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第3章 花屋『たんぽぽ』に集う
(3-14)
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小百合が入院して六日か。まだ退院できないのだろうか。
帰り道、梨花は夜空を眺めて小百合のことを考えた。大丈夫、そろそろ退院できるはず。
あっ、流れ星だ。
手を合わせて、小百合の回復を祈った。
ああ、それにしても疲れた。今日は早めに休もうか。
ダメだ。その前に洗濯しなくちゃ。そうそう、ラベンダーの苗を買ってきたんだった。きちんとお世話しなきゃ。
歩いて五分。ちょっと考え事をしているだけで、はい、到着。
やっぱり、仕事場から近いって最高だ。
部屋に入り、ラベンダーを窓際に置く。あとで、少し大きめな植木鉢に植え替えなきゃ。ラベンダー用の培養土も買ってきている。けど、今やるのは面倒だ。大きく息を吐き、その場にへたり込む。
ダメだ。後回しにしたら、ずっとこのままになりそうだ。
変わらなきゃ。頑張らなきゃ。
植え替えより先に、お風呂で疲れをとったほうがいい。
そうだ、ラベンダーの入浴剤でお風呂にゆっくり浸かろう。
梨花は、簡単にバスタブの掃除を済ませて、お湯を張っていく。
なんだか疲れが増した気がする。大の字になって天井をみつめる。
節子のところで、夕飯を済ませてきて正解だった。出来ることなら、仕事以外は楽がしたい。でも、不思議だ。なんで節子のところにいると、頑張れるのだろう。
花屋が性に合っているのだろうか。
考えていたら、庄平と節子、ふたりの顔が思い浮かぶ。気づけば、自然と口角が上がっていた。そうか、力になりたいんだ。ふたりの笑顔が見たいんだ。それだけじゃない。お客さんの嬉しそうな顔も、自分の気力をアップさせてくれている。
接客業に、自分は向いていたのかもしれない。
それに最近じゃ、夕飯の手伝いまでしている。庄平の料理は、いろいろと勉強にもなる。自分は、変わりつつある。
今まさに、女子力向上中。
それなら、家でもそうでいなきゃ。疲れてなんかいない。大丈夫。
『私、頑張っちゃうんだから』
お湯が溜まるまで、ラベンダーの苗の植え替えをしてしまおう。
花屋の店員としてもスキルアップに繋がるはず。
お客が来たとき、教えられる。
まずは、植木鉢の底にネットと石を入れて、土を三分の一入れる。それで、節子はなんて言っていただろう。ここに苗を入れれば終わりだっけ。そう、それでいいはず。
綺麗に埋めて、あとは水やり。
簡単、簡単。
植え替えたラベンダーを窓際に戻して、じっとみつめる。
なんだか、優しい気持ちになれる。ここなら、風通しもいいしラベンダーも居心地いいだろう。
そろそろ、お湯が溜まったころだと風呂場へ向かう。
丁度いい感じでお湯が溜まっていた。ラベンダーの入浴剤を入れて、ホッと息を吐く。いい香り。自然と頬が緩む。
梨花は、服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びた。髪を洗い身体も洗い、お湯へと浸かる。
ああ、疲れがお湯へと溶けていく。気持ち良過ぎて、なんだか眠気がさしてきた。おっと、ダメダメ。お風呂で寝たら危ない。こんなところで、死にたくはない。
ふと、病室のベッドで横になる小百合のことが思い出された。大丈夫だろうか。まさか、亡くなるなんてことはないと思うけど。
ちょっと何を不吉なこと考えているの。小百合は、元気に退院してくるに決まっているじゃない。
『私の馬鹿、馬鹿、馬鹿』
でも……。いやいや、大丈夫。
気になったら、小百合に会いたくなった。明日、小百合のところへ面会に行ってこよう。
お風呂からあがると、冷蔵庫で冷やしておいたスポーツ飲料を一気に飲み干す。本当だったら、ビールが飲みたい気分だけど残念ながら一本もなかった。
その前に、何か着なさいよって話だ。
誰もいないから問題はない。これこそ、一人暮らしの特権だ。
「ふぅー、生き返る」
ビールだったら、気分良過ぎて昇天していたかも。なんて、そんなわけないか。
梨花はスウェットを着ると、投げ捨てた洋服と専用ネットに入れた下着を洗濯機に入れてすぐに洗濯機を回す。簡単なことなのになんで面倒だなんて思っていたのだろう。本当はまだちょっと面倒だと思っているけど。
あれ、電話が鳴っているみたい。梨花はテーブルに置いてあったスマホを手に取ると、節子からだと確認して電話に出た。
「もしもし、梨花です」
