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1stプロジェクト ヤンデレ懺滅作戦
11.騙し騙して入部試験
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集合写真。たぶん、これは地区大会が終了した後に部員全員で撮影した写真なのだろう。しかし、今回の依頼に関して、あまり役に立つものではないと思う。浜野先輩も宮古さんも袴をはいて、写っている。なのだが二人の距離は離れていて、別にどちらかが一方を意識しているようには見えなかった。
「どうだ?」
「へえ。凄いと思いますよ」
ぼくも無理矢理、彼に憧れたように目を光らせた。そして、再びもう一枚の写真に興味があるみたいに見せかけて、集合写真の方を見入る。
観察……観察……あった。理由は分からないが一年生の時に浜野先輩は左足に湿布を貼っていた。これが……鍵になるかもしれないとぼくの勘が働いた。
「もう分かったかい?」
「ええ。納得しました……あっ。そろそろお暇させていただきます。あれが誤解だってことは、逃げた同級生にも言っておきます」
「そうして貰うと、ありがたいよ」
――――――――――――――――――――
この後、東堂さんとは会わずに家へ帰宅し机に向かいスマートフォンを見ていた。
今から古月さんに連絡する所存だ。しかし、いきなり女子へメッセージを送るのはリスクを背負うのではないか?報告なら明日行えばよい話である。そう思い、スマートフォンの電源を切ろうとした。
「やっほー!」
ノックもせずに部屋へと入ってきた妃芽姉さんのせいでまた操作を誤ってしまい、可愛い兎のスタンプを古月さんへと送ってしまった。
「あわわわわわわ……姉ちゃん。ノックしてって言ってるでしょ?」
「してるよお。弟の心に何度も何度もノックしてるよ!」
「ぼくは、そこの扉にノックをしろ! って言ってるんだあ!」
「うふふふ。可愛いよおー。愛しの陽君!」
彼女のペースに乗せられると、思考が爆発しそうな気がする。一旦、落ち着こう。
部屋の明かりが今よりも明るくぼくたちを照らしていたのだが、今のぼくには闇しか見えていない。冷静になったところで古月さんの相手は誰がするんだよ……
「何の用?」
もう返信が来てるし。画面を触る指を震わせながら、伝えたいことを文字にしていく。その文字列がぼくの心を揺さぶっていた。迷惑ではないか。変な人と思われたりしないのか。
「思い切って送信!」
後は相手の反応を待つだけだ。何故、今も胸から発される音が止まらないのか不思議だ……そのとき。
「思い切って突進!」
彼女の体当たりによって、顔が机に押し付けられる。これは、これはDVではないのだろうか。
「なにやるんだよ……」
声をかけると彼女は満開の笑顔で応答する。
「だって、スマホばっか見て構ってくれないんだもん。お姉ちゃん寂しいなあ。もっと愛が欲しいなあ」
「恋人だよね……それいう対象、恋人だからね!」
「えへへへへ。言われちゃった」
「ぼくのこと、恋人だと思ってんの!?」
この会話、似たようなものをどこかで……
「あんたとアタシの憧れてる探偵じゃあ、月とすっぽんよ!」
「そうだな。有名すぎると、尾行とか絶対無理んなってきちゃうからな」
「それって……あんたが月ってこと? 違うからね。違うからね!」
宮古さんを追跡しているときに古月さんと交わしたこのやり取り。ダメだ。ぼくと姉さんが似たもの同士になっている。「姉弟よく似てるねー」なんて近所のおばさんに言われたことがあるけれど本当の事だったんだと、悲観した。もう少し、生活習慣を変えなければ。
「もっとお姉ちゃんのことを見てえ!」
「はいはい」
何の表情もない顔を作って、彼女の言葉に相槌をうつ。
「ふう。お姉ちゃん、なんでも頑張っちゃうから! テスト勉でも分からないところを教えちゃうよ!」
……!なんで気づかなかったんだ!?彼女を使えば、調査もかなり楽になっていたんではないだろうか。思い立ったが吉日だ。彼女に早速お願いしてみよう。
「ねえ。お姉ちゃん! ……あの部活に入部試験あるの知ってる?」
「そうなの? 教えてくれてありがとね! 今度一日ワタシをす――」
「う、うん。それで部長の東堂さんからの話なんだけど、とある情報を探ってほしいんだ!」
入部試験なんて、勿論嘘だ。だが普通に弟からのお願いというよりは、試験と銘を打っておけば彼女もやる気になる。
まあ、自分からお願いした場合。後で「お姉ちゃんが着替えとかさせてあげるからねえ」とか「サービスして一緒にお風呂に入っちゃおう!」とか言われてしまう。この姉弟は何故か貸し借りを作ったとしても結局は姉さんが得するのである。理不尽な話だ。今もぼくの貸しに反応し「一日ワタシを好きに扱っていいよ」と強要しようとしたのだろう。ああ……寒気が止まらない。
「まあ。できるだけ情報を集めれば合格なんだよねえ」
「そう。情報というのは、今回の依頼人が何故、一年のときに湿布を貼っていたか、だよ!」
怪しいと睨んでいた部分でもあるが、この依頼とは何の関係もないかもしれない。もしかしたら彼女がおっちょこちょいで、転んでできた打撲に湿布を貼っていたのかもしれない。
ぼくにとってのメリットは、姉さんから襲われる時間を減らそうとしたことだ。
