのまま意識を失ってしまった。
どれだけ眠っていたのだろう。腹の傷の痛みはまだあるものの少し和らいでいる気がした。なんとなく頭がボウッとする。
ここは……。そうか病院か。
パパとママはどうしただろうか。右を見ても左を見てもどこにもいない。
「僕は助かったのか」
徹はぼそりと独り言を呟き天井を眺めた。よく覚えていないけど、不思議なことがあった気がする。何がどうしてしまったのだろう。確か……。そうだ、火をつけた。狐は死んでしまっただろうか。なんだか急に引っ張られていつの間にか外にいて変な人達がいて……。
夢だったのだろうか。
火をつけたことは間違いないと思うけど。
小さな龍を見たのも夢だろうか。
今日は何日だろう。長いこと寝ていたような気がするけど、どれくらい寝ていたのだろうか。ここは個室みたいだ。徹は起き上がろうとして腹の傷の痛みに小さく呻き再び身体を寝かせた。
んっ、今扉を開けるような音がした。
誰か来たのだろうか。パパとママかも。違うだろうか。看護師だろうか。おかしい、足音がしない。
なんとなく嫌な予感がする。
「徹、みーつけた」
えっ、誰。声のするほうに徹は目を向けてハッとする。
「孝くん」
「おっ、目が覚めていたのか。残念だ。おまえ、僕を呪っただろう。わかっているんだからな。あんな化け物に襲わせるなんて。汚いぞ。まあいいけど。徹、おまえはここで死ぬんだから」
な、なにを言っている。死ぬって。それに、なんで呪ったこと知っているのだろう。
おかしい。
「本当に、孝くんなの」
返事はなく、ただ変な声を出して笑っているだけだった。やっぱり普通じゃない。ドロンとした目をしている。その前に、どうしてここにいるのだろう。ニュースでの言葉がふと蘇る。そうだ、入院したって言っていた。同じ病院だったのか。
孝がにやけた顔をして突然首に手を伸ばして締め付けてきた。
「徹は悪いことをした。死んでしまえ」
く、苦しい。声が出ない。凄い力だ。殺されてしまう。
だ、誰か来て……。死にたくない。助けて……。
『孝くん、ごめんなさい。苦しいよ、やめてよ』
徹は必死にもがき抵抗する。だが、孝の力には敵わなかった。
これって幽体離脱ってやつだろうか。死んじゃったのだろうか。病院に搬送されていく自分がそこにいる。パパとママもいる。
「大丈夫だ、まだ死んではいない。必ず救ってやる」
徹は微かにそんな声を耳にした。あたりを見回すと搬送される自分と並走する小さな蛇をみつけた。いや、蛇ではない。足がある。龍みたいだ。龍って本当にいたのか。けど、なんであんなに小さいのだろう。
「龍神様だ。あのお方のいた社はもう崩れてなくなってしまったというのに、いまだに荒巻家をお守りしてくださっている。感謝しなくてはいけないよ」
「誰なの」
「おまえの祖父さんの祖父さんのそのまた祖父さんだ」
「えっ、なにそれ。よくわかんないよ」
「まあよい。龍神様に感謝することを忘れるでないぞ」
そんな言葉を残しておじいさんは消えてしまった。
徹は首を傾げて搬送される自分に再び目を向けた。その瞬間、自分の身体の中へと引き戻されていき痛みが襲ってきた。
「パパ、ママ」
徹は痛みに耐えられずにそのまま意識を失ってしまった。
どれだけ眠っていたのだろう。腹の傷の痛みはまだあるものの少し和らいでいる気がした。なんとなく頭がボウッとする。
ここは……。そうか病院か。
パパとママはどうしただろうか。右を見ても左を見てもどこにもいない。
「僕は助かったのか」
徹はぼそりと独り言を呟き天井を眺めた。よく覚えていないけど、不思議なことがあった気がする。何がどうしてしまったのだろう。確か……。そうだ、火をつけた。狐は死んでしまっただろうか。なんだか急に引っ張られていつの間にか外にいて変な人達がいて……。
夢だったのだろうか。
火をつけたことは間違いないと思うけど。
小さな龍を見たのも夢だろうか。
今日は何日だろう。長いこと寝ていたような気がするけど、どれくらい寝ていたのだろうか。ここは個室みたいだ。徹は起き上がろうとして腹の傷の痛みに小さく呻き再び身体を寝かせた。
んっ、今扉を開けるような音がした。
誰か来たのだろうか。パパとママかも。違うだろうか。看護師だろうか。おかしい、足音がしない。
なんとなく嫌な予感がする。
「徹、みーつけた」
えっ、誰。声のするほうに徹は目を向けてハッとする。
「孝くん」
「おっ、目が覚めていたのか。残念だ。おまえ、僕を呪っただろう。わかっているんだからな。あんな化け物に襲わせるなんて。汚いぞ。まあいいけど。徹、おまえはここで死ぬんだから」
な、なにを言っている。死ぬって。それに、なんで呪ったこと知っているのだろう。
おかしい。
「本当に、孝くんなの」
返事はなく、ただ変な声を出して笑っているだけだった。やっぱり普通じゃない。ドロンとした目をしている。その前に、どうしてここにいるのだろう。ニュースでの言葉がふと蘇る。そうだ、入院したって言っていた。同じ病院だったのか。
孝がにやけた顔をして突然首に手を伸ばして締め付けてきた。
「徹は悪いことをした。死んでしまえ」
く、苦しい。声が出ない。凄い力だ。殺されてしまう。
だ、誰か来て……。死にたくない。助けて……。
『孝くん、ごめんなさい。苦しいよ、やめてよ』
徹は必死にもがき抵抗する。だが、孝の力には敵わなかった。
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