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第三節 夢の先には後悔か
Ep.8 終わりの始まり
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夢を追う会をする部室に集まった僕達。
理亜を除くピクニックのメンバー、九人がここに集っている。
古戸くん。アヤコさん。桃助くん。三葉さん。八木岡くん。火村さん。芦峯さん。
後はナノカと僕。僕達二人が教壇の方に立っていた。何だかデスゲームを始めるみたいな気もするけれども。始まるのではない。終わらせるのだ。
こちらに向けて、まず三葉さんが文句を口にした。
「何で自分を呼び出したんだよ……! もうここにはいる必要のない人間なんだ」
そのまま立ち去ろうとしたものだから、僕が止める。
「待って。三葉さん。僕は三葉さんがやめた理由を知ってるし、その原因がどうにかできるかも分かってると思う」
「なっ!?」
「当たっているか、当たっていないか聞かせてくれればいい。悪いようにはしないから」
固まっている三葉さんの腕をアヤコさんががっしり掴む。
「あたしも聞いていった方がいいと思う! この人達はちゃんとクレーマーとしての役目を果たそうとしてるから。あたしも何度もその姿を見てきたから。きっと、何かあるはず」
「い、いや……」
三葉さんの腕から顔から恐ろしい量の汗が流れ出す。アヤコさんの方も顔を引き締めて、離さない。
「逃げるってのなら、離さないよ! 逃げることもいいけど、今は一緒に戦わない!? あたし達にその恐ろしさを教えてよ!」
「あ……あ……うう……」
古戸くんも。
「見たことあるだろ? あの二人の推理!」
桃助くんも。
「結果的にいい方になったじゃんか!」
「そうそう! なりますよ! きっといいことが起こります!」
火村さんも賛成してくれている。まだ僕達の推理について知らない芦峯さんと八木岡くんは二人「何々!?」と困惑している。それでいい。後であっと驚いてくれれば、その真実が頭にこびりつくこと間違いなし。
後はナノカがまたも理亜について心配していた。
「に、しても理亜ちゃん……」
「まぁまぁ……ま、まぁまぁ」
そんな話の流れでナノカが僕の緊張に気付いたらしい。
「何のためにワタシが隣に立ってんのよ! 失敗してもどうにかするためじゃないの?」
「あっ、いや!」
「違ったとしてもどしっとしなさい! アンタが今から始めるんでしょ! 大事な話を! 胸を叩いて戦いなさい!」
「分かったよ!」
と、その前にアヤコさんが動く。
「あっ、そうそう。八木岡くん、重ちゃん、他のみんなに見てもらいたいものがあるんだけど、スマホ見てもらっていい?」
各々が不満を呟く。八木岡くんも「今、何かいい空気になってなかったぁ? 何で、それを?」と白衣越しにスマートフォンを手にして、ツッコミを入れている。天然な子でさえ不可解に思う行動だったのだろう。ちなみに火村さんの「これは……作品についてのアンケートです……?」と後でやった方がいいと思われるものだったらしい。
ただ時間が空いたことで、更に緊張が解れていく。
「さて、じゃあ今から『夢を追う会』で起きてることを説明するね」
と言うと、火村さんが自身の罪を告白した。
「そこは自分に言わせてください!」
「あっ、うん」
「わたしがアヤコ先輩にした誹謗中傷の件からことが始まったんです」
そのことについてはSNSで炎上したこともあり、大抵の人が知っている話であり。被害者と加害者、両者が話し合いをしていることもあり。アヤコさんが穏やかな顔で見守っていることもあり。誰も彼女を責める者はいなかった。
火村さんの話は続いていく。
「で、そのことを謝罪していたら……いろんな場所に飛び火して……無実の人までもが誹謗中傷されることになったんです。そのことを訴えていこうと考えていたんです。このことでいいんですか?」
僕は「問題ないよ」と言う。すると芦峯さんが手をこちらに出して反応した。
「で、この誹謗中傷をぶっ潰そうってことで集まったのって、違うんだよね? 三葉ちゃんがこの会をやめたってことを話すのと、どう関係してるの?」
一見、関係はないように見えるかもしれない。
ただ、三葉さんの目だけは語っている。そうだ、と。
「とんでもない話だけど、簡単な話だよ。三葉さんは誰にも言えない事情で誹謗中傷を受けていた。で、心が折れたんだよ」
アヤコさんが応答した。
「えっ、でも? 三葉ちゃんのところにそんな誹謗中傷来てなかったんだけど……」
彼女は誹謗中傷が飛び火してないか確かめた身だ。だからそこは抜かりないと思う。ただ見逃していた点はあった。
