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第二節 女子高生VS超絶美少女AI
Ep.12 証拠隠滅
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顔から汗がだらだらと流れている火村さん。ただただ気温が高いからなのか、それとも何かやましいことがあるからなのか。全く判断ができない。彼女は声までもをぶるぶると震わせ、笑っている。
「や、やだなぁ。理亜さんでしたっけ? お、面白い冗談ですね」
理亜もニッコリ笑って、対抗する。
「ん? 冗談じゃないぞ。私は火村重を誹謗中傷の犯人として告発したんだ」
当然、今の流れでどう犯人になるのかが分からない。彼女はそのことを理亜に伝えようとする。
「い、今のは……! 今のはただアヤコ先輩が潔癖症だかって言ってただけじゃないですか!? 何であたしが犯人って言われなきゃいけないんですか!? 何で、そうなるんですかっ!? 意味が分かりませんよ!」
「潔癖症が関係しているとしたら?」
「そんな……へっ?」
突如として、火村さんの顔が歪な形と化した。目を大きく開いて、何かを思い出したかのよう。
理亜は何を知っているのか。スマートフォンを取り出し、誹謗中傷の内容を提示した。
「このアヤコさんに粘着しているアカウント、古戸少年によると、この誹謗中傷している奴は同じ街に住んでるって言ってたらしい」
「お、同じ街って言ってもあたしに繋がるって訳じゃないでしょ! な、なんか恐怖を与えるために嘘をついてたって可能性も」
「ああ……これだけだったらな。でも、これはどうだ? 『汚いものを取っ払って、綺麗で綺麗事だらけの世界で生きようとしているなんて、凄い図々しいね』は」
「こ、これが何なのよ!?」
火村さんは何だか分かっているようなイントネーションで焦って返したような気がする。これと潔癖症の何が関係するのか。ハッとして、考えがまとまっていく。
汚いものを取っ払って、との文章はもしかしてアヤコさんの潔癖症について、物語っているのではないだろうか。誰もアヤコさんの潔癖症について気付かなかったから、誹謗中傷の犯人に辿り着けなかったのだ。
だから理亜は最初にアヤコさんの潔癖症について暴いたのだ。彼女の意図がようやく読み込めた。
理解したと理亜に伝えるため、発言してみる。
「もしかして、アヤコさんの潔癖症を知ってた人が犯人?」
その声にいちはやく反応したのは、アヤコさんだった。
「そんな!? そういう意味なの!? 歌詞に誹謗中傷していたんじゃなくてっ!?」
口に手を抑えて、驚愕している。その理由を理亜が語っていく。
「アヤコさんはもう犯人について知っていたんだろ? なんたって、潔癖症を知ってる人は……そこにいる火村しかいないんだから」
「えっ? えっ? 何でですか!? 何であたしになるんですか!?」
アヤコさんは分かっているのだろう。それでも火村さんは知らぬふりを続けてきた。理亜の推理が当たっているとなると、潔癖症を知っている人だ。ただ何故、理亜は火村さんがアヤコさんのことを知っていると判断したのだろうか。
その疑問に理亜はお答えしてくれた。
「ピクニックの時だ。何で火村は持っていたんだろうな。ウェットティッシュを」
そこに僕が解答を入れる。
「だってご飯とか食べるために……あれ、でもその前に犬に触ってた芦峯さんが……」
ただその僕の考えた答えは途中でおかしくなってくる。火村さんがウェットティッシュを用意した理由が分からなくなってきた。
「私は知ってるぞ。アヤコさんにいち早く渡していたのを」
「ええと、僕が見たのは九人だったけど……アヤコさん受け取ったの見てないな」
「でも私は言ったぞ。あの時『十人分のDNA』がと」
「確かに言ってた。ふざけて言ってたけど、そっか。アヤコさんにも渡ってたんだ! でも、食事を提案する前なのにいきなり火村さんはウェットティッシュを手渡したの?」
理亜はこくりと頷いた。
「ああ、そういうことだ。渡したんだよ。アヤコさんが潔癖症だということを知っていた火村が、な」
今度は火村さんも反論できないよう。もしアヤコさんの手が汚れた何かがあったと主張しようものなら、すぐ嘘だと暴かれるから。
