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19・花園とジン、エンカウント
しおりを挟む『譲がΩに襲われました』
榊龍時が良太からその知らせを受け通話を終えた直後、今度は小田桐麗子から着信が入った。
聞けば、月輪地区の商店街でΩの高齢者がガチ高の人間に襲われそうになったというのだ。どうやら老人に襲い掛かろうとしたのは──鈴鬼京一。
麗子は何人かの知り合いを経由して聞いた話なので、まだ確定ではないと念を押した。
榊もまた桜庭がΩに襲われて抑制剤らしき薬物を使い、病院に運ばれたことを麗子に伝える。本人の了承も得ずにどうかとも思ったが、花園にいればいずれ彼女の耳に入る情報だ。それに〔檸檬姐弩〕の元総長である麗子ならば、彼女を慕う女性たちの情報網で何かわかるかもしれない。
なにやらきな臭い、と榊は胸騒ぎを覚える。
いつでもトラブルに対応できるよう手早くシャワーを済ませて身支度を整え、ネクタイを手に取った。
桜庭くんが発情したΩに襲われた?
京一さんが発情したΩに襲いかかろうとしたって──あの人は、αだった?
そんなこと知らな──
とここで、またしても鳴り響いた着信音。発信者は花園高校定時四年、柿岡だった。
『月輪高校のジンが、榊さんを探しています』
何がどうなってガチ高の番長が自分を探すのか?全体像は掴めないが、おそらく桜庭と鈴鬼の件と無関係ではあるまい。榊は、直ぐに行くと柿岡に返答し夜の花園高校へと向かった。
榊が夜間に花園高校を訪れたのは実に四年ぶりだった。
ここへくる途中、示し合わせたわけでもないが麗子や良太のバイクと合流した。内一台は見慣れぬバイクであったが、おそらく麗子か良太の知り合いだろう。
花園高校の中庭。定時制に通う現役の不良たちが待ち構えている。彼らは地元を守る自警団のような役割を担っている若者たちであったが、そのくせ平和や退屈とは縁遠い、血の気の多い連中だ。
星空の下、夜気の満ちた中庭の三方を囲むコの字型の校舎。壁の落書き、放置されて積まれた自転車、ガムテープで補強された窓ガラス、ドラム缶と一斗缶から燃え上がる炎の色。エンジンの排気ガスにオイルの臭気も溶け込んだような機械的で混沌としたにおい。
花園高校の夜の顔。これこそがまさに、榊にとっての懐かしき母校だ。
ただいま、花園。
榊はここへ来てようやく、本当に故郷に帰ってきたような心地だった。良太と麗子から知らされた事件のことをほんの少しだけ頭の隅に追いやって、母校の空気に浸る。
「榊さん」
現実に引き戻すのは良太の声。
良太はバイクから降り立ち、まずは榊の側に駆け寄る。
「麗子さんから連絡あって、一体何がなんだか……」
「桜庭くんと京一さんの件は私も聞いたよ」
「きょうい……あ、鈴鬼さん?鈴鬼さんも何かあったんすか」
「発情したΩが、って件だよ。桜庭くんと同じだ」
それを聞いた良太は青ざめた。
「私は柿岡くんから月輪の番長が探してるって聞いてな、来たんだよ」
ガチ校の番長が?と良太はわずかに裏返った声を上げた。まさか榊がそのような理由でこの場に居るとは思っていなかったのだ。
良太と榊の元へ一人の青年が歩み寄る。
黒いざんばら髪、古びた藍色の羽織。こいつは刀童が話していた「ジン」の特徴と一致する、と榊は見極めた。
対峙した神鏡はまず、榊の頭の上あたりを見上げるように仰いで、おお珍しいね、と言う。それから瞬きもせずに視軸を下へ移動させて、夜行性の猛獣のような虹彩で榊をとらえた。
「あんたが榊さんね」
「初めまして、榊龍時です。月輪高校の神鏡さんですね」
「そーだよ」
「私に御用とか」
「ウチの鈴鬼のこと、知ってたかなーと思って」
ここで榊はおおよそどのような理由で彼が自分を探していたかを悟った。自分は鈴鬼京一の第二性を知る人物と仮定され、疑われている。
「京一さんのことは、βだと思っていましたよ」
「それ、どーやって証明すんの?」
「残念ながら証明はできませんが、かといって私が鈴鬼さんの第二性を以前から知っていたという証拠もありませんよ」
なかなか険悪な雰囲気を纏い始めた榊と神鏡の間に割り込むようにして、良太が身を前に出した。榊の盾になろうとしての行動だ。
話し合いの前にあわや一騒ぎあろうかと思われたが、
「すんません、準備できましたんで。皆さんこっち来て座ってもらっていいっスかね」