三葉さんが別のアカウントで、名義で活動している可能性だ。まぁ、そもそも探せないように別の名前になっているのだから、アヤコさんがどんなに懸命に確かめようとしても無理なのだ。
僕達はたまたま辿り着いただけ。
僕は自分が取り出したスマートフォンの画像をまず、古戸くんに見せていく。
「この画像、見たよね?」
「それをおれはAIって言ってたんだよな……三葉さんの携帯で見て……これがVtuber。バーチャル配信者ってものなんだろ?」
「ああ。名前はハグルママワリだったかな」
その名前を聞き、三葉さんが顔を真っ赤にしていく。
「その名前をどうして……!?」
皆の前で暴露することになるのはとても申し訳のないことだと思っている。ただ終わらせるためにどうしても必要なことだった。
三葉さんに何度も謝っていく。
「本当に隠したかったものなんだよね。ごめん」
ナノカも一緒になって頭を下げてくれた。
「うん……本当に……ごめんなさい。必ず貴方を助け出すから待ってて」
「うう……知られたくなかった……それは自分とは別の存在だから……知られたくなかったのに」
「ごめんね。この話が終わったら、みんな忘れるようにするから。それまで少しだけ我慢して。本当にごめんなさい」
「本当に……何とかなるんだろうな……?」
僕は「ああ」と首を縦に振っていく。助けると誓ったから。彼女の鎖に繋がれた強いものに。
決意した瞬間に八木岡くんから疑問が飛んできた。
「ねえ……で、その配信者が誹謗中傷みたいなのを受けてるのは分かったけどさ……それで挫けちゃったの?」
この質問が最悪な真実に繋がっていく。
僕はここが正念場だと思っている。これさえ言えば、後は勢いで何とかなる。とんでもないことを僕は今から話します。
「……違うんだ。見たところ、こういうコメントは前からあったし。三葉さんも元々イラストの方でも色々言われてたけど、仲間同士励まし合ったりして何とかなっていた。たぶんだけど……一番、三葉さんにダメージを与えてしまったのは……どうしようもなく仕方のなかったことなんだ。分からないことだから……本当に偶然だったんだ」
「えっ? どうしたの? そんなに言いづらいの?」
「八木岡くん、ごめん……言わなくちゃ、だよね……言うよ」
「何々?」
本当に皆に申し訳ないことを言う。まだナノカにも伝えていない事実だ。
「身近で誹謗中傷を訴えて戦おうとしている人がいることこそが、三葉さんがここにいられなくなった理由なんだと思うんだ!」
理亜を除くピクニックのメンバー、九人がここに集っている。
古戸くん。アヤコさん。桃助くん。三葉さん。八木岡くん。火村さん。芦峯さん。
後はナノカと僕。僕達二人が教壇の方に立っていた。何だかデスゲームを始めるみたいな気もするけれども。始まるのではない。終わらせるのだ。
こちらに向けて、まず三葉さんが文句を口にした。
「何で自分を呼び出したんだよ……! もうここにはいる必要のない人間なんだ」
そのまま立ち去ろうとしたものだから、僕が止める。
「待って。三葉さん。僕は三葉さんがやめた理由を知ってるし、その原因がどうにかできるかも分かってると思う」
「なっ!?」
「当たっているか、当たっていないか聞かせてくれればいい。悪いようにはしないから」
固まっている三葉さんの腕をアヤコさんががっしり掴む。
「あたしも聞いていった方がいいと思う! この人達はちゃんとクレーマーとしての役目を果たそうとしてるから。あたしも何度もその姿を見てきたから。きっと、何かあるはず」
「い、いや……」
三葉さんの腕から顔から恐ろしい量の汗が流れ出す。アヤコさんの方も顔を引き締めて、離さない。
「逃げるってのなら、離さないよ! 逃げることもいいけど、今は一緒に戦わない!? あたし達にその恐ろしさを教えてよ!」
「あ……あ……うう……」
古戸くんも。
「見たことあるだろ? あの二人の推理!」
桃助くんも。
「結果的にいい方になったじゃんか!」
「そうそう! なりますよ! きっといいことが起こります!」
火村さんも賛成してくれている。まだ僕達の推理について知らない芦峯さんと八木岡くんは二人「何々!?」と困惑している。それでいい。後であっと驚いてくれれば、その真実が頭にこびりつくこと間違いなし。
後はナノカがまたも理亜について心配していた。
「に、しても理亜ちゃん……」
「まぁまぁ……ま、まぁまぁ」
そんな話の流れでナノカが僕の緊張に気付いたらしい。
「何のためにワタシが隣に立ってんのよ! 失敗してもどうにかするためじゃないの?」
「あっ、いや!」
「違ったとしてもどしっとしなさい! アンタが今から始めるんでしょ! 大事な話を! 胸を叩いて戦いなさい!」
「分かったよ!」
と、その前にアヤコさんが動く。
