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第四話「ツキが逃げ行く足音を止めろ」
とんとん拍子に事が運ぶ
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運命とは面白いもので、神社で出会った敏文と瑠璃はとんとん拍子に事が運び気づけば結婚式の準備を進めていた。もちろん麻帆も瑠璃とはいい関係で母と娘というよりも友達に近い関係性でいる。
智也の話だと狐神様と猿田神社の神様が引き合わせたらしい。その手伝いとしてキンが一役買っていたってわけだ。
出会って半年で結婚とはスピード結婚と言えるだろう。もっと早く結婚する人もいるだろうけど。きっと敏文と瑠璃はうまくいくだろう。麻帆は天国のお母さんのこと忘れられないとは思うけど、瑠璃のことを認めている。瑠璃は敏文の家に行くたびに前妻のいる仏壇に手を合わせているらしい。きっと前妻も安心していることだろう。瑠璃はいい人だから。その証拠に瑠璃の背後に敏文の前妻が笑顔でついてきている。どうやら守護霊になっているようだ。
よく見ると、瑠璃と敏文の前妻は似た雰囲気があった。そのこともスピード結婚に至った所以かもしれない。神様も粋なことをするものだ。
神様が縁を結んでくれるって本当にあるのかと今回実感した。
智也からその話を聞いたときは驚いたが、嬉しくもあった。
「ニャニャ」
「おっ、来たなキン」
足に頭をゴツンとぶつけて来てスリスリしている。
「やっぱりキンはすごいよな」
その言葉に満足したのか尻尾をピンと立てて神社のほうへと帰っていった。
あいつは何をしに来たのだろう。褒めてほしくて来たのか。
康成は頬を緩ませてキンを見送った。
さてと、今日も智也のところに行って困っている人がいないか訊いてみるか。あっ、そうだ瑠璃を見守っている稲荷神社にでも行って様子を見て来るのもいいかも。きっと参拝者が増えて大忙しかもしれない。
瑠璃がSNSで稲荷神社のこと投稿した影響が出ているはずだ。
『この稲荷神社のおかげでいい人と出会えて結婚することになりました』なんて書いてあった。しかも『いいね』の数が一万を超えていた。
狐神様も喜んでいるだろう。きっと参拝者が増えたことで力も増しているはずだ。
「ヤスくん、なにニヤニヤしているの。あっ、嫌だ。エッチなことでも考えていたんでしょ」
「ば、馬鹿なこと言うな。そんなこと考えていないよ。稲荷神社のこと考えていただけだ」
「ふーん、そうなんだ」
なんだこころの目は。疑っているのか。まったくこころのやつは何を考えているのだか。確かにエッチなこと考えているときもあるけど。いやいや、そういうことじゃない。ああ、なぜ自分は焦っているのだろう。エッチなことなんてこれっぽっちも考えていなかったのに。
「じゃ、ちょっと出掛けてくる」
「えっ、待ってよ。私も行く。いいでしょ」
「行くって学校は」
「もう、今日は日曜日でしょ」
「あっ、そうか」
ダメだ、完全に曜日の感覚を失っている。まあいいか、そんなこと。こころと出掛けられるのだから。
「路子さん、ちょっとこころと出掛けて来るからさ」
「はいよ、いってらっしゃい」
康成は路子に手を振りこころとともに歩き出す。今日もいい天気だ。あっ、龍が空を泳いでいる。子烏天狗もいる。
んっ、あれ。こころと重なり合うように何かが透けて見えるけど。あっ、子狐か。そう思ったら子狐がお辞儀をしてスッと姿を消した。
「ああ、ヤスくん今、私の胸を見たでしょ。やっぱりエッチなこと――」
「待て、待て。見ていないって。僕はそんなにエッチじゃないぞ。濡れ衣だ」
こころはニヤリとして「冗談だよ」と走り出した。
まったく何が冗談だ。そんなことよりあいつ行先知っているのか。
それにしても子狐の奴、やりやがったな。いや、待てよ。こころと自分の仲を取り持とうとしたのか。きっとそうだろう。お礼のつもりかもしれない。そう思うことにしよう。
「おーい、こころ。待てよ」
あっ、キンだ。家と家の間のブロック塀をスタスタと歩いていく。あいつどこへ行くのだろう。まあいいか。キンは自分に用事があるわけじゃなさそうだし。
(完)
智也の話だと狐神様と猿田神社の神様が引き合わせたらしい。その手伝いとしてキンが一役買っていたってわけだ。
