涙が呼び込む神様の小径

景綱

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第三話「大樹の声に耳を傾けて」

雄大と猫

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 ああ、お腹が減った。

「なあ、猫さん。お腹が減ってしかたがないよ」

 膝の上で寝たまま耳だけピクピク動かしている。尻尾の先も小さく動かしていた。返事はしてくれないみたい。
 そうだ、絵でも描こう。
 雄大は膝の上から猫を落とさないようにしながら背中のランドセルを下ろして小さなスケッチブックと鉛筆を取り出した。

 何を描こうか。
 膝上の猫に目が留まり鉛筆を滑らせていく。
 猫の絵は初めてだ。鋭い目も今は閉じられて可愛い寝顔をしている。大きな身体ですごい存在感がある。いい絵が描けそうだ。
 絵を描くことに集中すれば少しは空腹も忘れられる。

「猫さん。さっきはブサイクって言ってごめんなさい。僕ね、やっぱり猫さんと友達になりたいな。ダメかな」

 尻尾の先がパタパタと動く。

「なんだよ、返事くらいしてよ。けど、それって友達になってくれるってことかな」

 また尻尾の先がパタパタする。

「ありがとう」
「ウニャ」

 返事をしてくれたことに雄大は頬を緩ませた。

「僕、猫さんの絵を描いているんだよ。格好良くに描いてやるからな」

 雄大はしっかりと観察して絵を完成させていく。

「そういえば、猫さんの尻尾って太いよね。太っている猫さんってみんなそうなのかな」

 うわっ。なんだ急に。尻尾が大きくバタバタ激しく振り出した。

「ごめん、僕、なんか変なこと言っちゃったかな」

 猫は膝上から飛び降りて毛繕いを始めてしまった。ああ、もうちょっと寝ていてくれたらいいのに。あと少しで絵が完成だったのに。

 あっ、おじさんだ。寺の門だったところからおじさんがやってくる。なんで、ここがわかったのだろう。逃げなきゃ。
 そうだ、あのおじさん何か食べる物を持っていないだろうか。持っているかもしれない。それだったら逃げないほうがいいのかも。どうしよう。

 雄大のお腹がまた鳴いた。ダメだ、お腹ペコペコだ。

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