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第三節 夢の先には後悔か
Ep.7 最後の確認
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古戸くんに面白い情報を貰った。後は家に帰ってから、ベッドで仰向けになって美少女AIの評判について調べるだけだ。某掲示板や動画サイトに書かれている様々な情報を読み取っていく。
『いつも相談に乗ってもらって、凄い助かってるんだよ! 流石、美少女AIちゃん! 世界を救うよ』
『悪人にすらも慈悲を見せるところがまた、素敵! 我ら美少女AI教に幸あれ! 讃えよ崇めよ、歌えよ! あっ、今度歌ってよ』
『いっつも優しくて楽しいね。見てて心が安らぐよ。明日も楽しみにしてるね。これ生き甲斐だから』
『そういや、最近声の質が落ちてるけど……そういう時期なのかな? 何とか乗り越えてほしいなぁ』
『最近、出てくるの少なくない? 大丈夫?』
褒める声、救いを求める声の中にノイズが混じっている。それでも僕はスマートフォンの画面をスクロールせずにはいられなかった。例え、どんな真実が待っていようとも。
『やっぱ、この美少女AIは最悪だな』
『ポンコツAIってところかな?』
『偽善者ぶりやがって』
『見るのやめようぜ! きっとやってるのはどうせ……』
『本当人として、欠点が……』
結構最近のコメントが多い。日付は火村さんの起こした炎上騒動の少し前から、か。本当に人を叩いて、腸を煮えくり返らせるのがうまい奴等め。ソーセージ職人か、お前等は。
ふぅと溜息をついて、インターネットのアプリのウインドウを消しておく。次に使うのはメッセージアプリだ。
僕はまず、アヤコさんに対して告げていく。
『ねぇ、お願いがあるんだけど』
彼女は誹謗中傷対策のためにスマートフォンを使っていたのか、意外にも早い返信だった。
『どうしたの?』
『明日、みんなに話したいことがある。パソコン室に集まってほしいんだ。三葉さんを連れてこれるのって、たぶん、アヤコさんだけじゃないかなって思って』
なんてところで、突然理亜から僕への個人メッセージが入ってきた。
『なぁ、面白いことを思い付いたんだが』
それと同時にアヤコさんからもやってくる。
『それ、さっき理亜って子にも言われたけど……ええと、八木岡くんと重ちゃんも連れてくれば、いいんだよね? で、そっちは芦峯さんをって……』
理亜の方が手が早かったみたいだ。彼女が何をやるのかは知らない。何を企んでいるのかも分からないが、好都合。
『理亜はそれをやるってことなんだろ?』
理亜へメッセージを送っていく。
『ああ……とんでもなく下らないことをしたくなってな』
『で、理亜はその作戦をやるってことだね?』
『ああ……』
『じゃあ、僕からついでにお願いしたいことがあるんだよね』
頼みたいことを文章にして送っていく。ただ彼女は彼女の作戦を教えてはくれなかった。俗にいうもったいぶり、だ。マジックショーのネタを彼女は誰にも教えない。例え、アシスタントだとしても。彼女はそれでも構わないのだ。失敗したとしても、別の方法を使えば人間が驚くことを知っている。
さて、楽しみにしておこう。
理亜とのやり取りを終わらせたところで、またアヤコさんからメッセージが飛んできた。
『あっ、そうそう……今日、誠くんの相談に乗ってくれて、ありがとね。最近様子が変だとは思ってたけど、あんな事情があったとは、ね。これで彼も前よりいい形で夢に動いていけるんじゃないかな』
『そりゃあ、良かった。お二人共頑張ってね』
『ええ。夢を壊す人間をあたしは許さないから!』
そうだね。たぶん、許さないと思うよ。三葉さんは……貴方を、ね。
ピロリと音がした。
気を取り直して、確かめるとナノカからのメッセージがあった。
『で、情真くん、明日、その分かったことをみんなに言うの?』
『うん、そのつもり……!』
『でさ……ワタシ達、これが終わったら、どうする?』
『ん? これが終わったらって……?』
何を考えているのか。
『ワタシ達、これ以上、夢を追う会にいていいのかなって思ってね』
『えっ?』
