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第二節 女子高生VS超絶美少女AI
Ep.14 アンハッピーエンド
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気になることはあれど、この場はアヤコさんと火村さんが話し合う場にした方が良いと僕達は花壇から離れていく。
一応、頑張った理亜を調子に乗らせない程度に褒めておこう。
「理亜、お疲れ。凄いところに目を付けていたね」
「だろ? だから、さっきも言ったけどこの前のピクニックの時にはもう犯人は分かってたんだ」
「疑って悪かったよ……で、あれ? じゃあ、何で推理ショーをしなかったんだっけ?」
何か嫌な予感がする。これ以上深く考えない方が良いと分かっていても、口がもう動いていた。
理亜が返答する。
「言ったじゃないか。証拠がまだないって」
「つまり……ええと、状況が状況だからってことで急かしたけど……証拠が見つかったって訳じゃないんだよな?」
となると、どういうことかと頭を働かせた。
匿名メールで理亜は火村さんを追い詰めたのだが。その証拠が作り物だったのだろうか。まさかとは思うも、証拠提示の最中アヤコさんとヒソヒソ話し合っていたことを思い出してしまった。僕の口から「あ」との言葉が繰り返されていく。
「情真、驚くんじゃない。単にあの時、アヤコさんにはもし名前が出てきたとしても、そのことを言うんじゃないってな。なかったことにしろって、説明したんだ。で、そこでアヤコさんに追い詰められた火村がそのまま自白するって計算だった」
「えっ?」
「ああ、さっきのにはちゃんと名前は出てこなかったからな。まぁ、アヤコさんとの口裏合わせは必要なかったが」
最悪の時は証拠を捏造するつもりだったのか。彼女はもうずっと前から調子に乗っていたのだ。この後何をするのか、考えるのか全く予測できない点に頭が痛くなってきた。同時に疑問も頭の中で渦巻いていく。
「じゃあ、もし……名前が出てこなくても火村さんが誹謗中傷を認めなかったり、名前が出てるのがバレたりして問い詰められた場合はどうなんだよ……とんでもない目に遭わされてたんじゃないのか?」
「そこは安心しろ。ちゃんと私は言ったはずだぞ」
「えっ?」
彼女から聞き覚えのあるフレーズが飛び出した。
「機械とは一番信用しているものでありつつ、一番不確かなものだなぁってな」
「この間、そんなこと言ってたな」
「説明とするとだな、機械は何かを測ったりするのに十分なものではあるけれども。時にはバグって、人間より信用のないものになるって訳だ」
「つまり、その時はバグってたって言って誤魔化すつもりだったんだな。それでも火村さんは怒らせたままだとは思うけど」
「最悪、すぐ別の証拠を掴んできたさ」
本当に理亜は気楽で自由な人間だ。僕には到底理解ができない。と思いつつも、彼女のバイタリティーについては嫉妬していたと思う。絶対彼女のようになりたくはないけれども。
その点はもう忘れておいて、別の問題を話さなくては、だ。
「早く古戸くん達の誤解を解かなきゃ、だね」
「ううん、まぁアヤコさん達がメールを送ってくって話だが、解けるといいな」
「ああ!」
ただ、本当に崩れ始めたものが「はい、そうです」と治ってくれるものか。僕達が単純に謎を解いただけで救われたのか。
不安を煽るように冷たい風が吹いてきた。同じタイミングで「ピコッ」とスマホに着信が来た。
「……何だろ? 広告かな。いらないのたくさん来るんだよな」
きっとスパムメールか何かだと思っていたら、全然違った。アヤコさんからのメールだ。
『さっき、SNSで繋がってる人からある一つの提案を受けたの』
先程の推理ショーと何か関係のあることだろうか。気になって僕は理亜がとんでもなく近い距離感で覗き込んでくることも問題視せずに返信を送っていた。
『何々?』
『あたし達の力なら。あたしの持ってる機材を集められる財力があるなら、残った誹謗中傷を訴えることができるって』
訴える。
突然にも非現実的なことが見えてきた。ナノカが普段「訴えるわよ」とは言うものの、実際に同じことを示しているのか。
ただ訴えれば、必ず誹謗中傷をやめさせることができる。
『本当にやるの、それ?』
