42 / 95
第三節 夢の先には後悔か
Ep.4 推理して検索!
しおりを挟む
その謎に対してナノカはとてもネガティブな考えを思い付いてしまったようだ。雰囲気を一層暗くしそうな表情で意見を伝えてくれた。
「……それって、仲間の中に犯人がいるから庇ってるってことはないわよね? あのサークルの三人の中が犯人だからってことは」
その可能性については考えたくなかった。ただ考慮しなければならない。頭の中で嫌な考えを噛みしめつつ、見てきたこと感じたことを言葉にする。
「確かに前の三葉さんは人を庇う余裕があったけど、今は違う気がする。確かに古戸くんとちょっと関係性が変になってたのは確かだけど」
「ああ、それはワタシも思ってた」
「古戸くんのことを一回疑って喧嘩したから……ね。正直、今の彼女に仲間だからとか犯人じゃないと思いたいなんて気持ちはない気がする……まぁ、逆にあったとしてももっと強く出そうなもんだけどね。中途半端が一番不自然なんだよなぁ」
「じゃあまずは、三人の中に犯人がいないって考えて話を進めましょ。それで案が全くでなかったら、その後はその後で考えましょ」
僕は大きく頷いて、被害者が犯人を庇う理由について考察していく。ミステリーの定番である犯人が恋人だからがある。
「まず犯人がプライベートな関係だったとしたら、どうしようもできないかな」
「ううん、その人がサークルを抜けろって感じ? そういう感じの束縛だとしたら、もっと前からSNSを使うことを否定してると思う。SNSで浮気なんて普通に起りそうだし……それに最近出て来た情真くんや八木岡くんとあまり関係を持ちたがりたがらないんじゃない? いつ何処で、その人が見てるか分からないんだし」
「だね。僕を一人呼び出しはしなかった、だろうね」
「ってことは、また別の理由ね。そもそも犯人を隠すんじゃなくって、そのやりとりがあったこと自体を隠したいケースかも」
「やりとり自体を……?」
隠して何の得があるとなって、僕はハッと思い付く。その考えをナノカには見破られたようで。
「何か気付いた?」
ゾクリとする。この感覚。話しても良いものか。
「いや……」
「言ってみなさいよ! 言わないと後悔するわよ! いや、後悔させるわよ!」
「えっ!? 実力行使!? 言うから待って! 僕が思うのは、その、18歳未満禁止みたいなのをやっていてってことだよ。そりゃあ、僕だったらバレたくないからだけど」
「それもありね」
「えっ?」
てっきり、この後「ふざけたこと考えてるんじゃないわよ」と注意されるかもと思っていたのだけれども。全然違った。
彼女は僕の経験と推理を考えてくれていた。ホッと一安心するも束の間、僕はまたナノカに変なことを考えさせてしまったと悔やんだ。結局、どの道を選んでもいい思いはしなかったのだ。まぁ、それなら推理が進んだことを喜ぶべきか。
ナノカは今の例えから三葉さんの悩みを仮定していく。
「裏でやってるアカウントのことがバレたくなくて、その誹謗中傷を隠してた、と……。で、筆が折れてと……」
ならば誹謗中傷されているかもしれない絵師をSNSで探してもらおうと考えてみる。ただSNSの中には鍵垢と自身が認めた人以外は入れないアカウントも存在している。その中に隠れられていたとしたら、問題だ。と言っても、それならば誹謗中傷を言われる前に追い出せば良い。その人を鍵垢から追放するのは簡単なことだろう。
だとしても、探すのには骨が折れる。
スマートフォンで絵師を確かめてみるも星の数だけ存在していた。この中から割り出す方法は存在しているのか。
「……ううん、三葉さんのアカウントから辿れないかなぁ……それらしい人はフォローしてないんだよな」
「あら、情真くんはフォローしてるの」
「い、いや……うう、まぁ」
「見てたって気にしないけど。不埒だと思うだけね」
「そ、そんなぁ」
「ほら、しっかり手を動かしていきましょ! ワタシも何かないか探してみるけど……ってちょっと待って。同じ絵柄だとしたら、いい方法があったわ。これも理亜ちゃんの受け売りだけど」
「ん?」
ナノカが提案してきたのは、画像検索だった。彼女は素早く三葉さんが描いたものを保存し、画像で検索をしていた。
「この画像検索なら似た絵を探せるし、同じ画風のものも出てくるんじゃないかしら?」
「ああ……それがあったか……でも」