『古戸くんに自分の感じたこと、思ったことをぶつけちゃったからね。ちょっと彼としてもワタシと顔を合わせづらいかなぁって』
『そんなことはないと思うけどな』
『まっ、それだけじゃなくって。ワタシ達がいなくても、夢を追う人は増えていく。前よりもあのサークルに興味を持ってる人達も増えてるようだし。だからワタシ達自身がいなくても、自衛もできるし……自分達で戦えるようにならなくっちゃって思うの』
確かに夢を自分の力で守れるようにはなっている。ナノカに後押しをしてもらってアヤコさんも戦えるようになっている。そこに僕達の力はもういらないのかもしれない、と彼女の言葉を聞いて思っていた。
『そっか。それも選択の一つだよね』
『ええ。だから今回の騒動が少しでも収まったら、ワタシは身を引くことにするわ。まっ、でも時々見に行きたいってこともあるから、その時はついてきてね!』
『分かったよ』
彼女にOKのスタンプをついでに押したつもりが、理亜用の人食い花がデザインされた方のものを送ってしまった。取り消しておこうかと思ったけれども、既読が付いたからもう時は既に遅い。
諦めて寝よう。
明日のために。
と言っても、授業ではばっちり寝ているとのお墨付き。実はあれから眠れなくてゲームを小一時間やっていたというのは秘密の話だ。
自転車でアヤコさん達の学校へ行く最中もナノカから色々注意されてしまった。
「あのね……今日はあまりにも寝すぎじゃない? 何、推理のことばっかり考えてて結局、昨日からずっと寝てなかったの?」
「いや、そうじゃなくって、だね……」
推理ショーをしようとしてる前にヒロインに怒られる探偵とか、他の推理小説にいないよな、と思いつつ。
「で、後、芦峯さんは先に行っちゃったみたいだけれども、理亜ちゃんも一緒?」
「えっ、分からない」
「えっ?」
「まぁ、理亜はどうにかなるっしょ……アイツが自分の後悔するようなことをやるとは思えないし……なんとかなるっしょ」
「随分といい加減ね……まっ、いいわ。今日の推理、頑張ってよね!」
さてさて、もうすぐ到着だ。
今日、真実を明らかにしてみせる。皆を救うために。そして、夢に憧れていた、そして夢を応援したいと何よりも思った自分自身を救うために。
そんな心意気で僕は学校の敷地内に足を踏み入れていた。
『いつも相談に乗ってもらって、凄い助かってるんだよ! 流石、美少女AIちゃん! 世界を救うよ』
『悪人にすらも慈悲を見せるところがまた、素敵! 我ら美少女AI教に幸あれ! 讃えよ崇めよ、歌えよ! あっ、今度歌ってよ』
『いっつも優しくて楽しいね。見てて心が安らぐよ。明日も楽しみにしてるね。これ生き甲斐だから』
『そういや、最近声の質が落ちてるけど……そういう時期なのかな? 何とか乗り越えてほしいなぁ』
『最近、出てくるの少なくない? 大丈夫?』
褒める声、救いを求める声の中にノイズが混じっている。それでも僕はスマートフォンの画面をスクロールせずにはいられなかった。例え、どんな真実が待っていようとも。
『やっぱ、この美少女AIは最悪だな』
『ポンコツAIってところかな?』
『偽善者ぶりやがって』
『見るのやめようぜ! きっとやってるのはどうせ……』
『本当人として、欠点が……』
結構最近のコメントが多い。日付は火村さんの起こした炎上騒動の少し前から、か。本当に人を叩いて、腸を煮えくり返らせるのがうまい奴等め。ソーセージ職人か、お前等は。
ふぅと溜息をついて、インターネットのアプリのウインドウを消しておく。次に使うのはメッセージアプリだ。
僕はまず、アヤコさんに対して告げていく。
『ねぇ、お願いがあるんだけど』
彼女は誹謗中傷対策のためにスマートフォンを使っていたのか、意外にも早い返信だった。
『どうしたの?』
『明日、みんなに話したいことがある。パソコン室に集まってほしいんだ。三葉さんを連れてこれるのって、たぶん、アヤコさんだけじゃないかなって思って』
なんてところで、突然理亜から僕への個人メッセージが入ってきた。
『なぁ、面白いことを思い付いたんだが』
それと同時にアヤコさんからもやってくる。
『それ、さっき理亜って子にも言われたけど……ええと、八木岡くんと重ちゃんも連れてくれば、いいんだよね? で、そっちは芦峯さんをって……』