出会って半年で結婚とはスピード結婚と言えるだろう。もっと早く結婚する人もいるだろうけど。きっと敏文と瑠璃はうまくいくだろう。麻帆は天国のお母さんのこと忘れられないとは思うけど、瑠璃のことを認めている。瑠璃は敏文の家に行くたびに前妻のいる仏壇に手を合わせているらしい。きっと前妻も安心していることだろう。瑠璃はいい人だから。その証拠に瑠璃の背後に敏文の前妻が笑顔でついてきている。どうやら守護霊になっているようだ。
よく見ると、瑠璃と敏文の前妻は似た雰囲気があった。そのこともスピード結婚に至った所以かもしれない。神様も粋なことをするものだ。
神様が縁を結んでくれるって本当にあるのかと今回実感した。
智也からその話を聞いたときは驚いたが、嬉しくもあった。
「ニャニャ」
「おっ、来たなキン」
足に頭をゴツンとぶつけて来てスリスリしている。
「やっぱりキンはすごいよな」
その言葉に満足したのか尻尾をピンと立てて神社のほうへと帰っていった。
あいつは何をしに来たのだろう。褒めてほしくて来たのか。
康成は頬を緩ませてキンを見送った。
さてと、今日も智也のところに行って困っている人がいないか訊いてみるか。あっ、そうだ瑠璃を見守っている稲荷神社にでも行って様子を見て来るのもいいかも。きっと参拝者が増えて大忙しかもしれない。
瑠璃がSNSで稲荷神社のこと投稿した影響が出ているはずだ。
『この稲荷神社のおかげでいい人と出会えて結婚することになりました』なんて書いてあった。しかも『いいね』の数が一万を超えていた。
狐神様も喜んでいるだろう。きっと参拝者が増えたことで力も増しているはずだ。
「ヤスくん、なにニヤニヤしているの。あっ、嫌だ。エッチなことでも考えていたんでしょ」
「ば、馬鹿なこと言うな。そんなこと考えていないよ。稲荷神社のこと考えていただけだ」
「ふーん、そうなんだ」
なんだこころの目は。疑っているのか。まったくこころのやつは何を考えているのだか。確かにエッチなこと考えているときもあるけど。いやいや、そういうことじゃない。ああ、なぜ自分は焦っているのだろう。エッチなことなんてこれっぽっちも考えていなかったのに。
「じゃ、ちょっと出掛けてくる」
「えっ、待ってよ。私も行く。いいでしょ」
「行くって学校は」
「もう、今日は日曜日でしょ」
「あっ、そうか」
ダメだ、完全に曜日の感覚を失っている。まあいいか、そんなこと。こころと出掛けられるのだから。
「路子さん、ちょっとこころと出掛けて来るからさ」
「はいよ、いってらっしゃい」
康成は路子に手を振りこころとともに歩き出す。今日もいい天気だ。あっ、龍が空を泳いでいる。子烏天狗もいる。
んっ、あれ。こころと重なり合うように何かが透けて見えるけど。あっ、子狐か。そう思ったら子狐がお辞儀をしてスッと姿を消した。
「ああ、ヤスくん今、私の胸を見たでしょ。やっぱりエッチなこと――」
「待て、待て。見ていないって。僕はそんなにエッチじゃないぞ。濡れ衣だ」
こころはニヤリとして「冗談だよ」と走り出した。
まったく何が冗談だ。そんなことよりあいつ行先知っているのか。
それにしても子狐の奴、やりやがったな。いや、待てよ。こころと自分の仲を取り持とうとしたのか。きっとそうだろう。お礼のつもりかもしれない。そう思うことにしよう。
「おーい、こころ。待てよ」
あっ、キンだ。家と家の間のブロック塀をスタスタと歩いていく。あいつどこへ行くのだろう。まあいいか。キンは自分に用事があるわけじゃなさそうだし。
(完)
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康成君の初仕事、お疲れ様でした。無事、解決できてよかったです。
あと、アロウとウンロウがかわいい!上田家前での康成君とのやり取りが、ほほえましかったです(*´ω`*)
ありがとうございます♪(*^^*)
アロウとウンロウを気に入ってくれて嬉しいです。
感想もらえると励みになりますね。
おお~。まさかの展開でした。キン、やりますね。みんな、幸せになれて、良かった~。
はい、よかったです。
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いつも感想ありがとうございます♪
簡単な事でしたね~。キンはいい仕事をしていると思いますよ。瑠璃さん、いい縁が結ばれるといいですね。
そう簡単なことです。
ツ~さんの言葉にキンはきっとドヤ顔していますね。(=^ェ^=)
瑠璃さんもきっといいことあるはずですよね。
いつも感想ありがとうございます♪