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天才魔封術使いと呼ばれる少年
天才だけど見習い中
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アルス・エリスン。16歳。最年少の魔封術使いにして天才と噂される実力を持つ。
だが、それは周囲の評価で本人はまだまだ実力も経験も半人前で天才などと呼ばれるほどの実力はないと思っている。なので、稀代の魔封術使いと名高い叔父の家に居候しながら、経験と知識を積むべく日々勉強中なのだった。
ちなみに魔封術使いの仕事は魔物退治だ。
魔封術とは、読んで字のごとく魔物を封印する術のことだが、ただ封印するという生温いものではない。封印し消滅させるのだ。魔物は二度と蘇ることはないし、完全に無に返すのが魔封術である。
なので魔物を消滅させる以外に用途もなければ応用も出来ない。魔物以外に効かない対魔物専用の術だった。
ただただ、魔物を消滅させるだけの術。
だが、魔物たちが暴れ人間を襲うこの世界では魔封術使いは大きな役目を担っている。そのため、力のある魔封術使いは人々から絶大な信用をされ、英雄として見られるのだ。
そんな中でアルスの叔父は稀代の魔封術使いと言われる最強の魔封術使いであり、大きな地位と人々から絶大な信頼を得ている。
そんな叔父ラムドからアルスは魔封術使いになるための教育を受けた。
もちろん、それはアルスが望んだことだった。
幼い日、アルスは両親を目の前で無残に魔物に殺された。
魔物への復讐と魔物に苦しむ人々を救いたいという気持ち。
元々、才能があったのだろう。
アルスは乾いた地面が水を吸うように魔封術の知識を吸収していき、その成長は叔父ラムドが舌を巻くほどだった。
今、アルスは叔父の下で教えを受けながら依頼された仕事をこなしている。独立していると言ってもアルスはまだ経験が浅い。ラムドから学ぶことは沢山ある。
この日、アルスは叔父ラムドの書庫で魔封術に関する書物を読んでいた。もちろん勉強のためだ。
書庫は地下にあり、ランプの明かりで読書している。
そのときだった。
「よぉ~。精が出るねぇ~。」
実にのんきで明るい声が地下書庫に響き渡る。
アルスは聞き慣れた声にため息をついて声の主の方へ視線を向けた。視線の先には書庫出入口へと続く階段の中段くらいの位置から、ニヤニヤとこちらを見下ろす親友エリオンの姿があった。
彼は手摺り(てすり)に両腕を乗せ、少し身を乗り出すようにしてこちらを覗き込んでいる。
彼は名門オーテッド家の跡取りだ。
家庭の事情は知らないが、父親はおらず、母方の祖父の屋敷で母親や祖父と暮らしている。
なんとなく普段の話から、エリオンと彼の祖父は折り合いが悪いことは知っていた。祖父は孫のエリオンを嫌っているらしい。そしてエリオンも祖父を嫌っている。
「お前か。」
顔を見るなり、何の興味もない冷めた口調でアルスは言った。だが、そんなことは日常茶飯事でエリオンが、気にすることはない。
明らかに面白がってる顔で泣き真似をする。
「ヒドイ!!折角、来てあげたのにっっ」
女性口調で、よよよ。とさらに声を大きくして泣き真似をしてみせた。
しかし、その顔は楽しげで、声も笑っている。完全にふざけているのが丸わかりだった。
「邪魔するなよ。」
アルスが短く抗議するが、相手は聞いていない。いつものことだが何を言っても無駄だ。彼は自分の思う通りにしか行動しない。人の言うことなど聞きはしないのだから。
「ははは。ラムドのおっさんは構わないって言ってたぜ?」
エリオンは陽気に笑う。
その『ラムドのおっさん』という言葉に、アルスは呆れた。
「エリオンくらいだぞ?ラムド叔父さんを『おっさん』なんて呼ぶのは。
叔父さんは世界最強って言われる魔封術使いなんだから。」
別にアルスは自分の叔父のことを彼がなんと呼ぼうが気にしないが、世間ではラムド様と呼ばれるくらい尊敬されているのだ。
しかし、エリオンが気にする様子はない。
「いいじゃねぇかよ。
本人もいいって言ってるし、甥で弟子のお前だって文句がある訳じゃねぇんだろ?
