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第六話「怪しき茶壷と筆」
とんでもない瑞穂の証言
しおりを挟むそうかそんなことがあったのか。
この急須、いや茶壷は確かに命の恩人だ。
「それだけじゃないんだ。燈子は何度も瑞穂の先を見通す力で救われたんだ。だがその甲斐もなく燈子は逝っちまったがな」
死神のお偉いさんからこっぴどく叱られたらしい。
人の命の長さは決まっている。それを勝手に変えようとするとは何事だと。
それはそうなのかもしれない。人にはそれぞれ寿命ってものがある。おそらく燈子は事故で亡くなることになっていたのだろう。
茶壷の瑞穂は間違ったことをしたのかもしれない。けど、そうしたくなるくらい栄三郎と燈子のことが好きだったのだろう。
彰俊は大きく息を吐き出して瑞穂を見遣る。
「そんな大切なものだとは知らずに申し訳ない。ごめんな瑞穂」
彰俊が頭を下げると瑞穂は狼狽えた。
「いや、その、あの。わ、わたくしは……」
「舟雲はどこでなにをしようとしている。お願いだ、瑞穂。教えてくれ。また間違いをおかしているのではないのか。違うのか。正すのなら今だぞ」
「栄三郎……」
瑞穂は栄三郎を見たあとこっちにも目を向けて溜め息を漏らす。
「ああ、もう。仕方がありません。舟雲を裏切るようで辛いですがお話します」
「わたくしは先を見通す力があります。それは栄三郎も知っているとは思いますが、以前よりもその力が増しているようでして。ずいぶん先の未来が見えてしまったのです」
瑞穂はチラッとこっちに目を向けてすぐに下を向き吐息を漏らす。
「どうした瑞穂」
「わたくしはダメですね。またしても人の運命を変えようとするなんて」
どういうことだろう。またこっちを見た。何か自分と関係があるのだろうか。
「大丈夫だ、今なら取り返しがつく。舟雲が関わっているのだろう。それなら早く止めなければ。今度は厳重注意だけでは済まないぞ」
「わかっています。ですが、話してもよいものか。正直、迷っています」
栄三郎と向き合い瑞穂は項垂れた。
そんなに話し辛いことなのだろうか。
あっ、またこっちを見た。やっぱり自分が関係しているのは間違いなさそうだ。
「あのさ、もしかして俺がいたら話し辛いのか」
「あっ、いや、その」
「図星だな。それじゃじいちゃんに話してくれればいいよ。今回。俺は関わらない方がいいんだろうから」
「おい、待て。ボケナス。おまえが関係するのであるならここにいるべきだ」
トキヒズミの言葉に栄三郎も頷き、瑞穂の肩に手を置くと話を促した。
「わかりました。すべてを話します」
彰俊はごくりと生唾を呑み込み瑞穂の話を待った。
果たしてどんな未来が見えたのだろう。やっぱり命を狙われたことと関係しているのだろうか。沙紀が狙われたのも関係あるってことだろうか。わからない。どうにも繋がりが見えない。瑞穂は悪者には見えない。何か理由があってそうしてしまったのだろうとは思うのだが、それがなんなのか。
『すべてを話します』とは言ったもののなかなか口を開こうとしなかった。それでも何も言わずに待った。すぐに文句を言い出しそうなトキヒズミでさえ黙っていた。深刻な問題を抱えていると雰囲気で伝わってくる。
瑞穂は深呼吸をひとつするとこっちに向き直り土下座をした。
「命を奪おうとして申し訳ありませんでした」
突然のことに彰俊は言葉が出てこなかった。
「沙紀さんのこともわたくしたちの仕組んだものです。舟雲が考えたことですがわたくしも手を貸したことは事実です。本当に申し訳ございません」
「いや、あの。俺は今生きているわけだし。頭を上げてくれよ」
顔をあげた瑞穂は涙目になっていた。
「こんなお優しい方を亡き者にしようとしていただなんてわたくし、恥ずかしいです」
「それで、なぜこんなことを」
「はい、きちんと話します。すべては時守家のためと思っておりました」
時守家のため。自分と沙紀が死ぬことがか。
「おい、何をいっている。彰俊は阿呆かもしれぬが死んでしまっては時守家のこの仕事をする者がいなくなってしまうではないか」
「じいちゃんまで阿呆って言わなくても」
栄三郎は頭を掻いて笑って誤魔化して「それで瑞穂、時守家の仕事をする者がいなくなっては意味がないであろう。時守家のためにならぬであろう」と話を逸らした。
「栄三郎、その通りです。ですが、そうなったとしても時守家のあとを継ぐ者は現れるものです。ですが……。生かしておくとこの者はいずれ結婚し子供を授かることに」
「それはめでたいことじゃないか」
「はい、そうです。ですが、その子が火事を引き起こしてしまうのです。そして……皆死に、お家断絶。そう見えてしまったのです」
なるほど。
自分がいなくなれば子供が産まれることはない。それで命を……。いやいや、そこまでしなくてもどうにか火事を食い止めればいいんじゃないのか。
「言いたいことはわかります。ですが、どういうわけかわたくしたちの力が失っている姿が見えたのです。もちろん、トキヒズミもです。なので、舟雲がこのようなことを考えてしまったのです」
遠い未来のことだ。正直、本当にそうなるのかと疑問だ。というか想像がつかない話だ。瑞穂を信じるしかないのだろうけど。
「それで舟雲は今何をしている」
瑞穂は目を見開き「そうでした。舟雲はアキコを連れ出して沙紀のもとへ行ったはずです」と告げた。
沙紀のもとへ。なぜだ。しかもアキコを連れて行ったって。
彰俊は首を捻った。
「あの、これは言わないほうがいいかと思いましたが、やはり言うべきですね。そうでないと謎が解けないでしょうから」
何を言おうとしているのだろう。正直、見当がつかない。
「あの、ですね。実はさっき話した火事を引き起こすという子供の母親が沙紀なのです」
「えええええーーーーーーー」
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