調べて出てきた画像に当たりがないように思える。どれを見ても、画像にあるキャラクターに似てるとだけで同じ作風だからと出てきてくれるものはなかった。幾つか本人が描いたイラストは出てきてくれたけれども。
ナノカは自身のスマートフォンでそのイラスト一つ一つのアカウントを確かめていた。一応、僕達が分からないだけで三葉さんが描いたものかもしれない、と。
僕もナノカとは違った三葉さんのイラストで画像検索を掛けてみる。たぶん、ナノカの方には年齢制限などが掛かっていて、本当に叡智なイラストは出てこないのではないか。逆にこちらでは予想したものが出てきた。
学校、他人様の学校とは言え、その中で少々危険な画像を見る罪悪感。ナノカに注意されたらどうしようと感じるも、快感もあるように思えてしまった。
「……ないわね。そっちはどう?」
ぎくり、と。すぐさま消そうとして変なところを押してしまった。画像が大きく出て口から「ぎょぎょぎょっ!」と声を出すも、危ないイラストではなかった。よく見ると、少々胸の大きなお姉さんがゲーム動画の横で立っている。まるでアナウンサーの如く。
「あっ、いや……」
ナノカはこちらが見ているのをまじまじと見つめてくる。そして、その正体を語っていく。
「何か可愛いわね。これって最近動画サイトで流行ってるけど、何だっけ? Vtuberだとか何とかって」
「ああ……だよね」
「なぁんか、三葉ちゃんの描いてた子に似てない?」
「だから画像検索で出てきたんだろうけどね」
「すっごい優しそうな感じの子よ」
なんて話を始めようとしていて、論点がずれていることに両者が気が付いた。ナノカに何か言われる前に喋っておく。
「まぁ、それは後で帰ってチェックしようよ」
「そ、そ、そうよね。何かついつい……後は……ううむ。何で言えないのか……分からないわね」
手掛かりはこれ以上ない、か。
いや、待て。関係しているか分からないけれども。もしかしたら、ある言葉がとんでもない方向に推理を進めてくれるかもしれない。
言ってみよう。
「後は美少女AIって言葉が気になってるんだけど、そこについて話していい?」
「……それって、仲間の中に犯人がいるから庇ってるってことはないわよね? あのサークルの三人の中が犯人だからってことは」
その可能性については考えたくなかった。ただ考慮しなければならない。頭の中で嫌な考えを噛みしめつつ、見てきたこと感じたことを言葉にする。
「確かに前の三葉さんは人を庇う余裕があったけど、今は違う気がする。確かに古戸くんとちょっと関係性が変になってたのは確かだけど」
「ああ、それはワタシも思ってた」
「古戸くんのことを一回疑って喧嘩したから……ね。正直、今の彼女に仲間だからとか犯人じゃないと思いたいなんて気持ちはない気がする……まぁ、逆にあったとしてももっと強く出そうなもんだけどね。中途半端が一番不自然なんだよなぁ」
「じゃあまずは、三人の中に犯人がいないって考えて話を進めましょ。それで案が全くでなかったら、その後はその後で考えましょ」
僕は大きく頷いて、被害者が犯人を庇う理由について考察していく。ミステリーの定番である犯人が恋人だからがある。
「まず犯人がプライベートな関係だったとしたら、どうしようもできないかな」
「ううん、その人がサークルを抜けろって感じ? そういう感じの束縛だとしたら、もっと前からSNSを使うことを否定してると思う。SNSで浮気なんて普通に起りそうだし……それに最近出て来た情真くんや八木岡くんとあまり関係を持ちたがりたがらないんじゃない? いつ何処で、その人が見てるか分からないんだし」
「だね。僕を一人呼び出しはしなかった、だろうね」
「ってことは、また別の理由ね。そもそも犯人を隠すんじゃなくって、そのやりとりがあったこと自体を隠したいケースかも」
「やりとり自体を……?」
隠して何の得があるとなって、僕はハッと思い付く。その考えをナノカには見破られたようで。
「何か気付いた?」
ゾクリとする。この感覚。話しても良いものか。
「いや……」
「言ってみなさいよ! 言わないと後悔するわよ! いや、後悔させるわよ!」
「えっ!? 実力行使!? 言うから待って! 僕が思うのは、その、18歳未満禁止みたいなのをやっていてってことだよ。そりゃあ、僕だったらバレたくないからだけど」
「それもありね」
「えっ?」
