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第二節 女子高生VS超絶美少女AI
Ep.7 各々の隠し事
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ナノカが一旦、フリーズした。それはもう壊れたゲームを彷彿させるまでに。かくいう僕の心も爆発しそうな程に驚いている。
束の間の空白。その後にナノカの発言が復活する。
「えっ!? 無理ってどうしてそんなこと!」
「落ち着け。この中にいるんだとしたら、無理だろう?」
「はっ……? えっ? いるの!? いんの!? えっ!? 早くない!? 今、ただピクニックしただけでしょ!?」
理亜の方はヘラヘラとしているから、本当のことを言っているのかも分かりづらい。一回は納得しそうになったが、ナノカにふざけた発言を責められたくないための言葉かとも思えてしまう。
ナノカの疑問に対し、理亜は言い訳がましいものも用意していた。
「まぁ、と言ってもまだ仮定の話だ。推理を話してそれが嘘だった場合、名誉を汚してしまうことになる。できれば、私の考えていることが正しいとの証明がしたいんだ」
絶対嘘だと感じた瞬間だった。彼女は人の名誉など気にしていないだろう。彼女のせいで何度僕も面目が丸つぶれしたことか。数日前の官能小説の件に関しては役に立ったから良かったものの、違う場面で何度も彼女に引っ掛けられたことがある。彼女がふざけてハニートラップもどきみたいなものをしたせいで、僕が欲情の鬼なんて不名誉な称号を付けられそうになったこともあるのだ。
ただ、ナノカは理亜のハキハキとした意見に惑わされたのか。
「ワタシは何を手伝えばいいの?」
「ああ、じゃあ、こっちは犯人を証明するものを考えている。だから、情真と二人で八木岡に一つ聞いてもらいたいことがある」
「了解! じゃあ、情真くん行くわよ!」
「ちょっと待て、まだ何も言ってないんだが」
「あっ、ごめん」
理亜の傀儡、つまるところ操り人形となったナノカが耳打ちをされていた。それから強引に僕を連れていく。理亜の責任逃れに巻き込まれている気しかしないのだが。
結局、僕とナノカは一人外れて茂みの方をしゃがんで見ている八木岡くんに直行。ナノカが先に、自然に話し掛ける。
「何か見てるの? 何か面白い虫でもいた?」
すると彼はすぐ反応してくれた。本当に好奇心の塊であろう彼が語るは、虫好きには失礼かもしれないが、少々グロテスクな生き物のことだった。
「まぁ、ゲジゲジを触ろうとしてたんだよ」
ナノカもムカデ系統に関してはあまり直視したくないようで。
「そ、そうなの……! でも危なくない?」
「……まただ」
「ん?」
「いや、何でもないよ。何で、危ないの?」
一瞬、何か無邪気な中に変な姿が見えたような。何事もなかったかの如く、平然とした顔でナノカに向き合った。
ナノカの方は「そりゃあね」と僕の顔を見つつ、返答をした。
「ゲジゲジは毒はないよ。ゴキブリを食べてくれる益虫でもあるし……まぁ、ゴキブリもあんま食べては欲しくないけど」
「ゴキブリも好きなんだ……まぁ、でも、なるほどね。凄いわね。昆虫のことについて詳しいじゃない」
あれ、今ナノカの発言に少しだけ違和感を覚えた。何かが。何かが違っているような。ある過去の記憶と共鳴しそうになったものの、八木岡くんの声で我に返った。
「で、君は何の虫が好きなの?」
「えっ!?」
ナノカは「話の流れを聞いてなかったの?」と問う。どうやら、虫の話になっていたみたいだ。
「そこの子はやっぱ蝶々とか、蛾とかって言ってたけど、どう?」
その後にナノカは「羽を動かしてる子って応援したくなるのよね。頑張ってる。まぁ、他の子達も生きるのに頑張ってるんだけどね。特にこの子達がピンと来たかな」とのこと。
なかなか思い付かない。綺麗な虫は山程いるけれど、僕が好きになってもいいものか。いや、そもそも、僕はあまり綺麗な虫にピンと来ない。人間に愛される者と僕は少々違う。
だからと言って嫌われ者になりたい訳ではないのだが。
共感となる意味では、だ。
「アリかな……普段目のつかないところにはいるってところがちょっと僕に似てるかもって思ってさ」
あれ……でも、アリってナノカの言う努力の虫ではなかったか。言ってから、僕は自分で努力をすることに憧れているのかと思い知らされそうになった。同時に誰に嫌われてもナノカには好きになってもらいたいと思っているのかとも知る。