理亜の方が手が早かったみたいだ。彼女が何をやるのかは知らない。何を企んでいるのかも分からないが、好都合。
『理亜はそれをやるってことなんだろ?』
理亜へメッセージを送っていく。
『ああ……とんでもなく下らないことをしたくなってな』
『で、理亜はその作戦をやるってことだね?』
『ああ……』
『じゃあ、僕からついでにお願いしたいことがあるんだよね』
頼みたいことを文章にして送っていく。ただ彼女は彼女の作戦を教えてはくれなかった。俗にいうもったいぶり、だ。マジックショーのネタを彼女は誰にも教えない。例え、アシスタントだとしても。彼女はそれでも構わないのだ。失敗したとしても、別の方法を使えば人間が驚くことを知っている。
さて、楽しみにしておこう。
理亜とのやり取りを終わらせたところで、またアヤコさんからメッセージが飛んできた。
『あっ、そうそう……今日、誠くんの相談に乗ってくれて、ありがとね。最近様子が変だとは思ってたけど、あんな事情があったとは、ね。これで彼も前よりいい形で夢に動いていけるんじゃないかな』
『そりゃあ、良かった。お二人共頑張ってね』
『ええ。夢を壊す人間をあたしは許さないから!』
そうだね。たぶん、許さないと思うよ。三葉さんは……貴方を、ね。
ピロリと音がした。
気を取り直して、確かめるとナノカからのメッセージがあった。
『で、情真くん、明日、その分かったことをみんなに言うの?』
『うん、そのつもり……!』
『でさ……ワタシ達、これが終わったら、どうする?』
『ん? これが終わったらって……?』
何を考えているのか。
『ワタシ達、これ以上、夢を追う会にいていいのかなって思ってね』
『えっ?』
『古戸くんに自分の感じたこと、思ったことをぶつけちゃったからね。ちょっと彼としてもワタシと顔を合わせづらいかなぁって』
『そんなことはないと思うけどな』
『まっ、それだけじゃなくって。ワタシ達がいなくても、夢を追う人は増えていく。前よりもあのサークルに興味を持ってる人達も増えてるようだし。だからワタシ達自身がいなくても、自衛もできるし……自分達で戦えるようにならなくっちゃって思うの』
確かに夢を自分の力で守れるようにはなっている。ナノカに後押しをしてもらってアヤコさんも戦えるようになっている。そこに僕達の力はもういらないのかもしれない、と彼女の言葉を聞いて思っていた。
『そっか。それも選択の一つだよね』
『ええ。だから今回の騒動が少しでも収まったら、ワタシは身を引くことにするわ。まっ、でも時々見に行きたいってこともあるから、その時はついてきてね!』
『分かったよ』
彼女にOKのスタンプをついでに押したつもりが、理亜用の人食い花がデザインされた方のものを送ってしまった。取り消しておこうかと思ったけれども、既読が付いたからもう時は既に遅い。
諦めて寝よう。
明日のために。
と言っても、授業ではばっちり寝ているとのお墨付き。実はあれから眠れなくてゲームを小一時間やっていたというのは秘密の話だ。
自転車でアヤコさん達の学校へ行く最中もナノカから色々注意されてしまった。
「あのね……今日はあまりにも寝すぎじゃない? 何、推理のことばっかり考えてて結局、昨日からずっと寝てなかったの?」
「いや、そうじゃなくって、だね……」
推理ショーをしようとしてる前にヒロインに怒られる探偵とか、他の推理小説にいないよな、と思いつつ。
「で、後、芦峯さんは先に行っちゃったみたいだけれども、理亜ちゃんも一緒?」
「えっ、分からない」
「えっ?」
「まぁ、理亜はどうにかなるっしょ……アイツが自分の後悔するようなことをやるとは思えないし……なんとかなるっしょ」
「随分といい加減ね……まっ、いいわ。今日の推理、頑張ってよね!」
さてさて、もうすぐ到着だ。
今日、真実を明らかにしてみせる。皆を救うために。そして、夢に憧れていた、そして夢を応援したいと何よりも思った自分自身を救うために。
そんな心意気で僕は学校の敷地内に足を踏み入れていた。
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