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第二節 女子高生VS超絶美少女AI
Ep.2 人工知能
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ナノカをいちいちイライラさせるのが上手な人だ。頭が痛い。取り敢えず、ナノカの怒りを察してやれとスマートフォンを鞄の中に隠すよう、告げた。
「その話、先生が見るかもしれない放送室でやるよりも近くの公園でやろ。それでいいよな。何か必要な話みたいだし」
「ああ……了解」
話したくて話したくてうずうずしていた理亜には仕方ないが、僕はテキパキと動いていく。昼休みに垂れ流す音楽を決めるという仕事は三秒で終わった。
ナノカを待たせる訳にはいかないとの焦りは理亜の心の奥底にもあったのだろう。鍵を返すのも実にスマート。
すぐに近くの公園までやってきた。
理亜は早速鉄棒でくるくる回っている。
僕とナノカは顔を見合わせてぼやくことしかできない。
「理亜、完全に来た理由忘れちゃってない?」
「童心に戻っちゃったわね」
ナノカも同じく何故かブランコに乗っていた。
「な、ナノカ……?」
「まぁ、ちょっと位、スッキリさせてよ……ほらほら隣に! どっちが高くまで行けるか、競争よ! あっ、って言ってもちゃんと鎖を握って落ちないようにね! 危ないことはしない!」
「はいはい!」
案外間抜けな行動に見えるが、実は重要なことだった。動くことによって、はっちゃけることによって、体の不安やストレスが少しずつ抜けていく。
今やるべきことに関しても考える余裕が生まれてきた。
更にポニーテールがブランコと風に揺られて、そよそよ宙を泳いでいる姿に心が洗われた。
僕達は「夢を追う会」を手伝うべき存在。前回のように慌てて心を失くしていては、サークルメンバーも焦ってしまう。こちらが余裕を作らなければ。
それにしても、遊びすぎる気もするが。
ブランコの勢いがストップしたところで理亜がスマートフォン片手にやってきた。
「で、二人共、見てもらってもいいか?」
何々と僕とナノカが彼女のスマートフォンに提示されたものを見つめていく。それはアヤコさんのSNSであった。
ナノカがポツリ呟いてみせる。
「へぇ、こんなのあったんだ」
理亜はナノカが話した点について優しい感じで疑問を入れた。
「ん? ナノカ達はこっちの存在は知らなかったのか?」
「ええ。SNSはやってなかったから。そういや、古戸くん達が出逢ったのはSNSって言ってたわよね」
「そうみたいだな。まぁ、見てなかった方がナノカ達にとっては吉だったのかもな」
「何がいいのよ? 一体、何を見せたいって言うの?」
すぐさま自分のスマートフォンを取り出して、理亜と同じ画面に移行する。ナノカの方も同じみたいだ。
一見、何の違和感もない。自分は有名人のSNSだとか見たり、キャンペーンに参加したりするからSNSの基本位は分かる。音楽を作る人として活動するプロフィールに関しても全く変なことはない。
ピンと来たのは、二つのコメントだ。アヤコさんの投稿に吹き出しのマークに二の数字が出ている。
読むか。
何だか嫌な予感がするけれども、画面をポチッていくしかない。
目に映ったのは、不思議な言葉だった。
『歌作るの最近雑になってない? ガサツな感じがするな』
『汚いものを取っ払って、綺麗で綺麗事だらけの世界で生きようとしているなんて、凄い図々しいね』
二つの残酷な言葉があった。何だか胸がキュウッと鳴っていた。ナノカの方は砂ぼこりが立つ程に地面を蹴っている。そして怒りを露わにしていた。
「誰よ……! あの子達にこんな言葉を振り撒いてるのって誰よっ!? 理由が何であろうと誹謗中傷なんて絶対許せない……!」
彼女が表現した「誹謗中傷」。確かにその通りか。作品に関しての感想だけで話すのならば、それはまだ批評だったのかもしれない。だけれども、途中から人格否定なんかも入っている。それはもう傷付けるために存在した、許容することのできないコメントだ。
やれることと言えば、SNS内で通報することか。
早速通報しようとして、一つのアカウントに関しての名前を見た。「綺麗事」だとか言っている方のアカウント名は「人間の夢を破壊するAI」だとか、ふざけたものだった。
AI、だと?