『うん。今、SNSを見たら誹謗中傷の数が増えてるの……たぶん、重ちゃんがSNS上で今までの誹謗中傷の謝罪をしたことも関係してる。みんなが重ちゃんを叩き始めて、消えろだとか言わなくていいことまで……それで、その原因を作ったってあたしまで……謝罪させるって、選択を誤ったのはいけなかったんだけど』
嘘だろ、と声に出そうだった。今は平日の夕暮れ時。ネットにもあまり人がいない時間のはずなのだが。
『とにかく、それを武器にするしかなさそうだね』
理亜の方は「おおおお、とんでもない数になってるな。まるで公開処刑が始まった……気に入らねぇなぁ、こっちはヒソヒソ全部終わらせるつもりだったのに。邪魔しやがって……ってか、あの後の処理を私が誤ったか……下手に情報をスマホにあげない方が良かったな」とスマートフォンを見て、握りしめていた。スマートフォンを思い切り上げたかと思いきや、すぐ下げて歪な顔をした。
その間にアヤコさんからメッセージが届いていた。
『絶対これを希望にしてみせる。誹謗中傷されても絶対に諦める必要がないって。こんな高校生でも、中学生だとしても大人と戦える。夢を守ってみせるってやってみたいと思う。露雪くん……というよりも情真くん、ナノカちゃん、理亜ちゃん……手伝ってくれない?』
クレーマーが「訴える」か。確かに得意そうな話だ。ナノカとも相談して、その話を進めた方がよいかもしれない。自分もSNSの方をチェックしてみた。SNSではアヤコさんが必死に炎上を鎮圧しようとしている。
いい大人が何でそんなに反省している人を叩こうとするのだ。
『ネット界隈にいるだけじゃなく、現実からも失せろ』
『こんな人間がマジ近くにいると思うと、怖いわ』
『住所晒上げてやるから、待ってな』
『そもそも、才能がなかったんだよ。生きる才能も、な』
下らない。
自分が見てもいないのに、体験してもいないのに文句ばかり言いやがって。全てが被害者ではなく、部外者だ。今までアヤコさんに散々粘着していた人に関しても、アヤコさんと共に重さんを叩き始めている。
早く何とかしないと、だな。
そこにちょうど、ナノカがやってきた。かなり来るのに遅れたことを気にしているのだろうか。僕達と目を合わせようとしない。
「ナノカ……ちょっといいか?」
だからこちらから話し掛けるしかないと思っていた。ただ彼女は何かに夢中で聞いていない。
彼女らしからぬ言葉を繰り返している、だけだった。
「許さない……ワタシは絶対に応援しない。ワタシは夢そのものの存在を否定してやるんだからっ!」
一応、頑張った理亜を調子に乗らせない程度に褒めておこう。
「理亜、お疲れ。凄いところに目を付けていたね」
「だろ? だから、さっきも言ったけどこの前のピクニックの時にはもう犯人は分かってたんだ」
「疑って悪かったよ……で、あれ? じゃあ、何で推理ショーをしなかったんだっけ?」
何か嫌な予感がする。これ以上深く考えない方が良いと分かっていても、口がもう動いていた。
理亜が返答する。
「言ったじゃないか。証拠がまだないって」
「つまり……ええと、状況が状況だからってことで急かしたけど……証拠が見つかったって訳じゃないんだよな?」
となると、どういうことかと頭を働かせた。
匿名メールで理亜は火村さんを追い詰めたのだが。その証拠が作り物だったのだろうか。まさかとは思うも、証拠提示の最中アヤコさんとヒソヒソ話し合っていたことを思い出してしまった。僕の口から「あ」との言葉が繰り返されていく。
「情真、驚くんじゃない。単にあの時、アヤコさんにはもし名前が出てきたとしても、そのことを言うんじゃないってな。なかったことにしろって、説明したんだ。で、そこでアヤコさんに追い詰められた火村がそのまま自白するって計算だった」
「えっ?」
「ああ、さっきのにはちゃんと名前は出てこなかったからな。まぁ、アヤコさんとの口裏合わせは必要なかったが」
最悪の時は証拠を捏造するつもりだったのか。彼女はもうずっと前から調子に乗っていたのだ。この後何をするのか、考えるのか全く予測できない点に頭が痛くなってきた。同時に疑問も頭の中で渦巻いていく。
「じゃあ、もし……名前が出てこなくても火村さんが誹謗中傷を認めなかったり、名前が出てるのがバレたりして問い詰められた場合はどうなんだよ……とんでもない目に遭わされてたんじゃないのか?」
「そこは安心しろ。ちゃんと私は言ったはずだぞ」
「えっ?」
彼女から聞き覚えのあるフレーズが飛び出した。
「機械とは一番信用しているものでありつつ、一番不確かなものだなぁってな」
「この間、そんなこと言ってたな」
