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第二節 女子高生VS超絶美少女AI
Ep.1 放送室にいる悪魔
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あの後は体が硬直してどうしようもなかった。信じていた人がおかしなことになって動揺し、逃げたくなる気持ちで心が一杯だ。ナノカには申し訳ないが、誤解を解く説明と共に「ちょっと疲れちゃったし、雨が降りそうだし。傘持ってないから、先帰るね」とのメールを送って帰宅させてもらう。
衝撃的な事実を知ってしまった日の夜は眠気が全く襲ってこなかった。不安を拭うためにスマートフォンでインターネットサーフィンしたり、ゲームをプレイしたり。
ただ途中で更にとんでもない事態を思い出してしまい、ゲームすら手に付かなくなった。その後、何とか気絶するように眠れたから睡眠不足はなかったのだけれども。
次の日の授業ですらも覚束ない。花の金曜日であると呼ばれているはずの華やかな世界が今日は酷く恐ろしい。ブルブル震えているからか、何回も物理の女性教師から「そこで震えている露雪くん、着信が来ちゃったのかな? 誰からかな?」といじられていた。その上で休み時間に同じクラスの男子数名から「おっ、ナノカから恋の着信か?」などとからかわれた。後でアイツら、絶対泣かす。
そんな軽い悪意を覚えていなければ、気は平静では保ていていなかったのかもしれない。
放課後がやってくる。
そして、あの悪魔の元へと僕は足を進めねばならなくなってくる。
行くしかない。あまり行きたくないし、自分一人で恐ろしい目にも遭いたくなかった。それだけ聞くと、ナノカを盾に逃げようとしている卑怯者と非難されるであろう。
ただナノカを連れて行く理由は、昨日のことについて悪魔の元で共に話し合いたいから、だ。同じ「夢を追う会」を支えるものとして同じ場についてもらいたかった。僕が声を掛けた時。
「ねぇ、ナノカ、今から予定とかある? サークルのことで相談したいことがあるんだけど?」
「うん、いいわよ? でもちょっと待って。風紀委員の方でちょっと仕事があるから……今日は放送部の活動でしょ? じゃあ、放送室で待っててくれる?」
「あっ、うん」
「すぐ行くからね……で」
「何?」
彼女はポニーテールと一緒に顔をこちらへと近づけてくる。
「昨日は大丈夫だった? ってか、今日の方が凄く疲れてるって感じがするわよ? 一晩中ゲームとかやってたって訳?」
「いや……ちゃんと寝たよ」
「そう? それなら、良かったけど」
確かに今、僕はとんでもなくやつれた顔をしていただろう。何故だろう。別にナノカを身代わりとかにするつもりはなかったのだけれども。ナノカがすぐに来てくれなかったことに対して、元々だだ下がりのテンションが急激に落ちていくのを感じていた。
そのまま悪魔の元へと直行。
今は彼女の意見にも縋りたい。でも、あれを言われるのがとても恐ろしかった。僕の考え通り、黒髪の悪魔は放送室を開けた瞬間に質問をぶつけてきた。
「おお、情真? で、推理ショーはいつやるんだ? 場所はあっちでやるのか?」
うん、とっくにもう終わってるんだよ。昨日の放課後に僕が全てやってしまった。何だか気まずい雰囲気で応対する。
「そ、そのことね……昨日の夜に思い出したよ」
「で、どうなんだ? どう話すんだ?」
何だか非常にワクワクしている。大人っぽい感じもする悪魔が今日は何だか子供にも見える。ただ言わねばならない。
相談をすると同時にそのことも話さねばならないのだから。
「ご、ごめんよ……理亜。昨日、終わったよ」
「はっ?」
「犯人は終わって一旦はめでたしめでたしって感じに」
「……もう一回。もう一回。そうだ。今回は情真が犯行をしろ。そしたら私が謎を解いてやるから」
何言ってんだ。
そんなことがバレた暁にはナノカから大目玉を喰らう。昨日もかなり大変だったのに更にその上を行くような悪事なんてとんでもない。
「断る……って言うか、謎を解きたいんだよな?」
「ああ。それとも他に面白そうな話を提供してくれるか?」
「まぁ、難解な謎であるこたぁ、間違いないな。同じ話を二回するのも面倒だから、ナノカが来るのを待ってくれ」
「ナノカってことはまたあの会による話か?」
「よく分かったね」
どうやら今回の謎で彼女は手を打ってくれるらしい。椅子に座って、一安心していいのか、良くないのか考えると共に、ナノカの登場を待つ。
「お待たせ! ごめんごめん! で、何々?」