画面を僕も睨み付けている間に理亜が口を開く。
「AIなんだよな……。とうとう、美少女AIか何かが人のふりをして誹謗中傷でも始めたのか? 心の痛みもないから、罪悪感もない。ネットの中で悪口を学べる限り、延々と誹謗中傷を続ける」
ナノカは唇を震わせながら、反抗した。
「そ、そんな訳ないでしょ!? これは、人間でしょ? 人間がやったことよ! 技術の進歩がって言ったって、まさかそこまで……!」
「ふんっ、手に持っているその携帯機器だって、数十年前まではSFの物語でしかなかったんだ。ついに人間達は辿り着いたんだよ」
「じゃあ、理亜ちゃんは本当にAIの仕業だって言うの……?」
「いや、ただの冗談だ。ただこういう嫉妬とかに塗れた人間の行動はAIよりも質が悪いとは言っておこうか。このアカウントを通報しただけでは、すぐに蘇ってくることが手に取るように分かる」
「……どうすれば、いいっての……! どうすれば……!」
ナノカがどうにもできなくて悔しがる様子が本当に心地悪かった。何とかできないものか。
今の誹謗中傷がアヤコさんに届いていたとしたら。
古戸くんの言っていたことにも説明がつく。最近笑顔が無くなってきたとの相談は、本当は花壇のことではなかったのだ。誹謗中傷をされて、気が滅入っていたからなのだ。
だからと言って、何故鉢植えを蹴り飛ばすかに至るまでの理由は分からない。単なるストレス発散だとしたら、あのような面倒な芝居などしなくても良かろう。
結局はここで何を話していたとしても画面の向こうには届かない。匿名の恐怖が今も尚、アヤコさんを襲っているかも、と言うことだ。
今もまたAIと名乗るアカウントは投稿を続けている。もう一つのアカウントは他のアイドルにも何か文句を言ったり、くだらないことを呟いたりしているみたいだが。AIの方はただただアヤコさんのアカウントに粘着している感じだ。気味が悪くて、仕方がない。
もし、本当に理亜の言うようなAIだとしたら、どう戦えばいいのか。
分からないけれども、今は守らねばならない。
夢を。今まで大嫌いだった夢という存在を、現実に昇華させるためにも。
「その話、先生が見るかもしれない放送室でやるよりも近くの公園でやろ。それでいいよな。何か必要な話みたいだし」
「ああ……了解」
話したくて話したくてうずうずしていた理亜には仕方ないが、僕はテキパキと動いていく。昼休みに垂れ流す音楽を決めるという仕事は三秒で終わった。
ナノカを待たせる訳にはいかないとの焦りは理亜の心の奥底にもあったのだろう。鍵を返すのも実にスマート。
すぐに近くの公園までやってきた。
理亜は早速鉄棒でくるくる回っている。
僕とナノカは顔を見合わせてぼやくことしかできない。
「理亜、完全に来た理由忘れちゃってない?」
「童心に戻っちゃったわね」
ナノカも同じく何故かブランコに乗っていた。
「な、ナノカ……?」
「まぁ、ちょっと位、スッキリさせてよ……ほらほら隣に! どっちが高くまで行けるか、競争よ! あっ、って言ってもちゃんと鎖を握って落ちないようにね! 危ないことはしない!」
「はいはい!」
案外間抜けな行動に見えるが、実は重要なことだった。動くことによって、はっちゃけることによって、体の不安やストレスが少しずつ抜けていく。
今やるべきことに関しても考える余裕が生まれてきた。
更にポニーテールがブランコと風に揺られて、そよそよ宙を泳いでいる姿に心が洗われた。
僕達は「夢を追う会」を手伝うべき存在。前回のように慌てて心を失くしていては、サークルメンバーも焦ってしまう。こちらが余裕を作らなければ。
それにしても、遊びすぎる気もするが。
ブランコの勢いがストップしたところで理亜がスマートフォン片手にやってきた。
「で、二人共、見てもらってもいいか?」
何々と僕とナノカが彼女のスマートフォンに提示されたものを見つめていく。それはアヤコさんのSNSであった。
ナノカがポツリ呟いてみせる。
「へぇ、こんなのあったんだ」
理亜はナノカが話した点について優しい感じで疑問を入れた。
「ん? ナノカ達はこっちの存在は知らなかったのか?」