話を進めるために僕が口を動かしていく。
「じゃあ、何もないのに潔癖症のアヤコさんにウェットティッシュを持たしたってこと?」
理亜はもう一度、首を縦に振る。
「そうだな。だからこそ、火村が怪しいと思った。あの時、たまたまサンドウィッチを食べよう、犬を触っていたなんて事情があったからこそ、ウェットティッシュの存在理由について別に誰も気にしようとはしていなかった」
「でもなかったら……」
「ああ。なかったら、その時は何故アヤコさんが一人だけ火村さんからウェットティッシュを受け取っていたのか疑念を持つ者が現れるだろうな。そんな可能性があるのに、潔癖症を隠しているアヤコさんにみんなの前でウェットティッシュを渡そうとしていた。だから、私は、あっ、こいつやってるな、って思ったんだ」
火村さんの方はもう普通の反論では理亜の対応に追いつけないよう。ただ同じ言葉を繰り返し、足を後退させている。
「そんなの、ただの推測。ただの推測……ただの推測。できる人は他にもいる……知ってる人は他にもいるじゃない……あたしだけだなんて言えないはず……言えない、はず……」
だからもう証拠を提示するしかない状況だ。理亜の発言が空想だと言えないものを用意しなければ、だ。
理亜が告げる。
「じゃあ、見せてくれ。アンタのスマホのSNSを。そのアカウント名を見れば、分かるだろ?」
彼女はそこでスマートフォンを懐から出して、思い切り強めに出てきた。
「ざ、残念でしたね! 最後の最後でうっかりしてましたね! すみません。実はあたしSNSとっくに断ってるんですよ! もうアプリとしてもアンインストールしちゃって。まぁ、勉強の邪魔になるんで仕方なかったんですよ! ほら、ないでしょ! ないでしょ!」
慌てようで急いで消したことは察せられた。ただ、証明することができない。彼女に再度、SNSアプリをインストールさせてもパスワードが分からないと言われれば、それ以上追及できない。
あと一歩。
僕だったら諦めていたのだが。理亜は動いていた。彼女はじろっと火村さんのスマートフォンを見回してから余裕な表情で喋り出す。
「じゃあ、一つ情真もアヤコさんもスマホを出してくれ。今から、見せてやりたいものがある。後、アヤコさん、スマホをちょいと貸してくれないか?」
「や、やだなぁ。理亜さんでしたっけ? お、面白い冗談ですね」
理亜もニッコリ笑って、対抗する。
「ん? 冗談じゃないぞ。私は火村重を誹謗中傷の犯人として告発したんだ」
当然、今の流れでどう犯人になるのかが分からない。彼女はそのことを理亜に伝えようとする。
「い、今のは……! 今のはただアヤコ先輩が潔癖症だかって言ってただけじゃないですか!? 何であたしが犯人って言われなきゃいけないんですか!? 何で、そうなるんですかっ!? 意味が分かりませんよ!」
「潔癖症が関係しているとしたら?」
「そんな……へっ?」
突如として、火村さんの顔が歪な形と化した。目を大きく開いて、何かを思い出したかのよう。
理亜は何を知っているのか。スマートフォンを取り出し、誹謗中傷の内容を提示した。
「このアヤコさんに粘着しているアカウント、古戸少年によると、この誹謗中傷している奴は同じ街に住んでるって言ってたらしい」
「お、同じ街って言ってもあたしに繋がるって訳じゃないでしょ! な、なんか恐怖を与えるために嘘をついてたって可能性も」
「ああ……これだけだったらな。でも、これはどうだ? 『汚いものを取っ払って、綺麗で綺麗事だらけの世界で生きようとしているなんて、凄い図々しいね』は」
「こ、これが何なのよ!?」
火村さんは何だか分かっているようなイントネーションで焦って返したような気がする。これと潔癖症の何が関係するのか。ハッとして、考えがまとまっていく。
汚いものを取っ払って、との文章はもしかしてアヤコさんの潔癖症について、物語っているのではないだろうか。誰もアヤコさんの潔癖症について気付かなかったから、誹謗中傷の犯人に辿り着けなかったのだ。
だから理亜は最初にアヤコさんの潔癖症について暴いたのだ。彼女の意図がようやく読み込めた。
理解したと理亜に伝えるため、発言してみる。
「もしかして、アヤコさんの潔癖症を知ってた人が犯人?」