「説明とするとだな、機械は何かを測ったりするのに十分なものではあるけれども。時にはバグって、人間より信用のないものになるって訳だ」
「つまり、その時はバグってたって言って誤魔化すつもりだったんだな。それでも火村さんは怒らせたままだとは思うけど」
「最悪、すぐ別の証拠を掴んできたさ」
本当に理亜は気楽で自由な人間だ。僕には到底理解ができない。と思いつつも、彼女のバイタリティーについては嫉妬していたと思う。絶対彼女のようになりたくはないけれども。
その点はもう忘れておいて、別の問題を話さなくては、だ。
「早く古戸くん達の誤解を解かなきゃ、だね」
「ううん、まぁアヤコさん達がメールを送ってくって話だが、解けるといいな」
「ああ!」
ただ、本当に崩れ始めたものが「はい、そうです」と治ってくれるものか。僕達が単純に謎を解いただけで救われたのか。
不安を煽るように冷たい風が吹いてきた。同じタイミングで「ピコッ」とスマホに着信が来た。
「……何だろ? 広告かな。いらないのたくさん来るんだよな」
きっとスパムメールか何かだと思っていたら、全然違った。アヤコさんからのメールだ。
『さっき、SNSで繋がってる人からある一つの提案を受けたの』
先程の推理ショーと何か関係のあることだろうか。気になって僕は理亜がとんでもなく近い距離感で覗き込んでくることも問題視せずに返信を送っていた。
『何々?』
『あたし達の力なら。あたしの持ってる機材を集められる財力があるなら、残った誹謗中傷を訴えることができるって』
訴える。
突然にも非現実的なことが見えてきた。ナノカが普段「訴えるわよ」とは言うものの、実際に同じことを示しているのか。
ただ訴えれば、必ず誹謗中傷をやめさせることができる。
『本当にやるの、それ?』
『うん。今、SNSを見たら誹謗中傷の数が増えてるの……たぶん、重ちゃんがSNS上で今までの誹謗中傷の謝罪をしたことも関係してる。みんなが重ちゃんを叩き始めて、消えろだとか言わなくていいことまで……それで、その原因を作ったってあたしまで……謝罪させるって、選択を誤ったのはいけなかったんだけど』
嘘だろ、と声に出そうだった。今は平日の夕暮れ時。ネットにもあまり人がいない時間のはずなのだが。
『とにかく、それを武器にするしかなさそうだね』
理亜の方は「おおおお、とんでもない数になってるな。まるで公開処刑が始まった……気に入らねぇなぁ、こっちはヒソヒソ全部終わらせるつもりだったのに。邪魔しやがって……ってか、あの後の処理を私が誤ったか……下手に情報をスマホにあげない方が良かったな」とスマートフォンを見て、握りしめていた。スマートフォンを思い切り上げたかと思いきや、すぐ下げて歪な顔をした。
その間にアヤコさんからメッセージが届いていた。
『絶対これを希望にしてみせる。誹謗中傷されても絶対に諦める必要がないって。こんな高校生でも、中学生だとしても大人と戦える。夢を守ってみせるってやってみたいと思う。露雪くん……というよりも情真くん、ナノカちゃん、理亜ちゃん……手伝ってくれない?』
クレーマーが「訴える」か。確かに得意そうな話だ。ナノカとも相談して、その話を進めた方がよいかもしれない。自分もSNSの方をチェックしてみた。SNSではアヤコさんが必死に炎上を鎮圧しようとしている。
いい大人が何でそんなに反省している人を叩こうとするのだ。
『ネット界隈にいるだけじゃなく、現実からも失せろ』
『こんな人間がマジ近くにいると思うと、怖いわ』
『住所晒上げてやるから、待ってな』
『そもそも、才能がなかったんだよ。生きる才能も、な』
下らない。
自分が見てもいないのに、体験してもいないのに文句ばかり言いやがって。全てが被害者ではなく、部外者だ。今までアヤコさんに散々粘着していた人に関しても、アヤコさんと共に重さんを叩き始めている。
早く何とかしないと、だな。
そこにちょうど、ナノカがやってきた。かなり来るのに遅れたことを気にしているのだろうか。僕達と目を合わせようとしない。
「ナノカ……ちょっといいか?」
だからこちらから話し掛けるしかないと思っていた。ただ彼女は何かに夢中で聞いていない。
彼女らしからぬ言葉を繰り返している、だけだった。
「許さない……ワタシは絶対に応援しない。ワタシは夢そのものの存在を否定してやるんだからっ!」
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