柿岡が代表者を呼ばったのでとりあえず争いは避けられた。
花園高校定時制四年の柿岡は目端のきく男だ。神鏡、榊、良太のただならぬ気配を察し、余計な闘争を避けるために声をかけたのは言うまでもない。
良太の神鏡に対する第一印象はあまり善くないものとなった。いきなり榊に敵対するような態度を取ったこのジンという男に、ひとつガンでもくれてやろうかと彼を睨んだのだが──
視線がかち合った一瞬、目が眩んだ。太陽の映る鏡面を直視してしまったかのように。
ぎくり、と身が強張る。
神鏡は良太が怯んだ、いや、負けたと分かって興味が失せたらしい。さっさと二人の前を通り過ぎた。
中庭には話し合いのための会場が整えられていた。花園高校の常盤色の旗が陣幕のように掲げられている。
タープの下には数脚のパイプ椅子と、見覚えのある年季の入ったソファが置かれていた。定時制の職員室から勝手に持ち出したものだろう。榊は恩師の松元先生が、それに座って麻雀雑誌を眺めていた光景を覚えている。
「この会合の内容は録音させてもらうけど、皆さんいいっスかね」
柿岡がボイスレコーダーを片手に掲げて見せた。用意がいい。
「へー、花園はそんなことまですんだ?」
「ジンさん、すんません。どっちかの内輪揉めならこんなことはしなくてもいいんですが、地区を跨いでの会合となると後で鳥居と地蔵にも情報公開しなきゃならん決まりなんですわ」
「連合の皆様にってことか」
「協定結んでるんで」
「いいよ、録音でも録画でもしときな」
「ありがとうございます」
神鏡の許しを得、柿岡は録音を開始した。
「初対面の方々も居ますんで最初に紹介させてもらいます。まず、俺はここの花園四年の柿岡っス。そんでこっちから……」
柿岡は輪になった席の、自分の右手側から順番に紹介をしていった。
花園高校定時四年で檸檬姐弩の総長、栃綯。
花園高校定時三年の梅津。二年の柚木。一年の梨本。
月輪高校定時の番長、神鏡。その隣は刃薊。
花園OB、桧村と柏葉。
花園定時のOBで今は同校全日制の教員、榊。
檸檬姐弩の元総長、小田桐麗子。
「えっとそれじゃあ、皆さんがここに集まった理由なんすけど、あ、これ俺言っちゃっていいっスかね」
柿岡は左手に座る麗子に許可を求めるように視線を移す。このメンバーの中で、柿岡にとって総合的に最も「上」に位置するのが彼女なのだ。麗子はどうぞ、と促す。
「時系列に言いますと今日の午後六時頃、ウチらの先輩の桜庭譲二さんが発情期のΩに襲われてます。この時にΩを現場に運んできたのが、黒い乗用車だったと。これはそちらの、柏葉さんからの情報です」
詳しいことは後ほど、と柿岡は柏葉に断りを入れて次の説明に移った。
「次に六時半頃、場所は月輪地区の商店街。ここでもガチ高定時の人達の前に黒い車が来て、やっぱり発情期のΩを投下していってます。この話は刃薊から」
刃薊は無言で頷く。
「で、商店街に居る元檸檬姐弩のメンバーから麗子さんに報告と相談がありました。桜庭建設の方は柏葉さんから良太さんへ。そんでこの二つの情報が榊先生へ行き着いた、と」
柿岡は続いて、神鏡と刃薊の集まった理由も明らかにした。
「月輪で発情Ω投下の被害に遭ったのは鈴鬼さんっスね。そんで、鈴鬼さんが標的にされた原因を知っているのが榊先生なんじゃないかってことで、ジンさんと刃薊がウチに来たというわけっス」
そんで榊先生をここに呼んだのは俺です、と柿岡は締め括った。
「いま柿岡くんが話した通り、被害者が花園と月輪の両地区から出たことは分かってもらえたかと思う。どうかな?」
麗子が神鏡に話を振る。
「ここに俺らとあんたらが集まった理由と、そっちにも被害者が出てるっつーことは分かったよ。でもな、も一つ分かったのは二つの情報の行き着いた先に、あんたが居るってこともだよ」
神鏡は不敵に笑みを浮かべて榊を見据えた。情報の集結先ならば麗子や柿岡も同様なのだが、鈴鬼と仲がいい、との先入観からなのか榊の疑いは晴れていない。
「確かに私は花園と月輪からの情報を得ていますが、それが怪しいことなのでしょうか?」
榊は焦って言い訳せずに神鏡の言い分を聞くことにした。
「あんた鈴鬼とは随分仲が良かったらしーよな」
「はい、色々と助けになっていただきました」
「あんたは鈴鬼の個人情報を知ってて、JOKERとかいう奴等にそれを売ったんじゃねーか?あんたが地元に帰ってきた途端にこんなことが起きんのは、どう見ても怪しいだろうが」