そりゃそうと、お前、何読んでんだ?」
エリオンはアルスの言葉を軽く流して、階段を降りて来る。そして、小さな机でランプの灯りで本を読むアルスの側にやって来た。
「あぁ?古代文字か…
ふーん。
魔封術の起源についての本ねぇ。」
エリオンはアルスの読む本の内容に軽く目を走らせると興味無さげに呟いた。
アルスが辞書を引きながら苦労して読んでいる本だが、エリオンは辞書どころか、チラリと見ただけで内容を読み取ってしまった。
そんな彼にアルスは思い出す。
……そういえば、こいつは英才教育を受けてるんだった。
そうエリオンは名門オーテッド家のたった一人の跡取りとして祖父から厳しく文武両道において教育されていた。
彼の祖父はエリオンを嫌っているが、彼しか跡取りがいないので彼に跡を継がせるつもりなのだ。
エリオンも祖父を嫌っている。にも関わらず、どういうつもりでエリオンが大人しく祖父の言うことを聞いて真面目に勉強も鍛練も行なっているのかは謎だ。
エリオンは何でも要領よくこなすが、ここまで出来るようになるには相当努力したことだろう。
他人に命令されることが嫌いで、自由気ままな性格なので、好きで従っているとは思えない。
「読めるんなら訳してよ。」
アルスが頼むと、エリオンは肩を竦めて見せた。
「それって勉強の意味ねぇじゃん。
第一、面倒クセぇよ。」
エリオンはアルスの為と嘯(うそぶ)くが彼の性格からして『面倒クセぇよ。』が本音だろうことは間違いない。
「後半のが本音だろ。」
ジトッと見るが相手は悪びれる様子もなく聞こえないフリで知らん顔している。
仕方ないのでアルスはため息とともに諦めた。
まあ、確かに他人に頼ったら勉強の意味がないというのは正しい。
エリオンの本音がなんであろうと。
だが、それは周囲の評価で本人はまだまだ実力も経験も半人前で天才などと呼ばれるほどの実力はないと思っている。なので、稀代の魔封術使いと名高い叔父の家に居候しながら、経験と知識を積むべく日々勉強中なのだった。
ちなみに魔封術使いの仕事は魔物退治だ。
魔封術とは、読んで字のごとく魔物を封印する術のことだが、ただ封印するという生温いものではない。封印し消滅させるのだ。魔物は二度と蘇ることはないし、完全に無に返すのが魔封術である。
なので魔物を消滅させる以外に用途もなければ応用も出来ない。魔物以外に効かない対魔物専用の術だった。
ただただ、魔物を消滅させるだけの術。
だが、魔物たちが暴れ人間を襲うこの世界では魔封術使いは大きな役目を担っている。そのため、力のある魔封術使いは人々から絶大な信用をされ、英雄として見られるのだ。
そんな中でアルスの叔父は稀代の魔封術使いと言われる最強の魔封術使いであり、大きな地位と人々から絶大な信頼を得ている。
そんな叔父ラムドからアルスは魔封術使いになるための教育を受けた。
もちろん、それはアルスが望んだことだった。
幼い日、アルスは両親を目の前で無残に魔物に殺された。
魔物への復讐と魔物に苦しむ人々を救いたいという気持ち。
元々、才能があったのだろう。
アルスは乾いた地面が水を吸うように魔封術の知識を吸収していき、その成長は叔父ラムドが舌を巻くほどだった。
今、アルスは叔父の下で教えを受けながら依頼された仕事をこなしている。独立していると言ってもアルスはまだ経験が浅い。ラムドから学ぶことは沢山ある。
この日、アルスは叔父ラムドの書庫で魔封術に関する書物を読んでいた。もちろん勉強のためだ。
書庫は地下にあり、ランプの明かりで読書している。
そのときだった。
「よぉ~。精が出るねぇ~。」
実にのんきで明るい声が地下書庫に響き渡る。
