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第一節 1080°回った御嬢様
Ep.6 ちょこっと暴走レジェンドガール
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ビクッとして、ナノカの方を確かめる。すぐ彼女は僕から目を背け、何も知らなさそうな顔をしていた。だからこそ、ついつい聞いてみたくなってしまったのだ。
「ナノカも調べてたの……? さっきのこと?」
「何か悪い?」
「いえいえ」
彼女も先程の話が聞こえていて、気になっていたのだろう。彼女は暴走しつつも自分が何とかしないといけないとの優しさを持っていたのだ。感服しているのだが、彼女は照れ隠しのつもりか否定をした。
「別に。私は人が見つけた謎や結果に文句を付けたいだけのクレーマーよ。単にアンタが動いたとして、何か言いたいだけ。気にしないで」
「……ああ、了解」
気を取り直して、ナノカがどんな真実を手に入れたのか、交通事故に詳しい榎田さんの口から聞かせてもらうことにした。彼女は僕が目を合わせた途端に条件を確認してくれる。
「ええと、この辺で男子高校生が事故を起こしたって話ですよね……ええと、名前はうちのクラスの桐太くん……ですよね?」
「そうそう」
彼女は首を傾げる。
「桐太くんが事故を起こしたなんて、話全く聞いてませんし……この辺りで高校生が事故に遭った、遭わせたなんて話は聞いてませんけど」
「えっ? 新聞とかにも載ってたって話だけど」
「って言っても、全くご存知ありません」
彼女なりの見落としがあるのだろうか。
そのことについて追及しようとしたところで誰かが僕の肩を引っ張った。犯人は神妙な顔をしたナノカだ。小声であることを伝えてくる。
「それ以上、ツッコミを入れるとヤバいわよ」
「へっ? 榎田さんに……? ああ、確かに榎田さんに色々聞きすぎてパニックになっちゃうか……榎田さんだって、そこまで物知りって訳じゃないよね……」
相手は普通の高校生だ。彼女が色々と知ってるなんて期待を持っていると考える方が変だったのかもしれない。最悪、このまま質問攻めにしたら泣かしてしまう可能性もある。このまま言葉を引っ込めようとしたところ、ナノカから違和感のある発言が飛んできた。
「逆よ逆」
「ん?」
「自信がありすぎるのよ。逆に刺激すると、キレるかもしれないわね……」
「へっ? あっ? あの女の子が?」
「人を見た目で判断すると痛い目見るわよ」
ナノカは静かに、淡々と彼女の恐ろしさを語るも実感はできない。けれども、一歩彼女がこちらに足を踏み入れた際、何故か心臓が痺れたような感覚がした。
榎田さんは笑顔で告げる。
「まぁ、デマだとは思いますよ……何処からそんな話を聞いたのかは分かりませんが、もし本当だとしたら、わたしは桐太さんを……」
それ以上は聞かないことにした。納得しよう。
何故、桐太がありもしない事故のことを口にしたのかが疑問に残るも、これ以上は聞いてはいけない雰囲気が出てしまった。ちなみに何故、そこまで榎田さんが交通事故のことに詳しいのか、ナノカに聞いてみた。
「本当に榎田さんは……詳しいの?」
「ええ。彼女はまぁ、なんて言うか……おっちょこちょいって言うか、まぁ、それで事故を起こすことが多いんだけど……その分、交通事故に遭いそうになることも多いらしくて……で、交通違反をする人を……ね」
彼女を見ると歩いたところで上靴がすっぽ抜けていった。「ああー、ちょっと待ってくださーい!」と。僕が飛んできた上靴を渡しておく。「ありがとうございます……でさっきから、何を話しているんですか?」と言われたため、ナノカが「何でもないのよ」と話は中断。
さて、話が終わったことにより、次にすることを考えていく。
一応榎田さんが見落としている可能性も考慮して、新聞を調べに行きたい。榎田さんがたまたま見られなかった新聞の記事にその情報があるかも、だ。確かに桐太は「新聞に載った」と口にしていた。
彼の言葉は偽りだったのか。僕はその一つ一つに心を震わされたのか。