その声にいちはやく反応したのは、アヤコさんだった。
「そんな!? そういう意味なの!? 歌詞に誹謗中傷していたんじゃなくてっ!?」
口に手を抑えて、驚愕している。その理由を理亜が語っていく。
「アヤコさんはもう犯人について知っていたんだろ? なんたって、潔癖症を知ってる人は……そこにいる火村しかいないんだから」
「えっ? えっ? 何でですか!? 何であたしになるんですか!?」
アヤコさんは分かっているのだろう。それでも火村さんは知らぬふりを続けてきた。理亜の推理が当たっているとなると、潔癖症を知っている人だ。ただ何故、理亜は火村さんがアヤコさんのことを知っていると判断したのだろうか。
その疑問に理亜はお答えしてくれた。
「ピクニックの時だ。何で火村は持っていたんだろうな。ウェットティッシュを」
そこに僕が解答を入れる。
「だってご飯とか食べるために……あれ、でもその前に犬に触ってた芦峯さんが……」
ただその僕の考えた答えは途中でおかしくなってくる。火村さんがウェットティッシュを用意した理由が分からなくなってきた。
「私は知ってるぞ。アヤコさんにいち早く渡していたのを」
「ええと、僕が見たのは九人だったけど……アヤコさん受け取ったの見てないな」
「でも私は言ったぞ。あの時『十人分のDNA』がと」
「確かに言ってた。ふざけて言ってたけど、そっか。アヤコさんにも渡ってたんだ! でも、食事を提案する前なのにいきなり火村さんはウェットティッシュを手渡したの?」
理亜はこくりと頷いた。
「ああ、そういうことだ。渡したんだよ。アヤコさんが潔癖症だということを知っていた火村が、な」
今度は火村さんも反論できないよう。もしアヤコさんの手が汚れた何かがあったと主張しようものなら、すぐ嘘だと暴かれるから。
話を進めるために僕が口を動かしていく。
「じゃあ、何もないのに潔癖症のアヤコさんにウェットティッシュを持たしたってこと?」
理亜はもう一度、首を縦に振る。
「そうだな。だからこそ、火村が怪しいと思った。あの時、たまたまサンドウィッチを食べよう、犬を触っていたなんて事情があったからこそ、ウェットティッシュの存在理由について別に誰も気にしようとはしていなかった」
「でもなかったら……」
「ああ。なかったら、その時は何故アヤコさんが一人だけ火村さんからウェットティッシュを受け取っていたのか疑念を持つ者が現れるだろうな。そんな可能性があるのに、潔癖症を隠しているアヤコさんにみんなの前でウェットティッシュを渡そうとしていた。だから、私は、あっ、こいつやってるな、って思ったんだ」
火村さんの方はもう普通の反論では理亜の対応に追いつけないよう。ただ同じ言葉を繰り返し、足を後退させている。
「そんなの、ただの推測。ただの推測……ただの推測。できる人は他にもいる……知ってる人は他にもいるじゃない……あたしだけだなんて言えないはず……言えない、はず……」
だからもう証拠を提示するしかない状況だ。理亜の発言が空想だと言えないものを用意しなければ、だ。
理亜が告げる。
「じゃあ、見せてくれ。アンタのスマホのSNSを。そのアカウント名を見れば、分かるだろ?」
彼女はそこでスマートフォンを懐から出して、思い切り強めに出てきた。
「ざ、残念でしたね! 最後の最後でうっかりしてましたね! すみません。実はあたしSNSとっくに断ってるんですよ! もうアプリとしてもアンインストールしちゃって。まぁ、勉強の邪魔になるんで仕方なかったんですよ! ほら、ないでしょ! ないでしょ!」
慌てようで急いで消したことは察せられた。ただ、証明することができない。彼女に再度、SNSアプリをインストールさせてもパスワードが分からないと言われれば、それ以上追及できない。
あと一歩。
僕だったら諦めていたのだが。理亜は動いていた。彼女はじろっと火村さんのスマートフォンを見回してから余裕な表情で喋り出す。
「じゃあ、一つ情真もアヤコさんもスマホを出してくれ。今から、見せてやりたいものがある。後、アヤコさん、スマホをちょいと貸してくれないか?」
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