人生・にゃん生いろいろ

景綱

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カビ人間だ

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 カビと言ったら、風呂場にある黒カビを想像するだろうか。それとも、パンの青カビだろうか。
 カビ、カビ、カビ。
 想像するだけで嫌だ。出会いたくない存在。ウジャウジャとカビの大群が襲って来るような錯覚に陥って逃げ出したくなる。

「来るな、カビなんてどこかへ行っちゃえ」

 そう唱えたらパッと消えてくれたらいいのに。そう思うのは私だけだろうか。
 そんなカビだけど湿気があるところに存在すると思っている人は多いだろう。だけど、人の身体にもカビが生えるって知っているだろうか。生えるという表現は違うのだろうか。なんか『生える』って表現は気持ち悪いものを想像してしまう。腕からニョキニョキってキノコが生えてくるイメージが頭を占める。
 ダメだ、ダメ。それは本当に気持ち悪いから想像しちゃダメだ。と、そこで爆弾発言を。

「はい、私、カビが生えました」

 現在進行形ではなく、過去の話。もちろん、ニョキニョキニョキと生えてきたわけじゃない。
 最初はなんだこれって感じでね。虫刺されかもと思っていたら違った。気づいたら赤いリング状に。
 診察の結果。

「カビですね」

 カ、カ、カビ。こんなことってあるのか。ショック、ショック、ショックだ。
 カビというから悪い。真菌と言い換えよう。水虫も真菌だ。だけど、水虫とは違う。身体に出来るリング状のものだから。それはさっきも話したか。

 カビ、カビ、カビ。
 頭の中に『カビ』というワードがグルグル回る。だから真菌だろう。カビとは言うな。
 嫌な響きだ。不衛生にしていたわけじゃない。いや、不衛生にしていただろうか。そんなことはないはずだ。カビというだけでなんだか汚い人みたいに思われそう。原因はわからないけど、病院に通院して完治はした。
 紫外線治療だったろうか、そんな治療をした記憶がある。紫外線がいいのなら海で日焼けするのもいいかと行った記憶もある。安易な考えだ。けど、なにかしらの効果があったと信じたい。

 昔のことであまり記憶が定かじゃないけど、リング状のものが身体に出来たら医者に即行くべきだ。市販の薬じゃ完治はしない。たぶん、きっと。
 カビになったからって落ち込む必要はない。
 ポジティブにヒーロー気分で悪者も嫌がり逃げ出す『カビマン』だ。なんて自慢しようなんて考えは起こすなよ。そんなこと思わないか。間違ってもカビでヒーローになることはない。どちらかといったら、怪人『カビ人間』のほうがしっくりくる。

『カビ人間』だなんて絶対に嫌だろう。何度も言うが、なってしまったら早く医師の診療を受けて治すことを考えるべきだ。
 思い出したら、なんだか身体が痒くなってきた。今、カビは生えていない。痒いと思うのは気のせいだ。まったく忌々しい記憶だ。

 そうそう、このリング状のカビだけど猫カビっていうものがあるみたい。
 猫カビというくらいだから猫がかかる皮膚病だけど、これ、人にもうつる。やっぱりリング状になるみたい。
 あれ、ということは猫からうつったのか。あの頃は知らなかったけど、そうなのか。犯人は猫なのか。犯人扱いするのは可哀相だけど。

 猫に向かってそんなこと言おうものなら「なんだよ、文句でもあるのか。けど、おいらじゃないぞ」と睨まれるかもしれない。睨まれようが、これに関して言えば文句のひとつでも言ってやりたい。猫が猫カビにかかっていて、うつされたとしたらの話だが。

「おまえはもう猫カビにかかっている」

 そう糾弾してやろう。そうしたら、猫も驚きの顔を見せるかもしれない。それはないか。猫だって猫カビになんてなりたくはないだろう。
 いや、待てよ。考えてみれば、外猫にしている飼い主がいけないってこともあるのか。
そうとも言えないのか。外にいようが家にいようが猫カビにかかるものなのか。わからない。そこまで調べてはいない。その前に、あの頃猫は飼っていなかった。じゃ野良猫か。
 猫好きだから、野良猫を触ったってことはあるかもしれない。その頃は手洗いとかもあまり気にしていなかった気もする。

 猫カビか。
 嫌な病気だ。
 さっきも話したけど、カビになったら市販の薬じゃ治らないからね。水虫の薬が一応効果はあるのかもしれないけど、完治はしないはず。必ず、病院に行って診察してもらおう。一応、医師には猫カビかもと言ったほうがいいのかもしれない。思い当る節があればの話だが。もちろん、飼い猫が猫カビだったら動物病院に行って診察してもらおう。
 予防することも大事だ。なにをすればいいのか正直わからないけど。

「わからないのかよ」

 そんなツッコミが飛んできそうだ。けど、私はサッとそれをかわすだろう。
 たぶん、手洗いは大事なのだと思う。あと体調管理だ。
 寝不足、体調不良で免疫力低下しているときにかかりやすいらしいからね。カビは怖いってことを認識しよう。猫カビで死なないとは思うが、カビの種類によっては死ぬこともあるらしい。

「恐ろしやぁ~」

 ここで怖がらせてもしかたがない。そんな死ぬようなカビに侵されることはよほどのことがないかぎりないはずだ。
 カビって人の身体には普通に存在するみたいだし。だからすべてが悪いカビとは言えない。免疫低下でカビが悪さをしはじめるってことだろうか。

『カビ』って言葉はイメージ悪い。カビが悪いわけじゃないとは思う。一応、カビの擁護もしておこう。いいカビもいるのだから。たぶん。正直、よくわかっていない。すみません。

「なあ、おいらも痒いんだけど猫カビかな」

 なんて言っていそうな猫の顔が、そこに。必死に身体を掻いている。
 いやいや、それはどうだろう。ダニって可能性もある。よし、じゃ動物病院に。おっと、それは違う。君は自分の家に行って動物病院に連れて行ってもらってくれ。わが家の猫じゃないだろう。わが家には通い猫さんがよく来る。今、飼い猫はいないもので。通い猫さんのことはあとで登場するのでそのときに話しはしよう。
 ちょっと待て。君は猫カビなのか。
 ああ、それならそうと言ってくれ。手洗いして消毒をしなくちゃ。



「おいら、そんなに汚くないぞ」

 そんな目で見られた気がした。だが、今日はさようなら。

「待て、待て、ごはんをくれよ」

 そんな鳴き声を無視して扉を閉じる。なんてことはしない。しっかりカリカリのキャットフードをあげてから「バイバイ」だ。

 それにしてもわが家にはいろんな猫がくるものだ。
 猫好きのところには猫が集まりやすい。キャットフードを用意しているから集まってしまうのだろうけど。猫屋敷にならないように気をつけねば。そして、カビにも気をつけろ。

 つまり、猫も人もカビには要注意。
 思わぬところに菌は存在する。
 中が凹んで、外側ぷっくりで形はまんまる。そんな形で赤くなっている。これが特徴だ。そうなったらカビに侵されている証拠だ。覚えていて損はないはず。きっと。

「ああ、やっぱり痒い」

 まさか……。いや、違う。これはきっと汗疹だ。いや、蚊にさされたのかもしれない。もう『カビ人間』になんてなりたくない。

 カビ、カビ、カビ……。
 カビが輪になって襲って来る夢でも見そうだ。なので、これでカビのことは頭からきれいさっぱり洗い流してしまおう。


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