アルスは聞き慣れた声にため息をついて声の主の方へ視線を向けた。視線の先には書庫出入口へと続く階段の中段くらいの位置から、ニヤニヤとこちらを見下ろす親友エリオンの姿があった。
彼は手摺り(てすり)に両腕を乗せ、少し身を乗り出すようにしてこちらを覗き込んでいる。
彼は名門オーテッド家の跡取りだ。
家庭の事情は知らないが、父親はおらず、母方の祖父の屋敷で母親や祖父と暮らしている。
なんとなく普段の話から、エリオンと彼の祖父は折り合いが悪いことは知っていた。祖父は孫のエリオンを嫌っているらしい。そしてエリオンも祖父を嫌っている。
「お前か。」
顔を見るなり、何の興味もない冷めた口調でアルスは言った。だが、そんなことは日常茶飯事でエリオンが、気にすることはない。
明らかに面白がってる顔で泣き真似をする。
「ヒドイ!!折角、来てあげたのにっっ」
女性口調で、よよよ。とさらに声を大きくして泣き真似をしてみせた。
しかし、その顔は楽しげで、声も笑っている。完全にふざけているのが丸わかりだった。
「邪魔するなよ。」
アルスが短く抗議するが、相手は聞いていない。いつものことだが何を言っても無駄だ。彼は自分の思う通りにしか行動しない。人の言うことなど聞きはしないのだから。
「ははは。ラムドのおっさんは構わないって言ってたぜ?」
エリオンは陽気に笑う。
その『ラムドのおっさん』という言葉に、アルスは呆れた。
「エリオンくらいだぞ?ラムド叔父さんを『おっさん』なんて呼ぶのは。
叔父さんは世界最強って言われる魔封術使いなんだから。」
別にアルスは自分の叔父のことを彼がなんと呼ぼうが気にしないが、世間ではラムド様と呼ばれるくらい尊敬されているのだ。
しかし、エリオンが気にする様子はない。
「いいじゃねぇかよ。
本人もいいって言ってるし、甥で弟子のお前だって文句がある訳じゃねぇんだろ?
そりゃそうと、お前、何読んでんだ?」
エリオンはアルスの言葉を軽く流して、階段を降りて来る。そして、小さな机でランプの灯りで本を読むアルスの側にやって来た。
「あぁ?古代文字か…
ふーん。
魔封術の起源についての本ねぇ。」
エリオンはアルスの読む本の内容に軽く目を走らせると興味無さげに呟いた。
アルスが辞書を引きながら苦労して読んでいる本だが、エリオンは辞書どころか、チラリと見ただけで内容を読み取ってしまった。
そんな彼にアルスは思い出す。
……そういえば、こいつは英才教育を受けてるんだった。
そうエリオンは名門オーテッド家のたった一人の跡取りとして祖父から厳しく文武両道において教育されていた。
彼の祖父はエリオンを嫌っているが、彼しか跡取りがいないので彼に跡を継がせるつもりなのだ。
エリオンも祖父を嫌っている。にも関わらず、どういうつもりでエリオンが大人しく祖父の言うことを聞いて真面目に勉強も鍛練も行なっているのかは謎だ。
エリオンは何でも要領よくこなすが、ここまで出来るようになるには相当努力したことだろう。
他人に命令されることが嫌いで、自由気ままな性格なので、好きで従っているとは思えない。
「読めるんなら訳してよ。」
アルスが頼むと、エリオンは肩を竦めて見せた。
「それって勉強の意味ねぇじゃん。
第一、面倒クセぇよ。」
エリオンはアルスの為と嘯(うそぶ)くが彼の性格からして『面倒クセぇよ。』が本音だろうことは間違いない。
「後半のが本音だろ。」
ジトッと見るが相手は悪びれる様子もなく聞こえないフリで知らん顔している。
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