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第0章 はじまり
天罰なのか呪いなのか(1)
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最近ついていない。何をやってもうまくいかない。財布を見たところで金が増えることはない。千円札が一枚と小銭がいくらかあるだけ。盗みも詐欺もうまくいっていたはずなのに、なにもかもうまくいかなくなってしまった。
それも変な家に盗みに入ってからだ。不気味な笑みを浮かべる子供が頭から離れない。思い出しただけでも背筋がゾクゾクする。
そうそうあのとき追いかけようと階段を上ろうとしたらなぜか足を踏み外して転げ落ちてしまった。軽い捻挫で済んだからいいようなものあんなことはじめてだ。
そのあと二階に行く気がしなくて家を飛び出してしまった。だって二階から不気味な笑い声が聞こえてきたから。あれはなんだったのだろう。この世の者とは思えない笑い声だった。どうにも嫌な感じがしてならなかったからだ。
それだけではない。家に出てすぐに警察官と遭遇して追いかけられるはめになった。突然、逃げ出してしまったから怪しまれたのだろう。ついていない。あの家から何も盗めず出て来てしまったことも悔やまれる。
まさかあの子供が口にしていた『呪い』なのだろうか。
馬鹿馬鹿しい。そんなことがあってたまるか。そんなことは忘れてしまおう。
とにかく今のことを考えよう。金がなきゃ食いたいものも食えやしない。
どこか金持ちの家でもないだろうか。盗みに入って大金を手に入れてやるのに。それとも詐欺でもやるか。手っ取り早くスリがいいかも。けど、こんな田舎じゃ無理だ。人っ子一人いやしない。まだ夜の八時だっていうのに。やっぱり盗みに家に入ろうか。農家の立派な家だったら金目のものがあるだろう。
そう思っていたのだが、どうやら道に迷ったらしい。街灯もなくて暗くて何も見えやしない。目を凝らしてみても家らしきものも見当たらない。田舎なんかに来たのは間違いだった。いや、好きで来たわけじゃない。
こうなったのも詐欺仲間が捕まってしまったせいだ。なぜ、隠れ家がばれてしまったのだろう。危うく自分も捕まるところだった。とことんついていない。逃げに逃げて、こんな田舎に来てしまった。
んっ、明かりが見える。
家か。地主の家だったらいいけど。
成瀬道也は明かりに向かってゆっくり歩みを進めた。
「なんだ、街灯じゃないか」
羽虫の集団が街灯に向かって舞っている。早いところ家をみつけなきゃ。今は盗みよりも今日の宿をみつけたい。腹も減った。喉も乾いた。叫びたい気分だ。
悪さばかりしてきたから、罰でも当たったのかもしれない。いや、やっぱり呪われたのかも。成瀬はすぐにかぶりを振った。馬鹿なことを考えるな。罰もなければ呪いなんてものもない。そう思いつつも本当にそうなのだろうかと思ってしまう。
溜め息を漏らして、ふらりとすぐ近くにあった石に寄りかかる。あれ、何か書いてある。
『←鬼猫鎮神社』とあった。
あっちに神社があるのか。ちょっと行ってみるか。もしかしたら人がいるかもしれない。神主の家でもあったらいいのだが。成瀬は矢印の示すほうへと足を向けた。それらしきものはなさそうだが、まだ先なのだろうか。
成瀬はあたりに目を向けると立札をみつけた。
神社はこの上にあるのか。
木々が生い茂る中階段らしきものがあった。暗いせいもあるが先がよく見えない。どこまで登ればいいのだろう。成瀬は他へ行こうかと考えたが選択肢はなさそうだった。見渡してみても周囲には民家は見当たらない。しかたがない。行くしかない。
重い足をなんとか上げて成瀬は登って行く。
それも変な家に盗みに入ってからだ。不気味な笑みを浮かべる子供が頭から離れない。思い出しただけでも背筋がゾクゾクする。
そうそうあのとき追いかけようと階段を上ろうとしたらなぜか足を踏み外して転げ落ちてしまった。軽い捻挫で済んだからいいようなものあんなことはじめてだ。
そのあと二階に行く気がしなくて家を飛び出してしまった。だって二階から不気味な笑い声が聞こえてきたから。あれはなんだったのだろう。この世の者とは思えない笑い声だった。どうにも嫌な感じがしてならなかったからだ。
それだけではない。家に出てすぐに警察官と遭遇して追いかけられるはめになった。突然、逃げ出してしまったから怪しまれたのだろう。ついていない。あの家から何も盗めず出て来てしまったことも悔やまれる。
まさかあの子供が口にしていた『呪い』なのだろうか。
馬鹿馬鹿しい。そんなことがあってたまるか。そんなことは忘れてしまおう。
とにかく今のことを考えよう。金がなきゃ食いたいものも食えやしない。
どこか金持ちの家でもないだろうか。盗みに入って大金を手に入れてやるのに。それとも詐欺でもやるか。手っ取り早くスリがいいかも。けど、こんな田舎じゃ無理だ。人っ子一人いやしない。まだ夜の八時だっていうのに。やっぱり盗みに家に入ろうか。農家の立派な家だったら金目のものがあるだろう。
そう思っていたのだが、どうやら道に迷ったらしい。街灯もなくて暗くて何も見えやしない。目を凝らしてみても家らしきものも見当たらない。田舎なんかに来たのは間違いだった。いや、好きで来たわけじゃない。
こうなったのも詐欺仲間が捕まってしまったせいだ。なぜ、隠れ家がばれてしまったのだろう。危うく自分も捕まるところだった。とことんついていない。逃げに逃げて、こんな田舎に来てしまった。
んっ、明かりが見える。
家か。地主の家だったらいいけど。
成瀬道也は明かりに向かってゆっくり歩みを進めた。
「なんだ、街灯じゃないか」
羽虫の集団が街灯に向かって舞っている。早いところ家をみつけなきゃ。今は盗みよりも今日の宿をみつけたい。腹も減った。喉も乾いた。叫びたい気分だ。
悪さばかりしてきたから、罰でも当たったのかもしれない。いや、やっぱり呪われたのかも。成瀬はすぐにかぶりを振った。馬鹿なことを考えるな。罰もなければ呪いなんてものもない。そう思いつつも本当にそうなのだろうかと思ってしまう。
溜め息を漏らして、ふらりとすぐ近くにあった石に寄りかかる。あれ、何か書いてある。
『←鬼猫鎮神社』とあった。
あっちに神社があるのか。ちょっと行ってみるか。もしかしたら人がいるかもしれない。神主の家でもあったらいいのだが。成瀬は矢印の示すほうへと足を向けた。それらしきものはなさそうだが、まだ先なのだろうか。
成瀬はあたりに目を向けると立札をみつけた。
神社はこの上にあるのか。
木々が生い茂る中階段らしきものがあった。暗いせいもあるが先がよく見えない。どこまで登ればいいのだろう。成瀬は他へ行こうかと考えたが選択肢はなさそうだった。見渡してみても周囲には民家は見当たらない。しかたがない。行くしかない。
重い足をなんとか上げて成瀬は登って行く。
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