理亜が隣の椅子を素早く開けて、ナノカが着席。そこから僕は昨日、聞いてしまった話をナノカと理亜に告げていく。理亜の方はやけにふふんと笑っているような感じだ。いや、普段のことだ。何を話しても薄ら笑い。問題はナノカの方。信じられないと叫ぶかのように口を開けて、顔を真っ青にしていた。
「えっ……何? 嘘でしょ? えっ、何でそんなことをする必要があるのよっ!? 今度こそ、意味が分からないわよ!」
「だよね……」
僕が同意する中、理亜だけはやけに落ち着いている。
「ふぅん、そういうことか。あの女子はそんなことを……まぁ、やってもおかしくはないかな」
彼女の分まで僕達が衝撃を受けた。ナノカの方は勢いよく机を叩く位だ。
「ちょっと! やってもおかしくないって! 何よ!? どういうこと!?」
僕もそう言われることに関しては立腹したい気分だ。夢のことについて頑張っている彼女がそんな馬鹿なことを意図的にやるとは思いたくない。証言者が全員共謀して嘘を付いていると思いたい位だ。動機なら嫉妬だとか色々とある。そんな奴等がいる現実も今は否定したいのだが。
ただ、今は理亜の口を塞ぐことはできない。
ナノカは理亜の方へ噛みつきそうな威勢を見せていたから、すぐに僕は動いた。
「ナノカ、理亜も何か考えがあるんだよな?」
「何よ! 情真くんも理亜ちゃんを庇うの!?」
「庇うつもりはないし、そもそも今の話も現実すらも信じたくない。当然、理亜のふざけた発言全部もだ!」
理亜が「おい」とツッコミを入れるが、今は聞いてる暇はない。ナノカに今の気持ちをぶつけなくては。
「でも、僕が理亜に今回相談をしたのは……彼女も何か気付くことがあると思ったからなんだよ。だって昨日、謎を解いたのも理亜のおかげがあったからさ。理亜が今言ったことは、確かに失礼極まりないけど……何か、考えがあるんだと思う。きっと、夢を馬鹿にするつもりも、ないとは思う」
彼女は彼女で夢を描いていると思う。偶然かは分からないけれど、昨日も理亜の官能小説に助けられた。あれが半端なものだったら、たぶん古戸くんは読むのをやめていた。集中できたのは理亜のおかげだ。
たぶん、理亜の描きたいという思いが本物だったからではないか。作家になるとの夢が。
だから、理亜が夢を貶すような人ではないと知っている。
ナノカもこちらの思いが伝わったのか、一旦落ち着いてくれた。そして理亜の方を見る。
「そうなの? 情真くんの言ってる通りなの?」
「まぁな。それよりもこっちもちょっと気になることがあってな……今はそっちの話をするより、こっちの謎を一緒に解いてみないか?」
すると理亜はナノカに怒られること覚悟で彼女自身のスマートフォンを取り出した。とっても綺麗な澄まし顔で。
衝撃的な事実を知ってしまった日の夜は眠気が全く襲ってこなかった。不安を拭うためにスマートフォンでインターネットサーフィンしたり、ゲームをプレイしたり。
ただ途中で更にとんでもない事態を思い出してしまい、ゲームすら手に付かなくなった。その後、何とか気絶するように眠れたから睡眠不足はなかったのだけれども。
次の日の授業ですらも覚束ない。花の金曜日であると呼ばれているはずの華やかな世界が今日は酷く恐ろしい。ブルブル震えているからか、何回も物理の女性教師から「そこで震えている露雪くん、着信が来ちゃったのかな? 誰からかな?」といじられていた。その上で休み時間に同じクラスの男子数名から「おっ、ナノカから恋の着信か?」などとからかわれた。後でアイツら、絶対泣かす。
そんな軽い悪意を覚えていなければ、気は平静では保ていていなかったのかもしれない。
放課後がやってくる。
そして、あの悪魔の元へと僕は足を進めねばならなくなってくる。
行くしかない。あまり行きたくないし、自分一人で恐ろしい目にも遭いたくなかった。それだけ聞くと、ナノカを盾に逃げようとしている卑怯者と非難されるであろう。
ただナノカを連れて行く理由は、昨日のことについて悪魔の元で共に話し合いたいから、だ。同じ「夢を追う会」を支えるものとして同じ場についてもらいたかった。僕が声を掛けた時。
「ねぇ、ナノカ、今から予定とかある? サークルのことで相談したいことがあるんだけど?」
「うん、いいわよ? でもちょっと待って。風紀委員の方でちょっと仕事があるから……今日は放送部の活動でしょ? じゃあ、放送室で待っててくれる?」
「あっ、うん」
「すぐ行くからね……で」
「何?」
彼女はポニーテールと一緒に顔をこちらへと近づけてくる。
「昨日は大丈夫だった? ってか、今日の方が凄く疲れてるって感じがするわよ? 一晩中ゲームとかやってたって訳?」
「いや……ちゃんと寝たよ」
「そう? それなら、良かったけど」