「先ほども言いましたが、京一さんの第二性はβだと思ってました。仮に私が奴らに情報を流したとして、奴らがわざわざ発情期のΩを京一さんや桜庭くんの前に置き去りにする理由は何なのでしょう」
「そりゃ歳とって身売りもできなくなったΩをαに押し付けて番にしちまえば、面倒見てくれるからだろ」
「Ωの世話が面倒だというのであれば、どこか人目のつく所へでも捨てておけば済む話ですよ。そうすれば警察に保護されるでしょう。αと必ず番うよう時を見計らい、場所を選んでから売れなくなった商品を放逐するというのはJOKERのやり方にしては優しすぎる」
「優しい?」
「奴らはΩだけでなく女性や子供も金を産む商品、モノとしか見ていませんでした。今回の事件は在庫処分だとしても、手間が掛かるだけで何の利益もない。なのにそれをαとΩが番の契約を交わせるようセッティングしている。伴侶を得て幸せになれとお膳立てしているようなものではないですか。私は、これは奴らのやり方ではないような気がします」
「やけに詳しいじゃん。けどよ、鈴鬼にあてがわれたのはΩつっても八十くらいの歯抜けジジイだぜ。顔も名前も、素性も知らねえ。それでも番になりゃあ鈴鬼は幸福だって、あんたはそう決めつけるんだな」
「βには理解できない本能的な深い繋がりというのは、αとΩなら年齢や容姿に関わらずあるでしょう」
「だぁからよー、元々JOKERと結託してたあんたが、αとΩを番わせろと指示でもしたんじゃねーのか?コラ」
「私を含む花園やあなた方月輪は奴らと敵対関係にありました。以前から結託していたというなら、奴らがこの御磨花市から駆逐されることはなかったはずだ」
「そりゃ一旦引き上げて、あんたが戻ってきたから本格的に……」
と言いかけた神鏡の発言を遮るように声をあげたのは、良太だった。
「待てよ!」
「ああ?」
反射鏡のような虹彩が良太を射抜くが、今度は怯まない。
「鈴鬼さんと譲がαだって知ってた奴が一番怪しいなら、それは俺でなくちゃならねえ」
「どーいうことよ」
「榊さんは、いや榊さんだけじゃねえ、βはフェロモンで性別を知ることができないんだよ。でも俺はαだ。だから鈴鬼さんが俺と同じだってことは、随分前から知ってた」
この告白に神鏡だけではない、皆が良太に注目する。
「二番目の性別について俺や譲はともかく、鈴鬼さんに関しちゃ花園の皆はほとんど知らなかったはずだ」
良太の発言を受けて麗子が、そうね、と呟いた。彼女の同意はほんの少しであっても心強い。
「鈴鬼さんはな、お前ら月輪がどのαを頭に担げば損するか得するかって、派閥作ってゴチャゴチャしてんのが嫌だったんだよ。拳ひとつで頂点取るために月輪に来たのに、蓋ァ開けてみればンな状態だ。俺と譲は、鈴鬼さんから派閥作りなんぞに関わりたくねえから黙ってろって口止めされてた」
だから一番怪しいのは俺だよ、と良太は言い切った。
間髪を入れずに榊が神鏡に問う。
「しかし京一さんの第二性を知っている人物を怪しいと見るのならば、以前月輪にいた仙銅一派は全員その疑いがあるということになりませんか。それについて何か情報は?」
かつて月輪地区一帯を実質支配していた仙銅正彦のチームが、αのみを構成員としていたことは周知であった。
この問いに神鏡は答えない、というより答えられない。神鏡に敗れた仙銅たちはすでに月輪高校を去っている。ナワバリに居ない彼らについて、新入りの神鏡はまともな情報を持っていないに等しい。
「京一さんと仙銅たちの間で、なにか諍いがあったという話は?」
榊は、神鏡よりも月輪高校に長く居るらしいと見て刃薊に視線を移す。
「あるっちゃあるが、噂程度に聞いた話だ」
と前置きして刃薊は語り始める。
「仙銅正彦は確かに強かったよ、ガチ高に来る前は海外で格闘技やってたみたいだからな。でも他とトラブった時に率先してケジメつけたり、仲間を助けたりするような人間じゃなかった。金にも汚えし、麻薬みてえなもんも捌いてた。女関係もだらしねえ。そんなんだから一派の中で、どこの派閥にも属さない鈴鬼さんを自分たちの新たなボスに担ごうとした奴らがいたそうだ。今思うと、鈴鬼さんがαだからってのが理由だったんだな」
「でも京一さんは拒否した?」
「そういうことになる。けどその話が仙銅に漏れてな。裏切り者ってことで制裁食らって、病院送りになった奴が何人かいる」
それを聞いて心当たりのある柿岡が反応した。