そうとなるとまた疑問が現れる。彼は家の電話で自分の情報をハッキリさせて電話をしてきた。情報から個人が特定される状況で嘘などつくものだろうか。
考えれば考える程に真偽が分からなくなっていく。少しでも真実を照らす明かりを見つけるためにやるべきことは一つ。新聞記事を探すため、図書館に行くこと。学校の図書室、そこの入口に新聞が置いてあるが、そこまでたくさんの新聞はなかったはず。たぶん一日二日のものだけで後は処分されているか、別の用途に使われてしまっているのだろう。
昔の新聞がある場所と言えば、市が運営している図書館だ。
合唱部はまだ練習があるだろうと僕はナノカと榎田さんに別れを告げた。
「じゃ、ありがとね! そして、まぁ、ナノカ……ごめん、今日のさっきのことは本当に……ナノカに迷惑掛けちゃったね」
ナノカの方は今日あった出来事に関しての謝罪に「ふん」とだけ答えていた。榎田さんがそこに反応。
「そういえば、さっきナノカちゃん、忘れ物を取りに行くって言ってましたけど、その時に何かあったんですか?」
すぐにナノカの焦った声が聞こえてきた。
「ちょちょちょ、何で何で、今、その話を!? 今、そんなことはどうだっていいじゃない!」
焦っている可愛らしい彼女の顔が見えるんだろうな、と思いつつ目にはしない。少し惜しい気もするが、背を向けて玄関に向けて急いでいく。
学校を後にして、自転車に乗る。
心の中には間に合うかとの疑念がある。桐太が誰も信じてくれないと嘆き、変な行動に出てしまうことも。他にも本当に地方紙に見つかるのか。どういう経緯かは不明だが、錯乱した桐太が勝手に新聞に載ったと思い込んだこともある。
しかし、だ。少しでもこうやって僕は調べようとしている。似たような前例を見つけることができれば、どんな大人よりも彼の心に寄り添えるのではないだろうか。
『こういう情報がネットよりも分かりやすく掲載されているから、図書館の利用はまだまだ欠かせないわ。ネットでは真偽がハッキリしないものも多いし……まっ、って言っても、絶対本が正しいって訳じゃないんだけどね』
図書館の利用を思い付いたのはナノカが以前、図書室で吐いていた言葉がきっかけだ。
海が近いため、潮風の香りが僕の体に纏わりついていく。涼しい風と共にやってくる、その匂いが誰かの涙に変わらないうちに何とかしなければ。
「ナノカも調べてたの……? さっきのこと?」
「何か悪い?」
「いえいえ」
彼女も先程の話が聞こえていて、気になっていたのだろう。彼女は暴走しつつも自分が何とかしないといけないとの優しさを持っていたのだ。感服しているのだが、彼女は照れ隠しのつもりか否定をした。
「別に。私は人が見つけた謎や結果に文句を付けたいだけのクレーマーよ。単にアンタが動いたとして、何か言いたいだけ。気にしないで」
「……ああ、了解」
気を取り直して、ナノカがどんな真実を手に入れたのか、交通事故に詳しい榎田さんの口から聞かせてもらうことにした。彼女は僕が目を合わせた途端に条件を確認してくれる。
「ええと、この辺で男子高校生が事故を起こしたって話ですよね……ええと、名前はうちのクラスの桐太くん……ですよね?」
「そうそう」
彼女は首を傾げる。
「桐太くんが事故を起こしたなんて、話全く聞いてませんし……この辺りで高校生が事故に遭った、遭わせたなんて話は聞いてませんけど」
「えっ? 新聞とかにも載ってたって話だけど」
「って言っても、全くご存知ありません」
彼女なりの見落としがあるのだろうか。
そのことについて追及しようとしたところで誰かが僕の肩を引っ張った。犯人は神妙な顔をしたナノカだ。小声であることを伝えてくる。
「それ以上、ツッコミを入れるとヤバいわよ」
「へっ? 榎田さんに……? ああ、確かに榎田さんに色々聞きすぎてパニックになっちゃうか……榎田さんだって、そこまで物知りって訳じゃないよね……」
相手は普通の高校生だ。彼女が色々と知ってるなんて期待を持っていると考える方が変だったのかもしれない。最悪、このまま質問攻めにしたら泣かしてしまう可能性もある。このまま言葉を引っ込めようとしたところ、ナノカから違和感のある発言が飛んできた。
「逆よ逆」
「ん?」
「自信がありすぎるのよ。逆に刺激すると、キレるかもしれないわね……」
