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第五話「猫神様がやってきた」
ミコを追って
しおりを挟むミコの奴、どうしたって言うんだ。まるで鬼みたいだった。
「ミコ、いるか」
突然、ネムの声が鼓膜を震わせた。
びっくりした。いつの間に帰ってきたんだ。
「おお、真一。ミコはいないのか」
「ああ、今までいたんだが。なんだかすごい形相で呪ってやるとか喚いていたけど」
ネムは嘆息を漏らし、かぶりを振った。
「ごめん、ネム。アキ悪い」
「いや、アキのせいじゃないさ。話も聞かずに勘違いしたミコがいけない。いや吾輩も悪いのかもしれないな」
あの子は誰だろう。可愛い子だけど。まさかネムの彼女だったりして。物の怪みたいだし。
「ところで、その子は?」
「ああ、アキだ。いやアキコか。どっちでもいいか。この者は吾輩の友だ」
「違う。弟子」
「弟子なのか。彼女かと思った」
「真一、おまえも勘違いするのか。こいつは男の子だぞ」
「えっ⁉」
男の子だとはね。そう言われれば、そんな気もしなくもない。
ネムとアキの並んだ姿にミコの鬼の形相の意味がなんとなくわかった気がした。
ミコは早とちりってことか。
「ちょっと、あたいは女の子だけど」
「えっ、どういうことだ」
「ああ、すまん。この者はちょっとばかしややこしくてな。二重人格ってやつだ」
「そうなのか」
「そうだ、女の子の人格があってな。だが間違いなく男の子だ」
「もう、あたいだってわかっているけどさ。けど彼女ではないからね。弟子っていうのは本当よ。座敷童子猫のアキコよ。よろしく」
真一も慌てて「よろしく」と返事をした。
「あっ、そうだミコの奴、猫の街に行くって言っていたぞ」
「そうか、ならば吾輩も向かおう。手遅れにならないうちにな」
「それなら俺も行く」
「アキも行く」
んっ、『アキ』。
「なによ、そんなにジロジロ見ないでくれる。それともなに、あたいに惚れたの。それはダメよ。あたいには大切な人がいるんだからさ」
えっ、今は……、えっとアキコの人格か。こんなにもころころと人格が変わるものなのか。
「ネム様、早く、早く」
あれ、また人格が変わったみたいだ。
ネムは頷き部屋の壁に闇の穴を開いた。裏猫道だ。
ここに入るのか。大丈夫だとわかっていてもどうにも尻込みしてしまう。
ブルッと真一は身体を震わせて、ネムとアキが飛び込んだあとに続いて飛び込んだ。風が首筋を撫でていき、一瞬身体がひんやりとしたがすぐに揺らめく明かりが目に映り懐かしい街並みが見え始めた。猫の街だ。
ネムは街へ着くとすぐに鼻先を上に向けてヒクヒク動かし始めた。ミコの匂いを探っているのだろう。耳も小刻みに動かしている。
猫の街は暖かい日差しに照らされていて気持ちが和んだ。
「みつけたぞ」との声に走り出すネム。アキもすぐに追いかけていく。
真一も追いかけようとしたが、すぐに立ち止まった。家と家の間の狭い道は、人には通り抜ける幅がなかった。アキはやはり猫なんだと、そのとき確信した。一瞬にして黒白猫に変化したからだ。便利なものだ。
自分も変化出来たらいいのに。仕方がない、向こうの道から回り込むか。
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