あれ、返答がない。どうしたのだろう。そう思っていたら、節子のすすり泣く声がしてきた。
えっ、何。
帰り道、梨花は夜空を眺めて小百合のことを考えた。大丈夫、そろそろ退院できるはず。
あっ、流れ星だ。
手を合わせて、小百合の回復を祈った。
ああ、それにしても疲れた。今日は早めに休もうか。
ダメだ。その前に洗濯しなくちゃ。そうそう、ラベンダーの苗を買ってきたんだった。きちんとお世話しなきゃ。
歩いて五分。ちょっと考え事をしているだけで、はい、到着。
やっぱり、仕事場から近いって最高だ。
部屋に入り、ラベンダーを窓際に置く。あとで、少し大きめな植木鉢に植え替えなきゃ。ラベンダー用の培養土も買ってきている。けど、今やるのは面倒だ。大きく息を吐き、その場にへたり込む。
ダメだ。後回しにしたら、ずっとこのままになりそうだ。
変わらなきゃ。頑張らなきゃ。
植え替えより先に、お風呂で疲れをとったほうがいい。
そうだ、ラベンダーの入浴剤でお風呂にゆっくり浸かろう。
梨花は、簡単にバスタブの掃除を済ませて、お湯を張っていく。
なんだか疲れが増した気がする。大の字になって天井をみつめる。
節子のところで、夕飯を済ませてきて正解だった。出来ることなら、仕事以外は楽がしたい。でも、不思議だ。なんで節子のところにいると、頑張れるのだろう。
花屋が性に合っているのだろうか。
考えていたら、庄平と節子、ふたりの顔が思い浮かぶ。気づけば、自然と口角が上がっていた。そうか、力になりたいんだ。ふたりの笑顔が見たいんだ。それだけじゃない。お客さんの嬉しそうな顔も、自分の気力をアップさせてくれている。
接客業に、自分は向いていたのかもしれない。
それに最近じゃ、夕飯の手伝いまでしている。庄平の料理は、いろいろと勉強にもなる。自分は、変わりつつある。
今まさに、女子力向上中。
それなら、家でもそうでいなきゃ。疲れてなんかいない。大丈夫。
『私、頑張っちゃうんだから』
お湯が溜まるまで、ラベンダーの苗の植え替えをしてしまおう。
花屋の店員としてもスキルアップに繋がるはず。
お客が来たとき、教えられる。
まずは、植木鉢の底にネットと石を入れて、土を三分の一入れる。それで、節子はなんて言っていただろう。ここに苗を入れれば終わりだっけ。そう、それでいいはず。
綺麗に埋めて、あとは水やり。
簡単、簡単。
植え替えたラベンダーを窓際に戻して、じっとみつめる。
なんだか、優しい気持ちになれる。ここなら、風通しもいいしラベンダーも居心地いいだろう。
そろそろ、お湯が溜まったころだと風呂場へ向かう。
丁度いい感じでお湯が溜まっていた。ラベンダーの入浴剤を入れて、ホッと息を吐く。いい香り。自然と頬が緩む。
梨花は、服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びた。髪を洗い身体も洗い、お湯へと浸かる。
ああ、疲れがお湯へと溶けていく。気持ち良過ぎて、なんだか眠気がさしてきた。おっと、ダメダメ。お風呂で寝たら危ない。こんなところで、死にたくはない。
ふと、病室のベッドで横になる小百合のことが思い出された。大丈夫だろうか。まさか、亡くなるなんてことはないと思うけど。
ちょっと何を不吉なこと考えているの。小百合は、元気に退院してくるに決まっているじゃない。
『私の馬鹿、馬鹿、馬鹿』
でも……。いやいや、大丈夫。
気になったら、小百合に会いたくなった。明日、小百合のところへ面会に行ってこよう。
お風呂からあがると、冷蔵庫で冷やしておいたスポーツ飲料を一気に飲み干す。本当だったら、ビールが飲みたい気分だけど残念ながら一本もなかった。
その前に、何か着なさいよって話だ。
誰もいないから問題はない。これこそ、一人暮らしの特権だ。
「ふぅー、生き返る」
ビールだったら、気分良過ぎて昇天していたかも。なんて、そんなわけないか。
梨花はスウェットを着ると、投げ捨てた洋服と専用ネットに入れた下着を洗濯機に入れてすぐに洗濯機を回す。簡単なことなのになんで面倒だなんて思っていたのだろう。本当はまだちょっと面倒だと思っているけど。
あれ、電話が鳴っているみたい。梨花はテーブルに置いてあったスマホを手に取ると、節子からだと確認して電話に出た。
「もしもし、梨花です」
あれ、返答がない。どうしたのだろう。そう思っていたら、節子のすすり泣く声がしてきた。
えっ、何。
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