「えっ!? 嘘でしょ……?」
簡単なことだと思っていた。それより、大きかったのだ。浜野さんと宮古さんが抱えている重すぎる荷物にぼくたちは何も知らずに手を出していたことを後で思い知らされることになる。
「どうだ?」
「へえ。凄いと思いますよ」
ぼくも無理矢理、彼に憧れたように目を光らせた。そして、再びもう一枚の写真に興味があるみたいに見せかけて、集合写真の方を見入る。
観察……観察……あった。理由は分からないが一年生の時に浜野先輩は左足に湿布を貼っていた。これが……鍵になるかもしれないとぼくの勘が働いた。
「もう分かったかい?」
「ええ。納得しました……あっ。そろそろお暇させていただきます。あれが誤解だってことは、逃げた同級生にも言っておきます」
「そうして貰うと、ありがたいよ」
――――――――――――――――――――
この後、東堂さんとは会わずに家へ帰宅し机に向かいスマートフォンを見ていた。
今から古月さんに連絡する所存だ。しかし、いきなり女子へメッセージを送るのはリスクを背負うのではないか?報告なら明日行えばよい話である。そう思い、スマートフォンの電源を切ろうとした。
「やっほー!」
ノックもせずに部屋へと入ってきた妃芽姉さんのせいでまた操作を誤ってしまい、可愛い兎のスタンプを古月さんへと送ってしまった。
「あわわわわわわ……姉ちゃん。ノックしてって言ってるでしょ?」
「してるよお。弟の心に何度も何度もノックしてるよ!」
「ぼくは、そこの扉にノックをしろ! って言ってるんだあ!」
「うふふふ。可愛いよおー。愛しの陽君!」
彼女のペースに乗せられると、思考が爆発しそうな気がする。一旦、落ち着こう。
部屋の明かりが今よりも明るくぼくたちを照らしていたのだが、今のぼくには闇しか見えていない。冷静になったところで古月さんの相手は誰がするんだよ……
「何の用?」
もう返信が来てるし。画面を触る指を震わせながら、伝えたいことを文字にしていく。その文字列がぼくの心を揺さぶっていた。迷惑ではないか。変な人と思われたりしないのか。
「思い切って送信!」
後は相手の反応を待つだけだ。何故、今も胸から発される音が止まらないのか不思議だ……そのとき。
「思い切って突進!」
彼女の体当たりによって、顔が机に押し付けられる。これは、これはDVではないのだろうか。
「なにやるんだよ……」
声をかけると彼女は満開の笑顔で応答する。
「だって、スマホばっか見て構ってくれないんだもん。お姉ちゃん寂しいなあ。もっと愛が欲しいなあ」
「恋人だよね……それいう対象、恋人だからね!」
「えへへへへ。言われちゃった」
「ぼくのこと、恋人だと思ってんの!?」
この会話、似たようなものをどこかで……
「あんたとアタシの憧れてる探偵じゃあ、月とすっぽんよ!」
「そうだな。有名すぎると、尾行とか絶対無理んなってきちゃうからな」
「それって……あんたが月ってこと? 違うからね。違うからね!」
宮古さんを追跡しているときに古月さんと交わしたこのやり取り。ダメだ。ぼくと姉さんが似たもの同士になっている。「姉弟よく似てるねー」なんて近所のおばさんに言われたことがあるけれど本当の事だったんだと、悲観した。もう少し、生活習慣を変えなければ。
「もっとお姉ちゃんのことを見てえ!」
「はいはい」
何の表情もない顔を作って、彼女の言葉に相槌をうつ。
「ふう。お姉ちゃん、なんでも頑張っちゃうから! テスト勉でも分からないところを教えちゃうよ!」
……!なんで気づかなかったんだ!?彼女を使えば、調査もかなり楽になっていたんではないだろうか。思い立ったが吉日だ。彼女に早速お願いしてみよう。
「ねえ。お姉ちゃん! ……あの部活に入部試験あるの知ってる?」
「そうなの? 教えてくれてありがとね! 今度一日ワタシをす――」
「う、うん。それで部長の東堂さんからの話なんだけど、とある情報を探ってほしいんだ!」
入部試験なんて、勿論嘘だ。だが普通に弟からのお願いというよりは、試験と銘を打っておけば彼女もやる気になる。
まあ、自分からお願いした場合。後で「お姉ちゃんが着替えとかさせてあげるからねえ」とか「サービスして一緒にお風呂に入っちゃおう!」とか言われてしまう。この姉弟は何故か貸し借りを作ったとしても結局は姉さんが得するのである。理不尽な話だ。今もぼくの貸しに反応し「一日ワタシを好きに扱っていいよ」と強要しようとしたのだろう。ああ……寒気が止まらない。
「まあ。できるだけ情報を集めれば合格なんだよねえ」
「そう。情報というのは、今回の依頼人が何故、一年のときに湿布を貼っていたか、だよ!」
怪しいと睨んでいた部分でもあるが、この依頼とは何の関係もないかもしれない。もしかしたら彼女がおっちょこちょいで、転んでできた打撲に湿布を貼っていたのかもしれない。
ぼくにとってのメリットは、姉さんから襲われる時間を減らそうとしたことだ。
「えっ!? 嘘でしょ……?」
簡単なことだと思っていた。それより、大きかったのだ。浜野さんと宮古さんが抱えている重すぎる荷物にぼくたちは何も知らずに手を出していたことを後で思い知らされることになる。
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