虫に対し、多少雑談をしたところでナノカが話を変えた。たぶん、ナノカは相手の心に寄り添ってから親密に話せるような状況を作ったのだろう。クレーマー、それはある意味、コミュニケーションの達人なのかもしれない。
「あっ、そうそう……さっきの黒髪の女の子覚えてる? 理亜ちゃんから聞いたんだけどさ、土いじりは好きなの?」
「うん」
「じゃあ、園芸部員なの?」
「そうだよ。ぼくが自分で立候補したんだ。もう一人のアヤコちゃんになるまでは、なかなか決まらなかったんだけどね」
「へぇ。一人で勝手に土を掘ったりして良かったの……? カブトムシを掘ってたみたいじゃない」
「あ……あれね。いいんだよ。別に、問題はないでしょ。ほとんどぼくが遊んでいるみたいなものだし……!」
ナノカは、はぁ、と少し息を吐いた後、もう一つの質問をする。
「枯れてるってことは気にしてなかったの? もう一人の園芸部員である、彼女が凄い気にしてたみたいだけど」
「……あ……いや、いや……ちょっと……それはね……うん、まぁ、ごめんねって言っておいて」
「自分で謝らないの?」
「うん、あんまり話したことないからさ……今回確かに来たけど……そこはまぁ……ね。興味があったけどさ……そこまでまだ仲がいいって訳じゃあ……」
何か隠している、と確信はした。ここまで理亜は見ていたのか。ふと彼女を見ると、遠くからふっと笑っているようにも見える。ここから彼女までの距離が近くないがために、本当にそんな顔をしているのかどうかは分からなかった。
ナノカは謝罪のことについても追及しようとしていたみたいだが、「ああ、時間だ! ごめんよー!」と言って逃げてしまった。今回が初対面と言えようナノカにも謝ったのにどうして、アヤコさんには言えないのか。その点が気になるも、真相は闇の中。
「何か、あんま分かんなかったわね……」
ナノカが立ち尽くしている。僕も右に同じ。あまりの個性と勢いに自身のキャラクターまでもが飲み込まれそうになって、訳が分からなくなっていた。
気にすること自体、意味のないことなのか。
この情報を持ち帰った際、理亜は「そうかそうか。ありがとう。真実はまた一歩近づいた」と笑い続けているだけだった。それが犯行がバレて追い詰められ、やけになった真犯人に見えたのは僕だけであろうか。本当に謎なんて、解けているのか。
疑念が渦巻く中、理亜の推理ショーなども開かれることはなく、二日間の時が流れていった。
束の間の空白。その後にナノカの発言が復活する。
「えっ!? 無理ってどうしてそんなこと!」
「落ち着け。この中にいるんだとしたら、無理だろう?」
「はっ……? えっ? いるの!? いんの!? えっ!? 早くない!? 今、ただピクニックしただけでしょ!?」
理亜の方はヘラヘラとしているから、本当のことを言っているのかも分かりづらい。一回は納得しそうになったが、ナノカにふざけた発言を責められたくないための言葉かとも思えてしまう。
ナノカの疑問に対し、理亜は言い訳がましいものも用意していた。
「まぁ、と言ってもまだ仮定の話だ。推理を話してそれが嘘だった場合、名誉を汚してしまうことになる。できれば、私の考えていることが正しいとの証明がしたいんだ」
絶対嘘だと感じた瞬間だった。彼女は人の名誉など気にしていないだろう。彼女のせいで何度僕も面目が丸つぶれしたことか。数日前の官能小説の件に関しては役に立ったから良かったものの、違う場面で何度も彼女に引っ掛けられたことがある。彼女がふざけてハニートラップもどきみたいなものをしたせいで、僕が欲情の鬼なんて不名誉な称号を付けられそうになったこともあるのだ。
ただ、ナノカは理亜のハキハキとした意見に惑わされたのか。
「ワタシは何を手伝えばいいの?」
「ああ、じゃあ、こっちは犯人を証明するものを考えている。だから、情真と二人で八木岡に一つ聞いてもらいたいことがある」
「了解! じゃあ、情真くん行くわよ!」
「ちょっと待て、まだ何も言ってないんだが」
「あっ、ごめん」
理亜の傀儡、つまるところ操り人形となったナノカが耳打ちをされていた。それから強引に僕を連れていく。理亜の責任逃れに巻き込まれている気しかしないのだが。
結局、僕とナノカは一人外れて茂みの方をしゃがんで見ている八木岡くんに直行。ナノカが先に、自然に話し掛ける。
「何か見てるの? 何か面白い虫でもいた?」
すると彼はすぐ反応してくれた。本当に好奇心の塊であろう彼が語るは、虫好きには失礼かもしれないが、少々グロテスクな生き物のことだった。
