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2ndプロジェクト 殺人詐欺の怪奇談
35.今回最後のクライシス
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「変に思ったんだよね。強盗に見せかけるために花瓶が割れてなかったのよ。普通、強盗に見せかけるんだったら花瓶割った方がすっきりするよね。ね。陽介君」
「まあ、それもそうだね。テレビやタンスだって容赦なく壊してるんだし、考えてみれば割れていない方が不自然だよな」
東堂さんが普段通り、僕の頭に渦巻く靄を切り裂いてくれる。それだけでも僕は勇気が出た。彼女の推理を後押しするように、僕は思いついたばかりの考察をここにいるすべての人に向けて話し出す。
「それが割れてなかったってことは……誰かが壊すものややることを命令してたってことになるよね……当然、蛭間氏が行動するのなら、遠慮なく割ってるから……何か割れないわけでもあるのか――」
「えっと、それは高価な奴だから、強盗が割ることができなかった……取ろうと思ったが、そのまま逃げてしまったのだろう……そう言ったのは、確かに塩見 湯治。お前だったな。だが、強盗犯はその辺を荒らして金を持ってかなり時間の余裕があったようだが」
嘲るような顔をした鈴岡警部が湯治さんの肩に手を置く。湯治さんは嘘がバレた子供の真っ青な顔をこちらに見せ始めた。「花瓶が高価」。確かにその嘘を言おうとしていた警官がいたはずだ。
ここで鈴岡警部が指揮を執っていてくれて助かった。そう思い、僕は過呼吸になりながらも長い息をつく。
「だ、だからって……嘘をついたからって殺人を犯したわけでもないし……」
いきなり目線があちらこちらに飛び始める。何かを狼狽え始めた湯治さんに河井さんが再度、言葉の攻撃を開始した。
「なに? 何で、こんなに動揺するんだ? もしかして、その花瓶に色々と隠されてるらしいな」
「ない……アイツは、あの男を最初に殴ったときに花瓶を使ってたから、しっかり拭いていた。底をティッシュやら何やらでな……」
「おい!?」
蛭間氏が突然、口にした言葉に湯治さんは腕を振り上げる。証拠はティッシュの方に残されているみたいだな。そう考えた瞬間、僕は台所のゴミ箱を湯治さんの頭に投げつけた。流れ出るゴミの中に何枚か濡れたティッシュが入っている。……言葉より手が先に出ていたことを後悔はしていた。しかし犯人がまた人に暴力をふるおうとしていたのだから、僕の怒りは止められなかったのだ。僕は目元に違和感を覚えつつも、最後の推理を告げる。
「えっと、今の証言から貴方が蛭間氏が殺人を行うための隙を作ったみたいですね。まあ、蛭間氏の場合、道具か何かを使って攻撃しなければ、被害者を殴りつけられなかったのだと思います。だから、湯治さんの後頭部上部の攻撃が殺人のきっかけになったんですね。それで……ええと、それで証拠ですけどそのティッシュについたゴミだけでは証明できませんから、僕たちが彼には犯行を用意できる準備、蛭間氏が電話のアリバイトリックを使えたのは、僕たちから電話がかかってくるのを知ってた湯治さんだけですし……その準備ができたんですから、証拠は大丈夫ですよね」
「……ああ」
その後、鈴岡警部は僕たちの功績を称えるかのように、小さい拍手を何回かしている。
ゴミが幾つか頭にすりついている惨めな湯治さんを見ると、彼の手には鋭く尖った包丁が握られていた。台所に来たのは、最初からそのためか……いや。待て。
驚きと恐怖で思考が回らない。
「おい!」
持っているの彼だけではなく、蛭間氏もその手に悪意の究極を潜めていた。僕は親指を口に擦り当て、異常なほどに辺りを見渡している。反撃しないと逃げられる! ……この台所が狭くなければ、警官は大暴れできるだろうが。仕方ない!
