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第二節 女子高生VS超絶美少女AI
Ep.10 あの推理に赤ペンを
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結局、真実を知りたい僕達三人は理亜の指示に従うことにした。花壇の前に来ても、誹謗中傷の方が分かるようには思えない。アヤコさんの花壇だけ殺風景な状況で、それ以外は特筆することもない。
花壇に連れてこられたとなると、今理亜が解こうとしている謎は一つしかない。僕達が初めて、この校舎へ来た時起こしたアヤコさんの奇行だ。
彼女は何故に植木鉢を蹴り飛ばしたのか。腹痛を原因とアヤコさんは言っていたが、他の人達からしたらわざとやったようにしか見えなかったとのこと。
理亜は推理ショーを始めていく。
「さて、誹謗中傷をした犯人を見つけようじゃないか」
火村さんは当然不思議がる。
「いや、やっぱここで推理ショーって変じゃないですか? やるなら部屋に戻った方が」
理亜は彼女の言葉を否定した。
「いや、ここだからいいんだ。情真、この土を掘り起こしてみろ」
そして、とんでもないことを言う始末。「えっ、僕が汚れ役を!?」と反抗するものの、彼女は「やれ」と言い続ける。ここを担当しているアヤコさんは目をぱちくりさせたまま。止めはしないが、疑問は口から飛ばしていく。
「何で? 犯人でも埋まってるって訳じゃないでしょうし」
「いいから見てって。とんでもない小さい存在が犯人かもしれないぞ。まぁ、いなかったらその時はお留守だったってことで」
「何よ……それ」
僕の掘ろうとする意欲がどんどん失せていく。AIが犯人かと思いきや、虫が誹謗中傷をしていたと主張するつもりだろうか。
ただ、確かに理亜はこの前から言い続けていた。花壇にいる小さな黒幕がいるとか、いないとか。その答えが今回の事件に関係しているのなら、ともう一回やる気を取り戻した。
途端だった。地面から黄色い頭の虫が飛び出してきた。うにょうにょ動いて、それを見てしまった火村さんが悲鳴を上げた。待て、と思うももう遅い。
「い、いやぁあああああああああああああああ!」
完全に僕が原因で悲鳴を上げた状態と誤解される。予想通り、他の人達が「何だ何だ」と飛んできた。卑猥なことをしていたと推察されそうになった。理亜もまた、いじってくるのかと思いきや、走ってきた人に不躾な態度を取った。嘘までついて僕を庇おうとしたのだ。
「悪いが、ただ虫を見つけただけだ。この子の体を昇ってな。ほら、帰った帰った。でないと、その顔にそこの幼虫が飛んでくぞ」
火村さんは「そうなんですよー! 虫がぁああ!」と本気で叫んでくれたため、これ以上問題はなかった。
すぐに「何だ何だ虫か」とゴシップを期待した人達も消えていく。「まぁ、良かった」と言って帰っていった人はきっと純粋に少女を心配していた人達なのだろう。まずは理亜に感謝すべきだろうか。
「理亜、ありがとな。珍しいな。僕を守ってくれるなんて」
理亜は余裕そうな顔に戻っていく。
「いつもなら面白いことを期待して放っておいたけどな」
「おい……ってか、よくよく考えたら、理亜が原因だよな」
「まぁ、そう言うなって。情真のおかげで真実が見えたんだ。お手柄だぞ」
「えっ?」
僕の行動で手に入れたものと言えば、白い体をして黄色い頭を持った芋虫みたいな奴しかいない。それとある人物の発言が想起された。
『き、君、カブトムシとか好き?』
そう言えば、八木岡くんがこの花壇でカブトムシを人にあげようとしていた。つまるところ、ここでカブトムシの幼虫を飼っていた、と。
アヤコさんはそんな僕の「カブトムシの幼虫だ」との発言を聞いてから、理亜に疑問をぶつけていく。
「で、カブトムシの幼虫がいるから、どうしてそうなるの?」
そこで理亜の目が光る。何だか途轍もない真実が見える気配がして、僕自身の額に一筋の汗が流れ落ちていった。
彼女は今の発言を捉えた。
「カブトムシの幼虫と言ったな」
「えっ、それが何? カブトムシの幼虫でしょ?」
「こんなところにカブトムシの幼虫はいない。腐葉土の中、クヌギなどの木の下にいることが多い」
「じゃあ、どっか虫の店で買ってきたってこと?」