「あっ、片方の目ェ失明したやつがいたっていう?」
「それそれ。だからまあそのぉ、鈴鬼さんの性別知ってて尚且つ恨みがある人間となると、病院送りになった奴らが逆恨みしてんのかもしんねえし、仙銅は仙銅で鈴鬼さんに嫉妬して潰そうとしてたかもしれねえってことだ」
「仙銅が鈴鬼さんの情報を何者かに売った可能性は」
「いや、分かんねえ。仙銅達がガチ高からいなくなった後どうなったか、幽銭さんがそこんとこも含めて今回の件を調べてるんじゃねえかな。あとJOKER関係の方もな」
鈴鬼と仙銅一派は因縁があるということが分かったが、却って容疑者の範囲を拡大することになったのはいうまでもない。
「ちょっといいかな」
とここで軽く挙手をして麗子が意見を述べる。
「鈴鬼くんの情報がどこから漏れたかってことに関して言えば、本人が親しい人間に打ち明けたと考えるのが自然じゃないかな」
例えば恋人とかね、と麗子は言う。
いくら鈴鬼京一が第二性を隠していたとしてもごく親密な、それも性的な関係を持つに至った相手に対してであれば自ら性別を表明することは不思議ではない。
「鈴鬼くんに彼女がいた、なんて聞いたことある?榊くん」
「京一さんの恋人となると……いるかもしれませんが、聞いたことはありませんね」
鈴鬼と付き合いの深い榊が知らなければ、おそらく誰も知らないのが現実だ。
「それにね、JOKER関連でいえば、奴らの頭だった籬 唇遣と部下の数人はいま刑務所に入ってる。それで果たして鈴鬼くんや、抗争に参加していなかった世代の桜庭くんを発情したΩに襲わせろなんて、あれこれ細かい指示を出せるものかな。皆の意見を聞きたいね」
麗子は「皆の」と言うがその実、標的が神鏡であることは伝わるものだ。神鏡はそれを受けて立つ。
「できねーことは無いと思うけどな、俺は」
「そう」
「刑務所に居たって面会やら何やら、連絡手段はあるだろうが」
「確かにね」
神鏡の意見など誰でも知っている常識の範囲内だ。麗子は嘲弄することもなく、極めて寛容な態度でこれをいなし次の一手に出る。
「けど、仮に刑務所の中にいる籬が娑婆にいる仲間になにか指図して復讐するとしても、ウチらが標的にされるのは順番がもう少し後にならなきゃいけない」
「順番?」
これについて麗子の目配せを察した榊が説明する。
「JOKERを率いていた籬が逮捕された経緯というのが、仲間割れなんですよ。奴の部下が警察に情報を売ったんです。ですから復讐路線で考えるならば、まず初めに当時の組織内の裏切り者から始末されなくてはならない。もしも裏切り者への警告として先にこちらを狙ったのだとしても、奴らの残党が勘付けば海外にでも高跳びしてしまうでしょう。それだと却って復讐の相手を見失うことにもなりかねない」
「……その残党ってのは、今どーなってんだ」
神鏡の質問に答えたのは檸檬姐弩の現総長、栃綯だ。
「我々が現在把握している情報だと、奴らはこの御磨花市から隣県の怪可市に拠点を移している。ただし籬ほどの商才はないらしい。せいぜいがところ借金で雁字搦めにした女やΩを、違法風俗店で売春させている程度のようだ」
「その残党どもは、何かトラブったりは……」
「元から怪可市を根城にしている反社組織と小競り合いは頻繁に。消滅も時間の問題だという話はよく聞く」
これで神鏡がJOKERの復讐説にこだわる材料もほぼ無くなった。
刃薊のスマホに幽銭から着信があり、新たな情報がもたらされた。
「ちょっといいか、今ウチの幽銭さんから連絡があったんだが」
刃薊は隣にいる神鏡に断りを入れて皆にその内容を伝える。
「まず、鈴鬼さんはなんともねえ、無事だ。その鈴鬼さんがいうには、車の中からΩの爺を放り投げたガキは特徴から見てΩらしいってよ」
これを聞いた柏葉がはっとした様子で咄嗟に口を開く。
「そういやあそのガキ、俺は間近で見てる」
「何か特徴とかあれば聞いておきたいっスね。あと黒い車の方も」
柿岡が情報の開示を求める。
「ああ。そいつは随分と小柄で、声は子供みてえに甲高いけど男、だと思う。髪の毛はシルバー系、髪型はこう、前髪を真ん中から分けたショート。あと白っぽい制服を着てたな。車は黒のセダン、スモーク貼ってて中はよく見えねえが、運転手は男だった。ナンバーはたぶん雪城……だったような気がする」
白い制服と聞いて、花園一、二、三年の代表が勝手におしゃべりし始める。