「あっ! 御影が逃げた!」
「ええ! 信じられないよ!」
「そいつには後で極刑を下すとして、今は目の前の屑共を消し去る方が先だろう!」
「そ、そうね! い、今はあのゴミを蹴り飛ばしちゃいましょう」
後ろからクレイジーな女子の会話が耳に入ってくるが、この状況で彼女たちも混乱しているのだろう。その混乱に乗じ、僕はリビングから花瓶を運んでくる。止める者はいなかった。
「おい! みんな、離れてて。破片が飛び散るから逃げて!」
「ちょっと、御影。あんたは何をやるつもり?」
「いいから、逃げて! 後は僕が戦うから!」
古月さんが警官たちの裾を引っ張り、廊下まで連れ出した。その様子に湯治さんは目を赤くし、包丁を投げ捨てて、こちらに飛びついて来る。そこで床に穴を開けるくらいの力加減で花瓶を叩きつけた。
「へ?」
花瓶の破片と共に、殺人教唆の犯人は床下へと落ちていった。
「……!? わしだけでも逃げるべき! そこをどけ!」
「御影。グッドジョブ。後はアタシに任せて!」
そこで古月さんが台所へ乱入する。彼女は胸から、防犯用の爆弾カラーボールを取り出すと、それを投げた。薄桃色の液体が蛭間氏の視界を奪う。慣れた手さばきに僕は急いで、廊下へと避難した。手元が狂われても困るからだ。
しかし、その包丁を持つ手は動いている。そんな焦る展開に鈴岡警部が、彼の左手を掴み一本背負いを放った。
「な、なにを……うわっ!」
「お前も床に落ちるんだよ! ってうわあああ!」
衝撃によって、台所の床は崩壊していく。湯治さんと蛭間氏、鈴岡警部が床の下で大の字になって寝ていた。鈴岡警部。最後、格好良かったんだけど、蛭間氏と一緒に落ちてしまったのは非常に残念と、僕は額に手を当てモヤモヤとした感覚をそのまま口に出した。
「#$%&」
「何言ってんのよ……あっ! 最初に警部は起き上がってるみたい。誰か……梯子を持ってきてくれないかしらね」
「それ、僕にいってるの……ってあれ?」
僕は花瓶を割った場所に数枚の紙切れが落ちていたの気が付いた。この小さなものが今回のすべてを語る……黒幕ともいえる存在だとは知らずに。
「まあ、それもそうだね。テレビやタンスだって容赦なく壊してるんだし、考えてみれば割れていない方が不自然だよな」
東堂さんが普段通り、僕の頭に渦巻く靄を切り裂いてくれる。それだけでも僕は勇気が出た。彼女の推理を後押しするように、僕は思いついたばかりの考察をここにいるすべての人に向けて話し出す。
「それが割れてなかったってことは……誰かが壊すものややることを命令してたってことになるよね……当然、蛭間氏が行動するのなら、遠慮なく割ってるから……何か割れないわけでもあるのか――」
「えっと、それは高価な奴だから、強盗が割ることができなかった……取ろうと思ったが、そのまま逃げてしまったのだろう……そう言ったのは、確かに塩見 湯治。お前だったな。だが、強盗犯はその辺を荒らして金を持ってかなり時間の余裕があったようだが」
嘲るような顔をした鈴岡警部が湯治さんの肩に手を置く。湯治さんは嘘がバレた子供の真っ青な顔をこちらに見せ始めた。「花瓶が高価」。確かにその嘘を言おうとしていた警官がいたはずだ。
ここで鈴岡警部が指揮を執っていてくれて助かった。そう思い、僕は過呼吸になりながらも長い息をつく。
「だ、だからって……嘘をついたからって殺人を犯したわけでもないし……」
いきなり目線があちらこちらに飛び始める。何かを狼狽え始めた湯治さんに河井さんが再度、言葉の攻撃を開始した。
「なに? 何で、こんなに動揺するんだ? もしかして、その花瓶に色々と隠されてるらしいな」
「ない……アイツは、あの男を最初に殴ったときに花瓶を使ってたから、しっかり拭いていた。底をティッシュやら何やらでな……」
「おい!?」