「へっ? あっ? あの女の子が?」
「人を見た目で判断すると痛い目見るわよ」
ナノカは静かに、淡々と彼女の恐ろしさを語るも実感はできない。けれども、一歩彼女がこちらに足を踏み入れた際、何故か心臓が痺れたような感覚がした。
榎田さんは笑顔で告げる。
「まぁ、デマだとは思いますよ……何処からそんな話を聞いたのかは分かりませんが、もし本当だとしたら、わたしは桐太さんを……」
それ以上は聞かないことにした。納得しよう。
何故、桐太がありもしない事故のことを口にしたのかが疑問に残るも、これ以上は聞いてはいけない雰囲気が出てしまった。ちなみに何故、そこまで榎田さんが交通事故のことに詳しいのか、ナノカに聞いてみた。
「本当に榎田さんは……詳しいの?」
「ええ。彼女はまぁ、なんて言うか……おっちょこちょいって言うか、まぁ、それで事故を起こすことが多いんだけど……その分、交通事故に遭いそうになることも多いらしくて……で、交通違反をする人を……ね」
彼女を見ると歩いたところで上靴がすっぽ抜けていった。「ああー、ちょっと待ってくださーい!」と。僕が飛んできた上靴を渡しておく。「ありがとうございます……でさっきから、何を話しているんですか?」と言われたため、ナノカが「何でもないのよ」と話は中断。
さて、話が終わったことにより、次にすることを考えていく。
一応榎田さんが見落としている可能性も考慮して、新聞を調べに行きたい。榎田さんがたまたま見られなかった新聞の記事にその情報があるかも、だ。確かに桐太は「新聞に載った」と口にしていた。
彼の言葉は偽りだったのか。僕はその一つ一つに心を震わされたのか。
そうとなるとまた疑問が現れる。彼は家の電話で自分の情報をハッキリさせて電話をしてきた。情報から個人が特定される状況で嘘などつくものだろうか。
考えれば考える程に真偽が分からなくなっていく。少しでも真実を照らす明かりを見つけるためにやるべきことは一つ。新聞記事を探すため、図書館に行くこと。学校の図書室、そこの入口に新聞が置いてあるが、そこまでたくさんの新聞はなかったはず。たぶん一日二日のものだけで後は処分されているか、別の用途に使われてしまっているのだろう。
昔の新聞がある場所と言えば、市が運営している図書館だ。
合唱部はまだ練習があるだろうと僕はナノカと榎田さんに別れを告げた。
「じゃ、ありがとね! そして、まぁ、ナノカ……ごめん、今日のさっきのことは本当に……ナノカに迷惑掛けちゃったね」
ナノカの方は今日あった出来事に関しての謝罪に「ふん」とだけ答えていた。榎田さんがそこに反応。
「そういえば、さっきナノカちゃん、忘れ物を取りに行くって言ってましたけど、その時に何かあったんですか?」
すぐにナノカの焦った声が聞こえてきた。
「ちょちょちょ、何で何で、今、その話を!? 今、そんなことはどうだっていいじゃない!」
焦っている可愛らしい彼女の顔が見えるんだろうな、と思いつつ目にはしない。少し惜しい気もするが、背を向けて玄関に向けて急いでいく。
学校を後にして、自転車に乗る。
心の中には間に合うかとの疑念がある。桐太が誰も信じてくれないと嘆き、変な行動に出てしまうことも。他にも本当に地方紙に見つかるのか。どういう経緯かは不明だが、錯乱した桐太が勝手に新聞に載ったと思い込んだこともある。
しかし、だ。少しでもこうやって僕は調べようとしている。似たような前例を見つけることができれば、どんな大人よりも彼の心に寄り添えるのではないだろうか。
『こういう情報がネットよりも分かりやすく掲載されているから、図書館の利用はまだまだ欠かせないわ。ネットでは真偽がハッキリしないものも多いし……まっ、って言っても、絶対本が正しいって訳じゃないんだけどね』
図書館の利用を思い付いたのはナノカが以前、図書室で吐いていた言葉がきっかけだ。
海が近いため、潮風の香りが僕の体に纏わりついていく。涼しい風と共にやってくる、その匂いが誰かの涙に変わらないうちに何とかしなければ。
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