「まぁ、ゲジゲジを触ろうとしてたんだよ」
ナノカもムカデ系統に関してはあまり直視したくないようで。
「そ、そうなの……! でも危なくない?」
「……まただ」
「ん?」
「いや、何でもないよ。何で、危ないの?」
一瞬、何か無邪気な中に変な姿が見えたような。何事もなかったかの如く、平然とした顔でナノカに向き合った。
ナノカの方は「そりゃあね」と僕の顔を見つつ、返答をした。
「ゲジゲジは毒はないよ。ゴキブリを食べてくれる益虫でもあるし……まぁ、ゴキブリもあんま食べては欲しくないけど」
「ゴキブリも好きなんだ……まぁ、でも、なるほどね。凄いわね。昆虫のことについて詳しいじゃない」
あれ、今ナノカの発言に少しだけ違和感を覚えた。何かが。何かが違っているような。ある過去の記憶と共鳴しそうになったものの、八木岡くんの声で我に返った。
「で、君は何の虫が好きなの?」
「えっ!?」
ナノカは「話の流れを聞いてなかったの?」と問う。どうやら、虫の話になっていたみたいだ。
「そこの子はやっぱ蝶々とか、蛾とかって言ってたけど、どう?」
その後にナノカは「羽を動かしてる子って応援したくなるのよね。頑張ってる。まぁ、他の子達も生きるのに頑張ってるんだけどね。特にこの子達がピンと来たかな」とのこと。
なかなか思い付かない。綺麗な虫は山程いるけれど、僕が好きになってもいいものか。いや、そもそも、僕はあまり綺麗な虫にピンと来ない。人間に愛される者と僕は少々違う。
だからと言って嫌われ者になりたい訳ではないのだが。
共感となる意味では、だ。
「アリかな……普段目のつかないところにはいるってところがちょっと僕に似てるかもって思ってさ」
あれ……でも、アリってナノカの言う努力の虫ではなかったか。言ってから、僕は自分で努力をすることに憧れているのかと思い知らされそうになった。同時に誰に嫌われてもナノカには好きになってもらいたいと思っているのかとも知る。
虫に対し、多少雑談をしたところでナノカが話を変えた。たぶん、ナノカは相手の心に寄り添ってから親密に話せるような状況を作ったのだろう。クレーマー、それはある意味、コミュニケーションの達人なのかもしれない。
「あっ、そうそう……さっきの黒髪の女の子覚えてる? 理亜ちゃんから聞いたんだけどさ、土いじりは好きなの?」
「うん」
「じゃあ、園芸部員なの?」
「そうだよ。ぼくが自分で立候補したんだ。もう一人のアヤコちゃんになるまでは、なかなか決まらなかったんだけどね」
「へぇ。一人で勝手に土を掘ったりして良かったの……? カブトムシを掘ってたみたいじゃない」
「あ……あれね。いいんだよ。別に、問題はないでしょ。ほとんどぼくが遊んでいるみたいなものだし……!」
ナノカは、はぁ、と少し息を吐いた後、もう一つの質問をする。
「枯れてるってことは気にしてなかったの? もう一人の園芸部員である、彼女が凄い気にしてたみたいだけど」
「……あ……いや、いや……ちょっと……それはね……うん、まぁ、ごめんねって言っておいて」
「自分で謝らないの?」
「うん、あんまり話したことないからさ……今回確かに来たけど……そこはまぁ……ね。興味があったけどさ……そこまでまだ仲がいいって訳じゃあ……」
何か隠している、と確信はした。ここまで理亜は見ていたのか。ふと彼女を見ると、遠くからふっと笑っているようにも見える。ここから彼女までの距離が近くないがために、本当にそんな顔をしているのかどうかは分からなかった。
ナノカは謝罪のことについても追及しようとしていたみたいだが、「ああ、時間だ! ごめんよー!」と言って逃げてしまった。今回が初対面と言えようナノカにも謝ったのにどうして、アヤコさんには言えないのか。その点が気になるも、真相は闇の中。
「何か、あんま分かんなかったわね……」
ナノカが立ち尽くしている。僕も右に同じ。あまりの個性と勢いに自身のキャラクターまでもが飲み込まれそうになって、訳が分からなくなっていた。
気にすること自体、意味のないことなのか。
この情報を持ち帰った際、理亜は「そうかそうか。ありがとう。真実はまた一歩近づいた」と笑い続けているだけだった。それが犯行がバレて追い詰められ、やけになった真犯人に見えたのは僕だけであろうか。本当に謎なんて、解けているのか。
疑念が渦巻く中、理亜の推理ショーなども開かれることはなく、二日間の時が流れていった。
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