アヤコさんの一言が理亜の話を加速させていく。
「それもあり得ない!」
「何で!」
「だって、これカブトムシじゃないからな」
「まさか、クワガタとかって言うんじゃ……」
小さな黒幕の正体を理亜は口にする。
「カブトムシとはサイズが違う。コガネムシの幼虫だ。通称、ネキリムシだ。ネキリムシは頭が黄色いのが特徴で、カブトムシはもっと頭が茶色いんだ。まぁ、虫のことを知らない人がいきなりこれがカブトムシですと言われれば、間違えるかもな」
となると、違和感が出てくる。八木岡くんの嘘について、だ。これは僕が一番知っていることだから、自分が理亜に聞いてみるしかなかった。
「待って。じゃあ、何で虫が好きな八木岡くんが……これがカブトムシだなんて。慣れている人には見分けられるんだよな?」
「ああ。土いじりしている人間なら、すぐ分かることだ」
「じゃあ、何で嘘を……!」
「名前で気付かないか? ネキリ。こいつは根を貪り食う、ガーデニング愛好者にとっては嫌われ者だ。そして八木岡の虫好きな点から考えたら、誰にも秘密でこの花壇にせっせと育ててたんだ。で、そのいじってるシーンを情真や私に見られて焦ったんだろうな」
「そっか……もし、僕や理亜が虫嫌いとかだったら、嫌な目で見るだろうな……特にネキリムシなんていきなり言われたら」
「そっ、だから八木岡は咄嗟に隠して、誤魔化したんだ。学校の花壇なら処理されにくい。だから体で虫の体を見えないようにしながら、カブトムシと言ったんだ。私はちょびっと見せてもらったがな」
「だから頭の色を理亜は知ってたんだな。八木岡の嘘も。小さい存在がいるってことも。で、もしそれ僕が欲しいって言ってたら……」
「まぁ、わざと持ち帰れない状態を狙ってな。幾らカブトムシが好きでも、虫かごやらなにやらがないと持って帰れないだろうしな。もしかしたら準備するから待ってと言って、本物を持ってくるつもりだったかもだ」
あの時、自慢しているように思えた彼の様子。ただ内面は全く違っていた。僕や理亜から自分の育てている虫を庇おうと必死だったのだ。彼の心中を察しながら、おかしな点に気付いていた。
誹謗中傷とは関係ないとは思われるが、とんでもない真実が判明してしまった。
「アヤコさん。何でネキリムシがいることに関して全く知らなかったの? 何でナノカがスポーツドリンクが華を枯らしてる原因だって言うまで、花壇の真相に気付かなかったの?」
花壇に連れてこられたとなると、今理亜が解こうとしている謎は一つしかない。僕達が初めて、この校舎へ来た時起こしたアヤコさんの奇行だ。
彼女は何故に植木鉢を蹴り飛ばしたのか。腹痛を原因とアヤコさんは言っていたが、他の人達からしたらわざとやったようにしか見えなかったとのこと。
理亜は推理ショーを始めていく。
「さて、誹謗中傷をした犯人を見つけようじゃないか」
火村さんは当然不思議がる。
「いや、やっぱここで推理ショーって変じゃないですか? やるなら部屋に戻った方が」
理亜は彼女の言葉を否定した。
「いや、ここだからいいんだ。情真、この土を掘り起こしてみろ」
そして、とんでもないことを言う始末。「えっ、僕が汚れ役を!?」と反抗するものの、彼女は「やれ」と言い続ける。ここを担当しているアヤコさんは目をぱちくりさせたまま。止めはしないが、疑問は口から飛ばしていく。
「何で? 犯人でも埋まってるって訳じゃないでしょうし」
「いいから見てって。とんでもない小さい存在が犯人かもしれないぞ。まぁ、いなかったらその時はお留守だったってことで」
「何よ……それ」
僕の掘ろうとする意欲がどんどん失せていく。AIが犯人かと思いきや、虫が誹謗中傷をしていたと主張するつもりだろうか。
ただ、確かに理亜はこの前から言い続けていた。花壇にいる小さな黒幕がいるとか、いないとか。その答えが今回の事件に関係しているのなら、ともう一回やる気を取り戻した。
途端だった。地面から黄色い頭の虫が飛び出してきた。うにょうにょ動いて、それを見てしまった火村さんが悲鳴を上げた。待て、と思うももう遅い。
「い、いやぁあああああああああああああああ!」