てっきり、この後「ふざけたこと考えてるんじゃないわよ」と注意されるかもと思っていたのだけれども。全然違った。
彼女は僕の経験と推理を考えてくれていた。ホッと一安心するも束の間、僕はまたナノカに変なことを考えさせてしまったと悔やんだ。結局、どの道を選んでもいい思いはしなかったのだ。まぁ、それなら推理が進んだことを喜ぶべきか。
ナノカは今の例えから三葉さんの悩みを仮定していく。
「裏でやってるアカウントのことがバレたくなくて、その誹謗中傷を隠してた、と……。で、筆が折れてと……」
ならば誹謗中傷されているかもしれない絵師をSNSで探してもらおうと考えてみる。ただSNSの中には鍵垢と自身が認めた人以外は入れないアカウントも存在している。その中に隠れられていたとしたら、問題だ。と言っても、それならば誹謗中傷を言われる前に追い出せば良い。その人を鍵垢から追放するのは簡単なことだろう。
だとしても、探すのには骨が折れる。
スマートフォンで絵師を確かめてみるも星の数だけ存在していた。この中から割り出す方法は存在しているのか。
「……ううん、三葉さんのアカウントから辿れないかなぁ……それらしい人はフォローしてないんだよな」
「あら、情真くんはフォローしてるの」
「い、いや……うう、まぁ」
「見てたって気にしないけど。不埒だと思うだけね」
「そ、そんなぁ」
「ほら、しっかり手を動かしていきましょ! ワタシも何かないか探してみるけど……ってちょっと待って。同じ絵柄だとしたら、いい方法があったわ。これも理亜ちゃんの受け売りだけど」
「ん?」
ナノカが提案してきたのは、画像検索だった。彼女は素早く三葉さんが描いたものを保存し、画像で検索をしていた。
「この画像検索なら似た絵を探せるし、同じ画風のものも出てくるんじゃないかしら?」
「ああ……それがあったか……でも」
調べて出てきた画像に当たりがないように思える。どれを見ても、画像にあるキャラクターに似てるとだけで同じ作風だからと出てきてくれるものはなかった。幾つか本人が描いたイラストは出てきてくれたけれども。
ナノカは自身のスマートフォンでそのイラスト一つ一つのアカウントを確かめていた。一応、僕達が分からないだけで三葉さんが描いたものかもしれない、と。
僕もナノカとは違った三葉さんのイラストで画像検索を掛けてみる。たぶん、ナノカの方には年齢制限などが掛かっていて、本当に叡智なイラストは出てこないのではないか。逆にこちらでは予想したものが出てきた。
学校、他人様の学校とは言え、その中で少々危険な画像を見る罪悪感。ナノカに注意されたらどうしようと感じるも、快感もあるように思えてしまった。
「……ないわね。そっちはどう?」
ぎくり、と。すぐさま消そうとして変なところを押してしまった。画像が大きく出て口から「ぎょぎょぎょっ!」と声を出すも、危ないイラストではなかった。よく見ると、少々胸の大きなお姉さんがゲーム動画の横で立っている。まるでアナウンサーの如く。
「あっ、いや……」
ナノカはこちらが見ているのをまじまじと見つめてくる。そして、その正体を語っていく。
「何か可愛いわね。これって最近動画サイトで流行ってるけど、何だっけ? Vtuberだとか何とかって」
「ああ……だよね」
「なぁんか、三葉ちゃんの描いてた子に似てない?」
「だから画像検索で出てきたんだろうけどね」
「すっごい優しそうな感じの子よ」
なんて話を始めようとしていて、論点がずれていることに両者が気が付いた。ナノカに何か言われる前に喋っておく。
「まぁ、それは後で帰ってチェックしようよ」
「そ、そ、そうよね。何かついつい……後は……ううむ。何で言えないのか……分からないわね」
手掛かりはこれ以上ない、か。
いや、待て。関係しているか分からないけれども。もしかしたら、ある言葉がとんでもない方向に推理を進めてくれるかもしれない。
言ってみよう。
「後は美少女AIって言葉が気になってるんだけど、そこについて話していい?」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
終焉の教室
シロタカズキ
ミステリー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。


体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる