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第二節 おかわりはありますか?
Ep.0 モノプロローグ
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今日は晴天。されども、僕の心は憂鬱だ。授業中に頬杖を突きながら、シャープペンシルで何度も何度もノートをつついていた。本当に退屈だな、と意識した時だった。
不意に壮大なる悩みが僕の脳裏を過っていく。
何の個性もない僕に価値はあるのだろうか。
僕は本当に、この世界に必要な人間か。代わりが存在しているのではないか。こうやって何気なしに生きている僕ではなく、もっと真面目に生活している人間こそがこの席に座るべきではないのか。
自分ではその問いに対し、否定の答えを出すことができなかった。
代わりがあるという悩みから過去の苦しみが連想されていく。
以前、中学にテレビ局の撮影があって。僕達がいた体育館が映されたのだが。ちょうど僕が座っている場所の前で映像が途切れていたのだ。
そこで友人との差を感じてしまった。彼等にはテレビに映っているという価値がある、と。
学級委員か、何かの係の仕事をやったせいでクラスからブーイングを受けた際、落ち込んでいる僕に誰かが言った。「君しかやる人はいないんだから、そう落ち込まないで」と。そう言われても、だ。
係をやりたい人がいないから、無理矢理させられただけ。
僕にその役割の価値はないのだ。他の人がやったら、きっと僕より価値のある仕事ができていたに決まってる。
周りからバッシングを受けてきた僕なんて……。
そもそもだからこそ、僕は他の人にナノカを奪われるのだ。僕の上位互換なんて、この世にたくさん存在するのだから。ナノカは僕をただのモブAとしか見ていないのかもしれない。ただ怒って、ただ褒めて、そうしていれば周りの雰囲気が良くなると思って行動する。僕が僕でなくても、その言動を繰り返していたのだと思われる。
世は無常。神は天才にばかり、二物も三物も与えている。四物も五物も……。
「ねぇ、何、ぶつぶつぶつぶつ言ってんの。顔を上げなさい。もっと胸を張って! そんなへなへなな状態で価値も何もありゃあしないでしょ!」
背後から声と共に手が飛んできた。パシッと僕の肩に当たる。すぐさま振り返ると、何も知らないような顔で窓の方を向いている女子高生クレーマー、国立菜野香がいた。
「ナノカ?」
「あら、どうかしたの……ってそれより、授業に集中しなさいよ!」
不意に壮大なる悩みが僕の脳裏を過っていく。
何の個性もない僕に価値はあるのだろうか。
僕は本当に、この世界に必要な人間か。代わりが存在しているのではないか。こうやって何気なしに生きている僕ではなく、もっと真面目に生活している人間こそがこの席に座るべきではないのか。
自分ではその問いに対し、否定の答えを出すことができなかった。
代わりがあるという悩みから過去の苦しみが連想されていく。
以前、中学にテレビ局の撮影があって。僕達がいた体育館が映されたのだが。ちょうど僕が座っている場所の前で映像が途切れていたのだ。
そこで友人との差を感じてしまった。彼等にはテレビに映っているという価値がある、と。
学級委員か、何かの係の仕事をやったせいでクラスからブーイングを受けた際、落ち込んでいる僕に誰かが言った。「君しかやる人はいないんだから、そう落ち込まないで」と。そう言われても、だ。
係をやりたい人がいないから、無理矢理させられただけ。
僕にその役割の価値はないのだ。他の人がやったら、きっと僕より価値のある仕事ができていたに決まってる。
周りからバッシングを受けてきた僕なんて……。
そもそもだからこそ、僕は他の人にナノカを奪われるのだ。僕の上位互換なんて、この世にたくさん存在するのだから。ナノカは僕をただのモブAとしか見ていないのかもしれない。ただ怒って、ただ褒めて、そうしていれば周りの雰囲気が良くなると思って行動する。僕が僕でなくても、その言動を繰り返していたのだと思われる。
世は無常。神は天才にばかり、二物も三物も与えている。四物も五物も……。
「ねぇ、何、ぶつぶつぶつぶつ言ってんの。顔を上げなさい。もっと胸を張って! そんなへなへなな状態で価値も何もありゃあしないでしょ!」
背後から声と共に手が飛んできた。パシッと僕の肩に当たる。すぐさま振り返ると、何も知らないような顔で窓の方を向いている女子高生クレーマー、国立菜野香がいた。
「ナノカ?」
「あら、どうかしたの……ってそれより、授業に集中しなさいよ!」
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