完全に僕が原因で悲鳴を上げた状態と誤解される。予想通り、他の人達が「何だ何だ」と飛んできた。卑猥なことをしていたと推察されそうになった。理亜もまた、いじってくるのかと思いきや、走ってきた人に不躾な態度を取った。嘘までついて僕を庇おうとしたのだ。
「悪いが、ただ虫を見つけただけだ。この子の体を昇ってな。ほら、帰った帰った。でないと、その顔にそこの幼虫が飛んでくぞ」
火村さんは「そうなんですよー! 虫がぁああ!」と本気で叫んでくれたため、これ以上問題はなかった。
すぐに「何だ何だ虫か」とゴシップを期待した人達も消えていく。「まぁ、良かった」と言って帰っていった人はきっと純粋に少女を心配していた人達なのだろう。まずは理亜に感謝すべきだろうか。
「理亜、ありがとな。珍しいな。僕を守ってくれるなんて」
理亜は余裕そうな顔に戻っていく。
「いつもなら面白いことを期待して放っておいたけどな」
「おい……ってか、よくよく考えたら、理亜が原因だよな」
「まぁ、そう言うなって。情真のおかげで真実が見えたんだ。お手柄だぞ」
「えっ?」
僕の行動で手に入れたものと言えば、白い体をして黄色い頭を持った芋虫みたいな奴しかいない。それとある人物の発言が想起された。
『き、君、カブトムシとか好き?』
そう言えば、八木岡くんがこの花壇でカブトムシを人にあげようとしていた。つまるところ、ここでカブトムシの幼虫を飼っていた、と。
アヤコさんはそんな僕の「カブトムシの幼虫だ」との発言を聞いてから、理亜に疑問をぶつけていく。
「で、カブトムシの幼虫がいるから、どうしてそうなるの?」
そこで理亜の目が光る。何だか途轍もない真実が見える気配がして、僕自身の額に一筋の汗が流れ落ちていった。
彼女は今の発言を捉えた。
「カブトムシの幼虫と言ったな」
「えっ、それが何? カブトムシの幼虫でしょ?」
「こんなところにカブトムシの幼虫はいない。腐葉土の中、クヌギなどの木の下にいることが多い」
「じゃあ、どっか虫の店で買ってきたってこと?」
アヤコさんの一言が理亜の話を加速させていく。
「それもあり得ない!」
「何で!」
「だって、これカブトムシじゃないからな」
「まさか、クワガタとかって言うんじゃ……」
小さな黒幕の正体を理亜は口にする。
「カブトムシとはサイズが違う。コガネムシの幼虫だ。通称、ネキリムシだ。ネキリムシは頭が黄色いのが特徴で、カブトムシはもっと頭が茶色いんだ。まぁ、虫のことを知らない人がいきなりこれがカブトムシですと言われれば、間違えるかもな」
となると、違和感が出てくる。八木岡くんの嘘について、だ。これは僕が一番知っていることだから、自分が理亜に聞いてみるしかなかった。
「待って。じゃあ、何で虫が好きな八木岡くんが……これがカブトムシだなんて。慣れている人には見分けられるんだよな?」
「ああ。土いじりしている人間なら、すぐ分かることだ」
「じゃあ、何で嘘を……!」
「名前で気付かないか? ネキリ。こいつは根を貪り食う、ガーデニング愛好者にとっては嫌われ者だ。そして八木岡の虫好きな点から考えたら、誰にも秘密でこの花壇にせっせと育ててたんだ。で、そのいじってるシーンを情真や私に見られて焦ったんだろうな」
「そっか……もし、僕や理亜が虫嫌いとかだったら、嫌な目で見るだろうな……特にネキリムシなんていきなり言われたら」
「そっ、だから八木岡は咄嗟に隠して、誤魔化したんだ。学校の花壇なら処理されにくい。だから体で虫の体を見えないようにしながら、カブトムシと言ったんだ。私はちょびっと見せてもらったがな」
「だから頭の色を理亜は知ってたんだな。八木岡の嘘も。小さい存在がいるってことも。で、もしそれ僕が欲しいって言ってたら……」
「まぁ、わざと持ち帰れない状態を狙ってな。幾らカブトムシが好きでも、虫かごやらなにやらがないと持って帰れないだろうしな。もしかしたら準備するから待ってと言って、本物を持ってくるつもりだったかもだ」
あの時、自慢しているように思えた彼の様子。ただ内面は全く違っていた。僕や理亜から自分の育てている虫を庇おうと必死だったのだ。彼の心中を察しながら、おかしな点に気付いていた。
誹謗中傷とは関係ないとは思われるが、とんでもない真実が判明してしまった。
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