「それって鳥居地区の鵬律高校?」
「確かに、白いブレザーだったな」
「けどあそこってお嬢様学校じゃん。そのΩは男だから女子校には居ねえだろ」
「でもΩって男でも子供産めるから、実質女子扱いなんじゃないっすかね」
「え、男のアレは付いてるのに女子校入れんのかよ」
「ヤバくね?」
「つかΩの男ってどっちが好きなの、男?女?」
梅、柚、梨は本筋から勝手に脱線して盛り上がりそうな流れだったが、
「その白っぽい制服ってのは学ランだった。この辺の高校じゃねえよ」
と柏葉が流れを食い止めた。
白い制服とは白ランだったのだ、少なくとも女子校の鵬律高校ではないことになる。
「ねえ榊くん」
「ええ、しかし……」
麗子と榊が何やら知っていそうな雰囲気だ。柿岡に要求されるまでもなく榊は自ら、
「もしかすると閣兎ノ学院かもしれません」
と言う。麗子以外は聞いたことのない学校名だった。
「閣兎ノ学院というのはこの県内の学校ではありません。皆さんがご存知ないのも無理はない。私が花園高校に入る前に居たのがそこです。問題起こして一年足らずで自主退学しましたけど」
この情報を得てすぐさま手元のタブレットで検索し始めた柿岡は、
「確かにかくうの学院で調べると、白い学ラン出てきますね」
これっすか?と柏葉に画像を見せる。薄い灰青の生地、臙脂色の校章、ボタンのないタイプの珍しい学ラン。柏葉の見た制服と特徴は一致していた。
「ああこれだ」
「しっかしこの学校、お坊ちゃんが通うって感じっスね。へぇ、全寮制ですって」
「でもなんでそんなとこの生徒が、わざわざ御磨花市まで来て発情したΩをばら撒いてんだ?」
柏葉の疑問はもっともだ。これに対して意見を述べたのは、榊だった。
「Ωの方たちの性質として、αに強く依存する傾向があるそうです。その少年はαの意思に従っているだけとも考えられる。車を運転していた男がそうなのかも」
その推察は柏葉が目撃した、車の運転席に居た男に対して持った印象と一致していた。先輩の桜庭譲二や桧村良太と同じ種類の人間という直感があったのだ。
「あの俺、車運転してる奴もちらっと見てて……なんつうか良さんや譲さんみたいな感じだと思ったんすよ、いやまあ、主観なんすけど」
自信なさげにそう言う柏葉に、榊が問う。
「αらしい特徴があったということですか」
「うーん、そうっすねえ。αっぽかったと思います」
「柏葉さんは、βですか」
「はい、っすね」
「フェロモンを感知できなくても、αだと分かりますか」
「何て言ったらいいんだろ、体格とか、雰囲気?態度?っすかね」
柏葉のように良太や桜庭を眩しい存在として見上げている者の感覚は、榊にはいまいち分からなかった。
これは榊龍時という男が自覚はどうあれ、衆目の見るところ体格も良く秀麗で、また堂々とした身のこなしや態度というものをそなえていたからに他ならない。もちろん喧嘩も相当だ。そういう意味では柏葉から見れば榊もαらしい人間ということになる。
「えっとつまり、βでも分かる奴には分かるってことっスか」
柿岡が訊くが、柏葉は自分基準の「αっぽさ」を説明する言葉を持っていないので、
「なんとなくだよ」
としか言えない。
それでも花園一、ニ、三年の代表たちは同意を示した。
「でもそれ、結構分かるっすよね」
「αのテンプレってありますもんね」
「あるある。男だったらまず背が高いとか、体格いいとか」
「あと、イケメン、モテる」
「そうそれ」
「女のαだったら女だけどチン……」
「おい!」
梨本の脛を蹴って発言を中止させたのは二年の柚木だ。
「なるほど確かにガタイのいい高身長のイケメンで、モテてはいるようだね」
と麗子がαの良太を値踏みするように眺めて言う。麗子の隣で榊が、なぜか含み笑いを堪えるような表情を俯いて隠した。
注目を集めた良太が居心地悪そうに身をゆすって座り直す。
「まあそのお、犯人の一味に白ラン着たΩの子供がいて、ついでにαっぽい男がいるってことは分かったけどよ。JOKERの残党が関わってるかどうかは置いといてだな、αとΩをくっ付けてどうなるってんだ。マジで番の幸せのためにやってんのか?」
Ωはそれで嬉しいかもしれねえけどよ、と良太は忌々しげに言葉を吐き捨てた。
蹴られた脛を抱えるようにしてさすりながら、梨本が独り言のようにほざく。
「なんかもうΩが自分で、イケメンαと一緒になるために仕組んだんじゃないかって気ィするっすね」