「あっ、そうそう。八木岡くん、重ちゃん、他のみんなに見てもらいたいものがあるんだけど、スマホ見てもらっていい?」
各々が不満を呟く。八木岡くんも「今、何かいい空気になってなかったぁ? 何で、それを?」と白衣越しにスマートフォンを手にして、ツッコミを入れている。天然な子でさえ不可解に思う行動だったのだろう。ちなみに火村さんの「これは……作品についてのアンケートです……?」と後でやった方がいいと思われるものだったらしい。
ただ時間が空いたことで、更に緊張が解れていく。
「さて、じゃあ今から『夢を追う会』で起きてることを説明するね」
と言うと、火村さんが自身の罪を告白した。
「そこは自分に言わせてください!」
「あっ、うん」
「わたしがアヤコ先輩にした誹謗中傷の件からことが始まったんです」
そのことについてはSNSで炎上したこともあり、大抵の人が知っている話であり。被害者と加害者、両者が話し合いをしていることもあり。アヤコさんが穏やかな顔で見守っていることもあり。誰も彼女を責める者はいなかった。
火村さんの話は続いていく。
「で、そのことを謝罪していたら……いろんな場所に飛び火して……無実の人までもが誹謗中傷されることになったんです。そのことを訴えていこうと考えていたんです。このことでいいんですか?」
僕は「問題ないよ」と言う。すると芦峯さんが手をこちらに出して反応した。
「で、この誹謗中傷をぶっ潰そうってことで集まったのって、違うんだよね? 三葉ちゃんがこの会をやめたってことを話すのと、どう関係してるの?」
一見、関係はないように見えるかもしれない。
ただ、三葉さんの目だけは語っている。そうだ、と。
「とんでもない話だけど、簡単な話だよ。三葉さんは誰にも言えない事情で誹謗中傷を受けていた。で、心が折れたんだよ」
アヤコさんが応答した。
「えっ、でも? 三葉ちゃんのところにそんな誹謗中傷来てなかったんだけど……」
彼女は誹謗中傷が飛び火してないか確かめた身だ。だからそこは抜かりないと思う。ただ見逃していた点はあった。
三葉さんが別のアカウントで、名義で活動している可能性だ。まぁ、そもそも探せないように別の名前になっているのだから、アヤコさんがどんなに懸命に確かめようとしても無理なのだ。
僕達はたまたま辿り着いただけ。
僕は自分が取り出したスマートフォンの画像をまず、古戸くんに見せていく。
「この画像、見たよね?」
「それをおれはAIって言ってたんだよな……三葉さんの携帯で見て……これがVtuber。バーチャル配信者ってものなんだろ?」
「ああ。名前はハグルママワリだったかな」
その名前を聞き、三葉さんが顔を真っ赤にしていく。
「その名前をどうして……!?」
皆の前で暴露することになるのはとても申し訳のないことだと思っている。ただ終わらせるためにどうしても必要なことだった。
三葉さんに何度も謝っていく。
「本当に隠したかったものなんだよね。ごめん」
ナノカも一緒になって頭を下げてくれた。
「うん……本当に……ごめんなさい。必ず貴方を助け出すから待ってて」
「うう……知られたくなかった……それは自分とは別の存在だから……知られたくなかったのに」
「ごめんね。この話が終わったら、みんな忘れるようにするから。それまで少しだけ我慢して。本当にごめんなさい」
「本当に……何とかなるんだろうな……?」
僕は「ああ」と首を縦に振っていく。助けると誓ったから。彼女の鎖に繋がれた強いものに。
決意した瞬間に八木岡くんから疑問が飛んできた。
「ねえ……で、その配信者が誹謗中傷みたいなのを受けてるのは分かったけどさ……それで挫けちゃったの?」
この質問が最悪な真実に繋がっていく。
僕はここが正念場だと思っている。これさえ言えば、後は勢いで何とかなる。とんでもないことを僕は今から話します。
「……違うんだ。見たところ、こういうコメントは前からあったし。三葉さんも元々イラストの方でも色々言われてたけど、仲間同士励まし合ったりして何とかなっていた。たぶんだけど……一番、三葉さんにダメージを与えてしまったのは……どうしようもなく仕方のなかったことなんだ。分からないことだから……本当に偶然だったんだ」
「えっ? どうしたの? そんなに言いづらいの?」
「八木岡くん、ごめん……言わなくちゃ、だよね……言うよ」
「何々?」
本当に皆に申し訳ないことを言う。まだナノカにも伝えていない事実だ。
「身近で誹謗中傷を訴えて戦おうとしている人がいることこそが、三葉さんがここにいられなくなった理由なんだと思うんだ!」
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