確かに今、僕はとんでもなくやつれた顔をしていただろう。何故だろう。別にナノカを身代わりとかにするつもりはなかったのだけれども。ナノカがすぐに来てくれなかったことに対して、元々だだ下がりのテンションが急激に落ちていくのを感じていた。
そのまま悪魔の元へと直行。
今は彼女の意見にも縋りたい。でも、あれを言われるのがとても恐ろしかった。僕の考え通り、黒髪の悪魔は放送室を開けた瞬間に質問をぶつけてきた。
「おお、情真? で、推理ショーはいつやるんだ? 場所はあっちでやるのか?」
うん、とっくにもう終わってるんだよ。昨日の放課後に僕が全てやってしまった。何だか気まずい雰囲気で応対する。
「そ、そのことね……昨日の夜に思い出したよ」
「で、どうなんだ? どう話すんだ?」
何だか非常にワクワクしている。大人っぽい感じもする悪魔が今日は何だか子供にも見える。ただ言わねばならない。
相談をすると同時にそのことも話さねばならないのだから。
「ご、ごめんよ……理亜。昨日、終わったよ」
「はっ?」
「犯人は終わって一旦はめでたしめでたしって感じに」
「……もう一回。もう一回。そうだ。今回は情真が犯行をしろ。そしたら私が謎を解いてやるから」
何言ってんだ。
そんなことがバレた暁にはナノカから大目玉を喰らう。昨日もかなり大変だったのに更にその上を行くような悪事なんてとんでもない。
「断る……って言うか、謎を解きたいんだよな?」
「ああ。それとも他に面白そうな話を提供してくれるか?」
「まぁ、難解な謎であるこたぁ、間違いないな。同じ話を二回するのも面倒だから、ナノカが来るのを待ってくれ」
「ナノカってことはまたあの会による話か?」
「よく分かったね」
どうやら今回の謎で彼女は手を打ってくれるらしい。椅子に座って、一安心していいのか、良くないのか考えると共に、ナノカの登場を待つ。
「お待たせ! ごめんごめん! で、何々?」
理亜が隣の椅子を素早く開けて、ナノカが着席。そこから僕は昨日、聞いてしまった話をナノカと理亜に告げていく。理亜の方はやけにふふんと笑っているような感じだ。いや、普段のことだ。何を話しても薄ら笑い。問題はナノカの方。信じられないと叫ぶかのように口を開けて、顔を真っ青にしていた。
「えっ……何? 嘘でしょ? えっ、何でそんなことをする必要があるのよっ!? 今度こそ、意味が分からないわよ!」
「だよね……」
僕が同意する中、理亜だけはやけに落ち着いている。
「ふぅん、そういうことか。あの女子はそんなことを……まぁ、やってもおかしくはないかな」
彼女の分まで僕達が衝撃を受けた。ナノカの方は勢いよく机を叩く位だ。
「ちょっと! やってもおかしくないって! 何よ!? どういうこと!?」
僕もそう言われることに関しては立腹したい気分だ。夢のことについて頑張っている彼女がそんな馬鹿なことを意図的にやるとは思いたくない。証言者が全員共謀して嘘を付いていると思いたい位だ。動機なら嫉妬だとか色々とある。そんな奴等がいる現実も今は否定したいのだが。
ただ、今は理亜の口を塞ぐことはできない。
ナノカは理亜の方へ噛みつきそうな威勢を見せていたから、すぐに僕は動いた。
「ナノカ、理亜も何か考えがあるんだよな?」
「何よ! 情真くんも理亜ちゃんを庇うの!?」
「庇うつもりはないし、そもそも今の話も現実すらも信じたくない。当然、理亜のふざけた発言全部もだ!」
理亜が「おい」とツッコミを入れるが、今は聞いてる暇はない。ナノカに今の気持ちをぶつけなくては。
「でも、僕が理亜に今回相談をしたのは……彼女も何か気付くことがあると思ったからなんだよ。だって昨日、謎を解いたのも理亜のおかげがあったからさ。理亜が今言ったことは、確かに失礼極まりないけど……何か、考えがあるんだと思う。きっと、夢を馬鹿にするつもりも、ないとは思う」
彼女は彼女で夢を描いていると思う。偶然かは分からないけれど、昨日も理亜の官能小説に助けられた。あれが半端なものだったら、たぶん古戸くんは読むのをやめていた。集中できたのは理亜のおかげだ。
たぶん、理亜の描きたいという思いが本物だったからではないか。作家になるとの夢が。
だから、理亜が夢を貶すような人ではないと知っている。
ナノカもこちらの思いが伝わったのか、一旦落ち着いてくれた。そして理亜の方を見る。
「そうなの? 情真くんの言ってる通りなの?」
「まぁな。それよりもこっちもちょっと気になることがあってな……今はそっちの話をするより、こっちの謎を一緒に解いてみないか?」
すると理亜はナノカに怒られること覚悟で彼女自身のスマートフォンを取り出した。とっても綺麗な澄まし顔で。
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