それを聞いた良太は、そうかもしれねえ!と大声を上げた。
「Ωってのは性欲が強いんだよ!」
いきなり「性欲」とか言い出した良太に訝しげな視線を送るメンバーが過半数の中で、花園の梅、柚、梨は条件反射でにやにやと顔に表した。若いのだ。
「聞いた話なんだけど、Ωって性欲が強すぎてβが相手じゃ満足できねえらしい。俺らαは奴等の欲求に応えられるくらいにヤれるって思われてる。だからΩは発情フェロモン出してαを誘き寄せて無理矢理セ……」
「あーつまり良太が言いたいのはΩは被害者ではなくて、自ら能動的に番う相手を獲得するために誰かを利用した側かもしれない、ということだな」
榊は良太の言葉を途中で遮って喋った。息継ぎ無しで。柚木が梨本にしたように脛を蹴るわけにもいかない距離だったので仕方がない。
「なら犯人はΩってことになるっスね。Ωが性欲解消のためにαと番になりたくてやったと」
柿岡は皆を見回し、この可能性について意見を求めた。これに銘々が答え、また質問を投げかけ合う。
「あるいは悪意のある何者かがΩを唆した、とも考えられます」
「だとしても、発情しましたじゃあαを襲いに行きましょう車で送ります、ってなるか?」
「唆した奴とΩの双方に利益があれば、協力関係になるんじゃ」
「利益っつうとΩは番を得て、協力者は……金?雇われてんのか?Ωってそんなに金持ってるもんなのか」
「これ美人局なんじゃね。Ωをαに襲わせといて後でヤクザみたいのが、俺のΩに手ェ出しやがったな、って来るやつだよ。黒い車の奴が仕組んだんだよ」
「いやいやだとしてもさあ、もうちょっと役者は選ぼうぜ。歯抜け爺さんだっけ?」
「Ωだったら発情すりゃあ絶対にαを引っ掛けられるわけだよ、ってことは何も美人じゃなくても役に立つ」
「そりゃちょっと無理があんじゃねーか。Ωを投下していった黒い車は、その場からすぐに立ち去ってるんだぜ」
「あ、そっか」
「つか月輪の鈴鬼さんって人と、桜庭さんの共通点って性別だけじゃね?襲われる基準てなによ」
「イケメンα」
「じゃあなんで良太さんは襲われてねえの」
「Ωにも好みってのがあんだろ多分」
「しかし我々に報告が来てないだけで、ここに居る誰とも関係のないαが標的にされてるってこともあり得る。檸檬姐弩に入ってくる情報は、どうしても各々の知り合いからに限られるし」
「うーん、他の犠牲者か……確かに居ないとも限らないな」
ここまで麗子は皆の発言を黙って聞いていたが、新たな情報はもう出ないものとみて提案をした。
「今はまだ相手の情報が少なすぎるね。ここで犯人探しをするよりは、今後、被害者が出ないようにどう対策するか決めた方がいいんじゃないかな」
埒の明かない犯人予想は、彼女の一声でひとまず保留になった。
「それでちょっと聞きたいんだけど、刃薊くん」
急に麗子に名を呼ばれた刃薊が緊張した面持ちで、はい、と返事をする。
「鈴鬼くんを取り押さえたのは何人くらいだった?」
「えと、幽銭さんの話では三人、かな」
「そうか。少なくとも三人がかりなら、βでもαを止められるってことね」
間を置かずに、麗子は次に良太に問う。
「桜庭くんの方は、α用の抑制剤で気を失っていたから番にならずに済んだってことだね?」
「はい。でもその薬は日本では売ってないそうです。それに薬っていうよりもヤバい毒劇物みたいなもので、現にあいつは意識不明で病院に運ばれてます」
「なるほど。α用の抑制剤はΩを退ける手段としては使えないってことだな。榊くん」
良太の次に指名されたのは榊だ。
「Ωの抑制剤ってのもあるね」
「はい。市販薬はΩの発情を抑えるものではなく、性フェロモンの分泌を抑制するものとして製造販売されています。しかし最近では性欲の減退効果をうたう商品もあるとか」
「そのフェロモン抑制剤はβでも入手できるか」
「可能です。薬局などで購入できます」
「抑制剤を使ったΩに対して、αは即効で全く反応しなくなるの?」
「性フェロモンの分泌が抑制されても、Ωの皮膚や衣類には揮発前のフェロモンが残存しています。それを洗い流すかしない限りは、完全に無反応になるとは言えないでしょう。抑制剤の効き目の速さでいえば、点鼻薬タイプが最も早いといわれています。しかし効果持続時間はそう長くはない。一時的に点鼻薬でフェロモンの分泌を抑え、その間に内容薬や注射薬に切り替えることで効果を持続させることができます」
「そうか。刃薊くん」