蛭間氏が突然、口にした言葉に湯治さんは腕を振り上げる。証拠はティッシュの方に残されているみたいだな。そう考えた瞬間、僕は台所のゴミ箱を湯治さんの頭に投げつけた。流れ出るゴミの中に何枚か濡れたティッシュが入っている。……言葉より手が先に出ていたことを後悔はしていた。しかし犯人がまた人に暴力をふるおうとしていたのだから、僕の怒りは止められなかったのだ。僕は目元に違和感を覚えつつも、最後の推理を告げる。
「えっと、今の証言から貴方が蛭間氏が殺人を行うための隙を作ったみたいですね。まあ、蛭間氏の場合、道具か何かを使って攻撃しなければ、被害者を殴りつけられなかったのだと思います。だから、湯治さんの後頭部上部の攻撃が殺人のきっかけになったんですね。それで……ええと、それで証拠ですけどそのティッシュについたゴミだけでは証明できませんから、僕たちが彼には犯行を用意できる準備、蛭間氏が電話のアリバイトリックを使えたのは、僕たちから電話がかかってくるのを知ってた湯治さんだけですし……その準備ができたんですから、証拠は大丈夫ですよね」
「……ああ」
その後、鈴岡警部は僕たちの功績を称えるかのように、小さい拍手を何回かしている。
ゴミが幾つか頭にすりついている惨めな湯治さんを見ると、彼の手には鋭く尖った包丁が握られていた。台所に来たのは、最初からそのためか……いや。待て。
驚きと恐怖で思考が回らない。
「おい!」
持っているの彼だけではなく、蛭間氏もその手に悪意の究極を潜めていた。僕は親指を口に擦り当て、異常なほどに辺りを見渡している。反撃しないと逃げられる! ……この台所が狭くなければ、警官は大暴れできるだろうが。仕方ない!
「あっ! 御影が逃げた!」
「ええ! 信じられないよ!」
「そいつには後で極刑を下すとして、今は目の前の屑共を消し去る方が先だろう!」
「そ、そうね! い、今はあのゴミを蹴り飛ばしちゃいましょう」
後ろからクレイジーな女子の会話が耳に入ってくるが、この状況で彼女たちも混乱しているのだろう。その混乱に乗じ、僕はリビングから花瓶を運んでくる。止める者はいなかった。
「おい! みんな、離れてて。破片が飛び散るから逃げて!」
「ちょっと、御影。あんたは何をやるつもり?」
「いいから、逃げて! 後は僕が戦うから!」
古月さんが警官たちの裾を引っ張り、廊下まで連れ出した。その様子に湯治さんは目を赤くし、包丁を投げ捨てて、こちらに飛びついて来る。そこで床に穴を開けるくらいの力加減で花瓶を叩きつけた。
「へ?」
花瓶の破片と共に、殺人教唆の犯人は床下へと落ちていった。
「……!? わしだけでも逃げるべき! そこをどけ!」
「御影。グッドジョブ。後はアタシに任せて!」
そこで古月さんが台所へ乱入する。彼女は胸から、防犯用の爆弾カラーボールを取り出すと、それを投げた。薄桃色の液体が蛭間氏の視界を奪う。慣れた手さばきに僕は急いで、廊下へと避難した。手元が狂われても困るからだ。
しかし、その包丁を持つ手は動いている。そんな焦る展開に鈴岡警部が、彼の左手を掴み一本背負いを放った。
「な、なにを……うわっ!」
「お前も床に落ちるんだよ! ってうわあああ!」
衝撃によって、台所の床は崩壊していく。湯治さんと蛭間氏、鈴岡警部が床の下で大の字になって寝ていた。鈴岡警部。最後、格好良かったんだけど、蛭間氏と一緒に落ちてしまったのは非常に残念と、僕は額に手を当てモヤモヤとした感覚をそのまま口に出した。
「#$%&」
「何言ってんのよ……あっ! 最初に警部は起き上がってるみたい。誰か……梯子を持ってきてくれないかしらね」
「それ、僕にいってるの……ってあれ?」
僕は花瓶を割った場所に数枚の紙切れが落ちていたの気が付いた。この小さなものが今回のすべてを語る……黒幕ともいえる存在だとは知らずに。
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