「ええ。SNSはやってなかったから。そういや、古戸くん達が出逢ったのはSNSって言ってたわよね」
「そうみたいだな。まぁ、見てなかった方がナノカ達にとっては吉だったのかもな」
「何がいいのよ? 一体、何を見せたいって言うの?」
すぐさま自分のスマートフォンを取り出して、理亜と同じ画面に移行する。ナノカの方も同じみたいだ。
一見、何の違和感もない。自分は有名人のSNSだとか見たり、キャンペーンに参加したりするからSNSの基本位は分かる。音楽を作る人として活動するプロフィールに関しても全く変なことはない。
ピンと来たのは、二つのコメントだ。アヤコさんの投稿に吹き出しのマークに二の数字が出ている。
読むか。
何だか嫌な予感がするけれども、画面をポチッていくしかない。
目に映ったのは、不思議な言葉だった。
『歌作るの最近雑になってない? ガサツな感じがするな』
『汚いものを取っ払って、綺麗で綺麗事だらけの世界で生きようとしているなんて、凄い図々しいね』
二つの残酷な言葉があった。何だか胸がキュウッと鳴っていた。ナノカの方は砂ぼこりが立つ程に地面を蹴っている。そして怒りを露わにしていた。
「誰よ……! あの子達にこんな言葉を振り撒いてるのって誰よっ!? 理由が何であろうと誹謗中傷なんて絶対許せない……!」
彼女が表現した「誹謗中傷」。確かにその通りか。作品に関しての感想だけで話すのならば、それはまだ批評だったのかもしれない。だけれども、途中から人格否定なんかも入っている。それはもう傷付けるために存在した、許容することのできないコメントだ。
やれることと言えば、SNS内で通報することか。
早速通報しようとして、一つのアカウントに関しての名前を見た。「綺麗事」だとか言っている方のアカウント名は「人間の夢を破壊するAI」だとか、ふざけたものだった。
AI、だと?
画面を僕も睨み付けている間に理亜が口を開く。
「AIなんだよな……。とうとう、美少女AIか何かが人のふりをして誹謗中傷でも始めたのか? 心の痛みもないから、罪悪感もない。ネットの中で悪口を学べる限り、延々と誹謗中傷を続ける」
ナノカは唇を震わせながら、反抗した。
「そ、そんな訳ないでしょ!? これは、人間でしょ? 人間がやったことよ! 技術の進歩がって言ったって、まさかそこまで……!」
「ふんっ、手に持っているその携帯機器だって、数十年前まではSFの物語でしかなかったんだ。ついに人間達は辿り着いたんだよ」
「じゃあ、理亜ちゃんは本当にAIの仕業だって言うの……?」
「いや、ただの冗談だ。ただこういう嫉妬とかに塗れた人間の行動はAIよりも質が悪いとは言っておこうか。このアカウントを通報しただけでは、すぐに蘇ってくることが手に取るように分かる」
「……どうすれば、いいっての……! どうすれば……!」
ナノカがどうにもできなくて悔しがる様子が本当に心地悪かった。何とかできないものか。
今の誹謗中傷がアヤコさんに届いていたとしたら。
古戸くんの言っていたことにも説明がつく。最近笑顔が無くなってきたとの相談は、本当は花壇のことではなかったのだ。誹謗中傷をされて、気が滅入っていたからなのだ。
だからと言って、何故鉢植えを蹴り飛ばすかに至るまでの理由は分からない。単なるストレス発散だとしたら、あのような面倒な芝居などしなくても良かろう。
結局はここで何を話していたとしても画面の向こうには届かない。匿名の恐怖が今も尚、アヤコさんを襲っているかも、と言うことだ。
今もまたAIと名乗るアカウントは投稿を続けている。もう一つのアカウントは他のアイドルにも何か文句を言ったり、くだらないことを呟いたりしているみたいだが。AIの方はただただアヤコさんのアカウントに粘着している感じだ。気味が悪くて、仕方がない。
もし、本当に理亜の言うようなAIだとしたら、どう戦えばいいのか。
分からないけれども、今は守らねばならない。
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