またしても刃薊に声が掛かる。
「そっちに出現したΩにどんな薬を使ったか聞いてるか」
「はいっ、幽銭さんは鼻に突っ込んだと言っておりました。効き目も即効で、すぐに大人しくなったと」
この段階までくると刃薊はきびきびとした物言いで麗子に従った。上官を前にした新兵のように。
「どう思う榊くん」
「やはり点鼻薬を使ったようですね、効き目もかなり早く出ている。これは月輪地区に現れたΩが高齢者であったことから、もともと体内にあるフェロモンを構成する物質が少なかったため分泌量もすぐに減少したのではないかと」
「てことは若いΩだと薬効が出るのは、遅くなる?」
「おそらくは。性フェロモンの構成物質が体内に豊富にある若年ならば、その歯止めには時間がかかるでしょう」
「撒き散らされるフェロモンが減少するまでの間に番ってしまったら、それまでということだね」
麗子は少し皆を見回しここまでの話についてきているようだと見定め、さらに榊に知識を求める。これは麗子が個人的に知りたいからというよりも、ここに集まった一同に聞かせたいから榊に喋らせていることであった。榊もまたその辺は心得ている。
「αとΩが番になる条件を言って、簡潔に」
「女性型Ωであれば膣内、男性型Ωであれば直腸内にαの性器から出る分泌液を受け、なおかつ項を噛まれることにより番となります」
「条件はその二つか」
「現在の常識では」
「例外はあるの」
「噛まなくても番になった、という事例は多数あります」
「うん?項を噛むのは番契約の必須条件じゃなかった?」
「正しい条件は性行為と噛みつきではなく、性行為と項部分への唾液の付着なのではないかという説がありまして。でもまだ一般的には、噛みつきが番の作り方であると教えられていますね」
「αが番の契約を回避するためには、どちらか一つの条件を阻止するしかないようだね」
「はい。とはいえ発情したΩに遭遇した場合、その条件をα自らが理性を持って封殺するのはまず不可能でしょう」
「αの単独行動は控えた方がいいってことか。もっとも、Ωと番になる幸せな人生を望むなら別だけど」
そう言った麗子は、α性である良太と栃綯に目線を投じて発言を促した。お前たちはどうか?と問うているのだ。
これに真っ先に答えたのは良太だ。
「俺はΩに興味ねえし、番もいらねえ。もし鈴鬼さんの時みたいに、誰かが止めてくれるってんなら御の字ですよ」
良太と同じαである栃綯もこれに同意した。
「自分も番を求めてはおりません。檸檬姐弩のメンバーにも何人かαは居ますので、後ほど確認します」
彼らの意見を聞き取った麗子は、
「じゃあ少なくともあんたたちは、力づくでΩから引き剥がされても構わないってことね」
ぶん殴られても?と訊く。
それに対して良太は、上等っすよ!と勇み立つ。栃綯は、構いませんと静かに頷いた。
これまでに得た情報で柿岡は早々にαに護衛をつけることを決心した。
花園高校定時の仕切り役として下級生代表の梅津、柚木、梨本に言い渡す。
「梅津、柚木、梨本、お前らはこの後各クラスのαの人数と名前、それと行動範囲を聞き取って報告しろ。大まかでいい。少なくとも登下校の時は、αには数人の護衛を付ける。特に単車で来てないやつにはな」
四年の柿岡に指示された三人は、いつになく凛々しい面持ちでこれに返事をした。
「気を付けなきゃなんねえポイントは、番になりたくないαを守るのが俺たちの目的であって、Ωをブチのめして駆除するのが目的じゃないってことだ。Ωが居ても無闇に危害を加えるな。常に発情してるわけでもないだろうしな。あくまでも発情したΩと、番を望まないαの物理的な距離を置く、それだけでいいんだ」
αの護衛がΩへの危害に転じないよう、柿岡は厳しい口調で言った。
「檸檬姐弩の方はどうする?」
柿岡は栃綯に伺いをたてる。
同じ花園高校の生徒とはいえ、檸檬姐弩のメンバーは柿岡の采配では動かせない。彼女たちはほとんどが花園地区の出身だが、鳥居や月輪から来ている者も含まれている。ゆえに花園高校の代表者である柿岡が他地区の人間にあれこれ指示するとなると、領分を越えてしまうことになるのだ。協定を結んでいるとはいえ、過干渉は各地区との均衡が崩れてしまいかねない。
ただし檸檬姐弩の総長命令であればこの限りでは無い。これは小田桐麗子が総長を務めた時代からの規則であった。
