美少女クレーマー探偵と夢殺し完全犯罪論信者

夜野舞斗

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第三節 夢の先には後悔か

Ep.4 推理して検索!

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 その謎に対してナノカはとてもネガティブな考えを思い付いてしまったようだ。雰囲気を一層暗くしそうな表情で意見を伝えてくれた。

「……それって、仲間の中に犯人がいるから庇ってるってことはないわよね? あのサークルの三人の中が犯人だからってことは」

 その可能性については考えたくなかった。ただ考慮しなければならない。頭の中で嫌な考えを噛みしめつつ、見てきたこと感じたことを言葉にする。

「確かに前の三葉さんは人を庇う余裕があったけど、今は違う気がする。確かに古戸くんとちょっと関係性が変になってたのは確かだけど」
「ああ、それはワタシも思ってた」
「古戸くんのことを一回疑って喧嘩したから……ね。正直、今の彼女に仲間だからとか犯人じゃないと思いたいなんて気持ちはない気がする……まぁ、逆にあったとしてももっと強く出そうなもんだけどね。中途半端が一番不自然なんだよなぁ」
「じゃあまずは、三人の中に犯人がいないって考えて話を進めましょ。それで案が全くでなかったら、その後はその後で考えましょ」

 僕は大きく頷いて、被害者が犯人を庇う理由について考察していく。ミステリーの定番である犯人が恋人だからがある。

「まず犯人がプライベートな関係だったとしたら、どうしようもできないかな」
「ううん、その人がサークルを抜けろって感じ? そういう感じの束縛だとしたら、もっと前からSNSを使うことを否定してると思う。SNSで浮気なんて普通に起りそうだし……それに最近出て来た情真くんや八木岡くんとあまり関係を持ちたがりたがらないんじゃない? いつ何処で、その人が見てるか分からないんだし」
「だね。僕を一人呼び出しはしなかった、だろうね」
「ってことは、また別の理由ね。そもそも犯人を隠すんじゃなくって、そのやりとりがあったこと自体を隠したいケースかも」
「やりとり自体を……?」

 隠して何の得があるとなって、僕はハッと思い付く。その考えをナノカには見破られたようで。

「何か気付いた?」

 ゾクリとする。この感覚。話しても良いものか。

「いや……」
「言ってみなさいよ! 言わないと後悔するわよ! いや、後悔させるわよ!」
「えっ!? 実力行使!? 言うから待って! 僕が思うのは、その、18歳未満禁止みたいなのをやっていてってことだよ。そりゃあ、僕だったらバレたくないからだけど」
「それもありね」
「えっ?」

 てっきり、この後「ふざけたこと考えてるんじゃないわよ」と注意されるかもと思っていたのだけれども。全然違った。
 彼女は僕の経験と推理を考えてくれていた。ホッと一安心するも束の間、僕はまたナノカに変なことを考えさせてしまったと悔やんだ。結局、どの道を選んでもいい思いはしなかったのだ。まぁ、それなら推理が進んだことを喜ぶべきか。
 ナノカは今の例えから三葉さんの悩みを仮定していく。

「裏でやってるアカウントのことがバレたくなくて、その誹謗中傷を隠してた、と……。で、筆が折れてと……」

 ならば誹謗中傷されているかもしれない絵師をSNSで探してもらおうと考えてみる。ただSNSの中には鍵あかと自身が認めた人以外は入れないアカウントも存在している。その中に隠れられていたとしたら、問題だ。と言っても、それならば誹謗中傷を言われる前に追い出せば良い。その人を鍵垢から追放するのは簡単なことだろう。
 だとしても、探すのには骨が折れる。
 スマートフォンで絵師を確かめてみるも星の数だけ存在していた。この中から割り出す方法は存在しているのか。

「……ううん、三葉さんのアカウントから辿れないかなぁ……それらしい人はフォローしてないんだよな」
「あら、情真くんはフォローしてるの」
「い、いや……うう、まぁ」
「見てたって気にしないけど。不埒だと思うだけね」
「そ、そんなぁ」
「ほら、しっかり手を動かしていきましょ! ワタシも何かないか探してみるけど……ってちょっと待って。同じ絵柄だとしたら、いい方法があったわ。これも理亜ちゃんの受け売りだけど」
「ん?」

 ナノカが提案してきたのは、画像検索だった。彼女は素早く三葉さんが描いたものを保存し、画像で検索をしていた。

「この画像検索なら似た絵を探せるし、同じ画風のものも出てくるんじゃないかしら?」
「ああ……それがあったか……でも」

 調べて出てきた画像に当たりがないように思える。どれを見ても、画像にあるキャラクターに似てるとだけで同じ作風だからと出てきてくれるものはなかった。幾つか本人が描いたイラストは出てきてくれたけれども。
 ナノカは自身のスマートフォンでそのイラスト一つ一つのアカウントを確かめていた。一応、僕達が分からないだけで三葉さんが描いたものかもしれない、と。
 僕もナノカとは違った三葉さんのイラストで画像検索を掛けてみる。たぶん、ナノカの方には年齢制限などが掛かっていて、本当に叡智えいちなイラストは出てこないのではないか。逆にこちらでは予想したものが出てきた。
 学校、他人様の学校とは言え、その中で少々危険な画像を見る罪悪感。ナノカに注意されたらどうしようと感じるも、快感もあるように思えてしまった。

「……ないわね。そっちはどう?」

 ぎくり、と。すぐさま消そうとして変なところを押してしまった。画像が大きく出て口から「ぎょぎょぎょっ!」と声を出すも、危ないイラストではなかった。よく見ると、少々胸の大きなお姉さんがゲーム動画の横で立っている。まるでアナウンサーの如く。

「あっ、いや……」

 ナノカはこちらが見ているのをまじまじと見つめてくる。そして、その正体を語っていく。

「何か可愛いわね。これって最近動画サイトで流行ってるけど、何だっけ? Vtuberだとか何とかって」
「ああ……だよね」
「なぁんか、三葉ちゃんの描いてた子に似てない?」
「だから画像検索で出てきたんだろうけどね」
「すっごい優しそうな感じの子よ」

 なんて話を始めようとしていて、論点がずれていることに両者が気が付いた。ナノカに何か言われる前に喋っておく。

「まぁ、それは後で帰ってチェックしようよ」
「そ、そ、そうよね。何かついつい……後は……ううむ。何で言えないのか……分からないわね」

 手掛かりはこれ以上ない、か。
 いや、待て。関係しているか分からないけれども。もしかしたら、ある言葉がとんでもない方向に推理を進めてくれるかもしれない。
 言ってみよう。

「後は美少女AIって言葉が気になってるんだけど、そこについて話していい?」
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