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第二話「心の闇を消し去るしあわせの鐘を鳴らそう」
神成荘にて
しおりを挟む康成は神成荘に戻って来ていた。
「あの親子、大丈夫かな」
「どうだろうな」
「なんだよ、どうだろうなって」
智也はニヤリとしてそれ以上話さなかった。
こころのほうは身を乗り出して「ねぇねぇ、女の子って中学生なんでしょ。名前なんて言うの」と問いかけてきた。
「名前か。確か、上田……麻帆ちゃんだったかな」
「同じ中学かな」
「それはわからないよ」
「そうか。友達になれるかなって思ったのに。もう会わないの」
「たぶん」
「一緒にお見舞いに行こうよ」
「それは……」
あれ、そういえばもう新学期始まっているのにこころはいつもいる。手続きは済んでいるはずだ。
「あのさ、こころはいつから学校に行くんだ」
「えっ、まあね。なんとなく行き辛いというか……」
こころは苦笑いを浮かべていた。
「しかたがない奴だな。中学三年だろう。高校受験もあるんだからしっかり勉強しないと。まあ、自分が言える立場じゃないけど。智也もなんとか言ってやれよ」
「俺は、こころの意思に任せるよ。そのへんはあまり干渉しないほうがいいと思うし。だが、一言だけ、今のこころならどこでもやっていけると思うぞ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「じゃ、僕も干渉しないことにする。けど、路子さんは何か言っていないのか」
「うん、行きたくなったら行けばいいってさ」
そうなのか。もっと厳しいこと話すのかと思ったけど、違うのか。もしかしたら、何か強く言わない理由があるのかもしれない。けど、中学くらいはしっかり行くべきだと思う。
まあ、そこは強くは言えない。自分こそ、本当だったら高校はきちんと卒業するべきだろう。けど、今はやるべきことがある。高校中退でも胸を張って生きられればそれでいい。
そう考えればこころには何も言えない。きっときちんと考えているはずだ。祖母のそこのところはわかっているのだろう。
康成はふと思った。
麻帆と友達になればこころは学校に行くだろうか。もしそうだとしたら、お見舞いに行くこともありなのかもしれない。けど、上田敏文と面識はない。麻帆には嘘をついてしまった。きっと嘘だともうバレているだろう。今頃誰だったのだろうなんて首を傾げていることだろう。
それこそ、お見舞いには行き辛い。どうしたものか。
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