「我々もそのつもりだ。花園、鳥居、月輪のメンバーには今回の件を広く知らしめる手筈を整え、情報収集も同時進行でいく。できれば地蔵地区と雪城地区の方にも注意喚起しておきたい。ただし桜庭さんと鈴鬼さんって人の個人情報は極力伏せる。しかし……フェロモンで性別を知ることができないβは、どうやってΩを見分けるんだ?」
なにしろこの辺は元々Ωの数が少ない上、数年前にJOKERに拉致されるなどしたものだから実物のΩを目にする機会はそうそう無い。しかも最近はβの若い女性の間でΩのように見せるファッションやメイク、整形や体型補正が流行っている。また、鈴鬼の前に現れたΩのように、老齢であった場合はさらに見分けが難しいだろう。
「Ωの外見的な特徴は?」
麗子の質問に答えたのは榊だ。Ωの少ない御磨花市を離れて県外の大学に行った榊は、そこで本物のΩを目にする機会が多かった。
「一番の特徴は、男女共に成人しても小柄であるということろでしょう。確か、身長は百四十センチから百五十センチくらいのはずです。顔つきは目が大きな人が多い印象を受けます。柏葉さんが言った通り、声は幼い子供のような高音。女性型であれば胸部と臀部が非常に発達していて、男性型でも骨盤は大きい。そして大抵の場合、ネックガードを付けています」
「ネックガード、つまり首輪だね」
「そうです。番がいないΩは項の部分を広く覆う硬質タイプの首輪で、αからの噛みつきを防いでいます。これが番持ちとなると、ほとんどアクセサリーのような洒落たデザインになるようですね。もう実用性を重視する必要がなくなるからでしょう」
榊の説明を聞いた柿岡が、
「なるほど特徴は、低身長で目がでかい、巨乳で巨尻、首輪してるんっスね」
と雑にまとめた。
「とりあえず俺らは、αの外出時には三、四人の護衛を付ける方向でやっていこうと思います。最低でも単独行動は控えてもらうっスわ。そんでΩのフェロモン抑制剤、これも性別関係なく持たせたいっスね。花高だけじゃなく、他の学校の奴らにも情報を提供していきます」
花園地区には花園高校以外にもいくつか定時制を有する高校がある。幸い柿岡は、それらの連中とも上手く付き合いをこなしていた。
「で、問題は全日と中坊の方っスね」
確かに柿岡は花園地区の、いわゆる不良を統率するような立場ではあるが、「まともな子供」に関してはその手綱を握ってはいない。花園地区においては、普通のまともな子供ことは普通の大人に任せることにしている。
地区を跨いでの喧嘩も、子供同士の些細なやらかし程度ならば連合メンバーは首を突っ込まないし、また、連合に関わる争いに子供を巻き込まないのは暗黙の了解だ。
花園高校を含む各校の定時の連中にとって、全日の生徒や中学生などは不良といえども「まともな子供」の範囲内だった。
「花高の全日には俺の弟がいるんで、ソイツから情報を拡散させます。それでまあなんとか、子供どもも対策してくれるといいんだが……」
柿岡に続くようにして榊が発言する。
「全日の方でしたら、私からも先生方に話をしてみましょう」
「助かります」
次に麗子も柿岡の案に協力を申し出た。
「この件、あたしもできる限り対策方法と情報を広めておくわ。現役ばかりに負担はかけられないからね」
「ありがとうございます」
良太や柏葉も麗子に倣って情報の拡散に努めると言う。花園の動き方はこれでほぼ決定だ。
「てなわけで、俺ら花園は犯人探しよりもαの護衛を中心にやっていくことになりましたけど、月輪のほうはどうします?」
すっかり大人しくしていた神鏡に柿岡が訊ねる。
神鏡と刃薊は、麗子と花園メンバーの受け答え、そのテンポの速さに舌を巻いていた。提供された知識や情報に対して疑いを持たず信用しきっているのも、彼らの信頼関係の強さを物語っている。
また、今回の件に対して早々に方向性を定めた柿岡や栃綯、協力を申し出た麗子や榊に対しても口を挟む余地すらなかった。月輪高校ではおそらく、こうはいくまい。
「俺らも……そうだな、多分、そっちと同じやり方で行くと思う」
歯切れのあまりよくない神鏡の言葉に、刃薊が黙って頷いた。
「じゃあ決まりっスね。今回録音したやつ、鳥居と地蔵に回す前に幽銭さん経由でそちらに送りますんで、後で確認してください」
なんかあったらよろしくお願いします、と潔く頭を下げた柿岡に、ああ、と生返事をした神鏡だった。
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